March 12, 2013
書評『ALONE TOGETHER 』 本多孝好


久々の本多孝好作品。
彼の昔の作品が読みたくなって、2000年発刊のこの作品を読み直してみた。
驚いた。
10年以上前の作品が、全く色あせていないからだ。
初めて本多作品を読んだ時の、すっきりとした後味を思い出した。
本多孝好は、直木賞作家の金城一紀と大学の同級生で、お互いに切磋琢磨し、小説執筆の腕を磨いた。そのために、本多と金城の作風はどことなく似ているのだが、金城作品をグレープフルーツとするなら、本多作品はレモンと言ったところか。苦みのある金城作品に対し、どこまでもピュアな本多作品というイメージだ。

あらすじ
「ある女性を守って欲しいのです」三年前に医大を辞めた「僕」に、脳神経学の教授が切り出した、突然の頼み。「女性といってもその子はまだ十四歳…。私が殺した女性の娘さんです」二つの波長が共鳴するときに生まれる、その静かな物語。


上記で、本多孝好の作品と金城一紀の作品がどことなく似ていると述べたが、両氏の作品の共通点の一つは、クールでテンポがよく、気の利いた会話文だ。本多孝好は大学時代に村上春樹を読み漁ったというが、その影響もあるのだろう。この会話文によって、なんでもないシーンにも。読みごたえが加わり、最後まで決して飽きることなく読み続けることができる。
こうした会話文を書くには、いうまでもなくセンスが問われる。下手に手を出すと、たんに嫌味なだけになってしまう。読者に嫌われてしまう可能性も秘めた、もろ刃の剣なのだ。この1店だけをとっても、本多孝好はたぐいまれなセンスを持った作家と言える。
この作品の大きなテーマになっているのが、14歳という年齢の少女の心だ。
大人と子供の間で揺れ動く感情。父親に対する複雑な思い。
この世代の心境を描くのに、本多孝好の文章ほど適したものはないだろう。
脂っこい料理にそっと添えられた、一切れのレモンのような作品。手元に置いておきたい一冊だ。


taisuke777777 at 13:50コメント(1)トラックバック(0) 
本多孝好 
February 26, 2013
強すぎる女! 書評『アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子』深町秋生


女性刑事を主人公とする警察小説は数多い。数え上げればきりがない。
最近の作品だと、誉田哲也の『ストロベリーナイト』シリーズでは、女性刑事・姫川玲子がその鋭い感性で事件を解決に導いていく。結城充考の『プラ・バロック』シリーズでは、やはり女性刑事・クロハがその感性を活かし、事件を解決に導く。このように、女性刑事ものの小説では、主人公の女性ならではの感性によって事件を解決に導いていくものが多い。
さらに共通しているのが、同僚の男性刑事との確執だ。姫川玲子には勝俣健作(通称・ガンテツ)という天敵や日下守という犬猿の仲のライバルが登場する。クロハも県警本部捜査一課のカガに目の敵にされ、雑用ばかりを押し付けられる。
では、本作『アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子』の主人公・八神瑛子はどうか。確かに上司や同僚の男性刑事に目の敵にされる部分もある。女性ならではの感性を武器にするときもある。だがそれ以上に際立つのが彼女の「強さ」だ。


あらすじ
躊躇なく被疑者を殴り、同僚に低利で金を貸し付けて飼いならし、暴力団や中国マフィアとも平気で手を結ぶ――。警視庁上野署組織犯罪対策課の美人刑事・八神瑛子は夫を亡くして以来、その美貌からは想像もつかない手法で数々の事件を解決し、警視総監賞や方面本部賞を何度も受けている。そんな瑛子が管轄する区域で広域指定暴力団・印旗会の組長の娘が刺殺された。瑛子は、悪徳刑事の排除を目論む上野警察署署長・富永昌弘から監視される中で、独自に捜査を始める。だが、その矢先、手口が同じで、被害者の容姿も似た刺殺事件が、富永らキャリア警官から不審の眼で睨まれながらも、なりふり構わず連続殺人事件の真相に迫ろうとする瑛子。その胸中には、夫の死を自殺と断定した警察組織への激しい憎悪が渦巻いていた。



