Espresso Diary@信州松本

エスプレッソ・ダイアリー。信州松本のコーヒー屋の手記。 RSS feed meter for http://blog.livedoor.jp/takahashikamekichi/

2008年09月

隠れた政治テーマは"時間"。

the hill 株も為替も、政治に揺さぶられています。アメリカの議会が金融法案を否決すると、市場は暴落で応えました。いまはThe Hill(連邦議会)とWall St.(ウォール街)との間で、巨大な綱引きが続いている状態。ワシントンDCは、はたしてN.Yに手綱を付けることができるのか?日本もアメリカも選挙ですから、11月の上旬までは政治の空白が意識されるたびに荒れる展開になりそう。「ドルは足りるのか?」という短期の懸念が、「どれだけドルが刷られるのか?」という中期の懸念に変わってゆく可能性もあると思います。ドルの価値を維持しながら、同時に信用不安と景気後退を乗り切ることは可能なのか?という問題も意識されるでしょう。

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中心と周縁。

中山成彬・国土交通大臣の発言は、失言というよりは、堂々たる主張。「日教組をぶっ壊すために火の玉になる」と、ふた昔前の決起集会のよう。「民主党が政権を取れば、日本が大阪みたいになる」 。ここまで言われると、選挙の現場にとっては、後ろから玉が飛んできたようなものです。知り合いの自民党員は、「負け戦でも、やるしかない」とタメ息をついています。私の脳裏には、カメラのない場所で、自民党の幹部が公明党の人たちに深々と頭を下げている光景が浮かびます。
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バカっぽさが強みだったブッシュ大統領。

マケイン ジョン・マケインは、穏やかにI know…と語ります。軍事費のムダを減らす方策は、戦場を経験してきたこの私こそが知っているのだ。そういうニュアンスが、ごく簡単な、たった2つの単語に込められています。さりげなく外交や安全保障に疎いとされる相手陣営の弱点を突く戦術。バラク・オバマは、ネットで税金の使われ方を公開すると述べていました。どちらも、自分の支持者の特徴を考えながら喋っています。

これまでアメリカの放送局は、マケイン氏を無党派層を代表する議員のように扱ってきました。共和党の議員として上院にいるけれど、ワシントンDCには一定の距離を置いている一匹狼。この周辺部にいるイメージが、マケインを大統領候補にまで押し上げたといえます。

しかし、オバマ議員は、さらに外側にいる若者や黒人たちのエネルギーを引き出すことに成功した。この選挙には、「どちらがブッシュ的でないか?」、あるいは「どちらが玄人っぽくないか?」という世論の流れを感じます。副大統領候補のペイリン知事が、わざわざ言わなくてもよいパスポートの話を出したのも、「私も皆さんと同じ普通のアメリカ人。だからパスポートだって持っていなかったのです」とアピールするため。

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日米ともに政治が焦点に。

box まるで経済の中心が、N.YからD.Cへ移ったかのよう。CNBCには、ニューヨークのスタジオがワシントンの議員に質問する映像が増えています。株も為替も債券も、政治のゆくえに左右されるので、方向感がハッキリしない。自由な資本主義を信奉するブッシュ大統領が巨大な介入者になっているところに、皮肉なめぐり合わせを感じます。いまは共和党と民主党の案がぶつかっている局面。論議では、Is Capitalism Working?(資本主義は機能しているのか?)という話も出ています。

日本では、国会の運営を決める国対が、すでに話し合い解散へと動いています。野党が選挙の日程にまで踏み込んでいるのに、受身な与党は自らカードを切り出すことができない。建前では麻生総理だけが解散権を握っていることになっていますが、すでに議員たちはパンフレットを手に選挙区をまわり、事務所を決め、応援演説に来てくれる人との調整を進めているので、先に延ばされると苦しい。カネ(資金)やヒト(人員)が、息切れしてしまいます。長野県には、予定されていたバトミントン大会を中止にする市役所もあるほどなので、もう11月までの総選挙は動きそうもありません。日米ともに、政治が焦点。

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昭和レトロ内閣。

米国債 ドルは刷らなくても、米国債は刷らざるを得なくなるだろう。金融不安が広がって、いったんは買われた米国債ですが、これから大量に出てくるとの予想が広がって売られ、長期金利が切り返しています。原油も、100ドルを回復。市場には、再びインフレへの懸念がにじんでいるようです。一方には金融への不安があり、もう一方には大量に供給される通貨や債券への懸念がある。ポールソン&バーナンキは、この2つの極の間で揺れながら変化に対応しようとしています。CNBCには、Wall Street Crisis(ウォール街の危機)Is Your Money Safe?(あなたのお金は、だいじょうぶ?)とタイトルが出るようになりました。ウォール・ストリートの影響が、メイン・ストリートにどのくらい広がるか?について語る人が多い。
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麻生太郎と小沢一郎。

