克舟先生の「心のサプリメント」

毎日発行している「心のサプリメント」の解説、 また、「人生なんでも相談」受付所です。

書類送検

今月始め、函館地方検察庁の検事より私へ電話があり、
私が森警察署へ告発していた
自治労組委員長の選挙違反について、
函館地方検察庁は正式に書類送検を受けたと連絡がありました。

この事件の告発書は
以下の文面で告発したものです。

被告発人
北海道茅部郡森町字御幸町144番地1
森町役場 農林課 宮崎 渉

告発の趣旨
 被告発人の以下の所為は、公職選挙法第136条の2第1項、
同法239条の2第2項に該当すると考えるので、告発します。
本件は町政を乱し、町民の信を大きく損ねる由々しき事態ですので、
厳正に処罰願います。

告発事実
 平成24年に行われた森町長選挙において、森町役場職員であり、
自治労森支部執行委員長である宮崎渉が、平成24年9月から10月にかけて、
森町役場臨時職員である〇〇〇〇宅へ電話をして、
配偶者である森町役場臨時職員の〇〇〇〇に、
候補者であった現森町長梶谷惠造への投票依頼と、
家族の投票取りまとめの依頼を執拗にした。
正職員であり、労組執行委員長という団体交渉では、
町長と対等の地位にある権力を有する立場の者が、
臨時職員である立場の弱い者へ特定の候補者への投票依頼をすることは、
公職選挙法第136条の2第1項の規定により、
その地位を利用して選挙運動をすることは厳に禁止されており、
同法239条の2第2項により犯罪となります。


 私が公職選挙法違反で逮捕され起訴され有罪の判決を受けましたが、
私を告発したのは、自治労森支部の幹部です。
自分たちが選挙違反をしていたにも拘わらず、
私を公職選挙違反の罪に陥れたのです。
私を告発した労組の幹部であり役場職員は私がメールで送った、
職員が書いたと思われる書面を
「佐藤、自らが書いた文書で自作自演だ」と主張しておりましたが、
私が書いたものではないということが取り調べで判明しました。
この職員たちは「佐藤の自作自演だと言ったら、森警察署の刑事は
すっかりその気になっていた。森警察署の刑事もチョロイもんだ」
とうそぶいていたとのことです。

 私は函館地方検察庁の検事から何か特別言いたいことがありますか?
とのことだったので、控訴趣意書、上告趣意書に書いてありますから
読んでくださいと、この2通の趣意書を私の手紙を添えて送りました。

この手紙は

                        平成26年7月1日
函館地方検察庁
検事 荒井徹伊 殿
                      北海道森町   
                        前町長 佐藤克男

謹啓
 昨日、突然の電話に驚いております。
私が宮崎を告発したのは昨年4月12日で、あれから1年以上も経過しております。
まさに、お役人仕事の最たるものです。
勿論、これは貴殿に責任があることではありません。
それがこの刑事事件の当局のやる気の姿勢の現われであります。
小生は今年2月3日に最高裁から上告棄却を申し伝えられ、一応結審となりました。
一応と言うのは、再審請求も頭の片隅にはあるということです。
ただ、裁判所の結審が事実かと言うとそうではなく、
事実は別のところにあるということもよく判りました。
警察、検察の都合で冤罪の被害に遭っている被害者が余りにも
多くいることを知るにつけ、今の司法制度を変えるための運動にも
参加させていただいております。
 この告発は私の無実を証明するためのものではなく、
故郷森町の将来を考えての告発であることを、最初に申し上げておきます。
 同封の控訴趣意書、上告趣意書にも詳しく記しておりますが、
この町は組合出身の社会党系の町長が10期37年間も続けていた
異常な町でした。
エジプトの大統領が30年間も大統領を続けていたことに
世界中が驚いておりましたが、それをさらに超える任期でした。
 それでも、良い町政をし、町民の人気があっての10期ならば
文句のつけようがありません。
その10期は「職員の、職員による、職員のための町政」でした。
役場の職員を堂々と選挙で動かし、その町長の選挙事務所に
役場の職員が白昼出入りするのは当たり前の状況だったそうです。
 そのようにして10期務めたその町長は官製談合で逮捕され晩節を貶したものでした。
しかし、役場の職員(労組役員)は私の前回の選挙でも、
堂々と公務員として禁止されている選挙に特定の人間の
投票依頼を繰り返していたのです。
 結果、私は落選し、労組が応援していた人物が当選しました。
あの小さな町で一番大きな事業所は役場です。
それもそこに大きな権限が集中しているのです。
17,000人の町で500人の職員が居り、OBの子供が役場の職員に
なっているということは、1000人以上の運動員がこぞって選挙活動したということです。
 誰が出ても勝てなかったことが分かりました。
私の場合は前町長が官製談合で辞職となったので、
一枚岩になれなくて、私が偶然当選しただけです。
 私はそのような現状を踏まえてしっかりとした捜査を行い、
起訴していただきたく思うのです。
あの町が疲弊したのも正常な選挙が行われなかったからと断言できます。
 宮崎を逮捕し他の職員と口裏を合わすことのないような
処置をして捜査に望んでいただきたいと要望します。
 私の時の大塚雄毅検事は最悪の司法官でした。
あのような悪人が出世してゆくのでしょうが、
それを許している今の司法は根本から変えなければなりません。
大阪地検の元検事前田恒彦の弁を借りると、
検察庁には善人は一人も居ないことになります。
荒井検事、あなたも検事になった時には、
世の中から悪を除去するために検事になられたと思いますが、
現実は違っていたのではないでしょうか?
私は大塚雄毅に見事に嵌められました。
当時は司法のことが分からずにやられ放題でした。
今なら、私の主張も少しは言えたのでしょうが、
司法に無知のために残念なことになりました。
 その私が落ち込んでいるのではないかと思われるかもしれませんが、
私は新しく事業に挑戦し益々盛んに日々を送っております。
 ただ心残りなのは、故郷森町が一部の人間のためだけの町に戻ってしまったことです。
そのような意味からも荒井検事には捜査をしっかりやっていただき、
起訴をして頂きたくお願いを申し上げるものです。
取り急ぎ、下記の書類を同封させていただきますので、
宜しくお願い申し上げます。
謹白

同封書類
1. 上告趣意書
2. 控訴趣意書
3. 職員と思われる人物から私へ送られた手紙のコピー。


このような内容の手紙を同封して送付しました。
この事件を起訴猶予にしたり、不起訴にしたら、検察審査会に訴える覚悟です。
前回の町有地売却の有印公文書偽造事件は検察審査会を検察はうまく逃げたが、今度はそうはさせません。
裁判所の検察審査会事務局長には、厳しく対応させていただきます。


こんな警察官も居た。

今日は私の股関節の手術の日である。
幼い時分、10歳の時に私の股関節はペルトス氏病という
子供だけがかかる変形性関節炎にかかったのである。
股関節の骨頭の部分が欠けていき、痛みを併発する病気である。
小学校4年生の時で登別温泉に住んでいた時でした。
父親がギブスで股関節を固定した私をおんぶして家まで
運んでくれたのを今でも覚えている。
その後、この股関節は結核性関節炎になり小学校6年生の時には
痛みも止まり、胡坐はかけないが普通の生活がおくれるように
なっていた。
しかし、50歳の声が聞くようになってから、また痛みが併発し
痛み止めを服用していた。
この度、股関節に人口関節を移植して痛みを完全にブロックして
くれる名医と出会い今日手術の予定である。
私にすれば記念すべき日である。

そんな記念すべき日に、FACEBOOKを見ていたら
真実を貫いた警察官のYOUTUBEと出会った。

https://www.youtube.com/watch?v=IbFJ0oHL2dY&feature=youtu.be

これを見ていて、私を陥れた森警察署の前署長、そして取り調べに
当たった刑事、捜査官はこのような組織で仕事をしたのだと
今更ながらに理解できた。
前署長の浅野眞邦の手柄どりにより、私を逮捕、留置したと思っていたが
浅野も組織の単なる駒であり、ある意味、彼も被害者なのかと
思っているところである。

日本の司法の出鱈目さに憤りを感じるものである。

上告趣意書

平成25年(あ)第1617号

事件名 公職選挙法違反 平成24年10月14日施行(森町長選挙)

被告人 佐藤 克男

上 告 趣 意 書

平成25年12月26日

最高裁判所第三小法廷 御中

主任弁護人 錦 織 淳
弁 護 人  新 阜 直 茂
弁 護 人  磯 貝 朋 和

被告人に対する公職選挙法違反被告事件について,上告の趣意は,次のとお
りである。

2
目 次

第1 はじめに ................................................6

第2 原判決の問題点 ..........................................7
1 全く説得力を欠く理由不備な判決 ............................7
2 審理不尽による重大な事実誤認 ..............................7

第3 本件事件の背景事情及び本質 ..............................8
1 被告人の町長就任前の森町の状況と被告人の初出馬 ............8
 ⑴ 37年間の長期政権による腐敗と閉塞感 ....................8
 ⑵ 前町長辞職に伴う初出馬及び初当選 ........................9
2 被告人による町政の抜本改革と抵抗勢力との闘い ..............10
 ⑴ 財政改革 ................................................10
 ⑵ 職員の意識改革 ..........................................10
 ⑶ 産業と町の活性化 ........................................12
 ⑷ 抵抗勢力との闘い ........................................13
3 職員に対する電子メールの継続的送信 ........................13
4 本件選挙に対する被告人の考え ..............................14
5 被告人の落選及び検挙 ......................................16
6 検察及び警察による不当な見立て捜査 ........................17
7 第一審判決は記録を精査せず検察追認 ........................18
8 控訴審も必要な事実取調べを経ないまま第一審判決を追認 ......19
9 本件事件の本質 ............................................19

第4 法定外文書頒布罪について ................................20
1 法定外文書頒布罪の構成要件 ................................20
2 「選挙運動のために使用する文書」の意義 ....................21
 ⑴ 選挙運動用文書の意義 ....................................21
⑵ 「選挙運動」の意義 ......................................22
3 「頒布」の意義 ............................................23
⑴ 「選挙運動として頒布」することの必要性 ..................23
 ⑵ 「選挙運動」と区別される行為類型 ........................24
 ⑶ 業務上の行為は「選挙運動」に該当しない ..................25
4 主観的要件(故意及び投票獲得目的) ........................26

第5 公務員地位利用選挙運動罪について ........................27
1 公務員地位利用選挙運動罪の構成要件 ........................27
2 被告人の行為が「選挙運動」に当たることが必要 ..............27

第6 本件文書は選挙運動用文書に該当しない ....................27
1 本件文書は選挙人に向けられた文書ではない ..................27
 ⑴ 本件文書は選挙人に向けられた文書ではない ................27
 ⑵ 原判決の判例違反 ........................................29
2 本件文書の意味内容に関する重大な事実誤認 ..................29
 ⑴ 原判決の重大な事実誤認 ..................................29
 ⑵ 冒頭部分 ................................................31
 ⑶ 第1項 ..................................................32
 ⑷ 第2項 ..................................................33
 ⑸ 第3項 ..................................................35
 ⑹ 第4項及び第5項 ........................................35
3 文書の目的と選挙運動用文書該当性との関係 ..................37
4 本件文書は選挙運動用文書に該当しない ......................38

第7 被告人の行為は選挙運動に当たらない ......................38
1 被告人の行為は業務上の行為である ..........................38
 ⑴ 被告人は「業務上の行為」として頒布したに過ぎない.........38
 ⑵ 原判決の重大な事実誤認 ..................................40
 ⑶ 原判決の判例違反 ........................................42
2 被告人の行為は選挙運動の客観的要件に該当しない ............43
 ⑴ 選挙運動用文書をほとんど使用せずに選挙運動をしていたこと 43
 ⑵ 本件電子メールは職員に対してのみ送信されていること ......45
⑶ 本件行為は投票獲得のため「必要かつ有利な行為」ではないこと 46
 ⑷ 原判決の重大な事実誤認 ..................................48
3 被告人には選挙運動の主観的要件がない ......................49
 ⑴ 被告人は投票獲得目的で本件電子メールを送信したものではない 49
 ⑵ 原判決の重大な事実誤認(投票獲得目的) ..................50
 ⑶ 原判決の重大な事実誤認(選挙運動の意思) ................52

第8 各証人の証言の信用性について ............................54
1 木村・澤口・濱野の各証言は信用できない ....................54
2 磯邉証言は信用できる ......................................54
3 原判決の重大な事実誤認 ....................................56

第9 被告人の行為は構成要件に該当しない ......................57

第10 正当業務行為による違法性阻却 ..........................57

第11 可罰的違法性(実質的違法性)不存在による違法性阻却 ....58
1 判例における可罰的違法性(実質的違法性)阻却 ..............58
2 本件行為は可罰的違法性(実質的違法性)を欠く ..............59
3 原判決の判例違反 ..........................................59

第12 被告人は無罪 ..........................................60

第13 量刑不当 ..............................................60
1 国民主権における選挙権及び被選挙権の重要性 ................61
2 インターネット選挙運動の解禁 ..............................61
3 本件における情状 ..........................................62

第14 審理不尽等 ............................................63
1 原審による不当な審理の打ち切り ............................63
2 控訴審における事実取調べの規律について ....................63
3 やむを得ない事由について ..................................64
 ⑴ 福田繁幸の証人尋問請求について ..........................64
  ア 控訴趣意書提出までの調査状況 ..........................64
  イ 福田の事情聴取 ........................................65
  ウ 「やむを得ない事由」について ..........................66
 ⑵ その他の証拠調べ請求について ............................69
4 必要性について ............................................70
5 小括 ......................................................72

第15 結論 ..................................................72


第1 はじめに

第一審判決(函館地方裁判所)は,森町長であった被告人が森町職員に
対して電子メールを送信した行為について,公務員の地位を利用して選挙
運動をするとともに,法定外選挙運動文書を頒布したものとして,禁錮6
月執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。
これに対して,被告人は,第一審判決を不服として控訴し,弁護人らは,
原審(札幌高等裁判所)において,被告人の本件行為は,何ら犯罪を構成
するものではなく,被告人は無罪であり,第一審判決には明らかな事実の
誤認及び法令適用の誤りがあるとして,第一審判決の破棄を求めた。
ところが,原審は,弁護人らが請求した重要な証拠調べ請求をすべて却
下し,何らの事実の取調べもしないまま弁論を終結し,その後の弁論再開
請求も却下した。その上で,原判決は,弁護人らの主張を全く聞き入れず,
第一審判決を是認し,被告人の控訴を棄却した。
しかしながら,後述のとおり,原判決は,最高裁判所の判例と相反する
判断をしており,刑事訴訟法第405条第2号により破棄されなければな
らない。
また,上記のとおり,原判決は,必要な事実の取調べをしないまま審理
を終結しており,判決に影響を及ぼすべき法令の違反(審理不尽等)があ
り,その結果,判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認がある。さらに
は,その刑の量定も甚しく不当である。これらにより,原判決を破棄しな
ければ,被告人は公民権の停止という著しい不利益が課される結果となる
のであり,原判決を破棄しなければ著しく正義に反する結果となる。よっ
て,原判決は,刑事訴訟法第411条第1号ないし第3号の規定により,
破棄されるべきものである。

第2 原判決の問題点
1 全く説得力を欠く理由不備な判決
原判決の最大の問題点は,その結論もさることながら,その結論に至る
「理由」である。すなわち,原判決は,弁護人らが控訴趣意書(以下,特
に断りのない限り,控訴趣意補充書を含む。)において指摘した問題点に
ついて正面から答えておらず,全くの理由不備な判決である。原判決は,
弁護人らの主張をすべて排斥しているが,その主張を排斥する理由が余り
に具体性に欠け,さらには非論理的であり,全く説得力がない。また,そ
のような理由不備も相まって,結果として最高裁判所の判例にも相反する
判断をしている。
このことを逆に言えば,原審は,被告人を有罪にするだけの理由を見い
だせなかったということに尽きる。本書においては,まずこの点について
明らかにする。

2 審理不尽による重大な事実誤認
次に,原審は,刑事控訴審の事後審としての性格に過剰に拘泥するがあ
まり,必要な事実の取調べを怠り,弁護人らが請求した事実取調べ請求を
すべて却下して結審し,その後の弁論再開請求も却下した。
しかしながら,第二審としての刑事控訴審に求められる姿勢は,控訴審
の事後審としての性格に徒らに拘泥することなく,実体的真実の発見の見
地から,必要な事実の取調べを認めていくことである。このような控訴審
における審理のあり方については,元東京高等裁判所部総括判事である原
田國男「逆転無罪の事実認定」(平成24年・勁草書房)においても,
「たしかに,第1審でそれなりに有罪になっているのだから,第1審
で取り調べられた証拠を見ただけで「これは無罪だ」と直感するよ
うな事件はそうはない。見ただけで無罪というような事件が相当数
あったら,それこそ問題であろう。そうではない。控訴審でも被告
人や弁護人の主張を検討するのは当然であるが,結局無罪になる事
件は,控訴審で新たな取調べをした成果であることが多い」(同書22頁)
と指摘されているところである。このことについては,とりわけ本件のよ
うに多数の関係者が存在し,頒布された文書に多義的な解釈の余地のある
事件においては,控訴審における事実の取調べを広く認め,より多くの関
係者の証言や客観証拠をもとに事実認定をすべきことがより一層明らかで
ある。
原審は,このような姿勢に全く欠けており,弁護人らが請求した重要な
証拠調べ請求をすべて却下したのである。このような原審の審理方法は,
控訴審としての職責を放棄するものである。そして,原判決は,このよう
な著しい審理不尽により,重大な事実を誤認するに至ったものである。
そこで,以下では,本件事件の本質について改めて整理した上で,原判
決の問題点について具体的に明らかにする。

