いま長野県では、札幌―松本路線の存続を求める動きが報道されています。この路線が廃止されたら、信州まつもと空港は赤字に転落だとか。原油は55ドルで、金属の価格は高いですし、航空会社はパイロットの確保に奔走している状態ですから、人件費も上がりそう。たとえ現在の利用率が高くても、地方の人口の減少は始まっているし、JALとしても将来に向けた投資を続けるのは難しいのでしょう。長野県の財政は厳しいですから、空港の売却が検討される可能性もあると思います。同じことが全国の地方で起きているのではないでしょうか。

これは私のカンですが、今回のJALの再建には、背後で政治の力が働いているような気がします。世界の航空業界は再編に揺れていますから、株価が急落したJALには外国の資本が入ってもおかしくはない。実際ジム・ロジャーズは、雑誌のインタビューで急落した日航の株を買ったことを仄(ほの)めかしています。JALは日本のナショナル・フラッグですが、組合が複雑で、経営陣の内部では内紛が続いているので、どこで意思の決定がされているのか?よく分からない状態。報道では、みずほ銀行などが中心になって再建策が練られているとなっていますが、実際には政治の介入があるのかもしれません。

航空や運輸の業界は、もともと自民党の清和会の影響が強い分野。亀井静香や石原慎太郎など歴代の運輸大臣には、福田派の流れをくむ政治家も多く就任してきました。いまの総理大臣は同じ流れをくむ安倍晋三ですから、官邸の周辺にはJALに対する強い影響力があるのかもしれない。長野県知事の村井仁さんは、こうした事情を嗅ぎ取っているのではないか…。だから、今週行われたJALの役員と知事との話し合いは、マスコミ向けのセレモニーという気もします。

ホンダジェット昨年は、ホンダが小型ジェット機を発表。アメリカや中国をターゲットに販売していくようです。私は、松本のような地方の空港は、アジアとの繋がりや個人やビジネス機の発着に活路を求めるしかないと思います。日本では飛行機の所有といえば、それだけで批判されてしまうような雰囲気がありますが、広大なブラジルのコーヒー農園には滑走路を備えたところもあるし、米国では大リーグの選手や経営者や専門職で自家用の飛行機を持っている人も多い。考えてみれば、自転車や自動車だって、最初は一部の豊かな人たちの所有に限られていたわけで、やはり、みんなで一緒に何かをしようというだけでなく、お金もちに喜んで利用してもらえる雰囲気もないと地方の経済は大変です。北アルプスのスキーも、軽井沢の避暑も、あるいは登山も、最初は庶民から見れば暢気な道楽としか思われなかったけれど、だんだん普及していって20世紀の信州の観光として発展したのです。

退任が報道されたので、もう書いても良いと思いますが、松本市の収入役の市川博美さんが言っていました。「どの会議に出ても、女性は私ひとりだけ。それが、ほんとに多い」。つまり、日本の地方では、何かを決めるときの判断が中高年の男性に大きく偏っているのです。私には夕張市の破綻も、各地の談合も、同じところに遠因があるように見える。問題が起きるたびに登場する人が、みな同じ顔に見えてしまう。外国語をしゃべらない日本人のオジサンだけが集まって「国際化」を語る風景には、ほんとうに違和感があります。その代表例が、地方の議会ですね。

さきほどFeed Meterのブログ・ランキングを見たら、このブログのひとつ上196位にJas9 Taipei.というブログがランクインしていました。台湾の人が中国語で何かを書いているんですね。よく考えてみれば、日本のブログのランキングに日本語のブログだけが入るとは限らないのです。中国やアジアには膨大なネット予備軍が控えていますから、これは端緒に過ぎないとも言える。たとえ日本に飛行機で来なくても、アジアの人々が日本に押し寄せる可能性もあるのです。それが21世紀のトラフィック(交通)というものなのでしょう。