2011年04月24日

本音を調査するためのシステム設計

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多様な視点からの意見表出を促す 非対面同期型議論システムの研究
王慧 北陸先端科学技術大学院大学

1.3 意見表出への阻害要因

このように,従来の会議では発言の論理性と一貫性とグループの社会的な構造制約により,個々の参加者の中にある様々な視点からの意見を自由に表出することができていないと言える.
既存研究では,参加者の活発的な発言を促すため,コンピュータを介した匿名コミュニケーションを用いて議論することにより,他者の反応が気になって意見がいえないといった問題が回避できることが指摘されている.
[Igarashi,Lock-on-chat: boosting anchored conversation and its Operation at aTechnical conference]
[グループレビューにおける匿名性の利用に関する研究]
[「あと一歩の勇気」を引き出すコミュニケーションインタフェース]
しかしながら,これらの従来の試みでは,個々参加者の中にある様々な視点からの意見情報を重視されず,表出を促すことが実現できていない.
そこで本研究では,グループ議論での参加者それぞれがもつ多様な視点からの意見を引き出すことを促進するため,オンラインコミュニケーションメディアが本質的に有する匿名性をより効果的に活用する,非対面同期型議論システムについて検討する.



2.1 CMCにおける自己開示の促進に関する研究

ラインゴールド[Community:Homesteading on the Electronic Frontier.Reading,MA]は,サイバースペースでは,「メディアは,人々がしばしばスクリーンやペンネームを介さない状況でしたと思うよりも,はるかに詳しく自分たちをさらけ出してしまうような場になるだろう」とも述べている.
同様に,ウォレス[The Psychology of the Internet.Cambridge]は,「コンピュータを前にするとより多くの自己開示をするという傾向は,インターネット上で生じている事象の重要な構成要素になっている」と述べている.コンピュータを利用する様々に異なる状況で,自己開示についての多くの研究が行われている





2.3 六色ハット発想法

デボノ博士の「6色ハット発想法」とは,図10に示したように,思考の切り換え,単純化,結合化という3つのステージによって,討議がどんどん進化していき,よりよい結論に導かれるというものである.つまり,集団で討議を行うとき,立場の異なる6種類の思考を持つことを「6色の帽子」を被りわけて発言するという発想法である.それぞれの色によって思考の視点が異なる.








      立場 役割
第1ステージ 感情 常に怒りや悩み喜びなどを感情的に発言
      事実 常に事実のみを淡々と発言する
第2ステージ 肯定 物事を肯定的に捉え賛成の発言をする
       否定 物事を否定的に捉え賛成の発言をする
第3ステージ 建設的 常に冷静に会議の流れを聞き 時々話をより高い次元から建設的に話題を切り替える
       コーディネート 会議には直接参加することなく常に会議の流れだけを追い より建設的なものになるよう会議の流れをコーディネートする



2.4 本研究の位置づけ

匿名コミュニケーションにおいては,各人の言動に対する責任感が低下し,議論を乱すような行為が生じる危険性があるが,これに対する有効な抑制手段が提案されていないため,議論が非生産的になることが危惧される.
6色ハット発想法の性質を用いたメタ認知スキルの育成支援の研究において,6種類の異なる視点を与えることにより,思考の切り替えや発言の促進が可能となることが示された.しかしながら,人間の視点は多様であるので,わずか6種類の視点に縛ることは,知識創造活動にける人間の柔軟な思考を損なうことも懸念される.

2.4.1 任意ハンドルネーム発言機能
これは,議論中,参加者が自由に任意のHNを追加し,これらを適宜切り換えて発言できるようにする機能である.これにより,単一名の使用によるアイデンティティー維持圧力から参加者が解放され,個々の参加者がもつ多様な視点から意見表出を促すことできると考えられる.

2.4.2 「視点押付機能」
本機能は,ある参加者が他の参加者のある発言に対し,何らかの特定の視点での考えを求めたい場合,発言の「発言番号」と,求めたい「視点」を入力し,指定した発言の発言者にその「視点」を押付ける機能である.
また,「任意HN発言機能」を利用によって発言者を特定することが難しくなる.このことは,各自の言動に対する責任の低下を招くことが危惧される.これにより,たとえば,過度の非生産性的な発言によって,議論の進行が防げられるような場合には,「視点押付機能」を利用して,発言の方向性を変えて,議論の本題に戻る役割があると考えられる.



catchout1



実験用システムの設定は表3に示したように,機能の異なる4つのチャットシステムの比較実験を行った

system1 system2 system3 system4
実名発言機能 実名発言機能
任意HN発言機能
実名発言機能
視点押し付け機能
実名発言機能
任意HN発言機能
視点押し付け機能




4.1.2 System1,2,3,4における発言数と[実名][HN][押付]の発言割合

発言数を表7に示す.合計した結果から見て,発言数が最も多いのは, System4であった.その次, System2, System3, System1であることがわかった.