第3 本件事件の背景事情及び本質
1 被告人の町長就任前の森町の状況と被告人の初出馬
⑴ 37年間の長期政権による腐敗と閉塞感
被告人が町長に就任する以前の森町は,10期約37年間もの長きに
わたり,湊美喜夫元町長一人による長期政権が続いていた。
このような長期政権の影響により,森町の町政は腐敗し,無駄な支出
が垂れ流され,財政も逼迫した状態となっていた。平成20年の森町長
選挙の前後では,森町は,道内では財政再建団体に指定された夕張市に
次いで4番目に財政の厳しい町として何度も報道されるということがあ
った。
もっとも,このような状況下にあっても,自治労組合に守られた町職
員は,道内の他の市町村と比較してもトップクラスの高額な給与を受け,
その反面として,選挙においては既得権維持のため集票マシーンとして
公然と活動する有り様であった。旧態依然とした利益誘導型政治の典型
である。このような状況下にあっては,組合による強力な統制により,
個々の職員にとってみれば,思想信条の自由,政治活動の自由,投票の
自由がないに等しいのが常態だったのである。
また,町職員の町民に対するサービスも典型的な「お役所仕事」であ
り,町民に対するサービス業であるという認識が全く欠けており,町民
からの信頼も得られていない状況であった。
さらには,森町の産業は衰退し,町民も自信をなくしていた。自分の
町に誇りが持てないという閉塞感が蔓延していたのである。
このような町民の不満と閉塞感が蔓延する状況の中で,湊元町長は,
森町発注の建設工事をめぐる官製談合事件で逮捕され,任期途中で町長
を辞職することとなった。この現職町長の逮捕によって,森町民の森町
行政に対する不信感は頂点に達したのである。

⑵ 前町長辞職に伴う初出馬及び初当選
このような状況下で,被告人は,平成20年の町長選挙に出馬した。
被告人が立候補を表明する前には,既に,現職の町議会議員と,現職
の副町長が立候補を表明していた。故郷とはいえ長く森町を離れていた
被告人の知名度はゼロに等しい状況であり,被告人は勝てるわけがない
と言われていた。
もっとも,被告人は,自らの故郷である森町を何とか立て直したいと
いう思いで,町長選に立候補した。被告人は「しがらみのない町づくり」
を一番目の公約に掲げて選挙戦を戦った。このような公約を掲げられる
のは民間出身の被告人のみであり,森町民の民意にも合致するものであ
った。
とはいえ,知名度ゼロの被告人は,急遽結成された後援会の支援を受
けつつ,森町を歩き回るいわゆる「ドブ板選挙」をするしかなかった。
もちろん,その中では,選挙運動用文書等の法律で許された武器を最大
限に活用して選挙戦を戦った。
その結果,次第に,民間出身の被告人に注目が集まることとなり,被
告人は,見事当選を果たした。被告人の当選は「森町を変える」という
森町民の強い民意の現れだったのである。

2 被告人による町政の抜本改革と抵抗勢力との闘い
町長に就任した被告人が実行した町政の抜本改革は,大きく分けて3つ
の政策で成り立つ。すなわち,〆眄改革,⊃Πの意識改革,産業と
町の活性化である。

⑴ 財政改革
まず,財政改革については,徹底した歳出削減を行った。具体的には,
いわゆる役場価格の見直し(納入価格の適正化),職員の給与削減,町
長報酬の削減,議員報酬の削減,議員定数の削減等をはじめとして,無
駄な支出を徹底して削減した。また,新たに「収納管理課」を設置し,
収納対策を強化するなど,歳入確保のための様々な施策も実施した。
これらの財政改革の結果,被告人の町長就任時である平成20年10
月19日には約1600万円しかなかった財政調整基金は,被告人の退
任時である平成24年10月18日には約18億4300万円にまで回
復した。被告人は「財政調整基金を3年で10億円にすること」を公約
としていたが,公約を遙かに超える成果をあげることができたのである。

⑵ 職員の意識改革
次に,町職員の意識改革である。被告人は,選挙戦を戦う中,多くの
町民から,町職員について「生意気で威張っている」などという町職員
の態度姿勢に関する不平不満の訴えを聞いた。これらの町民の生の声を
聞き,被告人は,森町を変えるためには,森町行政を執行する職員自身
が変わらなければならないと確信するに至った。被告人は「役場職員の
対応を2か月で変える」ことを公約とした。
被告人は,町長就任後,直ちにこの改革の実行に着手した。すなわち,
被告人は,職員に対する最初の訓示において,「皆さんが「町民」「住
民」と思っている方達は「お客様」です」と述べ,意識改革の重要性を
訴えた。民間出身の被告人ならではの訓示である。
また,その後も,被告人は,職員の意識改革・人材育成のための様々
な施策を実施した。具体的には,これまでなかった森町職場理念の制定
や,朝礼の導入,職員の意識啓発のための職員研修等を実施した。その
ほかにも,被告人は,町民に対する接し方から,職員同士の挨拶,電話
の取り方に至るまで徹底して指導した。以上の改革も民間出身の被告人
でなければできないものであった。職員に対する毎週1回の電子メール
の送信は,これらの意識改革の一環でもあった。
これらの様々な方策の結果,町民からは,森町職員が変わったとの声
が多数聞かれるようになった。その象徴的エピソードの一例は,被告人
から全職員に対する平成21年7月21日の電子メール(第一審弁5)
である。後述するように,このメールは,本件で問題とされたメールと
同性質のものであるが,このメールの中で,被告人は,突発性難聴によ
り特定疾患医療受給者となった町民が,町役場を訪れた際,保健福祉課,
税務課の職員が親身になって相談に乗ってくれたことを感謝する手紙が
届いたことを紹介し,その町民からの手紙を添付している。その手紙に
は,次のような記述がある。

「佐藤町長主任(ママ)以来、職員の皆さんの明るさが目に付きます。明
るいということは親しみやすく、親切がこもることです。普段そう
感じておりましたが、今回とりわけ強烈にそう感じました。困惑の
限りの町民に温かい手をのべて貰える幸せを報告したいと思い、キ
ーボードに向かいました。
教職40年中、森町2校勤務、いずれも校舎新築、退職後、役場
休日の日直経験あり、合併前は選挙管理委員(現在補充員)三菱U
FJ信託銀行嘱託5年の経験があり、森町役場現職の皆さん、退職
の皆さんにお世話になった身です。そんな私でも、新町長後の役場
の雰囲気、職員の明るさの変化を明確に感じます。
それに比べて、渡島の保健所のみなさんの態度は、素っ気ないで
すね。書類の何処の部分の数字を入れるとよいでしょうかと、質問
しても返答がありません。」

以上の町民からの手紙は,被告人による職員の意識改革の成果を端的
に物語っている。このようにして,職員の意識改革は,少なくとも表面
的には,着実に浸透していったのである。

⑶ 産業と町の活性化
以上のほかに,被告人は,森町の成長戦略として,産業と町の活性化
を掲げた。停滞する森町の産業を復興するとともに,町全体を活性化さ
せ,町民の自信と誇りを取り戻すための政策である。
まず,産業活性化策としては,被告人自身が全国各地を飛び回り,森
町の特産物等のPR活動をしたほか,大都市圏への直販売ルートの確立
等を行った。
また,産業と町の活性化を目的として,毎月1回,「食KING市」
という朝市を開催した。食KING市は,多いときには1日4000人
の来場者があり,1日わずか3時間で200万円以上の売上があがるな
ど,道内でも指折りの朝市となった。人口約1万7000人の森町では,
これまで考えられなかったような規模のイベントである。
これらにより,森町は,活力を取り戻すに至ったのである。

⑷ 抵抗勢力との闘い
以上のようにして,被告人は,町政改革を着実に実行していったが,
これらの改革は痛みを伴うものであり,その実行は,様々な抵抗勢力と
の闘いでもあった。
例えば,職員の給与削減については,労働組合の強い抵抗があり,議
員報酬及び議員定数の削減については,町議会からの猛烈な反発があっ
た。また,職員の意識改革についても,前述のとおり,表面的にはある
程度浸透し,町民からの好意的な反応も見られるようになっていたが,
特に組合職員を中心として様々な反発があった。このことについては,
被告人自身も,後述する継続的なメール送信に関して,
「素直に喜んでいただいた方もいるでしょうし,又は,俗にうざいと
いうんでしょうか,そういう目で見てる職員も,それは中にはいる
だろうと,そういう思いでおりました。教育というのは,非常に時
間が掛かる問題でございます。ですから,これは続けることが大切
なことだと,私はそのように思って,やっておりました。」(被告
人第一審第 4 回公判供述 8 頁)
と述べている。
ところで,以上のような町政改革については,いずれも被告人のリー
ダーシップにより進められたものであるが,被告人が「独断」で進めた
ものではない。例えば,職員の給与削減については,職員組合との労使
交渉を経た上で職員組合の同意を得て,町議会の決議により,職員給与
条例を改正して実施されたものである。被告人の改革は,何ら「独裁」
ではなく,様々な抵抗勢力との粘り強い「交渉」と「説得」により実現
したものであった。

3 職員に対する電子メールの継続的送信
前述のとおり,被告人は,職員の意識改革を行っていたが,その手段の
一つとして,全職員に対する一斉送信のメーリングリストを使用し,概ね
毎週1回,パソコンを使用する全職員に対して,電子メールを送信してい
た。
この電子メールの目的は,町長の考えや業務に関する連絡事項,職員と
してのあるべき姿勢等について,町長が全職員に対して直接メールするこ
とにより,町役場内でのダイレクトな情報共有を図るとともに,町職員の
意識改革を行おうとするものであった。
例えば,前述した特定疾患医療受給者の町民からの感謝の手紙について
いえば,これまでの森町役場であれば,せいぜい手紙が届いた課で話題に
なる程度であったであろう。これに対して,被告人は,全職員への一斉送
信の機能を利用して,全職員で広く情報共有しようとしたのである。すな
わち,被告人は,このようなメールを全職員で共有することにより,町民
からの声をダイレクトに全職員に広め,町職員としてのあるべき姿を再確
認させるとともに,職員の仕事に対する誇りとモチベーションの向上にも
繋がると考えたのである。
被告人による全職員への電子メールの通数は,本件電子メールを除けば,
4年間で187通にも及ぶ(第一審弁5。なお,山形巧哉によるテストメ
ール1件を除くと186通となる。)。本件電子メールも,このような職
員に対する継続的メールの一環として送信されたものにほかならないので
ある。

4 本件選挙に対する被告人の考え
以上のようにして,被告人は,2期目の本件選挙を向かえた。
被告人は,これまでの4年間の町政改革の確固たる実績からすれば,間
違いなく当選すると確信していた。そして,そのような思いから,被告人
は,本件選挙においては,1期目の選挙のようにあらゆる手段を講じた選
挙運動をするのではなく,最低限の体制と資源で選挙戦を戦うこととした。
いわば「エコ選挙」である。
その一環として,被告人は,本件選挙において,選挙運動用文書につい
ては,最低限の通常葉書を使用したのみで,法定ビラや新聞広告等も一切
使用せずに選挙戦を戦った。被告人は,これらの選挙運動用文書等を頒布
しなくとも本件選挙には勝てるものと認識していたのである。
被告人の上記の選挙運動用文書の作成・頒布についての姿勢は,各種・
各級の選挙を通じ,いかなる候補者にも決して見られない(いわゆる泡沫
候補は別であるが)希有なるものであるといわなければならない。圧倒的
多数の候補者は,法定文書の種類・形態の制限,枚数の制限を桎梏と感じ,
可能な限り多くの種類及び枚数の文書を頒布したいと切望しているからで
ある。このことを確認することは,本件において極めて重要である。
また,被告人は,その政治的信条として,次の選挙ことは一切考えずに,
やるべき改革を着実に実行すべきという考えがあり,また現実にもそれら
を断行してきたという自負があった。この点に関しては,被告人が本件選
挙前である平成23年5月31日に発行した著書「組織を変えるマネジメ
ント」において,次のような記述がある。
「国政の政治家にも地方の政治家にも言えることは、「私心の塊」だ
ということです。その最悪の「私心」は次の選挙で受かりたいとい
う私心です。そのためにできもしないことを公約に掲げてみたり、
民衆に媚を売ったりするのです。実に醜い政治姿勢だと思います。
今やらなければ手遅れになるとわかったら、次の選挙で自分が当選
しようがしまいがやるべきなのに、民衆に媚を売ってやらないのです。
私は次の選挙のために媚を売るようなことをしたら、それだけで引
退だと決めて挑戦しました。だから今でも、「私は次の選挙に当選し
ようがしまいが町民のため、そして町のためを考えて政治に取り組み
ます」と明言しています。」(同書 230 頁)
また,被告人は,公判廷においても,次のとおり供述している。
「私は,この選挙を間近に控えて,職員に私が投票依頼をするという
ことは,私は恥ずかしいことであると,職員にそういう投票依頼す
る,おもねるということ,また擦り寄るというようなことは,私の
考え方にはございません。」(被告人第一審第 4 回公判供述 22 頁)
「もし,そのようなことをして私が当選しても,職員に対して厳しく
接したり,そして私の思いが伝わらない,自分の思ったような行政
ができない,こちらのほうが私は大きいと思いまして,そういうこ
とは,私はできない。そして前の町政のような長いロングランの3
7年間も続くような町政よりは,短くても私の思いをやれる,そう
いう政治を私は自分で意識してきましたので,選挙間近になって職
員に投票依頼をするなんてことは,私の,自分の生き方からいって
も,全く沿わないと,そのように思っております。」(同上)
これらの考えは,被告人にとって何ものにも代え難い政治信条であり,
常日頃から対外的にも表明していたものである。本件で被告人が問擬され
ているのは,職員に対する選挙運動(投票依頼)であるが,被告人にとっ
ては,そのような行為は,職員に対して「媚を売る」行為,あるいは「お
もねる」行為にほかならず,被告人の政治信条に反する行為なのである。
そのような行為を被告人がするはずがないのである。

5 被告人の落選及び検挙
被告人は,以上のような考えで本件選挙を戦ったが,結果的には,わず
か903票の僅差で落選した。有権者数1万4500人余の小さな町で,
町議会や町職員を敵に回したことが原因ではないかとの声もあるが,「次
の選挙のことは考えずにやるべきことをやる」と明言して改革に取り組ん
だ被告人は,その結果について真摯に受け止めていた。
ところが,本件選挙後まもなくして,被告人は,突如として逮捕される
こととなった。被告人の逮捕については,「二代連続の町長逮捕」という
ことで,町役場への家宅捜索の状況等が大々的に報道された。
被告人にとっては,正しく寝耳に水の出来事であったが,その後,接見
禁止の状況下で長期間勾留されることとなった。

6 検察及び警察による不当な見立て捜査
近時,検察や警察による「見立て捜査」あるいは「ストーリー捜査」が
原因となり,様々な冤罪事件が問題となっている。中には検察の見立てに
合わせるため,証拠を捏造するという事件まで発生しているという有り様
である。
本件もこれらの事件と同様に,捜査機関による不当な見立て捜査が行わ
れた事件である。すなわち,本件電子メールは229名宛てに送信され,
192名に受信確認されているが(第一審甲8),起訴の対象となったの
は,そのうち83名分である。これは全送信先のわずか36.2%(受信
確認者の43.2%)に過ぎない。被告人の本件行為は電子メールの送信
行為なのであるから,送信行為自体は,電子データにより客観的な立証が
比較的容易であるにもかかわらず,起訴されたのは,そのうち半分にも満
たない程度にとどまっており,むしろ起訴の対象となっていない職員の方
が多数である。
これらの事実から明らかなことは,検察官は,自らのストーリーに沿っ
て忠実に供述しうる者のみを起訴しているということである。本件事件で
は,メールを受信した全職員に事情聴取ないし取調べを実施しているが,
実際には,事情聴取ないし取調べを受けたものの,検察警察のストーリー
に沿わない供述をしたため,供述調書はもとより答申書さえも作成されて
いない職員も多数存在するのである(第一審で証言をした磯邉吉隆がその
典型である。)。
また,供述調書が作成された職員の中でも,実際には自分の認識と異な
る供述調書への署名を求められた職員もいる。公職選挙法違反のような規
範的評価を要する犯罪,それも選挙買収のような明白な犯罪ではなく,単
なる文書違反等の犯罪については,殺人罪のように誰が見ても犯罪になる
という犯罪類型(いわゆる自然犯)ではない。このような犯罪類型(いわ
ゆる法定犯)においては,捜査機関から「これは犯罪である」と断言され
ると,そのように断言された者は,当該行為が犯罪であることを前提とし
て供述してしまうことが多いものといえる。すなわち,捜査機関の誘導に
乗せられやすい犯罪類型と言えるのである。ましてや,森町職員は,給与
を減額されるなどして,被告人に不満を持ち内心反発していたというので
あるから,なおさら誘導に乗りやすいものといえる。
さらには,現実にも,控訴審における新たな弁護活動の中で,一部の職
員の供述調書が偽造又は変造されたのではないかということも明らかとな
ってきた。このことは本件の本質を理解する上で極めて重要な問題である
ので,詳しくは後述する。
このようにして,検察及び警察は,自らのストーリーに沿う形で職員ら
を誘導し,その供述等を収集し,被告人を起訴するに至ったのである。

7 第一審判決は記録を精査せず検察追認
本来であれば,以上のような捜査機関による見立て捜査が行われたとし
ても,裁判所において記録を丹念に精査し,無罪判決を言い渡すことによ
り,無垢の被告人は,救済されるべきものである。
しかしながら,誠に遺憾ながら,第一審にはその姿勢が全く見受けられ
ず,結果的には,単なる捜査機関の追認機関として機能していたと評せざ
るを得ない。
その現れとして,第一審判決は,これだけ大型の否認事件であるにも関
わらず,判決文中では「選挙運動のために使用する文書」や「頒布」,「選
挙運動」の一般的定義を述べた上で,簡素な当てはめをしただけで,被告
人を有罪と結論づけている。余りにも説得力を欠く判決であると評せざる
を得ない。

8 控訴審も必要な事実取調べを経ないまま第一審判決を追認
被告人としては,上記のような第一審判決には到底承服できないことか
ら,控訴を申し立て,新たな弁護人のもとで,主張立証を再構成し,控訴
趣意書を提出するとともに,新証拠について事実取調べ請求及び証拠開示
の申立てをした。
さらに,控訴審第一回公判の直前になって,実際にメールを受信した町
職員の一人(福田繁幸)に事情聴取することができ,同人が署名した供述
調書が偽造又は変造されたおそれがあることが判明したことから,控訴審
第一回公判において,かかる職員の証人尋問請求をし,同人の真正な供述
証拠の開示を求めた。
ところが,原審は,弁護人らの追加立証を一切認めず,事実取調べ請求
をすべて却下し,直ちに弁論を終結した。弁護人らは,かかる審理方法に
ついて強く抗議するとともに,弁論再開を請求したが,原審はこれも却下
した。そして,原判決は,弁護人らの主張をすべて排斥し,第一審判決を
追認する判決をしたのである。
このように,原判決は,弁護人らの主張に全く耳を傾けず,第一審判決
を是認する判決をしたのである。その意味で,原審は,その判決の結論及
び理由もさることながら,その審理のあり方についても極めて問題があり,
誠に遺憾ながら,控訴審としての職責・機能を全く果たしていなかったと
言わざるを得ない。

