「外国人」は、今回の強気相場のキーワードです。2003年まで、日本の金融機関が持ち合い解消や代行返上の売りを続けていた中、外国人は買いを続け、個人投資家が追随してきました。日経平均は、8000円割れの水準から12000円近くまで来ました。この過程では、外国人の動向が常に注目されてきました。きょうは、この外国人について考えてみたいと思います。
週明けの東京市場は、引き続き銀行が焦点となる気配です。UFJと東京三菱の統合のゆくえは、信託、地方銀行、さらには消費者金融、融資先の事業会社にも影響します。外国人は、銀行を売るのか?買うのか?ここに注目が集まります。外国人は、既に日本のメガバンクの株の20%を保有していると言われています。UFJについては、30%とも言われている。であるなら、ここから先を買い続けるには、それなりの理由や動機が必要になるだろう、と私は考えています。

外国人の保有比率の高い銘柄のランキングもありますが、あれをみて、すぐに買おうとは思えないです。やはり、ITバブルの崩壊が記憶に新しい。1999年頃には、メリルリンチの近藤敬子さんが雑誌やテレビで、光通信などの買いを推奨していました。メリルは、倒れた山一證券の支店を買い、日本のリテールに地歩を築こうともしたわけですが、あれも上手くいかなかった。外国資本の動向は、もちろん参考にはしますけど、「外資=強い=正しい」とまでは思えないですね。家電量販店の株もアメリカ人が買ってるみたいですが、あれは「ベスト・バイ」あたりの連想ではないでしょうか。自国の繁栄のイメージを他国の市場に投影しがちな傾向も、外資にはあると思います。

コーヒー業界でいうと、80年代の後半にはドイツ資本の進出がありました。「チボー」というドイツのコーヒー会社が、吉祥寺などに立ち飲みスタイルの店を出した。コーヒーの世界には「生産国ならブラジル、消費国ならドイツ」という神話がありましたから、業界の人たちは注目しました。私も飲みに出かけた覚えがあります。たしかに、風味はスッキリして、しかしコクがあり美味しいと感じました。生豆のクオリティも高い。チボーはジャスコと提携し、100店舗を目指す発表もしましたが、結局は撤退しました。地価や人件費が高すぎて、採算が合わなかったこと。日本のドトール・コーヒーの浸透を過小評価したこと、などが理由に上げられました。

つまり、ひとくちに外国資本といっても、成功もあれば、失敗もあるということです。最近ですと、日興コーディアルの株をシティ・グループが手放すというニュースがありました。シティとの提携は継続ということで、日興も変わろうとしているのですが、それ以上に市場の変化は激しい。ダイムラー・クライスラーという資本が、三菱自動車の株を買ってエクロート氏を送り込んだ件も、結果的に失敗でした。日本長期信用銀行や日本テレコムの例を引いて、「外国資本=ハゲタカ」という話をする人も多いのですが、それは余りにも一面的に過ぎると思います。

私は、ここからは、ハイブリッドな資本がテーマになってゆく展開を予想しています。日本にも、外国資本のやり方を吸収する会社が増えてきました。外国資本も、日本の社会を良く知る人材や企業との提携を増やしています。つまり、日本の金融革命が、第二幕に入ったということです。

幕末の黒船は脅威であり、幕藩体制の組み換えをもたらしましたが、日本人は黒船の背後にある技術や資本の仕組みを素早く吸収し、日本は変化してゆきました。あのときと同じように、外資という名の黒船が日本を脅かしたのが、金融革命の第一幕だったと思います。国内の金融機関は、まるで江戸時代の藩のように、古い習慣や大蔵省の意向に従い、都心で威容を誇っていました。それが、整理・統合され、新しい資本が産声を上げているのだと思います。

外資の力、とくにストーリーを描いていく力は、確かに大きい。しかし、私たちにも、日本の社会を良く知っているという強みがあると思います。外資が拠点とする恵比寿のガーデンヒルズは、広い日本の社会では、かなり特殊な場所です。ありふれた日本人の生活の変化には、ありふれた日本の個人こそが、実は最も詳しいはずなのです。私は、日本の個人投資家が、外資の動向に振り回されるばかりではなく、やがて外資の動向をリードする日も来るのでは?と期待を持っています。外資だからという理由で、ただ追随するだけの姿勢にはリスクも伴うのではないか?とも考えるのです。

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