パンフ 自民党の総裁選は、盛り上がらないまま麻生氏を選出。選挙の現場からは、「しっかりした論争を望む」などという社説や評論家のような声は聞こえてきません。福田総理が辞めると言った瞬間から、総選挙の準備に追われている。パンフレットには総裁と握手をする写真を載せないといけませんから、「ガタガタやってる時間はない」というのが本音で、それが「地方票の95%が麻生」という結果になって出たのだと思います。長野2区の務台俊介さんのパンフレットにも麻生太郎が出ていますが、拝見した私は、「おっ、ビル・エモットと写ってるんですか?こっちの写真の方がスゴイですよ〜」と、思わず正直に唸ってしまいました。5人の総裁候補は、経済や農業の問題を声高に訴えましたが、みな最近まで大臣だった人たちですから、改革の訴えを聞いても、「だったら、どうして、それをやらなかったの?」という素朴な感情が湧き上がってしまいます。
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力を求める感情。

ポールソン 金利は下げず、新たにお札を刷ることもしない。足りないドルは、世界の中央銀行からかき集めて準備する。やはりバーナンキ&ポールソンの意図は、ドルの値打ちを守りつつ、信用不安を広げないよう務めるところにあるようです。財務長官は、短い会見でcase by case、そしてtactical steps(戦術的な段階を踏みながら)という表現を使いました。tacticalには「かけひきが巧い」という意味がありますから、聴いていた人の中にはnot strategic(戦略的にではなく)というニュアンスを汲み取った人が多かったかも。まだまだ、その時々の状況に応じて臨機応変に判断するということなのでしょう。続きを読む

住宅リスクが意識される時代。

home 「これは日本で90年代に起きた現象に似ているのではないか」。CNBCでも、キャスターたちが言ってます。90年代の日本では、まずは株式、続いて不動産の急落から不況が広がり、やがては住専が政治問題になってゆきました。いまはアメリカで不動産の不振を示すFor Saleの看板が、すっかりお馴染みの風景になっています。ごく普通の人々が、ごく普通に住宅を買った。その借金の焦げつきが波乱の要因になっているところに、起きている事態の深刻さを感じます。 住宅むけの資金を絞るのが難しいのは、日本もアメリカも同じなんですね。続きを読む

情報鎖国ニッポン。

ベッキー 「AIGが数週間前に言ってたことは、現状とは全く違うわ」。ベッキー・クウィックが、いつもの低い声で伝えています。CNBCは、金融や製造の経営者たちが次々に登場して、経営の現状や見通しを語るチャンネルですから、このような発言が出るのは当然。CEOは、多くの株主たちに企業の現状や将来像を伝え続けることも仕事です。しかし、日本では経団連の会長でもない限り、頻繁にテレビに出てくることはありません。登場したとしても、受付嬢のような雰囲気の女性が丁寧にお辞儀をしていたり、ピカピカの新製品の発表会のようなセレモニーの場が多い。日本株を保有している株主には、その企業の経営者の顔が思い浮かばないという人も多いのではないかと思います。
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リーマン・ブラザーズの破綻。

リーマンリーマン、AIG、メリル・リンチの株価急落で終わったのが先週末。昨夜、ケータイでBBCのワールド・ニュースを見たら、ポールソン財務長官の会見が流れていました。米証券5位だったベア・スターンズが救済されて、4位のリーマン・ブラザーズが破綻に追い込まれたのは、なぜなのか?

まず私の頭に浮かんだのは、ドル安が進んでいた3月と、ドルが強く買い戻されている現時点との状況の違いです。ベア・スターンズの危機はドル不安を加速させる恐れがあったが、リーマンが潰れてもドルの信認は守られる、という判断があったのかもしれない。もうひとつは、選挙ですね。アメリカ大統領選が目の前に迫っているので、金融機関の救済に対する批判が考慮されたのかもしれない。ファニー&フレディは、外交問題になりかねないリスクをはらんでいるので、救済なのでしょう。いずれにせよ「救済」と「破綻」との間に線を引くのは政治の決断ですから、理屈を超えた判断になる場合も往々にしてあるということなのだと思います。

