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ハーバートビジネスレビュー等を中心とした英文ビジネス記事の紹介と感想

グローバルオペレーション成功のために組織を再編しているか?

The Globe: Have you restructured for Global Success?
Nirmalya Kumar & Phanish Puranam
Harvard Business Review

グロバール企業の組織改編への要請は、新興国における支社との関係が原材料の供給やサプライヤー元として扱う関係から最終消費市場としての位置付けになるにつれて、ますます強くなってきている。
これによって、以前は一か所(本社)において、非常に密接に統合された形で行われてきたオペレーションを(各国)どのように分解して配分するのかという問題に頭を悩ませている。

そこで、当該文章の作者が主張するのは、T-shaped country organizationというものである。

【なぜ既存のやり方がうまくいかないのか】
多くのグローバル企業が組織改編の際に試しているのは、機能別(ドイツで製品エンジニアリング、メキシコで製造)または製品ライン毎の配分(欧州でX線装置、日本でCTスキャン装置)、さらにはその混在するやり方である。作者によれば、これらはいずれもうまくいっていない。
それには、以下の三つの理由が挙げられている。
(1) インドや中国の市場が成長著しい市場として拡大し、先進国市場の成長率が落ちる中で、以前のような先進国向けの製品を開発してそれに足し引きして新興国向けに製品を提供するという形では、異なる要望を持つ新興国市場において成功できなくなってきている。
(2) 新興国が新しい製品やプロセスを開発する人材の源になっていることである。各社はR&Dを垂直過程にセグメント化(消費者ニーズの把握、製品仕様の作成、仕様に見合う技術的解決方法の模索、製品原型、製造のためのエンジニアリング等)することで対応しているが、下流の最も進んだR&Dの能力は上流の簡単な部分を体験することによってしか身に付かない傾向にある。(結果将来的には当該分業は成功しない)
(3) グローバル企業のリーダーシップが先進国から生まれなければいけないという先入観(assumption)が未だに残っている。

【うまくいかない結果として生まれるギャップの広がり】
-新興国市場では、企業のリーダーが新興国市場に真のコミットメントが無いとして、不満が募りつつある。
-先進国に本社を置く企業は新興国における10%の成長に満足するが、新興国市場では20%の成長を目指す必要があり、成果目標へのギャップが生まれる。
-本社的な考え方では新興国独自の価値観に対応できず、現地企業との競争でギャップが生まれる。
-本社の開発した製品コンセプトが新興国市場のニーズと異なるためにギャップがうまれる。

【T-shaped structureの必要性】
ここで作者が主張するT-shaped structureの紹介である。
当該組織形態は非常に単純に考えれば、組織を消費者サイド(フロントエンド)において現地化し、その他の機能(バックエンド)を地域横断に統合するというT型の組織を作るというものである。
消費者に近いフロントエンドは現地のニーズに応じて迅速に対応し、意志決定も現地に任される必要があるため、縦に深い構造となる。
R&Dや製造を含めたバックエンドについては、機能のいくつか(全てである必要はない)を前例の無いレベルで国を超えた統合を行う。それは国を超えたベストプラクティスの共有という程度にとどまるのではなく、共にプロジェクトを推進する形での統合である。そのためには、共通の言語(英語という意味でなく、Six Sigma等)、共有された意思決定プロセス、更には他の国で行われている業務の進捗状況を詳細に観察できる状況の設定が必要となる。

【リーダーシップに求められる挑戦】
遠くない将来に先進国に拠点を置くグローバル企業はリーダーに新興国出身の人間を登用する必要がでてくるし、本社という名称を先進国に残しても頭脳部分を新興国に実際にはシフトする必要もでてくる。先進国のリーダーが新興国に行って自らをその地に融合しようとするよりも、新興国の人間を登用する方が良いという変化も受け入れる必要が出てくる。

当然、完全な組織は存在しないものの、T型の組織はこのような変化に対応する一助となるはずである。

作者の提案する、リーダーシップの先進国から新興国へのシフトについては、二人がインド出身?ということもあっての内容であることも考慮する必要があるかもしれない。一方で、作者達の現在の組織の問題点への洞察と解決策への提言は、抽象的ながらも参考に出来るところがある。理想を言えば、T型組織の例が文章中にあればなお分かりやすかったように思う。



グローバル企業が新興国で革新的なアイデアを見つける手法

Finding Great Ideas in Emerging Markets
Nathan Washburn & Tom Hunsaker
Harvard Business Review

新興国市場は多くのグローバル企業にとって新しい消費者市場の開拓が主な目的となっているが、当該記事の作者は新興国において革新的(inovative)なアイデアを見つけて本社へ還元することが可能であり、それが大きな恩恵をもたらすとしてその手法を説明している。なお、作者はグロバール企業の52のマネージャーにインタビューして当該結論を出している。

まず、新興国市場と本社を結ぶ役割(global bridger)が必要であり、それがどのような人であり、どのような組織体系にすることによって革新的アイデアがより本社に還元されるようになるかという二つのステップで説明をしていく。

