株も為替も、政治に揺さぶられています。アメリカの議会が金融法案を否決すると、市場は暴落で応えました。いまはThe Hill(連邦議会)とWall St.(ウォール街)との間で、巨大な綱引きが続いている状態。ワシントンDCは、はたしてN.Yに手綱を付けることができるのか?日本もアメリカも選挙ですから、11月の上旬までは政治の空白が意識されるたびに荒れる展開になりそう。「ドルは足りるのか?」という短期の懸念が、「どれだけドルが刷られるのか?」という中期の懸念に変わってゆく可能性もあると思います。ドルの価値を維持しながら、同時に信用不安と景気後退を乗り切ることは可能なのか?という問題も意識されるでしょう。
続きを読む2008年09月
ジョン・マケインは、穏やかにI know…と語ります。軍事費のムダを減らす方策は、戦場を経験してきたこの私こそが知っているのだ。そういうニュアンスが、ごく簡単な、たった2つの単語に込められています。さりげなく外交や安全保障に疎いとされる相手陣営の弱点を突く戦術。バラク・オバマは、ネットで税金の使われ方を公開すると述べていました。どちらも、自分の支持者の特徴を考えながら喋っています。
これまでアメリカの放送局は、マケイン氏を無党派層を代表する議員のように扱ってきました。共和党の議員として上院にいるけれど、ワシントンDCには一定の距離を置いている一匹狼。この周辺部にいるイメージが、マケインを大統領候補にまで押し上げたといえます。
しかし、オバマ議員は、さらに外側にいる若者や黒人たちのエネルギーを引き出すことに成功した。この選挙には、「どちらがブッシュ的でないか?」、あるいは「どちらが玄人っぽくないか?」という世論の流れを感じます。副大統領候補のペイリン知事が、わざわざ言わなくてもよいパスポートの話を出したのも、「私も皆さんと同じ普通のアメリカ人。だからパスポートだって持っていなかったのです」とアピールするため。
続きを読むまるで経済の中心が、N.YからD.Cへ移ったかのよう。CNBCには、ニューヨークのスタジオがワシントンの議員に質問する映像が増えています。株も為替も債券も、政治のゆくえに左右されるので、方向感がハッキリしない。自由な資本主義を信奉するブッシュ大統領が巨大な介入者になっているところに、皮肉なめぐり合わせを感じます。いまは共和党と民主党の案がぶつかっている局面。論議では、Is Capitalism Working?(資本主義は機能しているのか?)という話も出ています。
日本では、国会の運営を決める国対が、すでに話し合い解散へと動いています。野党が選挙の日程にまで踏み込んでいるのに、受身な与党は自らカードを切り出すことができない。建前では麻生総理だけが解散権を握っていることになっていますが、すでに議員たちはパンフレットを手に選挙区をまわり、事務所を決め、応援演説に来てくれる人との調整を進めているので、先に延ばされると苦しい。カネ(資金)やヒト(人員)が、息切れしてしまいます。長野県には、予定されていたバトミントン大会を中止にする市役所もあるほどなので、もう11月までの総選挙は動きそうもありません。日米ともに、政治が焦点。
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リーマン、AIG、メリル・リンチの株価急落で終わったのが先週末。昨夜、ケータイでBBCのワールド・ニュースを見たら、ポールソン財務長官の会見が流れていました。米証券5位だったベア・スターンズが救済されて、4位のリーマン・ブラザーズが破綻に追い込まれたのは、なぜなのか?