9 本件事件の本質
以上のとおり,本件は,前職の町長を検挙するという大型事件で手柄を
得たいという眼目の下で,検察・警察による不当な「見立て捜査」ないし
は「ストーリー捜査」が行われ,被告人に不満反発していた職員を不当に
誘導して,そのストーリーに沿う供述等をさせ,それらの証拠を基礎とし
て公訴が提起された事件である(なお,森警察署は,第一審判決の前に,
被告人の検挙に関して北海道警本部より表彰を受けたようである。)。
第一審判決は,十分に記録を精査せず,結果的には,結論ありきの単な
る検察の追認機関として機能したため,様々な事実を誤認し,また法令の
適用を誤り,被告人に有罪を言い渡した。また,原判決も,控訴審として
の機能を全く果たさず,このような第一審判決を是認したものである。こ
のような原判決が破棄されなければ著しく正義に反することは余りにも明
らかである。
また,万が一,原判決がこのまま確定することとなれば,被告人は,そ
の執行猶予期間である5年間にわたり公民権(選挙権及び被選挙権)を停
止されることとなる。かかる結果は,被告人が行ってきた4年間の町政改
革を否定する結果となるだけでなく,被告人の政治生命をも奪う行為であ
り,断じて許されないものである。
本件事件の審理判決に当たっては,このような本件事件の本質を踏まえ
て判断する必要がある。

第4 法定外文書頒布罪について
1 法定外文書頒布罪の構成要件
法定外文書頒布罪(公職選挙法第243条第1項第3号)が成立するた
めには,公職選挙法第142条第1項所定の通常葉書及びビラ以外の「選
挙運動のために使用する文書」(以下「選挙運動用文書」ということがあ
る。)を「頒布」することが必要である。
なお,法定外文書頒布罪の成否が問題となる選挙運動用文書(すなわち
本件文書)については,控訴趣意書と同様に,被告人が平成24年10月
10日午前7時34分頃に第一審判決別紙一覧表記載の森町職員に宛てて
送信した電子メール(第一審甲5資料5・6。以下「本件電子メール」と
いう。)のうち,本件電子メールの添付ファイルとして送信された「職員
からの手紙001」と題する文書画像データをもって「本件文書」と定義
することとする。すなわち,「コメントは避けます」などと記載された本
件電子メール本文は「本件文書」を構成せず,あくまで「頒布」の一内容
である。

2 「選挙運動のために使用する文書」の意義
⑴ 選挙運動用文書の意義
「選挙運動のために使用する文書」(選挙運動用文書)とは,「文書
の外形内容自体からみて選挙運動のために使用すると推知されうる文
書」をいうものとされ,文書の外形内容自体からみてこれに使用すると
推知しえない文書は,たとえそれが現実に選挙運動のために使用された
としても,法定外文書頒布罪に該当するものではないとされている(最
高裁昭和 36 年 3 月 17 日判決・刑集 15 巻 3 号 527 頁)。
そして,上記最高裁判決にいう「推知されうる文書」の意義について
は,文書の外形内容自体から見て,その文書が選挙運動に使用される「可
能性」があるというだけでは不十分であるが,選挙運動に使用される「必
然性」を要するとするのはもとより行き過ぎであり,いわば選挙運動に
使用される「蓋然性」が認められれば足りると解説されている(最高裁
判所判例解説刑事篇昭和 44 年度 121 頁)。
すなわち,公職選挙法で規制されている選挙運動用文書とは,「選挙
に関する何らかの文書」ではなく,あくまで「選挙運動のために使用さ
れる蓋然性のある文書」であり,論理的抽象的な可能性を想起して,選
挙運動に使用されることがあり得るというだけでは,「推知されうる文
書」とは認められないのである。このことは,公職選挙法が,頒布が規
制される文書について,「選挙に関する文書」ではなく,「選挙運動の
ために使用する文書」と規定していることからも明らかといえる。
上記の最高裁判所判例解説においては,選挙運動に使用される「蓋然
性」のある例として,最高裁昭和36年3月20日判決(刑集15巻3号
540 頁)が選挙運動用文書と認定した「『全国区参議院議員候補者某選挙
対策委員』という肩書を付した名刺」を掲げている。このような名刺は,
確かに,明確な投票依頼の文言が記載されたものではなく,選挙運動に
使用される「必然性」があるとまではいえないであろう。しかしながら,
この名刺は,その外形内容自体からは,「参議院議員選挙の全国区で立
候補した某候補者の選挙対策委員」であることを示す名刺であり,某候
補の選挙運動(選挙対策活動)の一環として,選挙人に対して直接交付
することが予定されている文書といえる。まさに,選挙運動に使用され
る「蓋然性」のある文書と評することができる。
これに対して,本件文書は,後述のとおり,このような文書とは全く
性質を異にする文書なのである。

⑵ 「選挙運動」の意義
選挙運動用文書の意義が「選挙運動のために使用すると推知されうる
文書」であるとすれば,次に「選挙運動」の意義を明らかにする必要が
ある。
この点について,最高裁昭和38年10月22日判決(刑集 17 巻 9 号
1755 頁)は,「同法における選挙運動とは,特定の選挙の施行が予測せ
られ或は確定的となった場合,特定の人がその選挙に立候補することが
確定して居るときは固より,その立候補が予測せられるときにおいても,
その選挙につきその人に当選を得しめるため投票を得若くは得しめる目
的を以って,直接または間接に必要かつ有利な周旋,勧誘若くは誘導そ
の他諸般の行為をなすことをいう」と判示している。
上記最高裁判決による定義は,同判決において「大審院以来判例の趣
旨とするところでもある」とされるとおり,大審院以来の我が国の「選
挙運動」の定義に関する確立した判例法理ということができる。
上記の「選挙運動」の定義については,様々な観点からの分析整理等
がされているが,一般的には,次のような構成要素に整理することがで
きる(小林充「選挙犯罪の研究」(司法研究報告書第 22 輯第 3 号)34 頁参
照)。
〜挙が特定されていること
候補者が特定されていること
E衂爾鯑惜瑤脇世気擦襪燭瓩旅坩戮任△襪海函陛衂竺容戚榲)
づ衂爾鯑惜瑤脇世気擦襪燭瓩膨樟榾瑤牢崟椶防要かつ有利な行為
であること
チ挙人に向けられた行為であること
上記のうちは主観的要件であり,その余は客観的要件であるという
ことができる。
以上より,特定の文書が選挙運動用文書に該当するというためには,
上記のような意味における「選挙運動」のために使用する「蓋然性」の
ある文書であることが必要といえる。
そして,後述のとおり,上記各最高裁判例によれば,本件文書は選挙
運動用文書に該当しないにもかかわらず,原判決は,これと相反する判
断をしている。したがって,原判決は上記各最高裁判例に反するものと
して破棄されなければならない。

3 「頒布」の意義
⑴ 「選挙運動として頒布」することの必要性
公職選挙法第142条第1項は,法定外の選挙運動用文書については,
単に「頒布することができない」と規定しているところ,最高裁昭和4
4年3月18日判決(刑集 23 巻 3 号 179 頁)は,「公職選挙法142条
1項は,同条項各号所定の通常葉書を除いて,前記説示の意義における
文書を選挙運動として頒布することを禁止したものであり,これを選挙
運動の準備行為として頒布することまで禁止したものではないと解すべ
きである。」と判示した。
すなわち,同最高裁判決により,法定外の選挙運動用文書については,
「選挙運動として頒布」したかどうかが問題となることが明らかとなっ
たのである。

⑵ 「選挙運動」と区別される行為類型
公職選挙法第142条第1項の「頒布」の意義に関する上記の最高裁
判決からは,ここでいう「選挙運動」がいかなる意義を有するかが問題
となるが,この点については,法定外文書頒布罪において前述した最高
裁昭和38年判決のとおりである。
もっとも,上記最高裁判決の「選挙運動」の定義のうち,投票を得る
ために「直接」に必要かつ有利な行為にとどまらず,「間接」に必要か
つ有利な行為を含むとする点については,その解釈運用の如何によって
は,選挙運動のためにする内部準備行為等までをも広範に禁止すること
になりかねないとの批判があるところである(美濃部達吉「選挙罰則の
研究」45 頁等)。すなわち,例えば,選挙運動のための準備行為であっ
ても,投票を獲得するためには間接的に必要かつ有利な行為であること
は,上記の定義そのものからは否定できないからである。
しかしながら,判例上も「選挙運動の準備行為」なる観念を認め(最
高裁昭和44年3月18日判決),かかる行為は「選挙運動」に該当し
ないものと解している。このような観点から,「選挙運動」と区別され
る行為類型としては,一般的に,次のようなものが例示されている(渡
辺咲子「Q&A選挙と捜査[補訂]」23 頁)。
25
[候補準備行為
地盤培養行為
政治活動
じ絮膕餝萋
ゼ匕鯏行為
以上の各行為については,いずれも抽象的・観念的には,投票獲得の
ために間接的には必要かつ有利な行為と言わざるを得ない。
しかしながら,学説及び判例は,最高裁の「選挙運動」に関する上記
の定義を維持しつつも,「自ずから社会通念からくる合理的限界」があ
るなどとして,いずれも「選挙運動」に該当しない行為であるとしてい
る(前掲小林 33 頁参照)。上記の最高裁判所判例も,このような趣旨を
含むものと解される。

⑶ 業務上の行為は「選挙運動」に該当しない
ところで,上記の「選挙運動」と区別される行為については,上記
ないしイ呂△まで例示に過ぎず,結局は,「社会通念上許容されるべ
き行為かどうか」という観点から判断すべきものといえる。
この点で,美濃部達吉博士は,上記のような「内部の準備行為」や「普
通の社交的行為」のほかに,「業務上の行為」なる観念を指摘している
(前掲美濃部 45 頁等)。すなわち,美濃部博士は,刑法第35条が「正
当な業務による行為」は罰しないとしていることから,正当な業務に基
づく行為は,仮に結果から見て,特定人の当選に有利な影響を与え,又
はその他選挙運動の目的を達する手段となるものであっても,犯罪を構
成するものではないとする(同書 61 頁)。
美濃部博士が指摘するとおり,このような業務上の行為が「選挙運動」
と類型的に区別されるべき行為であることは社会通念上明らかである。
このことは,特に,本件被告人のように,地方公共団体の長をはじめと
する一定の行政上の要職にある者について想起してみれば明らかであ
る。すなわち,これらの要職にある者は,その職務の性格上,たとえ選
挙期間中であっても,選挙に関して自己の氏名を表示した文書を発した
り,選挙に関連して業務上の指示等をしたりすることは当然に予定され
ているものといえる。これらの要職者の行為は,抽象的な意味では,そ
の有権者や部下等に対して,自らの投票を獲得するために間接的に有利
な行為であるとしても,それらの行為は「選挙運動」として禁圧すべき
ものではないのである。
なお,正当な業務による行為については,刑法第35条により違法性
が阻却されるものと解されるが,前述のような「選挙運動」に係る判例
の定義及び趣旨に照らせば,そもそも正当な業務による行為は「選挙運
動」に該当せず,構成要件該当性が否定されると解するべきである。

4 主観的要件(故意及び投票獲得目的)
また,被告人の行為が「選挙運動」に該当するためには,選挙運動の客
観的要件のほかに,選挙運動の主観的要件を充足することが必要である。
選挙運動の主観的要件としては,投票を得る目的(当選目的)が必要で
あるとされている(前掲小林 35 頁)。この当選目的という主観的要件につ
いては,当選のために必要かつ有利な行為という選挙運動の客観的要件に
該当する行為であることを認識してその行為に出るだけで当選目的という
主観的要件が当然に充たされるものと解すれば,主観的要件を特に付加す
る意味がなく,かかる主観的要件は,客観的要件を超過するものと解さな
ければならないと解説されている(最高裁判例解説刑事篇昭和53年度12
頁参照)。
すなわち,選挙運動の主観的要件は,単なる客観的構成要件の認識(故
意)だけでなく,それを超過するより積極的な目的が必要とされているの
である。

第5 公務員地位利用選挙運動罪について
1 公務員地位利用選挙運動罪の構成要件
他方で,公務員地位利用選挙運動罪(公職選挙法第239条の2第2項)
が成立するためには,「公務員」がその「地位を利用」して「選挙運動」
をすることが必要である。
この点で,森町長であった被告人が「公務員」に該当することについて
は,弁護人としても争うものではない。

2 被告人の行為が「選挙運動」に当たることが必要
しかしながら,被告人が本件電子メールを送信した行為が「選挙運動」
に該当しなければ,同罪が成立する余地はない。
したがって,被告人の本件行為が「選挙運動」に該当するかどうかとい
う問題は,法定外文書頒布罪のみならず,公務員地位利用選挙運動罪の成
否についても共通する問題ということができる。
そして,この点について,後述のとおり,被告人の本件行為は「選挙運
動」に該当せず,公務員地位利用選挙運動罪も成立しないというべきであ
る。

第6 本件文書は選挙運動用文書に該当しない
以上の基本的整理を前提に,以下では,まず本件文書がそもそも選挙運
動用文書に該当せず,法定外文書頒布罪が成立する余地がないことを明ら
かにする。
1 本件文書は選挙人に向けられた文書ではない
⑴ 本件文書は選挙人に向けられた文書ではない
まず,選挙運動用文書に関する公刊された判例を散見すると,判例上
これまで選挙運動用文書として認定された文書は,そのほとんどが,そ
の文書の外形内容自体から,「選挙人に向けられた文書」であるという
ことができる。これは,前述のとおり,「選挙運動」が,特定の候補者
の投票を獲得することを目的として「選挙人に向けられた行為であるこ
と」からは当然の帰結である。
すなわち,これまで判例において選挙運動用文書として認定された文
書としては,
「無検印選挙運動用ポスター」のような選挙運動用文書であるこ
とが一見明白であるもの(最高裁昭和 36 年 3 月 3 日判決・刑集 15
巻 3 号 477 頁等)
■惴補の氏名を記入したA党役員連名の「推薦御依頼」や「推薦決
定通知」など投票依頼の趣旨が明示的には記載されていないもの
(最高裁昭和 44 年 3 月 18 日判決・刑集 23 巻 3 号 179 頁等)
に大別することができる。
このうち,選挙運動用文書に該当することは明らかであるが,△
ついても,選挙人に対して示すことが予定された文書であるという意味
においては,「選挙人に向けられた文書」であるということができる。
そして,これまでの判例では,そのことを前提として,それが投票依頼
の趣旨を含むのか等が論議されてきたものである。
これに対して,本件文書は,そのような「選挙人に向けられた文書」
とは全く性質を異にしている。すなわち,本件文書は,「選挙人に向け
られた文書」ではなく,専ら立候補者である被告人そのものに向けられ
た文書である。つまり,本件文書は,匿名の町職員から町長である被告
人に向けられた文書であり,町長である被告人に対する個人的な信書で
ある。そもそもこのような個人的な信書は,選挙運動のために使用する
蓋然性のある文書であるとは到底言い難い。
したがって,このような点から,本件文書は,その外形内容自体から
見て,選挙運動のために使用する蓋然性のある文書とはいえず,選挙運
動用文書には該当しないことが明らかである。

⑵ 原判決の判例違反
これに対して,原判決は,
「選挙運動文書に該当するためには,その文書が選挙人に向けられた
文書でなければならないということが,論理必然的に導かれるわけ
ではないから,所論は採用できない」
と判示し,弁護人らの主張を排斥している(原判決6頁)。
しかしながら,原判決は,なぜ論理必然でないのかについて全く明ら
かにしていない。上記でも述べたとおり,「選挙運動のために使用する
文書」とは,判例上「文書の外形内容自体からみて選挙 ●● 運動 ●● のために使
用すると推知されうる文書」と定義されており,「選挙運動」の概念が
その定義に組み込まれているのであるから,問題となる文書が「選挙運
動」の構成要素である「選挙人に向けられた行為」としての性質を有す
べきものであることは「論理必然」の帰結である。原判決はこのことに
ついて正面から答えず,単に「論理必然ではない」という結論だけを述
べるものであって,全く説得力を欠くものである。
いずれにせよ,選挙運動用文書が「選挙人に向けられた文書」である
ことにつき論理必然ではないとする原判決は,選挙運動用文書の定義及
び選挙運動の定義にかかる前記の最高裁判例の解釈について誤ったもの
であり,最高裁判例に相反する判断をしているものである。

2 本件文書の意味内容に関する重大な事実誤認
⑴ 原判決の重大な事実誤認
次に,弁護人らは,控訴趣意書において,本件文書の内容は,その外
形から正確に考察すれば,専ら,匿名の職員から,町長である被告人に
対し,他の職員が行っている違法行為(違法な選挙運動等)について報
告し,批判し,その是正を求めるものであることを明らかにした。
これに対して,原判決は,
「本件文書には,本件選挙に際し,その候補者の一人である被告人に
当選を得させるために投票を得又は得させる目的で,直接又は間接
に必要かつ有利な内容が表示されていることが明らか」
であると認定している(原判決4,7頁)。
しかしながら,以上のような認定は,明らかに経験則,論理則に反す
るものであって,判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認(刑事訴訟
法第411条第3号)があることが明らかである。
すなわち,控訴趣意書においても論じたとおり,本件文書を分析的に
考察し,その全体の趣旨を理解すれば,本件文書は,勤務時間中の選挙
運動(またはその準備行為等),公務員の地位を利用した戸別訪問,非
公開情報の漏洩を行った職員を批判する部分がそのほとんどを占めてお
り,その他の部分については,町長である被告人の人事・労働政策につ
き「職場の一員として」これを支持する旨の意見表明と上司である被告
人に対する社交的儀礼としての挨拶ないしねぎらいの言葉程度のものに
過ぎないというべきである。
また,本件文書が町職員に頒布された場合,本件文書から発せられる,
あるいは読み取れるメッセージは,「長いものに巻かれるな」というこ
とである。森町役場では,37年間にも及ぶ長期政権の中で,職員には,
「長いものには巻かれろ」あるいは「事なかれ主義」の考え方が蔓延し
ており,違法な選挙活動等と知りつつも,これを見て見ぬふりをしたり,
受動的に協力したりするということが続いてきたのである。被告人がや
ろうとした職員の意識改革は,このような「事なかれ主義」や「長いも
のには巻かれろ」の精神を打ち破り,公僕たる公務員としてあるべき姿
を目指すというものであった。しかし,残念ながら,わずか1期4年間
の被告人の町政改革では,町役場にこびり付いた37年の垢は取り切れ
ず,相変わらず公然と選挙運動等を行う職員がいたのである。しかしな
がら,そのような中にあって,本件文書作成者である勇気ある職員の行
動により,職員の中には心ある者もいることが明らかになり,そのよう
な流れが断ち切られようとしていた。すなわち,本件文書が職員に頒布
されることにより,職員に対し,「長いものには巻かれろ」の精神を打
破し,その良心を呼び覚まし,そのような不法な職員に加担することな
く自らの良心に従って行動することを促す効果があるのである。
いずれにしても,本件文書は,被告人自身に対して送付された個人的
信書であり,選挙人に対して,被告人への投票を呼びかけ,あるいは推
奨する旨の文言は一切記載されておらず,またそのような趣旨の文書で
もないことは外形上明らかというべきである。これに反する原判決の認
定には,経験則,論理則に反する重大な事実誤認がある。
さらに言えば,弁護人らは,控訴趣意書において,本件文書の内容の
解釈及び認定に関し,一審判決のような言葉尻を捉えた概括的な認定で
はなく,より分析的に考察すべきであることを指摘したにもかかわらず,
原判決の認定は,第一審判決とほとんど同様である。この点でも原判決
は,全くの理由不備なものであり,かつ極めて不合理ものである。
以下,原判決の重大な事実誤認について,控訴趣意書と同様に,本件
文書の項ごとに,具体的に検証する。

