ちょいと日にちも経ちましたし、世間的には、
ぼちぼち鎮火されつつある話題だとは思いますし、
いろんな人がいろんな意見、というかほぼ統一の結論で、
あれやこれやの見解を表明されているので、
今更僕が書く必要も無いか、とも思うのですが、
前の記事で、稿を変えて書くかも、と書いたし、
誰が読むわけじゃなくても、僕の備忘録なので、
この時点での私見を書き残しておこうか、と思う次第。

WBAミドル級世界王者決定戦 アッサン・エンダム VS 村田諒太

お食事会の最中、皆さんとなんやかんや喋りながら見たので、
正直、そこまで集中してなかったんですけど、
印象としては、攻める村田、逃げるエンダム、という感じ。
エンダムがよろめく場面もいくつかあったし、
村田はパンチを食った印象が全然無かったので、
こりゃ村田の圧勝だ、完勝だろう、と思ってたわけですよ。
しかし、判定はエンダム。

ん〜。

唸ってしまいます。
しかし、こういうこともあり得るのがボクシングの判定。
ジャッジは村田の効いたパンチよりも、手数の多さ、
エンダムのパンチの数をとったのかなぁ…
ほとんどガードで防いでいたとは思うんだけど…
でもきっと、村田は文句ひとつ言わんと思うよ…
みたいな話を、普段ボクシングを観ない皆さんに解説。
しかし、普段見ない人には、ようわからん試合だったでしょう。
そういう人たちにこそ、ボクシングの魅力をアピールしたい、
と村田は意気込んでいただけに、非常に残念…

おウチに帰って、早々にお風呂入って、深夜に早速、録画観戦。

僕はいつもボクシングの試合を観るときには、
なんとなくザックリですけど、1Rごとに採点をつけてます。
WOWOWのエキサイトマッチでは、試合に入る前に、
ほぼ毎回、採点基準について説明があります。
(時間の関係もあるんでしょうが、地上波でも、
絶対にこれやるべきだと思うんだけど。見る側の予備知識として。)
・有効なクリーンヒット 相手に与えたダメージを評価
・攻勢 攻撃的であること 単なる突進は攻勢とは認めない
・防御 攻撃と結びつかない単なる防御は有効と認めない
・リングジェネラルシップ 主導権 どちらがそのRを支配したか
の4基準をもとに各ラウンド独立して採点する、と。
必ず優劣をつけ、10-10のイーブンはほとんどありません。
どちらかと言えば、というラウンドでも、10-9で優劣をつけ、
前のラウンドでほぼ五分だったのを10-9付けたから、
このラウンドも同じ感じだったし、今度は9-10でバランスを、
なんてこともしません。あくまでラウンドごとに独立。
だから、微妙な差の印象の試合が、終わってみたら大差の判定、
なんてことも、まぁ多々あるわけですよ。
あと、ラウンド中にダウン1回で10-8、2回で10-7になりますので、
ダウンを奪うのは採点上もかなり有効。
極端な例を挙げれば、2分50秒攻められ続けて、
フラフラになってても、1発あたってダウンさせたなら、
よほどのことが無い限り、そのラウンドは10-8。

ということで、エンダムVS村田。
ん〜。
僕の素人採点ではありますが、序盤の1、2Rはエンダム。
あと8Rはほとんど村田の手も出てなかったし、エンダムでしょう。
しかし、他のラウンドは全部村田が取ったように見えました。
しかも、4Rにはダウンも取ってます。
ということは、ジャッジ荒井の採点は、
エンダム 110 - 117 村田
勝者は村田、ってことになります。

先の4基準に関して、エキサイトマッチ解説者であり、
米ボクシング殿堂入りを果たした二人目の日本人でもある、
世界的マッチメーカー、ジョー小泉さんは、常々仰ってます。
4基準は、同等じゃないんだ、同じ価値じゃないんだ、と。
まず、有効なクリーンヒット、相手にいかにダメージを与えたか、
これを評価しないといけない。
ボクシングの究極の目的は、相手を打ち倒すことなのだから、
そこにいかに近付けたかを、ジャッジは判断すべき。
お互いに有効打がないラウンド、もしくは同等の有効打があったなら、
どちらがより攻めていたか、攻勢を取ったかで判断、
それでも差が無いようなら、どちらが巧みに攻撃を防いだか、
そのディフェンスから、いかに攻撃につなげられたか、
それでも優劣が付かないのであれば、初めて主導権、
どちらがそのラウンドを支配していたか、という、
ある意味では印象度による優劣をつける、と。