まず私の頭に浮かんだのは、ドル安が進んでいた3月と、ドルが強く買い戻されている現時点との状況の違いです。ベア・スターンズの危機はドル不安を加速させる恐れがあったが、リーマンが潰れてもドルの信認は守られる、という判断があったのかもしれない。もうひとつは、選挙ですね。アメリカ大統領選が目の前に迫っているので、金融機関の救済に対する批判が考慮されたのかもしれない。ファニー&フレディは、外交問題になりかねないリスクをはらんでいるので、救済なのでしょう。いずれにせよ「救済」と「破綻」との間に線を引くのは政治の決断ですから、理屈を超えた判断になる場合も往々にしてあるということなのだと思います。
続きを読む最近まで松本の選挙管理委員長だった上条さんから、こんな画像が送られてきました。総務官僚だった務台俊介さんが、大臣だった麻生太郎さんと地方分権をめぐる政策を練っている場面。おそらく、上条さんも「もう、選管などやってる場合ではない」という気持ちなのでしょう。務台さんが次の総理の片腕になる可能性をアピールしたいのだと思います。私の周囲でも、総選挙を意識した動きが急に活発になってきました。
松本をふくむ長野2区は、民主党の現職に、自民党の新人が挑戦する構図です。務台さんの事務所では、とくに政党にこだわらず、「誰を地域の代表として出すのか?」という人物を中心にした訴えにしたいという声も聞きました。これは、おそらく全国のあちこちで共通して見られる現象でしょう。
続きを読む亡くなった阿部謹也さんは、「中世ヨーロッパの人々は、2つの宇宙の中で暮らしていた」と書いています。「ふたつの宇宙」とは、日常生活の小さな宇宙と、その周辺をとりまく非日常的な大きな宇宙のこと。朝起きて、働いて、食事をして…という毎日の生活が一方にあり、ときおり襲いかかる疫病や自然災害のような大きな変化が、もう一方で意識されていた。この感覚が、たとえばシェイクスピアの『マクベス』では、「森が城に攻め寄せてくる」という筋書きとして残っている…という話をする人もいます。
現代の私たちも、2つの時間を生きていると言えます。
ひとつは、「11:00までには得意先に行って、お昼には××を食べて…」という日常の時間の流れ。もうひとつは、中・長期の社会の変化を意識せざるを得ないような時の流れです。毎日、毎日、同じように働き、食事をして、雑務をこなしながらも、ときどき、ふと考える人が増えています。「これまでは、ずっと同じように働いてきたけれど、さて3年先には、どうなることやら」。とくに最近は、「こんなにガソリンが騰がるとは思ってもみなかった」とか、「こんなにも街が寂れるとは思ってもみなかった」という実感が広がっていて、なかには鬱になる人もいます。
長野県の人口ピラミッドには、20代の部分に斧を打ち込んだような大きな窪(くぼ)みがあります。これは、日本全体の人口ピラミッドには見られない形。大学や若い人たちが働く場が多い東京、愛知、京都では、逆に20代の人口が他の世代より多くなっていますから、若い日本人が地方から都市部へ流失していることが分かります。
昨夜はNHKの長野放送局が、県内の高校に来ている求人数を3,560人と報じていました。半年後に卒業を迎える18歳の高校生は、男女あわせて2万人弱でしょうか。うち半数が大学や専門学校に進学するとしても、残りの1万人に対して3,560人しか求人がない。なるほど、仕事を求めて県外に出る人が増えるのも当然です。
続きを読む放送大学に出ていた本郷和人さんの話が面白かったので、買ってみました。『武士から王へ―お上の物語 (ちくま新書 682)』。これは、日本の中世を大づかみにして太い線で描き直そうとする模索ですから、歴史の好きな人の間でも評価が分かれるでしょう。どちらかといえば私は、「こういう事実があった」と単調に解説されるよりも、「自分なら、こう考える」と仮説が打ち出されている著作に魅力を感じます。
鎌倉幕府の御家人たちが貧しくなったのは、新たに広がった貨幣経済に巧く対応できなかったからだという説も、そのひとつ。農業を基盤とする東国では、ひたすら土地の所有にこだわって「一所懸命」に励むことが大事だった。ところが武士たちが「承久の乱」や「蒙古襲来」を通じて西日本との関わりを深め、同時に中国から大量の銭が流入し、田畑がお金で取引されるようになってゆく。土地を手放した御家人たちの不満に応える形で「永仁の徳政令」が出され、その理不尽さ、身勝手さが鎌倉幕府の滅亡に繋がっていく…という話には、説得力とともに現代的なテーマを感じました。
続きを読むtakahashikamekichi