⑵ 冒頭部分
まず,本件文書の冒頭部分について,原判決は,
「冒頭部分では,「町長選挙が近づくにつれこのままでいいのかと
思いました」との記載があり,本件選挙に関連して本件文書を作
成したことが明示され」(ている)
旨を判示している(原判決6頁)。
しかしながら,前述のとおり,選挙運動用文書とは,およそ「選挙に
関する何らかの文書」ではなく,「選挙運動のために使用する文書」な
のである。したがって,本件文書の作成の動機,経緯において本件選挙
が関連していたとしても,そのことが直ちに選挙運動用文書としての認
定に結びつくものではない。すなわち,この冒頭部分は,選挙運動用文
書との関係では無益的な記載である。
控訴趣意書においても論じたとおり,この冒頭部分から読み取れる事
実は,この文書を作成した職員は,被告人に直接メールを送ることとな
ると,その職員の氏名が明らかとなってしまうが,そのような勇気がな
いので,手紙で意見を申し述べる旨が記載されたものと言える。すなわ
ち,本件文書では,違法行為を行っている職員の具体的氏名が記載され
ていることから,作成者の氏名を明らかにすることにより,自らに危害
が及ぶことを恐れたものといえる。いずれにせよ,この冒頭部分から,
本件文書を選挙運動用文書であると認定する余地はない。

⑶ 第1項
次に,第1項について,原判決は,
「第1項には,本件選挙における被告人の対立候補を応援する動きを
批判する内容が」(記載されている)
「第1項では,「『森町を考える会』って一体何なのか私には判りま
せん。佐藤町長を落選させる人の集まりなんでしょうか」との記載
があり,本件選挙において被告人の対立候補を推薦する団体が設立
されたことを批判する趣旨が明示され」(ている)
と判示している(原判決4,6,7頁)。
しかしながら,上記の認定は,明らかに言葉尻を捉えた認定である。
すなわち,控訴趣意書においても論じたとおり,第1項については,第
1項の全体を通読すれば「仕事のことなら課内の打合せをする場所で良
いと思います。町長選挙が近いからそんなことを止めさせて下さい。」
とある部分に,その主眼があることが外形上明らかである。すなわち,
第1項で本件文書作成者が言わんとするところは,本来であれば,他の
職員にも見える課内のオープンな打合せの場所で打合せすべきところ
を,わざわざ別室(密室)を使用して打合せをしていることから,勤務
時間中に職員が選挙運動(あるいはその準備行為等)をしている疑いが
あるが,そのような行為は,町職員としてあるまじき行為なので,町長
として止めさせて欲しいというものといえる。
そもそも,地方公務員たる町職員には,職務専念義務(地方公務員法
第35条)があり,その勤務時間中に,選挙運動(あるいはその準備行
為等)をすることは許されない。上記第1項は,町長選挙が近いという
こともあるので,そのような行為は職員として厳に慎むべきであり,そ
のような職員を批判するとともに,本件文書作成者の職員から町長に対
して是正を求める意見が記載されているのである。
すなわち,本件文書の作成者は,あくまで町職員としてあるまじき行
為をしている職員を批判しているのであって,対立候補やそれを応援す
る行為そのものを批判しているものではないことが一見して明らかであ
る。この点で,原判決の証拠評価及び事実認定には重大な誤認がある。

⑷ 第2項
次に,第2項について,原判決は,
「第2項には,被告人の対立候補を応援する動きを批判するのみなら
ず,被告人の対立候補の立候補を疑問視するほか,被告人がそれま
で町長として行ってきた政策を評価する内容が」(記載されてい
る)
「第2項では,「何故,佐藤町長ではいけないのでしょうか。何故,
辞任した増田前副町長や途中で教育長を辞めた梶谷さんが立候補
しなければならないのでしょうか」との記載があり,本件選挙にお
いて被告人の対立候補が立候補したことを疑問視する趣旨が明示
され」(ている)と認定している(原判決4,7頁)。
しかしながら,控訴趣意書においても論じたとおり,第2項について
は,第2項全体を通読すれば,宮崎委員長が「執務時間が終わってから
の職場、家まで回っていると聞いています。たぶん私は断ることもでき
ず苦痛です。」とある部分に主眼があることが外形上明らかである。す
なわち,第2項には,職員労働組合の委員長である宮崎が,勤務時間終
了後に,公務員たる地位を利用して,職場や職員宅を戸別訪問し,選挙
運動をしていること,本件文書作成者は,そのような戸別訪問による投
票依頼を受けたくないが,自分には断る勇気がなく苦痛であるというこ
とが記載されている。
そもそも,公務員の地位を利用した選挙運動や戸別訪問は公職選挙法
において禁止されている行為であり,勤務時間終了後であっても,地方
公務員たる町職員がこのような行為をすることは許されない。第2項は,
このような職員の行為を批判し,町長に対して助けを求めるものである。
このような第2項の趣旨を正確に理解すれば,本件文書作成者は,被
告人の対立候補そのものを批判しているのではなく,違法な手段を用い
て選挙運動等をしていることを批判していることが一見して明らかであ
り,原判決の認定は,明らかに経験則,論理則に反するものである。
また,原判決が「被告人がそれまで町長として行ってきた政策を評価
する内容」と認定している点については,上記のとおり,第2項の趣旨
は,町職員が,公務員たる地位を利用して職場や職員宅を戸別訪問し,
選挙運動をしていることを批判する点に主眼があることからすれば,自
らの政治的意見を表明した上で,自分は,宮崎による戸別訪問等で自ら
の私生活の平穏を害されることなく,自らの信念に従って投票したいと
いう意思表示に過ぎないものといえる。この第2項が,選挙運動用文書
の認定の基礎となる余地のないことは明らかである。よって,この点で
も原判決の証拠評価及び事実認定には重大な誤認がある。

⑸ 第3項
次に,原判決は,第3項について,
「第3項では,「いずれにしても佐藤町長を陥れる職員がいることが
残念です」との記載があり,被告人を陥れようと画策する職員を批
判する趣旨が明示され」(ている)
と判示している(原判決4,7頁)。
しかしながら,そもそも第3項は,町長の反対派の議員らが町長批判
をする事項については,本来,議員の知り得ない情報に基づくものであ
り,これらは町職員からの情報漏えいによってもたらされた情報である
可能性が高いことを指摘し,そのような情報漏えいをした職員を批判す
るものといえる。
すなわち,本件文書の作成者は,被告人を陥れようと画策する職員を
批判しているが,その趣旨は,公務員としてのあるまじき行為をしてい
ることを批判するものであって,被告人の当選や応援を目的としたもの
でないことは明らかである。いずれにせよ,この部分が選挙運動用文書
の認定に繋がるものでないことは明らかである。
したがって,この点でも原判決の認定は,経験則,論理則に反するも
のである。

⑹ 第4項及び第5項
最後に,第4項及び第5項について,原判決は,
「第4項には,被告人がそれまで町長として行ってきた政策を評価す
る内容が,第5項には,被告人のことを応援しており,被告人が本
件選挙で当選することを願うという内容が」(記載されている)
「第4項及び第5項では,専ら,被告人がそれまで町長として行って
きた政策を評価し,被告人のことを応援しており,被告人が本件選
挙で当選することを願うという内容が記載されている」
と認定している(原判決4,7頁)。
しかしながら,第1項から第3項までの検討からも明らかなとおり,
本件文書は,全体として,匿名職員が町長に対して他の職員の違法行為
を報告し,批判し,その是正を求める趣旨の文書であるといえる。
したがって,以上のような本件文書全体の趣旨に照らすと,まず第4
項については,「年功序列」に捕らわれない人事をすべきであるという
本件文書作成者の人事政策・労働管理の方針に関する意見が表明されて
いるが,これは町政全体に関するものというよりも,むしろ町役場とい
う「職場の内部」のあり方についてのものである。また,第5項につい
ては,文末の結びの言葉として,上司である被告人に対する社交的儀礼
としての挨拶ないしねぎらいの言葉をかける程度のものに過ぎないとい
うべきである。いずれにせよ,この第5項の部分が,この匿名職員の町
長たる被告人に対する訴えかけの目的でないことは外形上明らかである。
いずれにせよ,本件文書の内容を把握するに当たり,この僅かな部分
の文字面を殊更に強調して選挙運動用文書であると認定するのは誤りで
あり,むしろ,本件文書は,全体として,匿名の職員から,町長である
被告に対し,他の職員が行っている違法行為(違法な選挙運動等)につ
いて報告批判し,是正を求める文書と認定するのが外形上自然であり合
理的であるといえる。
よって,これに反する原判決の認定には,証拠評価及び事実認定に関
する重大な誤認がある。

3 文書の目的と選挙運動用文書該当性との関係
なお,原判決は,第一審判決と同様に,選挙運動用文書の判断方法に関
し,
「選挙運動のために使用されることが,その文書の本来の,ないしは
主たる目的であることを要するものではない」
と判示している(原判決3頁)。
この判示は,最高裁昭和44年3月18日判決(刑集 23 巻 3 号 179 頁)
の判示を引用したものと解される。ただし,原判決では,本件文書の本来
の,ないしは主たる目的が何であったかについて認定しておらず,上記の
判示が本件への当てはめについて具体的にどのような論理的関係を有して
いるのかは判決文上明らかではない。
上記の判示は,その解釈運用の如何によっては,およそ選挙について何
らかの字句が記載されていれば選挙運動用文書と判断されかねないものと
も思えるが,上記最高裁判決の趣旨については,同判決の最高裁判所判例
解説(刑事篇昭和 44 年度 122 頁)において,
「いいかえるならば,その文書の本来の,ないしは主たる目的が,例
えば,選挙運動前の準備行為と見るべき諸活動に使用されることが
あるとしても,そのことは,その文書を「文書の外形内容自体から
見て選挙運動のために使用すると推知されうる文書」と認定するこ
とを妨げないということであろう。」
と解説されている。
すなわち,上記最高裁判決の趣旨は,当該文書が作成された主たる目的
が,事前準備行為等の選挙運動と区別されるものであるとしても,そのこ
と自体は,選挙運動用文書該当性の判断に影響を及ぼすものではなく,結
局のところは,文書の外形内容自体から考察し,選挙運動のために使用す
る蓋然性のある文書であるかどうかを判断すべきと述べているに過ぎない。
この点で,本件文書については,既に上記で述べたとおり,その文書全
体を外形から分析的に考察すれば,選挙運動のために使用する蓋然性のあ
る文書ではないことは明らかである。

4 本件文書は選挙運動用文書に該当しない
以上のとおり,本件文書は,最高裁判所の判例及び正確な事実認定を前
提とすれば,その外形内容自体から見て選挙運動のために使用すると推知
されうる文書に該当しないことが明らかである。よって,本件文書は,公
職選挙法第142条第1項に規定する選挙運動用文書に該当せず,被告人
に法定外文書頒布罪が成立する余地はない。
これに対して,前述のとおり,原判決は,これと異なる判断をしている
のであるから,原判決は最高裁判所の判例に相反しており,かつ,判決に
影響を及ぼすべき重大な事実誤認がある。

第7 被告人の行為は選挙運動に当たらない
前述のとおり,法定外文書頒布罪が成立するためには,選挙運動用文書
を「選挙運動」として頒布することが必要であり,また,公務員地位利用
選挙運動罪が成立するためにも,その地位を利用して「選挙運動」をした
ことが要件となる。
そこで,以下では,被告人の本件行為がいかなる意味でも「選挙運動」
に該当しないことについて明らかにし,これに反する原判決の問題点につ
いて論じる。

1 被告人の行為は業務上の行為である
⑴ 被告人は「業務上の行為」として頒布したに過ぎない
被告人が,森町職員に宛てて本件電子メールを送信した行為は,被告
人の森町長としての業務上の行為(職務行為)にほかならず,「選挙運
動」に該当しない。
すなわち,被告人は,森町長として,その職員に対し,法令を遵守す
るよう指導監督すべき権限及び義務がある。本件文書のように,職員か
ら,他の職員が,戸別訪問等の違法な選挙運動や,職務専念義務に反す
る勤務時間中の選挙運動(あるいはその準備行為)をしている旨の報告
があれば,そのような行為をしないよう職員に対して指示,警告,注意
等をすることは,町長としての職務権限に属する行為にほかならない。
特に,森町においては,被告人が町長に就任する以前は,組合職員に
よる選挙運動が常態化しており,平成20年の森町長選挙においても,
選挙後まもなくして町役場に警察の捜査が入り,逮捕寸前のところまで
捜査がされていたことからすれば,被告人は,町長としてそのような行
為の再発を防止すべき必要性が高かったことが明らかである。
また,被告人は,町長に就任して以来の4年間,職員の教育・意識啓
発や業務上の通達・連絡等を目的として,本件電子メールと同様に,職
員一斉送信のメーリングリストを使用して,継続的に電子メールを送信
してきた。その通数は,本件電子メールを除けば,187通にも及ぶ。
これらの187通にも及ぶ被告人のメールが,町長の職務行為(業務上
の行為)そのものであることについては客観的に明らかである。
そして,本件電子メールは,このような一連の職務行為としての電子
メールと同様の方法で,その188通目の電子メールとして送信された
ものである。すなわち,被告人は,これまでも職員や町民等からの手紙
や被告人が感銘を受けた文書,業務上の連絡文書等について,電子メー
ルに添付する方法により送信していたところ(第一審弁5),本件電子
メールもこれと同様の方法により送信されたものである。そうすると,
このような本件電子メールが,一連の職務行為としての電子メールの一
環として送信されたものであることは客観的に明らかである。

⑵ 原判決の重大な事実誤認
これに対して,原判決は,
「本件文書には,前記イのとおりの内容が表示されており,被告人は,
このような本件文書の内容を認識しつつ,本件選挙の告示後の選挙
運動期間中に,電子メールの一斉送信機能を利用し,選挙人でもあ
る多数の職員に宛てて一斉に本件文書を頒布したのであり,しか
も,本件文書を添付した本件メールの本文には,「職員の皆さんこ
んな手紙が私に届きました。コメントは避けます。佐藤克男拝」と
だけ記載し,所論のいう指示,警告,注意等の趣旨の文言を全く記
載していないのであるから,被告人が選挙運動として本件行為を行
ったことは明らかである」
と判示している(原判決8頁)。
しかしながら,前述のとおり,そもそも原判決の上記認定については,
その前提となる本件文書内容(評価)の認定に根本的な誤りがある。し
たがって,そのような本件文書の内容を認識しつつ,一斉送信機能を利
用して職員に一斉頒布したとしても,それによって業務上の行為として
の性格が阻却されるものではない。
さらに,確かに原判決の指摘するとおり,被告人は,本件電子メール
の本文に「コメントは避けます」とだけ記載し,指示,警告,注意等の
趣旨の文言を記載していないのは事実である。この点については,被告
人による注意等の方法として,例えば,違法な行為をしないよう警告す
る趣旨のメールを本文に記載して送信するなど,他に最適な方法があっ
たことは否定しない。被告人自身も,「同じ注意喚起をするにも違うや
り方をするべきであったと反省をしております」と述べている(第一審
被告人最終陳述5頁,被告人第一審第 4 回公判供述 21 頁)。
しかしながら,控訴趣意書においても論じたとおり,注意警告等の職
務行為の方法が最適な方法でなかったことをもって,その行為が犯罪行
為を構成することとなるものでないことは言うまでもない。法定外文書
頒布罪は故意犯であって,過失犯ではない。手段の相当性と犯罪の成否
とは全く別問題である。
また,そもそも,本件行為当時,被告人は,自身が町長選挙に立候補
し選挙運動を開始した頃であり,その公務に宛てられる時間は極めて限
定されていた。すなわち,このころ,被告人は,毎朝午前4時30分こ
ろに起床し,午前7時ころに町役場に出勤して,毎日50通ほどの書類
について,町長としての決裁業務等を行っていたのである。公職選挙法
上,街頭演説等は午前8時からとされており(同法第140条の2第1
項ただし書,第164条の6参照),選挙期間中の被告人の町長として
の執務時間は,各日1時間にも満たなかったのである。
この点については,被告人は,次のように供述している。
「一つは,もう告示後で選挙活動に入っておりましたので,非常に
私の体も自由にならないということが一つでした。警察に告発す
るにしても,かなり証拠物件を持って告発しなければいけませ
ん。また警察に告発する前には,内部で私は注意を喚起しなけれ
ばいけない。また,選挙管理委員会は,役場の中にあったとして
も,これは私の管轄外の部署でございます。ですから,まずは役
場内でということで,私は,メールという手段を取ったわけでご
ざいます。」(被告人第一審第 1 回公判供述 4 頁)
上記被告人の供述は極めて合理的で説得力がある。本件において,限
られた時間の中で,被告人がこのような方法で職員に注意警告したこと
についてはやむを得なかったものというべきである。
そして,このような状況下において,被告人が「コメントを避けます」
という表現を用いたのは,要するに,本件文書の内容について被告人と
しての評価は加えないという趣旨である。すなわち,「コメントを避け
ます」という表現は,本件文書を読んで手紙を出した職員の真意をくみ
取って欲しい,あるいは本件文書を読めばその真意は十分に理解できる
ということである。そこに投票依頼の趣旨を読み取ることは不可能であ
る。
そして,前述した本件文書全体の趣旨からすれば,本件文書を読んだ
職員は,職員の中には心ある者もいるのであり,「事なかれ主義」や「長
いものには巻かれろ」の考えでは駄目だという本件文書作成者の真意を
十分に理解することができるものといえる(現に,第一審証人磯邉吉隆
は,そのことを的確に理解している。)。
したがって,以上のような事実を前提とすれば,原判決の上記認定は,
その前提を欠くとともに,全くの揚げ足取り的な認定であり,経験則,
論理則に反するものであることは明らかというべきである。