有効打 > 攻勢 > 防御 > 主導権

さて、この試合はどうだったでしょう。
僕の見立てなのですが、前述のエンダムがとった3つのラウンドは、
明確に村田がパンチを出しておらず、両者クリーンヒットはなく、
村田はほぼガードで防御していたものの、一方的に手を出して、
攻勢を取っていたエンダムに与えました。
上記の基準通り。
いくら巧みに防いでも、防御を攻勢より評価することはありません。
攻撃につながらない単なる防御、でもあったわけですし。

しかし、その他のラウンドに関しては、まず村田に有効打がありました。
ここに超えられない壁がある。
ラウンド中、数は少なくとも有効打があった選手と、
いくら手数を出し続けて、攻勢を強めようとも、
ガードの上に触る程度のパンチしか出ない選手なら、
ポイントは前者につけるべきだと、僕は思います。
更に相手の攻勢を取ろうにも、それを村田はガードで防いだ上で、
攻撃につなげていましたので、エンダムの威力の無い手数よりは、
基準の3番目である防御でポイントを与えてもいいくらい。

加えて。
ダウンは4Rの1回だけでしたが、5,6,7Rもそれぞれ、
村田のパンチでエンダムがロープに吹っ飛ぶ場面がありました。
これ、必ずそうしなければならない、というわけではありませんが、
もしそのパンチをリング中央で受けたなら、そこにロープがなければ、
ダウンしていたであろうとレフェリーが判断すれば、
たとえ手や膝をつかなくても、ダウンに取られることもあるんです。
エンダムがかなり明確に腰を落として、ロープにつかまる、
という場面もありましたし、これがたび重なったことを思えば、
1度くらいはダウンと判定するべきじゃなかったかなぁ、と。
また、スリップダウンも複数回ありましたが、
レフェリーによっては、ダウン判定も有り得たかもよ、と思う場面も。
足が引っかかったり、腕でなぎ倒されたりしたら、
そりゃスリップになるんですが、その前に当たってるパンチで、
ダメージを受けてると判断されれば、ダウン判定、あるんです。

ただ、エンダムの勝ちにつけたジャッジの採点では、
あと1回ダウンをとっても、勝敗はひっくり返らないのですが、
これは結果論。
試合には流れというものがありますから、もし、
中盤にロープダウンを1度でもとられていれば、
一気に村田に流れが来たかもしれません。
そう考えると、ジャッジのことばかり言われますが、
レフェリーにも恵まれなかった…のかも。

そんな感じで、実はこの試合、都合3回観たんですけど、
何度観ても、というか観れば観るほど、村田は負けてないなぁ、と。
特に、9R以降。
採点表によると、結果エンダムの勝ちにつけた2人のジャッジは、
全部エンダムに付けてるんだそうです。
しかし、繰り返し観てみると、
前半は力の入ったパンチを出してたエンダムが、
後半に入るにつれ、どんどん軽いパンチしか出さなくなる。
確かに手数は増えるけど、ペチペチって感じで、
それも村田のガードで全部防がれてる。
繰り返せば繰り返すほど、こりゃエンダムにはつけねぇなぁ、と。
うん、最初観た時は、僕が集中して観てなかった、というのもあるし、
村田応援というバイアスもかかってるしで、そこを修正すれば、
こういう判定もあるのかな…と思ったのですが、やっぱないわ。

たまにあるんですよ、有力な選手が本調子じゃなくて、
イマイチな感じだけど、負けてはいないわなぁ、
僅差の判定勝ちか、ドローになるかも…
と思ってたら、判定負け、っての。
最近で代表的なのは、パッキャオvsブラッドリーの初戦、
去年のコバレフvsウォード、こないだのロマゴンvsシーサケット…
(いずれも、再戦もしくはその予定あり)
この試合に関しては、村田がイマイチってところは無かったし、
明確に試合全体を支配してましたから、これらのケースにさえ当たらない。

まぁね、ジャッジだって人間だし、
三人が三方向からリングに一番近い場所で観てるとは言え、
テレビカメラほどズームして見えるわけでもなく、
ラウンドの間にスローで繰り返し見るでもなく、
位置によってはレフェリーの背中で決定的場面が見えない、
なんてこともあるわけですよ。
WBAの会長まで出てきて大騒ぎしてますし、
一部には陰謀論的なことを言う人もいたり、
なんか変な感じの盛り上がりになってる気もしますが、
結局のところ、ジャッジ基準の統一が図れていないこと、
個々の主観、個々の感覚に委ねられてることが、
一番の問題なんじゃないかなぁと思います。
昔から言われていることですけどね。
だから僕は、陰謀論とか、ジャッジの処分要求とかは、
ちょっと考えられない、という立場です。
ひどいジャッジだし、納得はしていないけど。