また,3つのグループの視点押付られ発言が全体発言の10%以上を占めていることがわかる.それより,「視点押付機能」がより多く発言を引き出すことが可能となる結果が得られる.



また,各被験者は「任意HN発言機能」を利用する際,いくつのHNを使って発言したか,図22に示す.
2つ以上のHNを使って発言した被験者が半数以上を占めたことがわかった.




事後アンケート
「任意HN発言機能」について

自信のない発言や別の視点での発言をしたいときに利用される.
一方,匿名性が高くなると,ふざけた発言が多くなることと指摘された.

「視点押付機能」について

どんな目的を用いて他の参加者に視点を押付けたかという設問の答えの中で,「本音を引き出す」や「視点を切り替えて考えてほしい」や「議論の方向を直すため」などと述べた.

一方,「「視点押付機能」は遊びでしか使わなかった」や「悪ふざけをするとき,使った」という回答もあった.
そのため,「視点押付機能」の有用性が証明した一方,不適切の使用を防ぐ方法も必要となる.

4つのチャットシステムの中,発言しやすかったのは11名の被験者がSystem2と答えた.
また,コメントの内容をみると,「任意HN発言機能」の利用は,発言しやすくなる一方,非生産性的な発言が多くなる問題が生じる.



※匿名性が高いと発言数が減る






第5章 考察

発言数を分析した結果は,
発言数が最も多いのは, System4である.
発言数が最も少ないのは, System2である. 被験者による主観評価の結果は,
最も発言しやすいのは, System2である.
最も質問しやすいのは, System2である.
最も様々な視点を用いて,議論を参加したのはSystem4である.
最も他の参加者の視点が共有できたのはSystem1である.


本システムでは,表8に示したように, HN発言割合が高くなるほど,視点押付けられ発言の割合が高くなる傾向から,多様な視点からの意見をより容易に表出することを可能とする「任意HN発言機能」の効果が見られた一方,
高い匿名性であることで,議論が散漫になる問題を,

視点押付機能により,起こりにくくなる働きが見られた.


















欺瞞尺度開発に向けての発展的研究 () ーパーソナリティ・タイプと嘘行動との関連ー
下村陽一 関口洋美 工藤力 大阪教育大学
大阪教育大学紀要.,教育科学 55. 1 2006


Pattersonは Mehrabianの実験に基づいて次のような示唆を行っている。
不安レベルの高い欺き手はあまり微笑みかけようとしないのに対して、不安レベルの低い欺き手は積極的に微笑みかける。
それは、社会的場面では、社会的技能の劣るものや、不安レベルの高い者は、欺瞞を行う場合に相手に対して否定的な感情を与えてしまい、社会的技能の優れた者や不安レベルが低いものは、相手をだまそうとしているときにも笑顔を絶やさずにいられるからである。

「迎合的演技タイプ」:相手を喜ばせるために演技をする
「他者志向性タイプ」:相手に合わせる、相手に従う
「状況対応タイプ」:その場をうまくやり過ごす
「自己顕示性タイプ」:自分をアピールする、場を盛り上げる
「欺瞞肯定タイプ」:欺瞞を肯定的にとらえる
「虚飾性タイプ」:実際以上に自分を良く見せようとする
「利得性タイプ」:自分の利得のために嘘をつく

本研究は、下村ら(欺瞞尺度開発に向けての発展的研究によって分類されたパーソナリティタイプと嘘行動における能力や頻度、感情的側面との関連を検討するものである。




IV 考察
嘘行動ごとに見てみると、"嘘をつく頻度"において最も多くのパーソナリティタイプで有意な差が認められた。
差が認められたパーソナリティタイプをみると、特に有意差が大きい4つのタイプは、状況対応タイプ、欺瞞肯定タイプ、虚飾性タイプ、利得性タイプであり、いずれも自己中心的なタイプである。
よって、頻繁に嘘をつく人は相手のことを考えるよりも先に、自分の立場や得といったものを優先的に考えると推測される。
..............................

