2009年09月21日

有料道路の料金に係る地方からの提案型社会実験の効果に関する分析

このエントリーをはてなブックマークに追加
follow us in feedly
有料道路の料金に係る地方からの提案型社会実験の効果に関する分析
松田和香 塚田幸広
国土技術政策総合研究所道路研究部道路研究室
第30回土木計画学研究発表会 NO.80 2004

昨今の経済情勢の影響や全国均一的な料金設定による有料道路の割高感などにより、既存の有料道路が十分に有効活用されていないケースが少なくない。
しかし、有料道路の料金設定方法等を工夫することにより、有料道路及びその他の道路ネットワークの一層の有効活用を図るとともに、並行する一般道路の渋滞緩和や沿道環境改善、交通安全対策などに資すると考えられる。


2.実験タイプの分類および実験の効果

各実験は地域の特性や実験の目的がそれぞれ異なるため、効果を一概に比較することは困難である。
そこで、表-1 に示すように、各実験を実験の目的別に1〜5の典型的な5 タイプに分類した。
1 大都市近郊の交通対策
2 大都市の沿道環境対策
3 地方都市の通勤混雑対策
4 地方都市の沿道環境対策
5 観光地の交通対策




1大都市近郊の交通対策
【大阪府 阪神高速11 号池田線】

実験結果:一般道路の交通量が約3(平日19,400台/ 日→18,800 台/ 日) 〜 6 ( 休日14,300 台/ 日→13,500 台/日)%減少したものの、一般道路の渋滞長や所要時間の改善に影響を与えるほどの結果は得られなかった。
目的:池田市周辺部の国道176 号線、173 号線の渋滞緩和
期間:平成15 年11 月17 日〜30 日
料金:約33%割引
対象:全車種


3 地方都市の通勤混雑対策
【新潟県新潟市 日東道・北陸道】
実験結果:朝の渋滞長が約4 割(約2km)減少し、朝の渋滞継続時間が約4 割(約80分)減少した。また、渋滞損失額が、約22 億円/12h・年間改善した
目的:並行する国道7 号、8 号の渋滞緩和
期間:平成15 年10 月1 日〜31 日
料金:約50%割引
対象:普通車、軽自動車、ETC 全車種


4 地方都市の沿道環境対策
【静岡県 東海4 バイパス(藤枝、掛川、磐田、浜名)】
実験結果:延長無料時間帯において、一般国道の交通量が約13%〜39%(800 台/5h〜1,800 台/5h)減少し、特に大型交通量の転換は、約1.7〜3.8 倍となった。また、渋滞長はほぼ解消( 最大2,000m→0m)し、騒音値は0.4〜5.5dB 改善した。
目的:並行する国道1 号(現道)等の渋滞緩和、沿道環境の改善等
期間:平成15 年11 月4 日〜平成16 年1 月30 日
料金:現行の無料時間(22 時〜6 時)を(20 時〜9時に)5 時間拡大
対象:全車種




(1)有料道路の交通量の変化
全体的に、実験前と比較して有料道路の交通量は増加していることが確認された。
しかし、料金、対象区間の設定、割引率、対象車両、割引時間帯、現道と有料道路の位置関係などにより効果に大きな差が生じていることがわかる。

(2)料金弾性値の特徴
料金弾性値とは、交通量の料金に対する感応性の高さを表す指標であり、下式のように表される。

trafficvolume
elasticity

料金弾性値が1 を上回る場合は収入増となり、施策の本格実施が可能、
逆に1 に満たない場合は減収となり、本格実施には社会的便益を勘案しつつ、実施方法等の検討を進める必要があると解釈できる。






・実験の結果、全体的に一般道路から交通が転換し、有料道路の交通量増加、一般道路の渋滞緩和等について効果が発現している。

・特に、地方都市の通勤混雑対策を目的とする実験では効果が大きい例が多く、河川による市街地分断やボトルネック箇所の存在など課題があり、有料道路に転換させたい交通が明確であった地区は効果が大きい。

・同様に、地方都市の通勤混雑対策を目的とした実験の料金弾性値からは、特に朝夕に絞った実験の効率性が高い傾向や、通過交通および休日・余暇の交通にも有効である傾向が見られた。

・ただし、料金、対象区間の設定、対象車両、割引時間帯、現道と有料道路の位置関係等により効果に大きな差異も生じている




トラックバックURL

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星
 
 
 
サイト内検索
にほんブログ村 科学ブログへ
にほんブログ村
adsense
Archives
amazon
blogchart
QRコード
QRコード
Recent Comments