ダイオウイカ明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。年越し読みの一冊がこれでした。そんな年初も悪くないんじゃないかと思わせてくれる楽しい一冊。雑誌『an・an』の連載1年半分をまとめたもの。短歌を詠んだことのない二人が、「短歌上等!」と挑戦状を叩きつけ、ゲストを招いて様々なお題を出させてはそれについて一句を読んでみる。ライブ感いっぱいの学習過程をそのまま連載企画として成立させ、こうして一冊の本にまとめた編集者のアイデアはなかなか良いぞ。この本の最初にある「はじめに」を書いているのはその担当編集者(辛島いづみさんという方)▼せきしろ氏の文章に触れるのは実はこれが2度目。話題となった小説は未読ながら、お笑い芸人のピース又吉との共著は、そのタイトルが醸し出すように不思議なムードが満載だった。そしてそんなせきしろ氏の気弱な優しさには好感を抱いていた。対する西加奈子という小説家のこともわたしは大好きなので、その二人がセッションした新刊本の存在を知り早速チェックしてみた次第。ちなみにこの新刊本の情報はせきしろ氏本人のツイッターを読んで知りました▼最初のゲストが穂村弘さんで次が東直子さんだから、企画の当初はちゃんと短歌を解かっている人から教えを乞おうという意思表明が感じられる。それが次第に知り合いの仲良しゲストへと傾斜していくのだが、南海キャンディーズの山ちゃんだったり、サンボマスターのボーカルの山口隆だったり、本好きを売りにしている女優のミムラだったり、いずれも言葉への関心が高いメンツを集めているので3人の会話の楽しさもよく伝わってくる▼こうゆう感想は一般的な有用性はないのだが、もしかしたら西加奈子はせきしろ氏を好きなのではないか。それもどうやら片思い。せきしろ氏は無力感漂う発言を随所でしていながら、それでいて女性を惹きつける魅力のある男性なのだということも伝わってくる。母性本能をくすぐるようなタイプではなく、もっとなんだか摩訶不思議な人間力。いいコンビなので、是非とも続編か別企画のコラボ連載を切望です▼装幀画は100%ORENGIの及川賢治氏。そしてこの本の不思議なタイトルの意味は・・・
ダイオウイカは知らないでしょう。このタイトルに込められた意味は本文の中で明らかになりますよと、編集者が「はじめに」のなかで断っている。けれどもいつまで経っても当該個所が出てこず、結局最後の最後に詠んだお題がらみの歌からとってきたのだった。最後まで読ませる戦略として納得できます。歌詠みを終えた二人が同じ題材をテーマに書いたクロスエッセイが数篇載っているのだが、これも面白い。そしてここでも、せきしろ氏の文才というか、文章ににじみ出ているなんとも味のある人間味に惹かれてしまうのだ。予め備わっている才を感じる。それをとても大事にしながら自然体に務めている創作家の影がクッキリ浮かんでくる。せきしろ氏はTBSラジオの番組「山里亮太の不毛な議論」の構成作家をやっているのも初めて知った。ということは、わたしは局でニアミスしているのかもしれない。ヒゲもじゃの痩せぎすの覇気のなさそうな男を水曜の夜に何度か見かけたことがあったのだが、もしかしたら彼がせきしろ氏なのか。