嘘をつくのが上手い傾向にある人は、相手や場に合わせるのではなく、あくまでも自分主体で物事を進めていくのではないかと考えられる。


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”嘘を見破る能力”においては、他者志向性タイプ、自己顕示性タイプ、欺瞞肯定タイプの3タイプで有意な差が認められた。
ここで注目したいのは、他者志向性タイプ得点ではt値が負になっていることである。
つまり、嘘を見破るのが上手い人ほど、他者志向性は低いということである。

嘘を見破る能力の高さは、他人に振り回されず、嘘を否定していない態度から生まれると考えられる。
..............................


まとめて見てみると、”嘘後の不安”において不安が高い群は、”一般的に怖がり”である群と同様に、
他者志向性タイプ傾向が強いことがわかる。
加えて、嘘後の不安が高い群は、一般的に怖がりである群に比べ、さらに欺瞞肯定タイプ傾向が弱いといえる。
つまり、恐怖感のある人は嘘において他者をとても気遣い、また特に嘘後に恐怖感が高い人は、欺瞞そのものに消極的であると考えられる。


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「あと一歩の勇気」を引き出すコミュニケーションインタフェース
西田健志 五十嵐健夫 東京大学
第48回プログラミングシンポジウム報告集, 2007

1. はじめに

例えば、学会においては学生が目上の者に対して発言を躊躇するようなあまり好ましくない状況がよくみられる。このような状況はコンピュータを介した匿名コミュニケーションを用いることで改善されうるが、発言の影響力や発言に対する責任、あるいは教育上の配慮など新たな問題を生じる。
そこで我々は、発言に必要な勇気や覚悟を軽減しながらも発言の影響力を保ち、発言責任もないがしろにしないコミュニケーション方法として、傘連判状メタファを用いたコミュニケーションを提案する。


傘連判状を採用したコミュニケーションプロトコルは以下の通りである。
(1) 参加者は匿名で発言・問題提起し、加盟者を募る。
(2)他の参加者はその発言・問題提起を確認し、同調することを決めた場合には加盟する。
(3) 加盟者が十分な人数に達した場合、傘連判状が生成される。


我々は、このデザインを採り入れたチャットシステム Lock-on-Chat IKKIをUI の分野でもっとも活発なワークショップである WISS2006(2006 年12 月開催)において運用する。




3. 傘連判状(車連判状)
こうした署名形式は日本にのみ見られるものではない。例えば、イギリス海軍で同様の署名形式「ラウンドロビン」が見られるほか、朝鮮半島においても「サバル通文」と呼ばれる同様の連判状が作成されている。







背景

傘連判状を再現する上でまず重要となるのは、当時と現在の共通点・相違点を把握することである。最も大きな相違点は、会話にかかるコストや時間である。現代においては、ネットワークを利用することで瞬時に同士を募り、........

しかし、人間や会話の本質的な部分には共通点が多く存在すると我々は考えている。たとえば、地位が上の人物の意見や複数人の共通意見が重んじられること、重要な問題提起にはしばしば危険が伴うこと、などが挙げられる。ゆえに我々は、傘連判状が当時と同様に人々に受け入れられる可能性は大いにあると考えている


7. 議論
情報爆発時代における公共コミュニケーション
現代、傘連判状が見られることがほとんどなくなったのは、個人主義・個性教育などの思想的側面、核家族化や地域のつながりの希薄化などによる人間関係の縮小に因るものと思われる


このような公共コミュニケーションにおいては、適切な方法・場面で「個を殺す」ことが必要になるが、現代人はその術を失いつつあるのではないかと我々は危惧している。

たとえば、今では数多くのブログに同じような意見が書かれていることを即座に抽出することができるが、それらの主張が数に見合った影響力を発揮していると果たして言えるだろうか?
また、一個人のブログが匿名の大勢によって議論を飛び越えて悪戯に「炎上」させられるのを見過ごしていいのだろうか?

我々は、個を殺すことを自然体得的に行ってきた近世百姓の文化から多くを学ぶことができるだろう。そしてそれが機能として備わった環境の利用を通じて、人々が個を殺す術を取り戻すことにつながると我々は期待している。



















郵送調査の効用と可能性
松田映二 朝日新聞社 編集局 世論調査センター
行動計量学第35巻第1号 2008


日本では,これまで郵送法が多く用いられているにもかかわらず,必ずしも世論を探るための重要な手法だと認められてきたわけではない.その理由として,「回収率が低い」「代理回答が多い」という回収票の代表性の問題,さらに,「調査期間が長い」ことによる回答への影響や運用の問題,そして,「無記入や多重回答が目立つ」という調査員がいない自記式調査ゆえの管理の難しさの問題が指摘されていたからだと考えられる.