⑶ 原判決の判例違反
前述のとおり,選挙運動用文書の「頒布」の意義について判示した前
述の最高裁昭和44年3月18日判決(刑集 23 巻 3 号 179 頁)は,選挙
運動用文書を選挙運動として頒布することを禁止したものである旨を判
示しているところ,同判決は,選挙運動の類型に該当しない行為につい
ては「選挙運動」の概念から除外する旨を判示したものと解され,同判
決で明示されている「選挙運動の準備行為」のみならず,前述した「業
務上の行為」について除外する趣旨と解される。
ところで,原判決は,この点に関連して,
「原判決が認定する本件行為は,その態様,時期等に照らすと,選挙
運動の客観的要件を充たす典型的な行為であって,選挙運動文書が
立候補準備行為として支持者や支持団体を相手方として頒布され
たにとどまる場合に準ずるような例外的な場合に当たらないこと
は明らかである」
などと判示している(原判決11,12頁)。
しかしながら,控訴趣意書においては,第一審判決が「選挙運動文書
を頒布する行為は,当該文書が支持者や支持団体を相手方として頒布さ
れたに止まり立候補準備行為等と解される例外的な場合を除き,選挙運
動に該当すると解される」と判示した上で,「例外的な場合」とはどの
ような場合であるのか,あるいは,どのような意味で「例外的な場合」
に当たらないのか等について何ら具体的に検討することなく,「上記の
例外的な場合にはあたらない」と判示しているところ,そのような第一
審判決は,実質的には何も検討していないに等しいことを指摘したもの
である。
これに対して,原判決は,「その態様,時期等」に照らして,被告人
の本件行為が「典型的な行為」などとしているが,その具体的な趣旨に
ついては全く言及がなく,全く理解不能である。前述したとおり,本件
文書は,これまで法定外選挙運動頒布罪において検討されてきた文書と
は全く異質なものであって,到底「典型的」であるとはいえない。原判
決は,この点についても具体的な理由を説示することなく判示しており,
理由不備の非難を免れない。
いずれにしても,原判決の上記判断は,上記の最高裁判所判例の解釈
を誤ったものであり,最高裁判所の判例に相反する判断をしたものとい
える。

2 被告人の行為は選挙運動の客観的要件に該当しない
⑴ 選挙運動用文書をほとんど使用せずに選挙運動をしていたこと
公職選挙法上,町長選挙の場合には,候補者一人について,通常葉書
2500枚,選挙管理委員会に届け出た2種類以内のビラ5000枚を
頒布することができるとされている(同法第142条第1項第7号)。
また,町長選挙においては,選挙運動の期間中,2回新聞広告をするこ
とができるとされている(同法第149条第4項)。
被告人は,第一期目の平成20年の町長選挙の際には,森町長選挙へ
の初挑戦ということもあり,知名度が全くなかったことから,上記のよ
うなあらゆる選挙運動用文書等を活用して選挙戦を戦った。このことに
ついては,前述の被告人の著書「組織を変えるマネジメント」において
も,次のように記載されている。
「商店街や大型店の前で、私、後援会長、幹事長の三人で笑顔を振
りまいて、徹底してチラシを配りました。私は自分や、友人の選
挙でチラシ配りは特に自信がありました。同じ時間で倍近く撒け
るのです。もちろん、後援会長も幹事長も営業マンですので、得
意中の得意です。後で「営業マンが選挙をやっているんだもんな
ぁ」と得意になったものです。」(同書 40 頁)
「とにかく工夫も人と会う回数も、競争相手の5倍はやったと自負
しています。その結果、最後に笑うことができたのです。」(同
書 41 頁)
これに対して,平成24年の本件選挙においては,被告人は,それま
での4年間の町長としての実績からみて,選挙運動用文書を使用する必
要性がないと考えていた。被告人の後援会長向中野は,これを「エコの
選挙」と呼び,そのような選挙運動用文書を使用するまでもなく本件選
挙には勝てると考えていたと供述している(向中野証言8頁)。
そこで,被告人は,本件選挙においては,最低限の通常葉書を使用し
たのみで,選挙運動用ビラは一切使用しておらず,新聞広告も一切行わ
なかった。このことは,森町選挙管理委員会の回答書(第一審甲3)等
からも明らかである。
以上の事実に照らすと,被告人は,本件選挙で当選するためには,選
挙運動用文書を使用する必要性に乏しいと認識していたことが客観的に
明らかである。
このような被告人の本件選挙における選挙運動用文書の作成・頒布に
ついての姿勢は,各種・各級の選挙を通じ,いかなる候補者にも決して
見られない(いわゆる泡沫候補は別であるが)希有なるものである。す
なわち,圧倒的多数の候補者は,法定文書の種類・形態の制限,枚数の
制限を桎梏と感じ,可能な限り多くの種類及び枚数の文書を頒布したい
と切望しているのである。
そうであれば,以上のような事実関係の中で,対立ないし緊張関係に
あった職員に対してのみ選挙運動用文書を頒布し,投票依頼をするなど
ということは全くナンセンスな行為である。被告人が本件選文書を選挙
運動用文書として認識し頒布していたというのであれば,法定文書の増
刷も当然に行っていたはずである。
結局のところ,以上の事実は,本件文書の頒布が,業務上の行為であ
って,選挙運動として頒布したものでないことを端的に物語っているの
である。

⑵ 本件電子メールは職員に対してのみ送信されていること
前述のとおり,被告人は,町長に就任して以来の4年間,職員の教育・
意識啓発や業務上の通達・連絡等を目的として,本件電子メールと同様
に,職員一斉送信のメーリングリストを使用して,継続的に,合計18
7通の電子メールを送信しており,本件電子メールは,これと同様の方
法で,その188通目の電子メールとして送信されたものである。これ
らの被告人による電子メールの送信がいずれも町長の職務行為(業務上
の行為)の一環であることについては,前述したとおりである。
ところで,被告人は,このような職員に対する電子メールについて,
森町における職員教育の状況等を外部にアピールすることを目的とし
て,職員以外の者に対しても,毎回概ね10名前後の者に対して,「B
CC(Blind Carbon Copy)」の形式で,電子メールを同時送信していた。
すなわち,被告人は,町長のメールアドレスでメールのやりとりをした
者や名刺交換した者等のうち,森町の役場改革に関心のありそうな者に
対して,職員宛のメールを送信していたのである。その中には,複数の
森町民も含まれていた。
これに対して,本件電子メールは,専ら職員に対してのみ送信したも
のである。なぜなら,本件電子メールは,職員の違法行為に対する注意
警告の趣旨によるものであり,その性格上,職員以外の者に対して送信
するのは適切ではないと判断したからである。
万が一,本件電子メールの送信行為が,投票獲得を目的とした選挙運
動であるとすれば,被告人は,これまでと同様に,本件電子メールを職
員のみならず,森町民等に対しても一斉送信していたはずである。これ
を換言すれば,被告人が本件電子メールを職員に対してのみ送信したと
いうことは,本件電子メールの送信行為は選挙運動ではなく,専ら町長
としての業務上の行為であることを客観的に裏付けるものなのである。
なお,BCC形式で電子メールを送信した場合,受信者側では,誰に
送信されたのかを確認することはできない。この点で,現在,証拠とし
て提出されている電子メールをプリントアウトした文書(第一審甲5資
料5等)においては,いずれも受信者である職員側のメールであるため,
BCC形式での送信先は明らかではない。もっとも,送信者側の電子メ
ールデータを確認すれば,BCC形式による送信先も明らかとなる。こ
れについては,被告人が町長時代に使用していたパソコンに保存されて
いる電子メールデータを確認すれば,以上の事実も明らかとなる。

⑶ 本件行為は投票獲得のため「必要かつ有利な行為」ではないこと
以上のとおり,被告人による本件電子メールの送信行為は,町長とし
ての業務上の行為(職務行為)であり,「選挙運動」に該当しないもの
である。
この点に加えて,そもそも被告人の本件行為は,被告人の投票獲得の
ため「必要かつ有利な行為」ともいえない。すなわち,「必要かつ有利
な行為」とは,投票獲得のためにプラスになる行為をいうのであって,
投票獲得のためにマイナスになる行為や無意味な行為であれば,「必要
かつ有利な行為」とはいえないことはその定義上明らかである。
この点で,被告人の行為は投票獲得のためプラスになる行為ではない。
すなわち,被告人は,本件電子メールを送信した職員の受け止めについ
て,次のとおり供述している。
「それは,注意をされるというのは,職員に対して,職員はいい思
いをしないもので,私はあのメールで注意をしてるわけでござい
ますから,また町長,私に文句言ってきてるんだなという思いを
させるということで,私は,これは,まあ,本当に微々たるもの
でしょうけれども,何人かは票が減るのかな,何票か減るのかな
という思いが頭をよぎりました。」(被告人第一審第 4 回公判供
述 18 頁)
また,後述のとおり信用できる磯邉証言によれば,
「これでもって,例えば佐藤町長,自分自身が,自分を有利にする,
あるいは相手候補を不利な形にするというふうなことについて
の,そういうことは一切できないと,そういうふうに私は思って
おります。」(磯邉証言 9 頁)
と証言している。
町の財政改革と町職員の意識改革の大胆な実行というのは,“痛み”
を伴うものであった。この“痛み”を直接的に味わった者の中心が,給
与引下げの対象となった町職員であることはいうまでもない。このよう
な町職員が町長である被告人に敵意や反感を抱いていたとしても何ら不
思議ではない。とりわけ職場内,時間内での労組活動に名を借りた選挙
運動を行ってきた労働組合に対する被告人の批判は,彼らにとって文字
通り“耳の痛い”ものであった。そこにこのような電子メールを職員に
向かって発信すれば,被告人にとって「有利」であるどころか更なる反
発を招くおそれが大である。このような本件電子メールの送信は,決し
て被告人に「有利」になるものではない。
さらには,検察官の誘導に沿って証言している検察側証人でさえも,
本件電子メールによって自らの投票行動には影響を受けなかったと証言
しているのである。
以上によれば,被告人の行為は,注意喚起という意味では効果がある
としても,被告人の投票獲得にとっては何らプラスになる行為ではなく,
むしろマイナスとなる行為である。被告人は,このようなマイナスとな
る行為であることを覚悟の上,町長としての職責の重大さから本件電子
メールを送信したのである。
したがって,被告人の本件行為は,そもそも被告人の投票獲得のため
「必要かつ有利な行為」ではない。

⑷ 原判決の重大な事実誤認
これに対して,原判決は,本件電子メールを職員に対してのみ送信し
たことについて,
「本件メールを職員以外の町民にも送信してしまうと,業務上の行為
として行ったという弁解をすることができなくなることは明らか
であり,法定外文書頒布罪の成立がより一層明らかになってしまう
ので,そのような事態を回避するため,職員に対してのみ本件メー
ルを送信したと考えることも可能である。」
と判示している(原判決8頁)。なお,かかる認定は,検察官の主張そ
のものである(控訴審検察官答弁書23頁)。
しかしながら,かかる原判決の認定は,被告人の行為を曲解するもの
と言わざるを得ない。前述のとおり,被告人は本件行為の当時,町長と
しての執務時間が極めて限られていたという事情を考慮すると,被告人
がそこまでの想定をして本件電子メールを送信したとは到底考えられな
い。この点については,原判決自身も「考えることも可能である」と述
べており,その可能性があることについての推論であることを自認して
いるが,論理・推論の飛躍も甚だしく経験則,論理則に反する認定と言
わざるを得ない。この点については,本件電子メールを町職員に対して
のみ送信したことについて,原判決のような推論しかできないというこ
とは,被告人による本件電子メールの送信行為が,純然たる業務行為と
して行われたことを端的に示しており,それによってのみ合理的な説明
が可能であるということができる。
そもそも原判決がここで展開する論理は,「有罪であることの論証」
では全くなく,有罪であることをあらかじめ決めつけた上で,かかる予
断に満ちた決めつけを「正当化するための弁明」でしかない。要するに
本末転倒である。

3 被告人には選挙運動の主観的要件がない
⑴ 被告人は投票獲得目的で本件電子メールを送信したものではない
前述のとおり,被告人の行為が「選挙運動」に該当するためには,上
記の客観的要件のほかに,選挙運動の主観的要件を充足することが必要
であり,より具体的には,単なる客観的構成要件の認識(故意)だけで
なく,それを超過するより積極的な目的としての投票を得る目的(投票
獲得目的)が必要と解されている。
この点については,前述のとおり,そもそも被告人は,本件選挙にお
いて,当選を確信していた。そのため,本件選挙に勝つために,選挙運
動用文書を使用する必要性に乏しいと認識していた。このことは客観的
に明らかである。
また,森町においては,被告人が町長に就任する以前は,組合職員に
よる選挙運動が常態化しており,平成20年の森町長選挙においても,
選挙後まもなくして警察の捜査が行われ,逮捕寸前のところまで捜査が
されていたことからすれば,被告人は,町長としてそのような行為の再
発を防止すべきであるとの必要性を認識していたことも明らかである。
その上で,本件電子メールは,これまでの被告人による職務行為とし
ての継続的な電子メールと同様の方法で送信されたものである。
また,万が一,被告人が投票獲得目的で本件電子メールを送信しよう
としたのであれば,単に職員だけではなく,これまでと同様に,他の一
般町民等に対してもBCC形式で一斉送信をしていたはずであるが,本
件電子メールは,専ら職員に対してのみ送信している。
さらには,被告人は,選挙のために媚を売る行為あるいはおもねる行
為をしないことを政治的信条としており,そのことを常々対外的にも表
明していたことが認められる。
以上のような客観的事実に照らすと,被告人が本件電子メールを送信
した目的は,専ら業務上の目的であり,投票獲得の目的ではなかったこ
とが明らかである。

⑵ 原判決の重大な事実誤認(投票獲得目的)
これに対して,原判決は,
「被告人は,原審公判において,本件選挙の際には過半数の票を得た
いと考えていた旨供述しており,できるだけ多くの票を得たいと考
えていたのであるから,仮に,本件選挙において当選することを確
信していたとしても,より多くの票を得ようとして本件メールを職
員に送信したと考えることもできる」
と判示している(原判決9頁)。
しかしながら,被告人がより多くの票を得たいと考えていたことと,
本件電子メールの送信が投票獲得目的をもってされたこととは全くの別
問題である。すなわち,被告人が本件選挙において自己の当選を望み,
そのためにより多くの投票を得たいと考えていたことは当然であるが,
それはあらゆる候補者に共通する通常の心理であり,そのこと自体から,
本件電子メールの送信行為が投票獲得目的によるものであると即断する
ことができないことは明らかである。つまり,選挙運動の主観的要件を
充足するというためには,公訴事実たる具体的行為につき投票獲得目的
があったかどうかが問題なのであって,およそ一般的抽象的な当選目的
を有していたかは問題ではない。原判決のような判断方法では,それこ
そ客観的要件の超過要素としての主観的要件を付加する意味が全くない
こととなる。原判決は,控訴趣意書において指摘した以上のような問題
点について全く答えていない。
また,原判決は「仮に,本件選挙において当選することを確信してい
たとしても,より多くの票を得ようとして本件メールを職員に送信した
と考えることもできる」と述べるが,どこからそのような推論が成り立
つのであろうか。そもそも被告人が当選を確信していたのであれば,そ
のような目的で本件電子メールを送信する意味は全くない。むしろ,被
告人が当選を確信していたのであれば,本件電子メールの送信は,投票
獲得目的ではなく注意喚起目的であったことがより鮮明となるのである。
また,原判決は,
「被告人が本件選挙において自己の再選を強く望み,前記イのとおり
の内容が表示されていることに加えて,被告人が,このような本件
文書の内容を認識しつつ,本件選挙の告示後の選挙運動期間中に,
電子メールの一斉送信機能を利用し,選挙人でもある多数の職員に
宛ててなされたという本件行為に関する態様等からすれば,本件メ
ールを職員に送信する際,被告人に投票を獲得する目的があったこ
とは明らかである」
とも認定している(原判決10頁)。
この点については,前述のとおり,原判決は,本件文書の内容(評価)
について重大な誤認があり,そもそも本件文書は選挙運動用文書として
の性格を有するものではない。したがって,そのような文書の内容を認
識しつつ多数の職員に宛てて一斉送信したとしても,そのことから,被
告人が投票獲得目的で本件電子メールを送信したとは認定できず,むし
ろ注意喚起目的ではあって投票獲得目的ではなかったと認定するのが自
然で合理的である。いずれにしても,原判決には,この点でも重大な事
実誤認がある。

