「なんか、年末って感じがしないよね」。老若男女を問わず、あちこちで同じ話を聞きます。それは気温の高さも理由ですが、もうひとつ、日本人が集団でひとつの流れに向かっていた時代が終わったからのようにも思えます。昨年は「古畑任三郎だけは絶対に見たい」というようにスペシャル番組を楽しみにするような人もいましたが、そんな話も耳にしなくなりました。みんなで、いつもと違う番組を心待ちにしていた年末は、もうどこかに逝ってしまった。むしろサッカーのワールドカップとかディープインパクトの引退などに、気持ちの高まりや一体感を感じる人が増えています。

小飼弾さんが、「日本2.0」の封切りはいつか?と書いています。結論からいえば、私は「日本2.0」が既に始まっていると感じています。私たちは、日本人だけのニッポンではない時代に入りつつあるのではないでしょうか。

トヨタも日信工業も「日本企業」と呼ぶことはできるけれど、日本人だけで成り立っている会社ではありません。日本で暮らす外国人たちは税金を払っていますし、相撲などは外国から来た力士なしでは味気ないものになってしまいそう。私から見ると「日本は日本人だけものだ」という思い込みが、どこか硬く、そして内向きに思えてしまうんですね。これからは、日本の技術、スポーツ、金融、文化などを、日本人ではない人たちが担う部分が大きくなるでしょう。

ランディ京都に行ったカナダ人のランディさんも、有名になったんですね。私が知り合った頃は、松本の西堀通りにあった"Scotty's"というパブの2階でビリヤード屋などを営んでいました。当時は、いつもカギ束をジャラジャラと持ち歩き、喋り方もせっかちで貪欲と見る人も多かった。それが今では茶道や武道に造詣の深い文化人ですから驚きです。

もはや日本人だけのものではないニッポン。この流れから外れた地域や企業は、衰退しやすくなるでしょう。信州といえば軽井沢や上高地が有名ですが、どちらも外国人によって、その魅力が見出されてきた土地です。いまだに地元の人間だけで豊かさを分け合おうとしている街は確実に衰退しているし、外国の観光客や資本が来ないようなところでは、財政が厳しく、医師もおらず、社会保障の負担が大きくなるばかりで、もはや日本人が暮らしてゆくことさえ困難になるのでは?と思えるほどです。

これからは、日本の外に活躍や生活の場所を求める人も増えてゆくでしょう。プロ野球やサッカーの選手。老後を海外で暮らそうと考えている人たち。日本のサラリーマンとして海外で働いているうちに、家族が外国に馴染んでゆく人たちもいます。私たちは、よりハイブリッドな日本を目の前にしつつあるのです。新興国の隆盛も明らかですから、ロシア語やスペイン・ポルトガル語、さらには東南アジアのマイナーだと考えられていた言語を学んできたような人には、チャンスが広がっていると言えます。

米国は中南米の人々と、欧州はイスラム圏の人々と、いろんな形で共存せざるを得ない時代に入っています。この時代に、先進国の日本は移民を受け入れない政策を採り続けていますから、そのデメリットに直面することになるでしょう。景気の回復傾向が続けば、まずは中小企業や福祉の世界で人手の確保が難しくなる。日本の社会は、なにも強い製造業やIT企業、それにメディア企業だけで成り立っているわけではありません。医療や福祉、それに地域社会といった世界があり、これからは多くの中高年が後者の世界に軸足を移さざるを得なくなるのです。もしも「日本2.0」なる世界を垣間見たいのであれば、むしろ後者の世界に目を近づけた方が、よく見えるのではないでしょうか。