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地方の主権。

ムタイ 最近まで松本の選挙管理委員長だった上条さんから、こんな画像が送られてきました。総務官僚だった務台俊介さんが、大臣だった麻生太郎さんと地方分権をめぐる政策を練っている場面。おそらく、上条さんも「もう、選管などやってる場合ではない」という気持ちなのでしょう。務台さんが次の総理の片腕になる可能性をアピールしたいのだと思います。私の周囲でも、総選挙を意識した動きが急に活発になってきました。

松本をふくむ長野2区は、民主党の現職に、自民党の新人が挑戦する構図です。務台さんの事務所では、とくに政党にこだわらず、「誰を地域の代表として出すのか?」という人物を中心にした訴えにしたいという声も聞きました。これは、おそらく全国のあちこちで共通して見られる現象でしょう。

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2つの時間。

ハーメルン 亡くなった阿部謹也さんは、「中世ヨーロッパの人々は、2つの宇宙の中で暮らしていた」と書いています。「ふたつの宇宙」とは、日常生活の小さな宇宙と、その周辺をとりまく非日常的な大きな宇宙のこと。朝起きて、働いて、食事をして…という毎日の生活が一方にあり、ときおり襲いかかる疫病や自然災害のような大きな変化が、もう一方で意識されていた。この感覚が、たとえばシェイクスピアの『マクベス』では、「森が城に攻め寄せてくる」という筋書きとして残っている…という話をする人もいます。

現代の私たちも、2つの時間を生きていると言えます。
ひとつは、「11:00までには得意先に行って、お昼には××を食べて…」という日常の時間の流れ。もうひとつは、中・長期の社会の変化を意識せざるを得ないような時の流れです。毎日、毎日、同じように働き、食事をして、雑務をこなしながらも、ときどき、ふと考える人が増えています。「これまでは、ずっと同じように働いてきたけれど、さて3年先には、どうなることやら」。とくに最近は、「こんなにガソリンが騰がるとは思ってもみなかった」とか、「こんなにも街が寂れるとは思ってもみなかった」という実感が広がっていて、なかには鬱になる人もいます。

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外向きな日本から活路が広がる。

長野県の初婚年齢は、男が30歳、女が28歳。都会なみの高さ。こういう地方は、他には山梨県ぐらいしかありません。先日ご紹介した人口ピラミッドを見ると、30歳を過ぎた男性は、それぞれの年代に15,000人ほどいるのに、20代の半ばには女性が10,000人ぐらいしかいない。23歳あたりの女性だと8,000人ぐらいですから、これでは駅前にキャバクラが増えるのも当然という気がします。さらに、このまま失政が続いて景気が後退すると、「地方に住んでいたら結婚できない」という事態が広がりそう。農村で特徴的だと思われてきた外国人の花嫁が、地方の街でも増えてゆくかもしれません。続きを読む

長野県の人口ピラミッドは語る。

長野 長野県の人口ピラミッドには、20代の部分に斧を打ち込んだような大きな窪(くぼ)みがあります。これは、日本全体の人口ピラミッドには見られない形。大学や若い人たちが働く場が多い東京、愛知、京都では、逆に20代の人口が他の世代より多くなっていますから、若い日本人が地方から都市部へ流失していることが分かります。

昨夜はNHKの長野放送局が、県内の高校に来ている求人数を3,560人と報じていました。半年後に卒業を迎える18歳の高校生は、男女あわせて2万人弱でしょうか。うち半数が大学や専門学校に進学するとしても、残りの1万人に対して3,560人しか求人がない。なるほど、仕事を求めて県外に出る人が増えるのも当然です。

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『武士から王へ』。

武士から王へ放送大学に出ていた本郷和人さんの話が面白かったので、買ってみました。『武士から王へ―お上の物語 (ちくま新書 682)』。これは、日本の中世を大づかみにして太い線で描き直そうとする模索ですから、歴史の好きな人の間でも評価が分かれるでしょう。どちらかといえば私は、「こういう事実があった」と単調に解説されるよりも、「自分なら、こう考える」と仮説が打ち出されている著作に魅力を感じます。

鎌倉幕府の御家人たちが貧しくなったのは、新たに広がった貨幣経済に巧く対応できなかったからだという説も、そのひとつ。農業を基盤とする東国では、ひたすら土地の所有にこだわって「一所懸命」に励むことが大事だった。ところが武士たちが「承久の乱」や「蒙古襲来」を通じて西日本との関わりを深め、同時に中国から大量の銭が流入し、田畑がお金で取引されるようになってゆく。土地を手放した御家人たちの不満に応える形で「永仁の徳政令」が出され、その理不尽さ、身勝手さが鎌倉幕府の滅亡に繋がっていく…という話には、説得力とともに現代的なテーマを感じました。

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