ガソリン価格1ガロン=3.5ドルのガソリンは、アメリカ人にとって増税と同じこと。そのおかげで儲かっているのが大統領のお友達のテキサスの石油会社なのですから、支持率が落ちるのも当然です。おまけにイラク戦争は解決が見えない状態で、となりのイランも情勢が不透明になってきた。お金のかかる軍隊は財政赤字を大きくし、さらに中国からは安い品々が入ってきて、売れるハイブリッド車は日本製だから、貿易赤字もなかなか減りません。

為替は、私の予想とは逆に1USドル=114円の円高&ドル安になりましたが、これはG7で「不均衡」が大きなテーマになったからだと思います。「不均衡」というのは、国も個人も借金だらけのアメリカが、あいかわらずバンバン消費を続けている一方で、中国がガンガン輸出で稼いで黒字を積み上げているという話ですね。ドルがユーロや円など他の通貨に対して安くなり、さらに金や銅や原油のような資源に対しても安くなったということは、すなわち「不均衡」が少し修正されて、均衡の方へ寄ったということだと思います。

私は、20世紀の後半に続いた数々のドラマを思い出します。ベトナム戦争、オイル・ショック、日米の貿易摩擦、双子の赤字、プラザ合意とドル安への流れ。数々の出来事が、少し形を変えて繰り返され、まるでアメリカ現代史の総集編を見ているような気持ちです。アメリカは、世界の秩序に責任をもち、強い軍隊を派遣し、お金を使ってきたんですが、その結果、通貨の価値が下落し、モノづくりの力も弱まり、そしてアジアからの輸出に悩み続けてきた国なんですね。買われてきた米国債だって、長期金利が上がってゆけば、その価値が落ちるわけで、アメリカ人の住宅ローンにも影響します。いまブッシュ大統領を悩ませているのは、目先のガソリン価格ではなく、アメリカの構造的な問題だと思います。

もしも、イランに対してアメリカが軍事力を使う気配が強まれば、原油の価格は上がるでしょう。そうなれば、ガソリンの価格が上昇しますから、大統領の支持率が低下することになる。私は、イラン人がN.Yでテロを繰り広げるような事態にもならない限り、米国がイランを攻撃することはできないと見ています。つまり、いかにもアメリカ的な市場原理が、これまた、いかにもアメリカ的な「軍事力による解決」という手段を押さえているように見える。アメリカの自縛ですね。

日本人のアメリカを見る目は、その世代によって違います。「米帝」というのは昔の左翼用語で「アメリカ帝国主義」のことなんですが、もう使う人はいません。昔は、日本人にとってアメリカの存在が圧倒的だったから、あるときには強い憧れの対象であり、また同時に強い憎しみの対象でもあったのだと思います。しかし、もうアメリカは、アメリカ自身が作り出したシステムによって力の行使を制御されるようになりました。「米帝」という言葉が滅び、中国に対して批判的な声が強まっているのは、それだけ中国の存在感が高まっている証だと思います。