『世論調査年鑑』によれば,1970年度(昭和45年度)の実施報告件数は,面接調査247件でトップに対し,郵送調査は97件にすぎなかったが,2006年度(平成18年度)では,逆に郵送調査789件でトップ.面接調査は97件となり,面接調査の落ち込みに対応して郵送調査が飛躍的に伸びていることが分かる.この理由として,予算の削減や調査数の増大への対応,面接調査の回収率低下などが挙げられる.
また,調査員の不正も大きな問題(朝日新聞2005.08.06,09.06朝刊紙面)となり,調査員の介在しない調査へのシフトが起きている.
2010年の国勢調査では調査票を郵便で返送させることも検討されている.



3.1. 郵送調査の回収率は低いのか?

2007年度(平成18年度)版の『世論調査年鑑』では,郵送調査の平均回収率は47.7%と5割を切る.しかし,
.......................
つまり,「郵送調査の回収率は低い」のではなく,「郵送調査は高い回収率を得る可能性をもつ調査」と認識し直す方がよい.




3.2.2. 「微妙さ」と「社会的望ましさ」
面接調査が政府,大学,マスコミの一番信頼する調査として長く活用されてきた中で,電話法や郵送法との調査モードの違いによる回答差については,電話法や郵送法の回答に偏りがあるという指摘が目立った.

しかし,Tourangeau,et al.(The Psychology of Survey Response. 2000)は,調査員が介在しない自記式調査と介在する他記式調査では「微妙さ(sen-sitive)」と「社会的望ましさ(social desirability)」にかかわる質問で回答差異が表れることを指摘している.

.............

これらのことから,
郵送調査では内閣・政党支持の質問で「その他・答えない」が少なく反与党の回答をやや多めに捕捉するなど,政治状況を的確にとらえている.

また,見知らぬ調査員に自分の生活の満足度合いを聞かれる面接調査では,
内情はともかく「まあ満足」と答える人が多かったと考えられる.

これは,微妙さや社会的望ましさにかかわる質問であり,調査員がいれば,「自分の生活のことを突っ込まれたくない」とか
「自分の生活に不満を持っていることは社会的に望ましくない」ため,つい満足と答えてしまうモード効果を端的にとらえた事例といえよう.



3.2.3. 回答の質(無記入や多重回答)

郵送調査には,無記入が多いという弱点もある.質問の意図がわからなかったり,該当する選択肢が用意されていなかったりした場合に目立つ.これらは,面接法や電話法でもありがちだが,調査員が対象者と会話することでもっとも適当だと判断した選択肢が選ばれて無記入は無くなる.郵送調査では,この会話が成立しないために,無記入で跳ばすという行為につながる.しかし,こうした無記入が多いことは弱点ではあるが,悪いことではないかもしれない.

質問や選択肢の設定が十分ではないとか,そのテーマが対象者に十分認識されていないという調査主体側への貴重なメッセージとなるからである.






4.終わりに

本稿で分析した郵送調査の回収率は高く,面接調査の回収率をも上回る.これは,1980年代まで8割程度あった面接調査の回収率がいまや6割程度に低下しているという時代背景による.さらに,今後も調査員が介在する調査の回収率は下がり続けるかもしれない.


面接,電話が「答えやすい」は5〜7%,
郵送調査は80%以上が「答えやすい」,
インターネット調査は30%弱が「答えやすい」と回答している.

郵送調査の回答者の分析だから当然,郵送調査の「答えやすい」が多めになるバイアスがあることは間違いない.
それでも,インターネットを利用しない人達がいるにもかかわらずインターネット調査が「答えやすい」という比率が面接や電話を大きく上回ることに注目すべきだろう.


さらに,本稿では詳細に触れていないが,調査テーマによらず高齢者は早期に返送する傾向があり,若年層は遅めの返送が目立つ.また,調査テーマにより学歴や職業別に返送速度が異なるようである.

とくに謝礼については,Dillman(Mail and Internet Surveys The Tailored Design Method.2000)は最初の1ドル同封が何も同封しないものより大きな効果を発揮し,さらに金額を増やせば回収率も高まるが0ドルから1ドルのときの変化ほど大きな効果はないことを指摘している
つまり,謝礼は対象者との間に社会的交換による信用を確立する程度でよく,高額の謝礼は労働対価という形でとらえられれば回収率の大きな上昇はないということである.







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