082283
今回のエントリーでは多くの人が誤解している内部留保の件を再び取り上げます。
結論から書くと、内部留保が十分あっても安全とは言えず、薄くてもただちに危険とは言えません。
なぜ、そうなのかを説明していきます。

引用【企業が資金を調達する方法は売り上げ(収益)、借金(負債)、株の発行(純資産)と、大きく分けて3つしかない。内部留保は一般的に利益準備金や利益剰余金を指す。】

引用【つまり、バランスシートの右側に記載されている内部留保は「どのように調達したか」の記録でしかなく、それを「どのように保有しているのか」、現金なのか株なのか設備なのか、内部留保の額だけを見てもまったくわからない。
上記の仕訳でも、現金が株や設備へ置き換わる際に内部留保にはまったく影響していない。内部留保=現金がいかにとんでもない勘違いかこれでわかっていただけたのではないかと思う。】

これに基づけば、内部留保は現金とは言えないので、企業の安全性を確認するには実際に持っている現金や流動負債、営業CFなどを確認する事になります。

実際に倒産した江守グループホールディングスで見てみましょう


江守GHDのパラメータ1
年度自己資本比率純利益営業CF
2009年27.4%8216211592135
2010年25.4%1021444-717625
2011年20.5%1367171-6678987
2012年17.8%1689571-6915518
2013年19.0%1919302-2670673
2014年22.1%3323832-5197677

江守GHDのパラメータ2
年度売上債権回転率1株配当当座比率売上債権
2009年------26円95.7%14375762
2010年4.03回転26円94.8%18268909
2011年4.40回転32円106.5%24834143
2012年3.96回転32円111.5%33738073
2013年3.68回転38円112.5%43281528
2014年3.87回転58円133.6%65735949
当座比率だけでは問題がなさそうに見えますが、営業CFが大きく赤字で、売上債権が急激に増えています。売上債権回転率は長期的に下がっているので、売り上げに比べて売上債権の方が上がり方が大きくなっています。
つまり、売上債権が不良債権になっていた可能性があった事を示します。
売上債権が回収不能になれば、その分は当座比率は下がりますから、例えば経営破綻の直前の2015年3月期の当座比率を求めてみると実に52.9%と激減しています
これでは倒産してもおかしくはありませんよね。

この会社は多額の資金を毎年のように金融機関からお金を借りて何とかしていました。
今度は内部留保を見てみましょう。
自己資本比率は一時期は17.8%まで下がりましたが、2014年にかけては22.1%と上昇しています。
つまり、企業側は内部留保をどんどん蓄えていました。
しかも1株配当は26円⇒58円と大幅増配しています。
その最中で起こった黒字倒産です。

つまり、内部留保が十分あった所で直ちに安全とは言えません。
米国企業であれば、この程度の自己資本比率でも十分株価が高い企業は沢山あります。
何かと話題のアマゾン・ドットコム(以下:AMZN)は2017年03月期⇒2019年03月期では21.10%、26.77%、27.55%と上がって来ています。

今から3年前ではAMZNは2014年の江守GHDと自己資本比率は変わりません。
つまり、内部留保で言えば、その総資産に対しての比率は3年前であればほぼ同じだった訳です。
それでも、AMZNは値嵩株で買いにくいと言われる個別株の1つになっています。


このように内部留保が潤沢ならばただちに安全とは言えず、結局は中身を見てみないと何とも言えない点は注意が必要ですね。
言い方を変えれば内部留保が薄いから直ちに危険とも判断ができません。

米国企業では自己資本比率が低いにも関わらず、株価が高い銘柄が普通にあります。
ですから、内部留保とは企業のパラメーターのたった1つでしかないと考えるべきで、それだけで投資判断は下せない筈です。


投資をする場合は内部留保が厚い企業と薄い企業がありますが、要は最適化されていれば、内部留保に関係なく投資をしても特に問題はありません。
コカ・コーラ(以下:KO)辺りは自己資本比率が20%前後と、江守GHDとは変わらなくても株価が高いのはパフォーマンスが最適化されていると考えられるからです。


ただ、時として非システマティックリスクによって経営破綻してしまう場合がありますが、だからこそ分散投資で対応するのです。
例えば、VOO、VTIの形ならば、市場全体が最適化されていれば内部留保に関係なく投資はできる筈です。


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