リーシェンロンシンガポールのリー・シェンロン首相が、CNNのインタビュー番組"Talk Asia"に出演しました。アジアのキーパーソンは、「どこに行ってもリー・クワンユーの息子として見られるのですから、これは大変なプレッシャーです」と語っていました。

先日はCNBCがフィリピンのアヨロ大統領のインタビューを放送していました。この1年、日本の放送局はアジアの指導者のロングインタビューを、どれだけ放送したでしょうか?欧米のメディアがアジアの発展を不可避と見て、それぞれの国の指導者や経営者たちに考え方を尋ねているというのに、日本の放送局から流れてくるのは、永田町あたりの人間関係やら、警察が発表する事件やら、北朝鮮の映像やら、はては芸能事務所の人あまり対策のようなバラエティ番組ばかり。日本にいて漫然とテレビを眺めていると、アジアの潮流から大きく外れてしまう可能性を私は痛感しているのですが、しかし、この現実を指摘している人も少ない状態です。

ラオ"Talk Asia"のインタビューを担当しているのは、Anjali Rao(アンジャリ・ラオ)という香港生まれの女性。プロフィールを見ると、英国の大学で社会学とメディアの学位を取ったと書いてあります。「シンガポールは、政府によるメディアの規制が強いのではないですか?」「言論の自由はあるのですか?」と厳しい質問を重ねつつも、リー首相が早くに奥さんを亡くし、また子供に障害があることを、それとなく会話に折りこみ、インタビュー全体を厚みのある30分にまとめていました。もう日本の「女子アナ」とは、やっている仕事の中身に雲泥の差がある。いつも思うことですが、海外メディアで仕事をしている女性は大人に見えるし、日本の「女子アナ」のやっていることは、まるで子供のお遊びのようです。

メディアへの規制について質問されたリー・シェンロンは、「フィリピンなどと比較して、私たちは国民に豊かな生活を保証している」と答えていました。信用できる裁判制度があり、国家の安定があって、はじめて投資を呼び込むことができるのだ、という主張です。最近のアヨロ大統領は、反政府活動をしている人たちに対して厳しい姿勢で臨んでいるのですが、ここにも投資を呼び込もうとする意思を感じます。タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシアなどは、みな似たような意識で競争してるんですね。いまはプーチン政権が資源を軸にした国家戦略を進めている最中ですが、ロシアにも同じような強い意思があるし、もちろん中国だって同じです。日本の学界やメディアに登場する人は、アメリカや西欧のような政治こそが正しい道であり、アジア諸国は「遅れている」とか「民主的ではない」と解説することが多いんですが、豊かさを切実に願う国民からすれば、「やむを得ないこと、それより…」という判断になるのでしょう。

こうなると、私たちは「それぞれの国に、それぞれの民主制があるのだ」という目で世界史を見てゆく必要があると思います。日本だって自民党による事実上の一党支配が長く続いていたわけだし、「談合は犯罪である」という認識も最近になって強まった状態です。日本は有権者が日本的な政治システムを選択したからこそ、高度成長という豊かさの果実を分配することが可能だったと言えるんですが、もう、それも限界なんですね。いくら「日本的なシステムは、まだまだ強い」と言ってみたところで、少子高齢化と財政難の流れは大きく変えようがないし、生産や技術の追い上げは日々早くなっている。金融やサービスの分野でも、新興国の存在感は高まっています。日本の地方の政治家こそは、じつはアジアの変化に敏感になって、地方の人々の生活を守る意識を強めないといけないのですが、まあ、本当に皆さん呆れるほど冠婚葬祭と無難な挨拶がお好きなご様子。

政治や経済に対する見方や意見は人それぞれですが、少なくとも今の日本のメディアが極端な内向きになっていて、それが日本人の視野を狭めていることは深刻な問題だと思います。まずはアジアの状況がどうなっているのか?アジアには、どんな変化が起きようとしているのか?来年は、この点に言及するブログが、もっと増えて欲しいものです。