⑶ 原判決の重大な事実誤認(選挙運動の意思)
また,原判決は,選挙運動の意思について,
「被告人自身,原審公判において,本件当時,1割から3割の職員か
ら投票を得られるものと認識していた旨供述しているから,職員票
を期待していたといえ,これに反し,本件選挙においては職員票を
全く期待していなかった旨の被告人の供述は信用することができ
ない」
と認定している(原判決10頁)。
しかしながら,前述のとおり,職員から一定数の票が得られると考え
ていたことと,被告人が職員票を期待していたこととは全くの別問題で
ある。すなわち,被告人は,職員票について,
「私の考え方に共鳴することと,投票することは,また別の問題だと,
私は思っておりました」
とはっきりと述べている(被告人第一審第4回公判供述34頁)。
つまり,職員にとってみれば,被告人の町政(例えば財政改革)につ
いて,その必要性は「理解」しつつも,いざ自らの投票行動を選択する
となった場合には,自らの給与を減額されたという直接的現実的な利害
を前提に判断せざるを得ないのである。したがって,被告人の町政に対
する「理解」が直ちに「投票」に結びつくものではないということは当
然のことであり,被告人の認識及び供述はごく自然なものである。
これを言い換えれば,被告人は,町職員から,一定の票を得られると
は「予測」していたものの,それを「期待」していたわけではないとい
うことである。すなわち,被告人は,選挙戦を戦うに当たり,職員の票
に頼って当選するということは期待できず,一般の町民に支持を訴える
しかないと考えていたのである。
したがって,被告人が町職員からの得票を全く「期待」していなかっ
たという被告人の主張は何ら不自然,不合理ではなく,むしろ極めて自
然かつ合理的なものなのである。したがって,この点についても,原判
決の事実認定には,重大な誤認がある。
さらに,原判決は,
「全30行からなる本件文書のうち,職員組合委員長の行動に関する
記載は3行にすぎないのに,被告人が,本件メールの本文に被告人
のいう注意喚起の趣旨を全く記載しないまま,本件文書を添付して
職員に対して送信していることや,前記のとおりの本件文書の内容
や頒布の時期,被告人が本件文書の内容を認識しつつそれを頒布し
たことなどの事情に鑑みると,被告人が専ら被告人のいう注意喚起
をする意思で本件行為に及んだとは考えられず,選挙運動をする意
思で本件行為に及んだことは明らかである」
とも認定している(原判決10,11頁)。
しかしながら,被告人が本件電子メールに注意喚起の趣旨を記載しな
かったことがやむを得ないものであり不自然ではないことについては,
前述のとおりである。さらに,原判決の前提としている本件文書の内容
の認定(評価)に誤りがあり,原判決の認定は,その前提を欠いている
ことについても前述したとおりである。
したがって,これらの事実を前提にすれば,原判決の上記認定に重大
な誤認があることは明らかである。

第8 各証人の証言の信用性について
1 木村・澤口・濱野の各証言は信用できない
第一審においては,検察官請求証人として,木村総務課長,澤口保健対
策課長及び濱野総務課人事厚生係長の証人尋問が実施されているところ,
木村は,本件文書の趣旨について,「選挙の投票依頼に当たるなと感じた」
などと証言しており,澤口及び濱野も,これと概ね同趣旨の証言をしてい
る。
かかる証言の信用性について,控訴趣意書においては,上記各証人は,
いずれも被告人と対立し,あるいは被告人に反発していた職員であり,検
察官が,そのストーリーに沿って都合良く証言させているに過ぎないこと
について具体的に明らかにした。
また,これらの証人は,他の職員については影響があった可能性がある
などと証言しているが,いずれも自らの体験に基づかない単なる憶測の域
を出るものではなく,結局のところ,被告人の本件行為によって,現実に
投票行動に影響を受けた職員がいたことについては,一切立証されていな
いことについても明らかにした。

2 磯邉証言は信用できる
他方で,第一審弁護人請求に係る磯邉吉隆は,本件文書の趣旨ないしは
評価等について,次のように供述している。
「もろもろ書いておりましたけれども,特に中段部分の,やはり職
員が選挙に関わっているというふうなところが一番関心を持っ
たところでございます。」(磯邉証言 8 頁)
「私としては,やはり今までの佐藤町長の森町のトップとしてのそ
ういう基本的な考え方というのは知っておりますので,そういう
延長上で考えた場合に,やはり職員に対して節度ある行動,やは
り町民への不審を招かないような,そういうことは慎むべきだと
いうふうなことをまずは考えたところでございます。」(磯邉証
言 9 頁)
「これでもって,例えば佐藤町長,自分自身が,自分を有利にする,
あるいは相手候補を不利な形にするというふうなことについて
の,そういうことは一切できないと,そういうふうに私は思って
おります。」(磯邉証言 9 頁)
「私は普通に考えて,これを投票依頼だとか,あるいは相手候補を
不利にするとか,職員は,そういうふうにやわではないと私は思
っております。やはり職員というものは,きちんと,そういう,
それに左右されない,きちんとした職員が結構多いので,ああい
う類いの文章でそれが左右されるというふうには,私は思ってお
りません。」(磯邉証言 10 頁)
「町長は職員研修に力を入れてますので,やはりこういうふうなこ
とが送られてきたというふうなところで,町長はどんなふうに考
えたかは分かりませんけれども,私は,単純に一つの情報提供と
いうふうなことで認識していたんではないかなと思っていま
す。」(磯邉証言 15 頁)
以上の磯邉の証言については,被告人の供述と合致する部分があるが,
かといって被告人の供述そのものとは内容を異にしており,その証言内容
自体から見て,中立性の高い証言であり,さらには,その証言内容自体が
極めて論理的で説得的であり,証言全体としての信用性は極めて高いもの
であることについても,控訴趣意書において具体的に明らかにした。

3 原判決の重大な事実誤認
ところが,原判決は,木村,澤口,濱野の各証言について,その証人の
立場や証言の動機・経緯,証言の具体的内容について全く言及することな
く,単に
「これらの供述は,上記のとおりの本件文書の内容や頒布の時期等と
いった客観的事実と整合しており,信用することができる」
とだけ判示し,その一方で,磯邉の証言についても,
「この供述は,本件文書の内容や頒布の時期等の客観的事実と整合せ
ず,信用することができない」
とだけ判示している。このような原判決の判示は,証言の信用性について
実質的には全く検討していないに等しいものである。
また,原判決が証言の信用性について唯一説示する「客観的事実」とは,
「本件文書の内容」と「頒布の時期」である。このうち「本件文書の内容」
については,そもそも本件文書の内容に関する原判決の認定(評価)が誤
っているのであり,それと整合しているからといって何らの意味を持つも
のではない。むしろ,この意味では,磯邉の証言こそ「本件文書の内容」
に整合しており,信用性が高いという判断になる。
さらに,「頒布の時期」というのは,要するに本件電子メールを送信し
たのが,告示後の選挙運動期間中であるということを意味するものと推察
される。しかしながら,頒布の時期のみをもって供述の信用性を判断する
のは余りに短絡的である。なぜなら,被告人は,町長である以上,その職
務として職員に対して選挙に関連して文書を頒布することは十分あり得る
からである。本件のように,選挙運動期間中の職員の行動について注意等
をする趣旨で文書を頒布するのが正にその典型であり,本件文書の頒布の
時期をもって各証人の証言の信用性を直ちに判断することができないこと
は明らかである。
いずれにしても,原判決には,この点でも明らかな理由不備,証拠評価
の誤認による重大な事実誤認があり,破棄を免れないというべきである。

第9 被告人の行為は構成要件に該当しない
以上によれば,被告人による本件電子メールの送信行為については,そ
もそも送信した本件文書が選挙運動用文書に該当せず,また,その送信行
為も「選挙運動」に該当しないから,法定外文書頒布罪の構成要件に該当
せず,同罪は成立しない。
また,本件行為が「選挙運動」に該当しない以上,公務員地位利用選挙
運動罪の構成要件に該当する余地もなく,同罪も成立しない。

第10 正当業務行為による違法性阻却
刑法第35条は「法令又は正当な業務による行為は,罰しない」と規定
する。この点に関して,前述のとおり,いわゆる業務上の行為(職務行為)
については,仮にそれが投票獲得のために「間接に必要かつ有利な行為」
になり得るとしても,「選挙運動」に該当せず,構成要件該当性が否定さ
れるというべきである。
しかしながら,この点につき,万が一,構成要件該当性が肯定されると
しても,刑法第35条の正当業務行為として,その違法性が阻却されるべ
きものである(なお,被告人の本件電子メールの送信行為が正当業務行為
に該当することについては前述のとおりである。)

第11 可罰的違法性(実質的違法性)不存在による違法性阻却
1 判例における可罰的違法性(実質的違法性)阻却
犯罪構成要件該当行為であっても,「当該行為の具体的状況その他諸般
の事情を考慮に入れ,それが法秩序全体の見地から許容されるべきもので
ある」場合には,可罰的違法性ないし実質的違法性を欠き,違法性が阻却
されるべきものである(最高裁昭和 48 年 4 月 25 日大法廷判決・刑集 27 巻
3 号 418 頁)。
そして,法定外文書頒布罪における可罰的違法性が争われた事件(最高
裁昭和 52 年 2 月 24 日判決・刑集 31 巻 1 号 1 頁)においては,
「同被告人らは共謀のうえ,前同様の目的をもって,前記スポーツセン
ター附近で,前記慰安会午後の部に入場しようとする同市役所職員及
びその家族を主とする約5000名に対し,前記衆議院議員総選挙に
おける市労連の推薦候補者Xに投票を求める趣旨の文章を含めて印刷
記載した同候補の選挙運動のために使用する法定外文書を各1枚ずつ
合計5000枚頒布したというのであるから,同被告人らの各所為は,
同法142条1項,243条3号の罪の違法性に欠けるところはなく,
原判決が判示する本件文書の性質,文書作成の経過及びその費用,被
告人らの役割,頒布の相手等の諸事情は,たとえ原判決の判示すると
おりだとしても,右の違法性を失わせる事情となるものということは
できない。」
と判示し,結論としては可罰的違法性阻却を否定した。
しかしながら,上記最高裁判決の事案は,約5000名の選挙人に対し
て,選挙運動用文書を5000枚頒布したという事案であり,その文書の
内容も,特定の候補者に投票を求める趣旨の文章が記載された文書である。
そうすると,上記事案については,その頒布文書の内容や枚数,選挙民に
与えた影響等に鑑みれば,違法性を阻却しないと判断されたのもやむを得
ないものといわなければならない。

2 本件行為は可罰的違法性(実質的違法性)を欠く
これに対して,本件においては,被告人は,これまで事実上黙認ないし
放置されてきた職員による違法な選挙活動等を町長として是正するという
業務目的で本件電子メールを送信しており,その目的は極めて正当なもの
である。
また,本件で被告人が頒布した枚数は,わずか83枚であり,その頒布
の対象も意識的に職員にのみ限定し,これまでの電子メールのように他の
町民等には送信していない。さらに,その文書の内容も,投票を直接的に
呼びかける旨が記載されたものではない。また,その文書の頒布方法も,
「コメントは避けます」とだけ記載して電子メールで一斉送信したという
もので,上記最高裁判決の事案のように,大々的な演説を伴って頒布され
たものでもない。さらに,その頒布行為は,町長としての職務として頒布
されたものであり,かつ,本件文書の頒布により現実に職員の投票行動に
影響を与えたとは証拠上認め難いところである。
そして,後述のとおり,近時,インターネットを通じた選挙活動を認め
るべく公職選挙法が改正されているという社会情勢を踏まえると,インタ
ーネットを通じた本件行為についても,その違法性ないし可罰性は,相対
的に低下しているというべきである。
以上のような本件にかかる具体的状況を考慮すれば,本件は,上記最高
裁判決の事案とは事案を全く異にし,むしろ,被告人の行為は,法秩序全
体の見地から許容されるべきものといえ,可罰的違法性ないし実質的違法
性を欠き,違法性が阻却されるべきである。

3 原判決の判例違反
これに対して,原判決は,可罰的違法性を肯定しているところ,その理
由について全く言及されておらず,理由不備の違法がある。
さらには,上記の判断は,上記の最高裁判所判例(最高裁昭和48年4月
25 日大法廷判決・刑集 27 巻 3 号 418 頁)に相反することが明らかであるか
ら,この点でも破棄を免れないというべきである。

第12 被告人は無罪
以上によれば,被告人には,法定外文書頒布罪及び公務員地位利用選挙
運動罪の構成要件に該当せず,あるいは,その違法性が阻却されるため,
いずれの犯罪も成立しないことが明らかであり,被告人は無罪である。
そして,これまで述べたとおり,原判決には,最高裁判所の判例に相反
し,かつ,判決に影響を及ぼすべき法令違反及び重大な事実の誤認があり,
これらが判決に影響及ぼすことが明らかである。よって,原判決は破棄さ
れるべきである。

第13 量刑不当
以上のとおり被告人は無罪であるが,万が一,被告人が有罪であるとし
ても,その刑の量定は甚しく不当であり,刑事訴訟法第411条第2号に
より破棄されなければならない。
すなわち,原判決は,5年間の執行猶予を付した第一審判決を是認して
いるものの,公職選挙法違反により禁固以上の刑に処せられた者は,その
執行猶予期間中は,選挙権及び被選挙権を有しないとされている(公職選
挙法第11条第1項第5号)。
つまり,原判決は執行猶予を付しているものの,政治家である被告人に
とっては,公民権を停止されることとなるという意味において,この執行
猶予には意味がなく,実質的には「実刑」と同義である。このような判決
は,被告人の政治生命を失わせる行為である。
原判決の量刑は重きに失し,甚しく不当なものと言わざるを得ない。

1 国民主権における選挙権及び被選挙権の重要性
そもそも,選挙権及び被選挙権は,国民主権を宣言する日本国憲法にお
いて,主権を行使する行為そのものをなすものであり,日本国民たる地位
に由来する最も重要で固有の基本的人権である。
近時,成年被後見人について選挙権及び被選挙権を有しないとする旧公
職選挙法第11条第1項第1号が違憲無効であるとの判決(東京地裁平成
25 年 3 月 14 日判決)がされ,同判決を受けて,公職選挙法の改正(平成
25 年法律第 21 号)が行われたことは周知の事実である。国民主権の下にお
ける選挙権及び被選挙権の重要性を端的に示す事例ということができる。
したがって,国民から一時的にせよ選挙権及び被選挙権を奪うことにつ
いては,最大限の慎重な配慮が求められるというべきである。
公職選挙法は,このような選挙権及び被選挙権の重要性に鑑み,情状に
より,刑の言渡しと同時に,選挙権及び被選挙権を有しない旨の規定を適
用せず,またその期間を短縮する旨を宣告することができると定めている
(同法第252条第4項)。
したがって,本件の情状に鑑みれば,本件においては,少なくとも上記
の不適用宣告をすべきである。

2 インターネット選挙運動の解禁
また,近時,インターネットの発達により,インターネットを通じた選
挙運動を認めるべく公職選挙法の改正が行われた(平成25年法律第10号)。
上記の公職選挙法の改正により,ウェブサイト等を利用した文書の頒布
が広く認められたほか(同法第 142 条の 3),電子メールを利用する方法に
よる文書頒布も認められることとなった(同法第 142 条の 4)。
同改正公職選挙法の附則においては,同改正法の施行前にした行為に対
する罰則の適用については「なお従前の例による」と規定され,同改正法
は本件につき適用されない。
しかしながら,上記のような法改正の状況を前提とすると,法定外文書
頒布罪の違法性ないし可罰性は,相対的に低下しているというべきであり,
このことは,被告人の量刑上も最大限に考慮されるべきものである。

3 本件における情状
本件においては,被告人は,職員による違法な選挙活動等を是正する目
的で本件電子メールを送信しており,その目的は極めて正当なものである。
また,被告人が頒布した枚数は,わずか83枚であり,その頒布の対象
も意識的に職員にのみ限定し,これまでの電子メールのように他の町民等
には送信していない。
さらに,その文書の内容をみても,投票を直接的に呼びかける旨が記載
されたものではない。
また,その文書の頒布方法も,「コメントは避けます」とだけ記載して
電子メールで一斉送信したというもので,演説等の選挙運動を伴って頒布
されたものでもない。
さらに,その頒布行為は,町長としての職務として頒布されたものであ
り,かつ,本件文書の頒布により現実に職員の投票行動に影響を与えたと
は証拠上認め難いところである。
また,被告人は,本件電子メールにより選挙運動をしたことは否認して
いるものの,本件電子メールがきっかけとなって,職員が多数回の取調べ
等を受けざるを得なくなったことについて,職員に対して申し訳ない旨を
表明しているほか(被告人第一審第 4 回公判供述 23 頁),被告人の逮捕に
より町に対して汚名を残したことについて,町民に対して申し訳ない旨を
述べている(同上)。
以上のほか,罪名は異なるものの,森町発注の建設工事をめぐる官製談
合事件(談合罪)で有罪判決を受けた湊元町長の量刑が,執行猶予3年(懲
役1年6月)であることと比較してみても,被告人の量刑が重きに失する
ことは明らかである。
以上のとおり,本件における被告人の情状に照らすと,原判決は余りに
重きに失し,甚しく不当であると言わざるを得ない。

第14 審理不尽等
さらには,原判決には,以上のような実体的な問題のみならず,以下のとお
り,手続的にも重大な法令違反がある。
1 原審による不当な審理の打ち切り
弁護人らは,平成25年9月10日の控訴審第1回公判において,事実
取調べ請求として,証拠物,書証及び証人の取調べを請求するとともに,
証拠開示命令を申し立てた。
これに対して,検察官は,いずれの証拠についても「やむを得ない事由
なし」「必要性なし」との意見を述べ,また,証拠開示については任意開
示しない旨を回答した(控訴審第1回公判調書2頁)。
そして,裁判所は,上記検察官の意見と同様に,いずれの証拠について
も,「やむを得ない事由なし」「必要性なし」との理由により,証拠調べ
請求をすべて却下し,また証拠開示命令についても職権発動しないとし,
さらには,その後の弁護人らによる弁論再開請求も却下した。
しかしながら,以下に述べるとおり,本件においては「やむを得ない事
由」があり,取調べの「必要性」のあることも明らかであるから,原審の
決定には,刑事訴訟法第393条第1項の解釈を誤った法令の違反があり,
さらには審理不尽の違法があるから,同法第411条第1号の規定により
破棄されるべきである。

2 控訴審における事実取調べの規律について
刑事訴訟法は,控訴裁判所は,控訴趣意書に包含された事項は,これを
調査しなければならないと定めている(同法第392条第1項)。
そして,法は,「やむを得ない事由」によって第一審の弁論終結前に取
調べを請求することができなかった証拠については,判決に影響を及ぼす
べき事実の誤認を証明するために欠くことのできない場合に限り,これを
取り調べなければならない旨を定めている(義務的取調べ。同法第393
条第1項ただし書,第382条の2)。なお,ここでいう「やむを得ない
事由」については,一般に,証拠調べ請求が物理的にできなかった場合に
限られず,当該証拠の存在を知らず,知らないことに過失がなかった場合,
第一審で当該証拠を提出する必要がないと考えており,それもうなずける
場合等を含むと解されている(松本時夫ほか編「条解刑事訴訟法[第4版]」
1042 頁)。
また,法は,控訴裁判所は,上記のような「やむを得ない事由」がない
場合であっても,上記の調査をするについて必要があるときは,弁護人等
の請求により又は職権で事実の取調べをすることができる旨を定めている
(裁量的取調べ。同法第393条第1項本文)。