主人公・八神瑛子は強い。剣道の達人であり体も鍛えているので、もちろん肉体的にも強いのだが、戦略的・人脈的にもものすごく強い。
やり手の上司も、屈強な男性刑事も、百戦錬磨のやくざも、いつの間にか彼女に利用されてしまっている。
やくざや中国系のマフィア、もと女子プロレスラー、さらには警察内部にも協力者を持っていて、これらの強力な人脈を使いながら、事件の真相に近づいていく。時には法律を犯してまでも真相に迫ろうとするので、上司としても、監視を付けるなど警戒を怠らない。だが最後には、黙認せざるを得ないのだ。あまりに仕事ができるから。
人を味方につけ、情報を味方につけ、あとは度胸があれば百戦危うからずという、ビジネスにも通用する理論を改めて示してくれる。実に気分のいい作品だ。ただ、ちょっぴりグロいシーンもあるのでご注意を。


taisuke777777 at 11:14コメント(0)トラックバック(0) 
は行 その他 
February 25, 2013
頼りになるスペシャリスト集団! 書評『ST警視庁科学特捜班』 今野敏


特殊な能力を持ったプロフェッショナル集団というのは、それだけで魅力的な存在だ。だからこそ、こういった集団の活躍を描いた作品は、小説だけにとどまらず、映画やドラマ、漫画などでも数多く生み出されている。『オーシャンズ11 』や『Gメン'75』、『必殺仕事人』、『サイボーグ009』と枚挙にいとまがない。
なぜ、こういったプロフェッショナル集団に惹かれてしまうのか。それは、一人ひとりの能力の高さに対する憧れよりも、「頼りになる仲間」に対する憧れが強いからではないか。
本日紹介するのは、超個性的で頼りがいのあるプロフェッショナル集団「警視庁科学特捜班」の活躍を描いたシリーズ第1作だ。


あらすじ
多様化する現代犯罪に対応するため新設された警視庁科学特捜班、略称ST。繰り返される猟奇事件、捜査陣は典型的な淫楽殺人と断定したが、STの青山は一人これに異を唱える。プロファイリングで浮かび上がった犯人像の矛盾、追い詰められた犯罪者の取った行動とは。



本作に登場する「警視庁科学特捜班」のメンバー。実に強烈な個性を放っている。5人のメンバーを紹介しよう。

赤城 左門
法医学担当でSTのリーダー。東京大学の医学部出身。色気のあるタイプの長髪イケメン。かつて対人恐怖症だったが現在は克服している。ただし、その名残でいまだに女性恐怖症。

青山 翔
文書鑑定担当。専門は筆跡鑑定やポリグラフ、プロファイリングなど。ものすごく美青年だが、ものすごくマイペース。興味がないとすぐに「もう帰っていい?」と言う。
秩序恐怖症で、整頓された場所だと落着けない。そのため、デスクも驚くほど散らかっている。

黒崎 勇治
第一化学担当。人間ガスクロマトグラフィーと呼ばれるほどに嗅覚が発達していて、毒物などの臭いを正確に嗅ぎとることができる。人間の体臭なども敏感に嗅ぎとることができ、うそをついて汗をかいたりするとすぐに察知することができる。無口で、必要最低限の事柄しか口にしない。武道の達人で、ものすごく強い。

山吹 才蔵
第二化学担当。僧籍を持った本物の僧侶でもあり、殺人現場に駆けつけると、まず経を読む。
STの中では比較的まともな人間。

結城 翠
物理学担当。聴覚が異常に発達していて、部屋の外の会話や普通の人間の可聴領域を超えた音域まで聴き取ることができる。人間の心音を聴き取り、うそを見抜くこともできる。
美人でスタイルも良く、常に露出度の高い服を着ていて、周りの刑事を困らせている。

こんな魅力的なメンバーが活躍するとなれば、もうそれだけで面白くないわけがない。考えただけでもワクワクする。
皆さんお気づきのことと思うが、5人の名前にはそれぞれ色の名前が入っていて、それがまた戦隊ヒーローものを思い起こさせ、男心をくすぐるのだ。
このSTの5人、決して仲が良いわけではないのだが、チームワークと信頼関係は抜群だ。そしてやっぱり思うのだ。仲間っていいな、と。


taisuke777777 at 17:22コメント(0)トラックバック(0) 
今野敏 
レビュープラス
ランキング
↓ランキング参加中 banner_01 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
livedoor プロフィール