【Global Bridgerについて】
Global Bridgerは、①新興国において本社にも還元できる革新的アイデアを見つけ(問題点に気付くこと、例えば、インドにおける小分けヘアジェルのニーズをいち早く見抜いて本国にも同じニーズがあることと考える等)、②それを本社に売り込み(コミュニケーション能力)、③更には実行に移させるという力(実行力、政治力)を持っている必要がある。インタビューをした52のマネージャーのうち、5人のマネージャーのみが実行(implementation)まで成功に導いているということから、その実践が難しいことが理解できる。
このような成功するマネージャーの特徴は、
(1) 新興国を理解していること(数多くの国での駐在経験がある、または国際ビジネスや新興国ビジネスに関して教育を受けたことがある)
(2) 同社において長い経験を持つ(12年以上の経験を持っているマネージャーが成功している)※これは本社の方針を理解し、本社の内部ポリティクスを理解している必要があるためである。
(3) アイデアを売り込む力を持つ 
というものである。
今まで単にその地域との取引経験があることや、当該地域の言語を話すことができることだけを持って駐在員を選定したり、駐在期間が3年~5年と短い日系企業にとってはGlobal Bridgerの育成がいかに難しいかが見てとれる。

【Translators】
Global Bridgers(橋渡し役)は本社から送られてくる人間であるため、新興国市場で育ち、その社会・文化を深く理解するものに翻訳(translate)してもらう必要がある。社内の現地スタッフにその役割を任せる企業が多い傾向にあるが、理想的には外部の人間にその役割を担ってもらうことが期待される。企業は、派遣したGlobal Bridgerが質の高いTranslatorと交わることができるような環境整備に努める必要がある。例えば、当該支社のトップがGlobal Bridgerが外の人間と交わったり、現地スタッフと交流する場を積極的に設ける等が考えられる。

【本社の受け入れ体制の強化について】
Global Bridgerを新興国に送り込んだ後も、本社側で当該革新的アイデアを取り込むための体制を強化していく必要がある。というのも、本社は新興国を市場として見る傾向にあり、アイデアの発信地として見ていないためである。それでなくても新しいアイデアを採用することは今までのビジネスのやり方を変えるという前提に立つために困難を伴うことから、本社から離れた新興国市場からの提案など尚更否定される可能性が高い。Global Bridgerの項目で振れたように、新興国のBridgerは本社の専門用語を使って提案を売り込んでいく必要があるのは言うまでもない。

そこで、本社としては、Global Bridgerの提案を本社で積極的に売り込む支援をする人間を指名(Advocator)することが考えられる。Bridgerが駐在する前から関係を構築し、駐在中もその関係を維持していくことに気を使う必要がある。
また、Bridgerが本社にアイデアを還元することを義務付けることで、提案提起を促すこともできる。今回のインタビューを通じて、新興国からの革新的アイデアを取り込んで本社での成功に結びつけている企業は、Global Bridgerの選定及び本社での受け入れ体制について両方の観点から積極的に取り組みを行っている。

以上の発見は特に新興国でアイデア(マーケティング、R&D、プロダクト開発)を企業のコア・コンピタンスと考える企業にとっては非常に参考になるのではないかと思う。特に駐在員が語学によって選定されて、その駐在期間が短い日本企業にとっては、このようなGlobal Bridgerを育てる長期的視点が欠けていると言えるかもしれない。

複雑系を容認(embrace)する

Michael Mauboussin (Legg Mason Capital Management)
"Embracing Complexity" Harvard Business Review

複雑系というのは何ら新しい単語でもなく、Googleで検索すれば100万以上のサイトがヒットする。簡単な説明はhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A4%87%E9%9B%91%E7%B3%BB で閲覧可能。
Harvard Business Reviewに書かれているインタビューで面白いのは複雑系を見誤ることによる危険性、対処するための組織の作り方、戦略論が簡単に紹介されているところである。

【危険性】
複雑系を十分に理解しないことによる危険性の発生は、この文章では生態系の破壊に伴う連鎖が引き起こす問題によって説明されています。例えば、イエローストーン公園(米国の国立公園)におけるエルク(鹿の一種)を増やそうとしたら、その結果増えたエルクはアスペンと呼ばれる植物を過剰に摂食し、それがビーバーの作るダムの材料を減らし、結果としてそのダムで産卵を行っていたサケの数を減らすことになった、というものです。前に読んだ福岡伸一氏の「動的平衡」においても、一部の病原を取り除く西洋的な手術が身体全体に与える影響について説明されていたと思います。

【対処するための組織作り】
よく考えれば当然のことですが、「多様性」と「集約(aggregation)」と適度なインセンティブが必要と書かれています。つまり、多様な意見を持つ人材(得てして組織は同じ部類に属する人を「賢い人」と判断する傾向にあるが、異なる意見を持つ人が必要)を集め、かつそれぞれが考えを共有し集約できるような適度なインセンティブを準備する必要があるということです。だいたいの人間は皆個人特有の情報を隠す傾向にあるので、その共有が必要ということです。

【対処するための戦略】
2001年に書かれた"Strategy as Simple Rules"という文章(Kathleen Eisenhardt & Donald Sull)が引用されており、それによると2~7つのシンプルな、但し決して破ってはいけないルールを定め、そのルールに反しない限りは自由に行動するという戦略を取ることが対処法として挙げられている。具体的には、(2001年なので事例が古いですが)シスコが技術力を持つ会社を吸収する際に75名を超える規模の会社は吸収しない、エンジニアの数が社員の75%を下回る会社は吸収しないというルールを作って技術動向の激しい中で自由に吸収対象を模索するという例が記載されています。

【個人としての複雑系への対処】
なるべく多くの情報に触れ、かつ自分が普段接しないものに触れる努力をすることが重要です。金融業で働いているのであれば金融関係の情報をブルームバーグやロイターで集めるだけでなく、ファッション雑誌を読んでみたり、科学の雑誌を読んでみたり、異なるバックグランドの人と交わって話をすることが複雑系への対応力を高めてくれることでしょう。これは内田和成氏が「スパークする思考」で異業種格闘技の言葉を発見した時のプロセス(同氏はK1を見ていて思いついたらしい)に似ているかもしれませんね。
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