3 やむを得ない事由について
⑴ ○○○○の証人尋問請求について
ア 控訴趣意書提出までの調査状況
前述のとおり,控訴審弁護人らは,一審判決後に被告人から控訴審
の弁護を依頼された。控訴審弁護人らは,被告人及び第一審弁護人か
ら提供を受けた一件記録を精査した結果,本件の争点である「選挙運
動用文書」や「選挙運動」の各該当性を判断するに当たっては,木村
総務課長をはじめとする第一審検察官請求証人のような被告人に対し
て敵意を持っている職員ではなく,一般の職員が,本件文書を閲読し
たときに,どのように受け止めたのかが重要であると判断した。
そこで,控訴審弁護人らは,被告人を通じて,連絡を取ることので
きる森町職員に事情聴取を打診した。その結果,弁護人らは,複数の
職員から事情聴取することができたが,いずれも公判廷において証言
することや,対外的に氏名を公表することについてまでは協力が得ら
れなかった。すなわち,被告人が町長を退任後,森町役場内において
は,被告人の町長時代に抜擢人事をされた職員について,いわば報復
人事ともいうべき措置が採られていた。したがって,自らが前町長で
ある被告人に協力したことが知られれば,町職員としての地位が危う
くなることは容易に想像でき,職員の上記対応にはやむを得ない事情
があった。
以上のような事情により,控訴趣意書の提出段階では,町職員の証
人尋問について,事実取調べ請求をすることはできなかったものであ
る。

イ ○○の事情聴取
もっとも,控訴審第1回公判の直前になって,被告人は,○○
と連絡を取ることに成功した。○○は,被告人の町長在職当時,
課長の職を務めており,本件電子メールを受信し閲読するととも
に,本件文書の中で名指しされた職員でもあった。
そして,被告人が,○○に事情聴取したところ,○○は,本件文書
を閲読した際,選挙のための行為だとは思わなかった旨の供述し,自
らが証人として出廷してもよいと述べた。そこで,急遽,第1回公判
期日の前日である9月9日午後5時頃から,弁護人らが宿泊するホテ
ルのロビーにて事情聴取することとなった。そうしたところ,○○は,
〔畋質輒害歡垢妨世錣譴藤害鵑曚豹昂抻―陲暴估し,事情聴取を受
けた。
担当警察官から本件文書を示され,本件文書を見てどのように思っ
たのかを聞かれたので,自分は投票依頼であるとか,被告人を応援
して欲しいという趣旨の文書だとは思わなかったと述べた。
3回目に森警察署に出頭した際に供述調書を作成し,署名押印をし
た。上記供述調書は,署名押印前に内容を確認したところ,概ね
のような自分の言い分のとおりに記載されていた。
ぞ綉供述調書を作成した数日後,警察官が森町役場を訪れ,供述調
書の内容に一部誤りがあったとの説明を受け,訂正印を押印した。
ただし,具体的な訂正箇所についてはそれほど重要な箇所ではなか
ったので忘れてしまった。
などと供述した。
以上の○○の供述を受け,弁護人らは,第一審弁護人に対して開示
された任意開示証拠のうち,平成24年10月27日付けの司法警察
員に対する供述調書を○○に示し,その内容の確認を求めた。そうし
たところ,○○は,
‐綉供述調書は,自分が供述した内容とニュアンスが全く異なって
おり,また,自分が警察に話していないことまで記載されている。
⊂綉供述調書は全18ページ(添付資料を除く。)であるが,自分
が署名押印した供述調書は,せいぜい6,7ページ程度であり,こ
こまで長文ではなかった。
などと述べた。

ウ 「やむを得ない事由」について
以上の○○供述を前提にすると,第一審弁護人に対して任意開示さ
れた証拠は,捜査機関の何らかの作為によって偽造又は変造された疑
いがあると言わざるを得ない。
そこで,弁護人らは,上記の○○供述を前提として,翌日の第1回
公判期日において,○○の証人尋問を請求するとともに,真正な証拠
の開示を求めた次第である。
すなわち,○○の上記供述により,第一審弁護人に対して任意開示
された供述調書が偽造又は変造されたものであることが明らかになれ
ば,他の供述調書についても同様の作為が加えられた可能性が生じ,
本件事件の全体像が全く異なるものとなる。したがって,この点でも
○○に対する証人尋問を実施することは,本件の真実を発見する見地
から極めて重要な意義を有するものである。
さらには,関係証拠によれば,本件では229名の職員に対して本
件電子メールが送信されたのであり,そのうち起訴の対象になった職
員だけでも83名にも及ぶ。ところが,第一審においては,上記83
名についての供述調書ないし答申書が証拠として提出されているもの
の,いずれも本件文書の評価に係る部分については不同意とされ撤回
されている。その結果,第一審においては,検察側証人3名,弁護人
側証人1名のわずか4名の証言によって「選挙運動用文書」や「選挙
運動」の該当性が判断されているのである。原判決は,いわば229
(あるいは83)分の4の供述により事実認定をしているのである。
加えて,上記の検察側証人3名は,控訴趣意書に記載したとおり,い
ずれも被告人に対して敵意を持った職員であり,何ら他の一般職員を
代表するものではない。
そもそも本件事件は,いずれも従前判例上で問題となってきたよう
な典型的な法定外文書頒布の事案とは全く性質を異にする事件であ
り,その文書の内容については多義的な解釈があって当然の内容であ
る。その意味で,本件文書を受け取った229名の町職員がどのよう
に受け止めたかということを確定することは,本件公職選挙法違反の
成否にとって不可欠の作業である。しかるに,このような本件文書の
意味内容等について事実認定をするに当たり,被告人にとって敵意を
持つ一部の証人の供述にのみ依拠して極めて偏頗な事実認定をするの
は明らかに不当であり,より多くの職員の供述を前提として事実認定
すべきことは当然である。
以上のような点に照らすと,○○の供述は,第一審判決に影響を及
ぼすべき事実の誤認を証明するために欠くことができないものである
ことが明らかである。
これに対して,控訴審検察官は,弁護人らの請求に対し,第一審弁
護人に対し供述調書を任意開示していることを理由に,第一審弁護人
において,○○に接触して証人尋問請求することができたのであるか
ら「やむを得ない事由」がないなどと述べている(控訴審第1回公判
調書)。
しかしながら,被告人は,その保釈条件として町職員との接触を禁
じられており,そもそも,第一審弁護人が,第一審段階において,○○
に対して接触することが観念的・理論的には可能であったとしても,
現実的には極めて困難であって,やむを得ないものであったといえる。
すなわち,前述のとおり,本件では200名を超える職員に対して電
子メールが送信されたのであり,そのうち起訴の対象になった職員だ
けでも83名にも及ぶ。このような多数の関係者がいる状況下におい
て,第一審の限られた審理期間の中で,○○に対する事情聴取にまで
至らなかったことについては,現実的にはやむを得なかったものとい
える。ましてや,そもそも警察官の作成した供述調書が偽造又は変造
されているなどということは通常想定し難いのであるから,第一審弁
護人が,任意開示された供述調書の内容を前提とし,当該供述調書上
では被告人にとって不利な供述をしていた○○について,事情聴取の
対象から除外されていたとしてもやむを得ないものであったといえ
る。
以上のとおり,○○の証人尋問請求については「やむを得ない事由」
があることが明らかである。かかる請求について「やむを得ない事由」
がないと判断することは,控訴審における事実取調べを通じた真実発
見を不当に制限するものである上,弁護人の弁護活動に不可能を強い
るものであり,ひいては被告人の防御権を不当に侵害するものと言わ
ざるを得ない。

⑵ その他の証拠調べ請求について
以上の○○の証人尋問請求のほか,落合春海の証人尋問請求(控訴審
弁5,8)や被告人のパソコンに保存された電子メールの証拠開示請求
については,控訴審における新たな争点として控訴趣意書において提起
したものである。
すなわち,弁護人らは,原判決の事実誤認を明らかにするため,控訴
趣意書において,本件電子メール以前の職員宛一斉送信メールにおいて
は,落合をはじめとする町職員以外の森町民等に対しても継続的に電子
メールを送信していたことを主張した。
第一審においては,この点は争点として取り上げられておらず,した
がって,落合についても重要な証人として認識されていなかったのであ
る。また,電子メールについても,受信者である町職員の電子メール(第
一審弁5)が開示されていたことから,送信者側である被告人の電子メ
ールについては,その重要性が認識されていなかったものである。
しかしながら,以上の重要な点が争点化されていなかったのは,受信
者側ではBCCの表示がされないという専ら技術的な理由によるもので
ある。かかる点からすれば,第一審の段階において,送信者側である被
告人のパソコンに保管された電子メールや落合の供述に辿り着かなかっ
たことについては「やむを得ない事由」があったことが明らかである。
また,選挙運動用葉書の請求書(控訴審弁3)や領収書(控訴審弁4)
については,検察官の答弁書における主張に対する反論に係る証拠とし
て取調べ請求したものであり,第一審においてはそもそも争点化さえも
していなかったのであるから,「やむを得ない事由」があることは明ら
かである。

4 必要性について
以上のとおり,弁護人請求証拠について「やむを得ない事由」があるこ
とは明らかであるが,万が一「やむを得ない事由」が認められない場合で
あっても,本件各証拠の重要性に鑑みれば,裁量により取り調べる必要が
あることは明らかである。
すなわち,弁護人らは,控訴趣意書において,本件事件の背景事情及び
本質を前提に,本件文書の意味内容を明らかにし,本件文書が客観的に見
て「選挙運動用文書」ではなく,また,本件文書を頒布する行為が「選挙
運動」にも当たらないことを明らかにした。さらには,かかる事実を基礎
付ける事実として,これまでの職員宛一斉送信メールは,落合をはじめと
する森町職員以外の森町民等に対しても送信されていたのに対し,本件電
子メールは専ら職員に対してのみ送信されていることを明らかにした。
そして,このような本件控訴趣意書に包含された事項を調査するに当た
り,本件文書の頒布を受けた一般の森町職員が本件文書をどのように認識
し,評価していたのかという事実は極めて重要である。なぜなら,本件文
書の客観的意味内容を理解するためには,それを実際に受領した職員がど
のように受け止めていたのかを考慮することが不可欠だからである。
さらには,本件文書を頒布する行為が「選挙運動」に該当するかについ
ては,選挙運動用文書のように外形から判断するのではなく,行為時の諸
般の事情を考慮する必要がある。この点では,実際に本件文書を頒布され
た職員が選挙運動であると受け止めたかどうかという点は「選挙運動」の
該当性を判断するに当たっても不可欠なものである。
また,前述のとおり,これらの点の認定について,わずか229(ある
いは83)分の4の供述により認定するのは余りにも審理不尽と言わざる
を得ない。特に,本件事件は,いずれも従前判例上で問題となってきたよ
うな典型的な法定外文書頒布の事案とは全く異質な事件であり,その文書
の内容についても多義的な解釈があって当然の内容である。このような本
件文書の意味内容等について事実認定をするに当たり,被告人にとって敵
意を持つ一部の証人の供述にのみ依拠して事実認定をするのは明らかに不
当であり,より多くの職員の供述を前提として事実認定すべきことは明ら
かである。
加えて,前述のとおり,○○の供述調書は,捜査機関の何らかの作為に
よって偽造又は変造された疑いがある。○○の公判廷供述により,第一審
弁護人に対して任意開示された供述調書が偽造又は変造されたものである
ことが明らかになれば,他の供述調書についても同様の作為が加えられた
可能性が生じ,本件事件の全体像が全く異なるものとなるのである。
また,本件文書が森町職員以外の森町民等に対して送信されていたのか,
あるいはどの程度の頻度・回数・人数に送信されていたのかという事実を
取り調べることは,同じく,本件文書の客観的意義を明らかにする上で不
可欠なものである。なぜなら,本件電子メールは,それまでの186通の
電子メールと同様の形式・方法で送信されたものであり,本件文書の客観
的意義は,従前の電子メールの送付状況について正確に把握することによ
りはじめて明らかになるからである。なお,この点については,検察官も,
弁護人らの控訴趣意書を受けて補充捜査を実施し,検第1号証として捜査
報告書の取調べを請求していたのであり,証拠調べの必要性を自認してい
たのである。
以上によれば,弁護人が控訴審において請求した各証拠は,いずれも控
訴趣意書に包含された事項を調査するに当たり,その取調べが不可欠なも
のであって,取調べの必要性があることは明らかである。

5 小括
以上のとおり,弁護人らの控訴審における事実取調べ請求は,いずれも
「やむを得ない事由」があり,また,少なくとも証拠調べの「必要性」が
あることは明らかである。
したがって,これらの事実の取調べを経ずに弁論を終結したことについ
ては,刑事訴訟法第393条第1項の解釈を誤った法令の違反があり,さ
らには審理不尽の違法があるから,同法第411条第1号の規定により破
棄されるべきである。

第15 結論
以上のとおり,原判決の判断には明らかな判例違反があり,これが判決
に影響を及ぼすことが明らかであるから,刑事訴訟法第405条第2号,
第410条第1項の規定により破棄されなければならない。
また,原判決には,判決に影響を及ぼすべき法令の違反(審理不尽等)
があり,さらにその結果,判決に影響を及ぼすべき重大な事実を誤認して
判決をしたものであるから,同法411条第1号,第3号の規定により,
破棄されるべきものである。
さらに,万が一,被告人が有罪であるとしても,被告人に対する量刑は
甚だしく不当であるから,同条第2号の規定により破棄されるべきである。
以 上

昨日、最高裁から上告を棄却するとの報告がありました。

昨日、神奈川県の自宅に最高裁から上告棄却の報せが届いたと連絡がありました。
一審、二審の時には無罪になることを大いに期待したものですが、
このたびは、多分棄却されるだろうと思っておりました。
上告するには、上告趣意書というのを弁護士さんが書いてくれますが、
この内容は素晴らしいものでした。
にも拘わらず、何故私が多分棄却されるだろうと思ったか?
それは我が国の司法は正義から大きく外れていることを知ったからです。
私が一審で下された判決は「禁固6月、執行猶予5年」という内容ですから、
現在でも私は普通の生活を営んでありますが、
全くの無罪の方が検察に国家権力を勝手に使われて、身柄を拘束されたり、
死刑を宣告され、何十年も刑に服している方が余りにも多いのです。
国家権力で無罪の人が拘束されるのは
中国や北朝鮮だけだと私は思っておりましたが、何と我が国も同じです。
警察は検察の使いっ走りの狗(いぬ)となり、
裁判官は検察の従順な下僕に成り下がっているのが現状です。
そして、検察は「無罪の人間を起訴して犯罪人にして一人前」
と言われている職場です。
我が国の司法は談合と癒着の世界です。
このブログに上告趣意書の全文を掲載しますので、かなりの長文ですが
興味のある方は読んでいただければと思います。

二、三日中にアップしたいと思います。

あれから一年が経ちました。

逮捕されてから、丁度一年が過ぎました。

最初「私は法に触れるようなことをしてしまったのかもしれない」
と思いましたが、どう考えても私は法に触れるようなことはしていないと
確信したので、一審の判決に対して控訴し、
控訴棄却に対しても、最高裁に上告して闘っているのです。

事件のあらましを述べます。
選挙の告示が明日に迫った日に、職員と思われる人から
「労組委員長が職場や職員の家を回っている。
自分の家に来られたら断ることもできずに苦痛である。
何とかしてくれ」
との差出人不明の手紙が私の自宅に届いたのです。
選挙が近くなってから私へ、労組の委員長そして労組の
幹部がが選挙違反まがいの
ことをやっているとの情報が入っていたので、選挙違反を防ぐ意味で
私はその手紙をスキャンして、職員全員に送信したのです。
告示もしていたので、「コメントはしません」と書いての
メールでした。

その内容には「町長、頑張って当選してください」と言うような
エールも入っておりましたが、それは単に時候の挨拶と
なんら変わりありません。
しかし、警察、検察はそれにこじつけて、
これを「投票依頼」と決めつけての逮捕でした。

後から、警察の供述調書がねつ造であったことも分かりましたが、
札幌高裁はそれを調べようともしませんでした。
裁判官として事実認定をしようともしなかったのです。

そして、判決の控訴棄却の理由には、
検察官の○○と審議しての結果と書いておりました。

一審では「弁護人の○○と検察官の○○と審議して」との
判決でしたが、高裁では検察官とだけの審議でした。
裁判は公平でなければならないのが原則ですが、その原則さえも
守っていないのです。

裁判官と検察官の癒着をまざまざと見せられました。

何故このように簡単に冤罪が引き起こされるのか、私なりに
調査し考えてみました。

我々国民が裁判官を罷免できる方法はたった一つ、
弾劾裁判だけです。
裁判官が弾劾されるには

「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと
決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない」
と憲法にありますが、この公の弾劾とは

[1] 職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠ったとき。
[2] その他職務の内外を問わず、
  裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき。

この二点です。
[2]とは、要するに破廉恥な行為をした裁判官という意味です。
これで罷免された裁判官は戦後9名です。

しかし、[1]の内容で罷免された裁判官は一人もいないのです。
戦後、68年間に[1]の内容で裁判官訴追委員会に申請があったのは
1万7千回以上あったにも関わらずです。
この内、2件は弾劾裁判所で裁判が行われましたが罷免まではいきませんでした。

何故、このような結果になっているか?
それはこの裁判官訴追委員会の事務局に裁判所から派遣された裁判官が
張り付いていて、裁判官が弾劾裁判にかけるかどうかの是非を決定していたからです。
それも歴代の事務局長が裁判官であったこともわかりました。

裁判官の罷免事項は限られており、

1.心身の故障のために職務を行うことができないと決定されたとき(裁判官分限裁判)
2.公の弾劾によるとき (64条)
3.国民審査において、投票者の多数が罷免を可とするとき(最高裁判所裁判官のみ)

この三点だけです。
2の、公の弾劾によるとき。とありますが、それは

公正な判断を確保するために司法裁判所による同輩裁判を避けるためにも
裁判官弾劾裁判所ご設けられているのです。

しかし、この裁判官弾劾裁判を行われるのには、裁判官訴追委員会という
関所をくぐらなければならないのです。
その難関の関所に「同輩裁判官」が居て、同輩裁判官の味方をしてきたのです。
だから68年間、裁判官がどんなに不公平な裁判を行っても、一人として
罷免された裁判官がいなかったのです。

