ワールド・カップほど、巨大な大会は他にありません。それは、スポーツの大会であり、メディア・イベントであり、その時々の世界の政治・経済・社会・民族の在り方を色濃く、しかも分かりやすく映し出す鏡のような存在です。北朝鮮をめぐっては、暗い映像が長く続いてきただけに、若く躍動感のある試合の映像には新鮮味がありました。
産経新聞だけが政治的な面を強調する編集になっていますが、「政治はなしね」というプラカードが示すように、サポーターたちが冷静でした。「去年のアジアカップで、中国の人たちの反日的な応援を見てがっかりした。サッカーの試合が両国の懸け橋になればいい」という声も印象的です。

アウェーの北朝鮮は、また違った雰囲気になるでしょう。キム・ジョンイルは、外貨を獲得しようとし、国の威信を見せたがる。日本の次の相手は、アウェーのイラン。中東で呪(まじな)いのような声援と、聞きなれぬ楽器の音が日本を襲う。日本代表の行く手には、まるでドランゴン・クエストのように険しい道が続いているのです。

ジーコ監督のテーマは、いかに国内組のモチベーションを上げつつ、海外組との絡み合わせをしてゆくか?ですね。国内組を中心に先発メンバーを組んで戦い、海外組の中村と高原を投入すると同時に4バックに変えた。長いワールドカップには、予め準備された完璧な答えなどない。それは王者ブラジルが、いつも予選で苦労しながら編成を整えている姿を見れば分かる。次々と現れる他者との戦いの中でチームが進化してゆくところが、ワールド・カップの魅力ですね。

映画監督のスピルバーグの作品では、1972年の「激突!」から、ひとつのテーマが貫かれています。それは、こちら側の常識が全く通用しない他者との出会い、です。他者は、悪意に満ちた運転手だったり、人食いザメであったり、宇宙人であったり、ナチスであったりしますが、まったく異なる考えや行動を取る相手と「こちら側」との出会いが展開する筋書きは共通している。ヒト、モノ、カネがグローバルに動く時代になり、多くの人々が異なる他者との出会いを常に強いられることになりました。さまざまな題材を扱いながらも、スピルバーグの映画に世界的な共感が集まった秘密は、そのあたりにありそうです。

いまの日本にとっては、北朝鮮こそが「他者」です。その常識や考え方は、余りにもかけ離れている。それだけに、まずは多くの人々が共通のイメージを共有することが何よりも重要。中国と台湾の間で、政治問題が大きいにも関わらず、ヒト・モノ・カネの交流が進んだのは、お互いが同じ「豊かさ」のイメージを共有するようになったからです

そういう意味では、在日の2人サッカー選手が果たした役割は非常に大きいと思うし、また将来、サッカーが北朝鮮との間で重要な役割を果たす可能性もある。あれほど強固に見えた中国との壁に風穴を開けたのは田中角栄ですが、その端緒はピンポンでした。

毎度ありがとうございます。

カブログ・ランキング