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今回は高配当型ETF、連続増配型ETF、カバードコール型ETFを比べてみます。
前提条件
パート1
今回はカバードコールETFである$QYLDと原資産$QQQを比較します。

$QYLD・・・グローバルX NASDAQ100・カバード・コール ETF
$QQQ・・・Invesco QQQ Trust Series 1

期間は2013年12月31日~2022年08月31日までを対象とします。
データは全て円換算しています。
この期間の無リスク金利は年率-0.013538672%とします。


パート2
今回は高配当ETFと連続増配ETFとS&P500ETFを比較します。

$SPYD・・・SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF
$VYM・・・Vanguard High Dividend Yield Index Fund ETF
$VIG・・・Vanguard Dividend Appreciation ETF
$VOO・・・Vanguard S&P 500 ETF

期間は2015年10月30日~2022年08月31日までを対象とします。
データは全て円換算しています。
この期間の無リスク金利は年率-0.035896876%とします。
パート1、パート2の両方とも出所はETFのデータは米国ヤフーファイナンス、為替レートは日本ヤフーファイナンス、無リスク金利は日銀ウェブサイトです。


データは多少の誤差が入り込んでいる可能性があるので参考程度にお願いします。

🐣パート1:カバードコールETFはどうなのか?

カバードコールってなに?って言われそうです。
まずはオプションとは権利の事です。
コールオプション・・・権利行使価格で買う権利
プットオプション・・・権利行使価格で売る権利


カバードコールとは?
引用【カバードコール(Covered Call)は、カバードオプションの一つで、「原資産の買い」と「コールオプションの売り」のポジションを同時に取る、オプション取引を用いた投資戦略をいいます。】
例えば、$QQQを300ドルで購入して、$QQQのコールオプション(権利行使価格が330ドルでオプション料5ドル)を売ったとします。
この場合は、オプションプレミアムである5ドルがもらえます。

仮に$QQQの価格が360ドルの時に上記のオプションを買ってもらった相手が権利行使して来たらどうなるのか?
その場合は、オプション行使に伴う損失が30ドル出ますが、$QQQは360ドルに上昇しているので・・・
投資家の利益=(360ドル-300ドル)-30ドル+5ドル=35ドル


$QQQの価格が330ドルを超えて、オプションを行使された場合には利益は35ドルに限定されます。
$QQQの価格が330ドルを下回っている場合にはオプションは行使されませんので、損失は最大で295ドルになります。


このようにちょっと複雑な計算になります。
そこで現実的なカバードコールETFを見てみましょう。
それは$QYLDです。


これは原理的には上記の説明と同じです。
データを見てみましょう。

QYLD_QQQ
これは$QYLDと$QQQを2013年12月31日に10000円を投資した場合の基準価額の推移になります。

$QYLDの場合はコールオプションを売っているので、オプション料がもらえて、それは$QQQから発生する配当金と合わせて分配金として支払われていますが、それを再投資した場合のトータルリターンが青のグラフです。

$QQQは配当金は分配金として支払われており、それを再投資をしたトータルリターンがオレンジのグラフです。

そこでまとめてみましょう。
$QYLDと$QQQとの比較
ティッカー標準偏差リターンシャープレシ基準価額
$QYLD14.33%8.94%0.62521009円
$QQQ19.51%19.96%1.02448429円
ここから言える事はカバードコールを使う事で標準偏差を下げられる事はメリットですが、リターンが極端に悪くなります。
シャープレシオで見ても、基準価額で見ても原資産である$QQQの方が明らかに良いと言えます。


このように、カバードコールを使ってオプション料を分配金として払い出す投資戦略は事実上の失敗だと言えそうです。
ただ、期間は8年程度と短いので、これだけだとはっきりと結論は言えませんが、少なくとも美味しい話ではなさそうです。

🐣パート2:高配当株、連続増配株ETFはどうなのか?

QYLD_VYM_VIG_VOO
今度は2015年10月30日の基準価額を10000円とした時の基準価額の推移です。
こちらもまとめてみましょう。


各ETFの比較
ティッカー標準偏差リターンシャープレシオ基準価額
$SPYD20.73%11.36%0.55020862円
$VYM17.08%12.07%0.70921783円
$VIG16.13%14.15%0.87924703円
$VOO17.69%14.27%0.80924881円
$SPYDと$VYMは高配当株式ETFで、$VIGは連続増配株ETF、$VOOはS&P500ETFです。

データを見ると、標準偏差の低さ、シャープレシオの高さでは$VIGに軍配が上がります。
リターンで言えば$VOOに軍配が上がります。
連続増配株式ETFの場合は、それなりにアドバンテージがありますが、高配当株式ETFはパッとしません。


高配当株式はリターンの低さが目立ちます。
これを見る限りでは、スタンダードな投資ならばS&P500、シャープレシオの改善を考えたい場合は$VIG辺りが良さそうに見えます。


ただ、こちらは期間が更に短いので、これだけでははっきりとした事が言えません。

🐣投資には特別なことは何一つないのでは?

カバードコールであれ、高配当株式であれ、連続増配であれ、ある程度の特徴はありますが、投資のメインとして使えるのかは疑問があります。
これはETFとして誕生してから期間が短い為もありますが、はっきりとメリットが分かるような投資対象とは言えないからだと思われます。


更に、各ETFは円安によってリターンが高くなっている事実もあるので、なおさら、特殊な期間の可能性もあります。

一時期はカバードコールETFは高分配がもてはやされましたが、パフォーマンスが非常に悪く、今では下火になっています。
高配当株ETFもリターンの低さが問題になっていますし、その上で分配金は二重課税されて配当再投資の効果まで無くなるので、それだけリターンのロスが大きくなります。


最近は、こんなツイートがありました。

ちょっと考えてもらえれば分かる話ですが、これを理由に高配当株式への投資に切り替えた場合には、既に高配当株ETFやカバードコールETFの事例のようにトータルリターンを悪くしてしまう恐れがあり、更に配当課税のロスや配当再投資の効果が失われてしまう事も含めれば大きな機会損失になってしまう恐れがあります。

勿論、高配当株式がS&P500をアウトパフォームする可能性はあっても、課税の問題は避けられません。

少なくとも配当金や分配金を受け取った場合には、税法上の利益として認識されて課税されます。
インデックスファンドの場合はほとんど分配金を出さないので、必要な時に必要なだけ取り崩す事で税金によるロスを最小限に抑えてくれます。

ただし、以下のような例外もあります。
国内ETFのように多くの場合で外国税額控除を自動的にやってくれる場合は、それを目的としてインデックスファンドではなくて国内ETFを利用するのはありですし、売却した時には国内ETFでは3営業日には換金出来てスピーディーな点もあります。


国内ETFはリアルタイムに買えるのもメリットの一つです。
更に国内ETFでは代用有価証券として入れてFXポジションを建てて為替ヘッジに使う事もできます
このような場合には国内ETFの方がアドバンテージがあると言えますが、それ以外ではあまり合理性がないと思われます。


間違えても配当金がもらえるからとか、分配金がもらえるとか、そんな理由でやって行けば、その分だけリターンが悪くなる恐れがあります。
この問題はトータルリターンで考えた方が良いので、
【配当金(分配金)+キャピタルゲイン】を意識して投資活動に取り組んで欲しいと思います。

応援よろしくお願いします。

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