ともあれ、これだけの騒ぎになったことで、結果として、
対戦前よりもこの試合の注目度が、世界的に上がっているようです。
再戦、待ったなし、的な。
ところがミドル級は、この秋にゴロフキンvsカネロという、
パッキャオvsメイウェザー級のビッグマッチを控えており、
その試合の結果及びその後の動向次第では、
複数団体のミドル級王座が空位になる、という可能性もあるので、
そうなれば、今回の判定のみならず、諸々問題が多いと言われている
WBAでの再戦にこだわることなく、他団体の挑戦者に指名もしくは、
王座決定戦に村田が出る、なんてこともあり得る…かも?という流れ。

まぁ、ひと言で言えば、「負けて強し」ですよ。
下世話な表現で言えば、商品価値が全く下がってない、
どころか、急上昇中。赤丸。ストップ高。
事前に考えられた最悪なケースとしては、
疑惑の判定で勝っちゃうことで、
正直ね、これまでの日本人チャンピオンの中には、
色々と勘繰られても仕方がない兄弟
もとい、そういう人たちもいたし、
今回のタイトルマッチも、詳しくは書きませんが、
JBCの内規変更とか、解釈を変えてようやく実現、という事情もあり、
ゴリ押し的なことも、たいがい言われとったわけ。
だからこそ、スッキリ勝たないといけなかったし、
試合を観た限りでは、スッキリ勝ったように見えたのだけれども。
ともあれ、日本人では世界挑戦すら絵空事と思えたミドル級で、
圧倒的な世界チャンピオンではないとは言え、
少なくとも世界トップ戦線にいる相手からダウンを奪い、
何度もぐらつかせ、クリンチ際など体の押しあいになっても、
フィジカル面で全然引けを取っていなかった、
というのは大きな収穫です。
アマチュアでの実績こそあれ、世界的には無名もしくは、
戦績はともかく実力に疑問符が付けられていた村田が、
その実力をいかんなく世界にアピールできた場となりました。
ジャパンマネーにモノを言わせて、金メダリストの看板商売で、
下駄を履かせてもらっての世界挑戦では無かった、
ということの証明は、出来たと思います。
こりゃ当然、今後、ありますよ。

多士済々、綺羅、星のごとく強豪居並ぶミドル級。
その一人に、村田諒太が名乗りを上げた、ということで、
ひとまず納得しますか、という感じです。
もちろん、本人はまだ進退を明らかにしていませんし、
ここまでの舞台を整えてくれた周囲に対して、
世界を獲れなかったことへの申し訳なさもあるんでしょう、
責任感の強い男なので、軽々に、再起戦へ!なんてことは、
言わないんでしょうけど。
しかし、これまで以上に期待が高まっている中、
その責任感の強さから、その期待を無下にするとは思えません。
それに、リング入場の際には、必ず満面の笑みを浮かべる、
ある意味サイヤ人体質ですからね、村田選手。
(オメェ強ぇな〜。おら、ワクワクすっぞ、的な。
試合中もたまに、ニヤリ、ってしてる。)
このまま終わるわけがない。

という感じで、長々書きました。
あくまで素人の雑感、私見ですので、苦情等は受け付けませんで。
悪しからず。
しかしまぁ、当初は悔しくてたまらなかったのが、
日にちが経つほど、またいろんな反響を見聞きするにつれ、
むしろ今まで以上に期待が膨らむ、そんな感じです。

そして今年はこれから、日本人選手が出場する、
アメリカ開催の注目の対戦が目白押し。

7/15にはボンバーレフト三浦隆司が世界王座返り咲きを狙って、
WBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ。
王者ミゲル・ベルチェルトと対戦。

三浦隆司、7月米国で世界戦「沸かせる試合したい」

8/26には元4階級制覇王者のミゲール・コットと、
亀海喜寛のWBO世界スーパーウエルター級の王座決定戦。

亀海8・26に世界初挑戦 同級1位のミゲル・コットと王座決定戦へ

加えて、この村田戦の翌日、見事にKO防衛を果たした、
WBOスーパーフライ級世界チャンピオン井上尚弥は、
9月にほぼアメリカでの試合が決まりつつある、とのことで、
一部では前述のゴロフキンvsカネロのアンダーカード(前座)では?
との噂もあったりして。

今年は、世界チャンピオンと言いながら、
国内に閉じこもっていた感のある日本ボクシング界が、
文字通り世界に打って出る転機になる年かもしれません。
村田の望む形ではないにせよ、ボクシング界に一般の注目も集まりました。
この勢いに乗って、ホントにいい選手、強い選手のニュースが、
たくさん話題になって、ボクシング界が盛り上がりますように。

ボクシング界の歴史が動こうかという時に、
素人相手に賞金出してスパーリングするとか、
タレントとの結婚発表なんて話題が、
ネットニュースのボクシング項目のトップに来るなんて、
寂し過ぎるで、ホンマ。