その結果、裁判官は検察の言いなりの判決しか行われずに
冤罪被害者を輩出してきたわけです。

裁判官の一丁目一番地は「疑わしきは罰せず」です。
しかし、日本では検察官の言いなりになっているので
「疑わしきは罰する」になっているのです。

アメリカは12人の陪審員で判決を出すのですが、
一人の陪審員が「無罪」と判断すると「無罪」になるのです。
これは「疑わしきは罰せず」の原理に従っているからです。
多数決ではないのです。

日本の司法制度はかなりいい加減です。
私はこのいい加減な司法制度を変えるためにも
闘う覚悟です。

裁判所での闘いもさることながら、政治家の方たちにこの現状を
知らせて「冤罪被害者の絶滅」を促進したいと思います。

上告の手続き

昨日、札幌高裁で上告の手続きをしてきました。
私を支援してくれている方へ次のような文章を送ることとしました。

平成25年10月22日

「佐藤克男の冤罪を晴らす会」の皆様へ

   控訴審を終えて
           佐藤克男
 先ずは、皆様のご支援のお蔭で、
控訴することができましたことに感謝申し上げます。
その結果、10月15日札幌高裁において控訴審の判決が降りました。
「控訴棄却」ということでした。
 弁護士の先生には、私の思いの丈、
そして私が無罪であることを法的に証明した
真摯な控訴趣意書を綴っていただきました。
また、控訴審前日(9月10日)に明らかになった
「警察による供述調書のねつ造」についての
証拠及び、証人の申請も札幌高裁に申請していただきましたが、
それらも含めて全て却下となりました。

 判決理由を読みましたが、控訴趣意書に対しての反論である、
検察側の答弁書の書き写しと揶揄されても仕方がないほど、
検察の言いなりの内容でした。

 一審の判決も同じでした。
我が国では、起訴されたら99.9%が有罪とされるのですが、
これは検察の責任というより、裁判所が有名無実化されている証拠です。
一審も控訴審も検察の言いなりの判決でした。
これでは裁判所の役目がなしていないそのものです。
 裁判所が真面目に機能していない、
裁判官が働いていないと言われても仕方無い状態です。
 判決を読みましたが、裁判官としての意見が皆無でした。
検察官が書いた文章のコピーではないかと思ったほどです。

 日本の司法がこれほど腐敗しきっているとは、思ってもみませんでしたが、
残念ながら警察官、検察官、裁判官
そしてマスコミの癒着と腐敗が日本の司法を中世並みと
世界から嘲笑されるような事態に追い込んでいるものと思います。

 一昨年、前検察庁長官は「検察の理念」という
検察官の姿勢を改めるための趣意書を発表しましたが、
その内容はいささか残念な内容で、その三項に

3 無実の者を罰し,あるいは,
真犯人を逃して処罰を免れさせることにならないよう,
知力を尽くして,事案の真相解明に取り組む。(原文の通り)


とあります。
これは現実に意図的に「無実の者を罰し、真犯人を逃して」きたから、
このような注意をしなければならないのです。
まだ、2年も経っていないのに現場では今も平気で冤罪が作られております。

 私はこの控訴審の結果を受けて、
更にこのような理不尽な世の中に警鐘を鳴らすためにも、
最高裁へと上告することをご支援いただいている皆様へご報告申し上げます。
私の友人の中には、
「お前が選挙違反しなかったことはわかったから、もういいではないか」
と忠告してくれる方もおりますが、
ほとんどの方が、そのような気持ちで泣き寝入りをしてきたのです。
だから、冤罪被害者が後を絶たず毎日、毎日続出しているのが現状です。 
どうか、私の意を汲んでいただき、今後もご支援のほどをお願い申し上げます。

控訴審の結果

控訴審の結果が出ました。
「控訴棄却」でした。
控訴棄却とは
「控訴による不服申し立てに理由がないとして、原判決を維持すること」
つまり、一審判決を支持するとのことです。
始めからわかっておりましたので、次の文章を作って、マスコミ、また傍聴者に
手渡ししました。

                  平成25年10月15日
                      佐藤克男
「札幌高裁は札幌高検の配下なのか?」

我が弁護団は森警察署が供述調書をねつ造したことが判明したので、
そのねつ造された供述調書の実物の証拠提出と
そのねつ造を証言する証人の申請をしたが、
9月10日の控訴審では検察の言いなりになり、札幌高裁は却下したものです。
その却下した正式書類(謄本)の到着を待って、
同じ証拠の提出と証人申請の「弁論再開請求書」を札幌高裁の
山本哲一、高橋正幸、石川真紀子の三人の裁判官に申請したが、
「当裁判所は、検察官の意見を聞いた上、次の通り決定した」
との却下の通知書を郵送してきたのです。

 検察は警察と共犯の上、ねつ造した可能性の強い組織です。
「泥棒に泥棒したか?」と聞くようなものです。
 これほど、
山本哲一、高橋正幸、石川真紀子の三人の裁判官は愚かなのでしょうか
日本の司法は中世並と諸外国から蔑まれておりますが、
これほど腐敗しきっているとは国民の一人として情けない気持ちでいっぱいです。
 現在、検察の不法極まりない動向には多くの国民は憤っております。
多くの冤罪被害者を続出させておりますが、この片棒を担いでいるのが、
裁判官であることが判明しました。

 私はここに、即刻「上告」を決意し、またこの
山本哲一、高橋正幸、石川真紀子
三人の名ばかりの裁判官の弾劾の手続きに入ることにします。

この控訴審を通じて、国民の良心の拠り所が今の日本には無いことが
よくわかりました。
 裁判官とは確実な事実認定をした上で判決をすることが第一の責務ですが、
この三人は事実認定を完全に省きました。
いや、省いたというより、検察と裁判官が談合しているのでしょう。
そのようなことが、
日常茶飯事行われているのが我が国の現状だと確信したものです。
 どのような正義感溢れる弁護人に要請しても、
悪質な検察官、裁判官にかかっては無力であることがよくわかりました。
最後に門田隆将氏の著書「裁判官が日本を滅ぼす」を読めば、
いかに日本の裁判官が愚かで悪質かがわかります。

以上

行動が大切!

私の信条は「座して死を待つべからず」です。
この度の裁判官の
「これで結審とする」の発言には驚きました。
やるべきことをやってから、この台詞は言ってもらいたいと思ったものでした。
弁護人も何ら為すべきことができませんでした。
裁判官の怠惰の一面を観た思いでした。

私は弁護人に下記の文章を送り、次の一手をお願いしました。
「佐藤克男の冤罪を晴らす会」の代表の一人である
中村功さんは、最初から「これは最高裁まで行く。だから札幌の
弁護士ではなく、東京の弁護士を依頼しなければならない」との
意見でした。

以下、私が弁護人に送った文章です。

平成25年9月15日
錦織・新阜法律事務所 御中
佐藤克男

 10日の控訴審ではご苦労様でございました。
あれだけの控訴趣意書を書いていただいたにも関わらず、
札幌高裁の裁判官の態度は腑に落ちないことだらけでした。
 新しい事実が判明したから、
それも、警察官の供述調書のねつ造が判明したから証拠提出の申請と、
それを証明する証人の申請を要請したにも拘わらず、
一審で処理できたはずとの理由で、口に入った砂を吐き捨てるが如くの却下でした。

 錦織先生、新阜先生に一言も言わせない態度での却下そして、
結審の宣言でした。
 刑事訴訟法382条の2、393条第1項には
「やむを得ない事由によって第一審の弁論終結前に取調を請求することが
できなかった証拠」
の場合は、
その限りに非ずと明記されております。
警察官の供述調書のねつ造は、裁判官でも弁護人でも判るはずがありません。
我々一般人は当然、裁判官、弁護人も警察官や検察官がねつ造するとは、
よもや考えもしません。

まさに
「やむを得ない事由によって第一審の弁論終結前に取調を請求することができなかった」事案の最たるものです。

供述調書のねつ造は警察官の犯罪行為であり、
そのような事実を調べないで結審するとは、
裁判官も共犯だといわれても致し方ないことだと私は思います。
 特にこの事件は、検察官の挙動不審も数多くあり、
森警察署が一審の判決が出る前に北海道警察本部から表彰をうけるような、
手柄のために前町長である私を逮捕、起訴した疑惑だらけの捜査でした。
まして、私と職員は一審の判決まで接触も禁止されておりました。
職員の供述調書がねつ造などとは思ってもおりませんでしたし、
職員も警察に何度も言われて仕方なくサインしたのだろうとしか
思っておりませんでした。

 裁判官の職責は第一に事実認定であり、
その結果での判決であることは、法律に素人の私でも判りますが、
あの三人の裁判官はこの事実認定をするための手続きを完全に無視しました。
休廷でのあの5分間で、本当に三人で合議したのでしょうか。
結論が先にありで、お茶でも飲んで休廷を解いての再開だったのではないでしょうか。

合議したのなら、それなりの公文書があるはずです。
私はあの短時間で合議したとは思えません。
あの証拠提出の申請と、証人申請を却下した、裁判官三人の合議の公文書の提出と、
その文章のPCでのプロパティの提出を求めていただきたいのです。
何故なら、本当に合議の事実があったら、
PCのプロパティには必ず記録(時間等の)が残っているからです。
本来なら、高等裁判所での事務手続きをそこまで信用しないことはあり得ないのですが、現在の私はあの裁判官の態度から推察して、信用できません。

 警察官も検察官も信用できませんが、裁判官も信用できません。
当然、提出を申請しても応じないと思いますが、
私の知っている国会議員に話したら、
弾劾裁判所で提出させようかとも言ってくれております。
今までの弾劾裁判所はほとんどが破廉恥な行為をした裁判官を弾劾しているが、
本来の弾劾裁判所はそんなことではなく、
裁判官として相応しいかどうかを判定することが本来の目的であるから、
供述調書のねつ造が判明しても、事実認定を怠るような裁判官こそ
弾劾裁判所で公けに裁くべきだと言ってくれました。

 両先生には、どうか札幌高裁に私の意思を伝えていただきたく依頼申し上げるものです。
被告人といえど、日本国の国民です。
公正な裁判を受ける権利は持ち合わせております。
 警察官、検察官による冤罪被害者が数多く多発しておりますが、
我々一般国民の最後の正義を求めるところが裁判所です。
最後の砦でございます。
 この度の札幌高裁での控訴審が、公正であったとは、
あそこで傍聴していた方たち全員が思っておりません。
 どうか、私の意を汲み、札幌高裁への申し入れを依頼申し上げます。
以上


これに対して、弁護人は札幌高裁に素晴らしい
「弁論再開請求」を提出してくれます。
その内容は10月15日の後にお知らせします。

控訴審一回目を終えての報告

この場を借りて控訴審の現状を報告させていただきます。

控訴審一回目を終えての報告

             佐藤克男

 「佐藤克男の冤罪を晴らす会」の皆様へ

皆様のご支援のお蔭で9月10日、札幌高裁で控訴審を迎えることができました。ありがとうございます。
錦織(にしこおり)淳主任弁護士、新阜(にいおか)直茂弁護士に弁護を依頼しました。控訴審を迎えるには、控訴趣意書という何のために控訴するのかという趣旨を書いた趣意書を札幌高裁へ提出しなければなりませんが、7月末に提出しました。
 内容を読んだとき、私は実に納得のいく内容で、裁判官もこれなら理解してくれるだろうという、微に入り細に穿(うが)つ内容でした。
 この控訴趣意書を読んだ札幌高裁はすぐに札幌高等検察庁に、この控訴趣意書に対しての答弁書を提出するように指示を出しました。
 要するに反論があるなら反論を述べなさいということです。札幌高検から答弁書が届きましたが、それは実に反論になっていない軽薄な内容でした。その上、一度提出すると言った証拠を途中から提出しないと拒否するようなちぐはぐな有様でした。
 そのような中で控訴審を迎えたのですが、控訴審の前日に警察が作って職員に署名捺印させた供述調書が捏造だったことが分かったのです。
 それは職員の一人が私に「私は三回事情聴取を受けましたが、一貫して“あのメールは前町長が当選を依頼して送信したものではありません。役場の中で職員が選挙運動をしていることを注意したものです”と答えております」とのことでした。その方は証人になってもよいとのことで、控訴審の前日に弁護士から事情を聴かれ、弁護士から自分が署名捺印した供述調書を見せられ「これは私が署名捺印したものとは全く違います」と言い出し、「これも言っていない。これも言っていない」との連発で、最後には「私がサインした調書は6ページか7ページくらいで、こんな10ページをこえるものではありません。そして結論が違います。これでは私がこのメールを前町長の当選依頼だといっているのと同じではありませんか。私は当選依頼ではないと言っているのですから真逆です。私のサインした供述調書は別のものです」と言う内容を言われたのです。
 当然、弁護士は「明日、控訴審が始まる前の打ち合わせで、このことを裁判官に言って、この供述調書の実物の証拠提出と、この職員の証人申請をする」ということになり、実際に控訴審の場で申請しました。裁判官は休廷して5分ほどで戻ってきましたが、そこで宣言したのが、
「これは一審で調べることができたはずだから、却下する」とのことで、いきなり「これで結審する」とのことでした。
結審するとは、この裁判の審理をすべて終了するということです。
審理とは
1 事実や条理を詳しく調べて、はっきりさせること。
2 裁判の対象になる事実関係および法律関係を裁判所が取り調べて明らかにすること。
ですが、私は審理を尽くしたとは言い難いというより、全く審理をしていないのと同じだと思います。
弁護士でも裁判官でも警察や検察が供述調書のような大切な公文書を捏造するなんて思ってもいないはずです。
刑事訴訟では、「やむを得ない事由によって第一審の弁論終結前に取調を請求することができなかった」場合は、新しい証拠を採用しなければならないはずです。何故なら、裁判官は審理を尽くして事実認定をしなければならない職責があるからです。
警察の供述調書が捏造されたものであったら、事実認定はひっくり返る要素が充分にあるのです。この供述調書ねつ造は北海道警察本部函館方面本部森警察署と函館地方検察庁による重大な犯罪行為です。
まさに「やむを得ない事由」の最たるものです。
私は、道警本部や函館地検はこの度の事件で全く信用できなくなりました。
嘘やこじつけが多いからです。
その上に供述調書まで捏造されていたら、どうして信用できますでしょうか。
裁判所は国民が最後に信頼できる正義?の組織であり、最後の砦です。
警察も検察も正義の組織ではなく、国家権力を恣意的に扱い、多くの冤罪を大量生産するシンジケートです。
日本の警察は検挙率が高いといわれておりますが、嘘です。無実の人でも犯罪人にでっち上げるから検挙率が高く見えるだけです。

このままで行けば、10月15日に結論が札幌高裁で言い渡されるそうですが、結果は火を見るより明らかです。
まだ、正式に弁護士の先生と打ち合わせをしておりませんが、電話で話しましたが、手の打ちようがないようです。
 私は、この度の事件を「なぜ、私に起きたのだろう」と獄中でも真剣に考えました。結論は、「これほど矛盾した司法に風穴をあけるために天が私を選んだ」と思い上がっております。
札幌高裁の裁判官の名前も知りませんが、あのような形で「結審」を申し伝えるのなら、裁判官は不要です。パソコンで良いのではないでしょうか。
門田隆将氏が「裁判官が日本を滅ぼす」という名著を執筆しておりますが、これほど、裁判官が酷い状態になっているとは思いもよりませんでした。
我々国民は誰に、そしてどこに正義を求めればいいのでしょうか?
多くの無辜が泣いております。
そのためにも不肖ながら佐藤克男が立ち上がらなければと覚悟を決めました。
取り急ぎ、皆様にご報告申し上げます。

昨日の控訴審

驚きました。
昨日、控訴審で新しい証拠の開示を求めたのですが
検察からは拒否されました。
これは推測したとおりでしたが、札幌高裁からも拒否されました。
その理由は、一審の時に調べられたはずだということです。
その新しい証拠というのは、
警察が提出した供述調書が捏造されたものであるから
証拠として提出してください、というものでした。
提出しないということは、「捏造」を認めたことです。
この供述調書は私の事件の場合、職員から事情を調べて警察が書いて
職員が納得した場合、それに署名捺印したものです。
その供述調書も警察が書いて役場の職員が納得して署名捺印したのですが、
裁判所に提出された供述調書はその職員が納得して署名捺印した内容とは
まったく反対の内容になっていたことが分かったのです。
いわゆる、「捏造」だったのです

裁判とは真相を究明して、それに基づいて判断しなければならないものです。
東京高裁の裁判官を8年間務め、現在慶応大学法科大学院の客員教授であり、
弁護士でもある
原田國男先生は「逆転無罪の事実認定」という著書の一番最初に
「事実認定は、被告人の人権保障に直轄する」
また「事実認定はオール・オア・ナッシングの判断で
無罪の者を刑務所にいれてしまう、
さらには死刑にしてしまうという、
まさに正義に反する致命的な結果を招くおそれがある」

と記しております。

札幌高裁の裁判官は、事実認定よりも手法の方が大事だと主張したのです。
私は一人の国民として、こんな筋の通らないことが信じられません。
判決の前提は証拠や証言です。
その証拠の供述調書が捏造されていたことが分かっても、
無視する裁判官がこの国に居ることが信じられません。
検察官が冤罪を大量生産しているわけですが、
それを後押ししているのが、裁判官です。
起訴された刑事事件の99.9%が有罪になっておりますが、
これは裁判官が居なくてもいいということの証しです。

八田隆さんは「蟷螂(とうろう)の斧(おの)となろうとも」というブログを
書かれておりますが、これは「カマキリはどんな大きな相手に対しても
戦うファイティングポーズを示して、実際に向かって行く」
これに習うのだという意味だと思います。

私、佐藤克男もこのような理不尽に対して黙っているわけにはおられません。
「蜂の一刺し」ではありませんが、しっかり戦わなければならないと
考えております。
もちろん、暴力をふるうということではなく、蜂のような弱い存在でも
国家権力のような大きな組織に向かって行くのだという意味です。
これは単に佐藤克男の戦いではなく、多くの冤罪被害者のためと、
これから将来、冤罪被害者をなくするためであります。

ひとまず、昨日の控訴審の結果をお知らせさせていただきます。
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