不動産ブームに湧くシンガポールの失業率は、2%です。ならば労働力は、どうなっているのか?開発は、計画や投資をする人だけでなく、現場で汗する人たちがいなければ進みません。街を歩くと、インド系の男たちを荷台に乗せたトラックが目に留まりました。私は、「あっ、これか…」と思いました。

シンガポール旅行&情報デスクには、住宅開発局(HDB)の3部屋に34人もの外国人労働者が寝泊りしていた話が載っています。家賃が急上昇する都市に集まる労働者たちが、祖国に家族を置いて節約に務めながら送金する姿が思い浮かびます。私は、いかにも平和そうな集合住宅のあちこちに、きっと似たような部屋があるのではないか?と思いながら、電車の車から郊外を眺めました。

シンガポールシンガポールに住むインド系の市民は、約8%ぐらい。彼らが集まるリトル・インディアの路地裏では、"INTERNET"と書かれた看板を幾つも見かけました。たぶんネット・カフェのような商売なのでしょう。電器店に並ぶ商品を覗いてみると、ノキアなどのケータイ電話のアクセサリー類が並んでいます。夜の10時を過ぎても煌々と明かりがともり、人の出入りが絶えない。極東な顔立ちの私が極端に見えるほど、周囲はインドな人ばかり。私は、「IT大国インド」の裾野の広さを感じました。インフォシスや一部の大学だけでなく、新しい技術を商売につなげようとする大衆の厚みがインド社会にはありそうです。地下鉄に乗ってくる小さな子供連れの若いカップルには、インド系の夫婦の割合が多かったようにも感じました。彼ら彼女らには、人口の大多数を占める中華系とは、また違った行動様式があるのでしょうか。

チャンギ安くビールを出す地元の中華系の若者が集まる店では、「ここは投資で成り立っているんだ」と力説する男性に会いました。渋谷や新宿あたりの居酒屋に集まる若い日本人は、「日本が何で成り立っているか?」を外国人の観光客に話したりするだろうか?と、私は考えてしまいました。チャンギ空港でサンドウィッチを買おうとしたら、色の黒い男が「ついでにビールは、どうだい?」と売り込んでくる。ヒトとカネを呼び込むことで自分たちの豊かさが実現されているという意識が、あちこちから伝わってきます。画像は、空港の片隅に置かれている募金箱。「シンガポール癌協会」と書かれていて透明になっているから、よく覗いてみると中には1,000ドル札も混じっています。およそ76,000円にあたる現金です。

粥個人消費の強さも、至るところで感じました。オーチャードの駅から絶え間なく出てくる若い人の群れが、伊勢丹や高島屋のビルに次々と吸い込まれてゆく。ルイ・ヴィトンのような欧州ブランドと共に吉野家やモス・バーガーも出店していて、インド系の女子高生らしき集団が高いカフェで放課後のおしゃべりに興じている。チャイナ・タウンでは、豚肉と生姜と漢方薬が交じり合ったような匂いが充満していて、安くて美味い評判店には行列が絶えない。私は日本の地方のショッピング・センターで、平日のガラ〜ンとしたフード・コーナーに長く見慣れてしまったので、「あぁ、景気が良いというのは、こういうことだったんだ」と思うことが度々でした。

NHKで始まったシリーズ『沸騰都市』のサイトには、次のような文章が載っています。

グローバリズムによって国境の意味が薄れ、新たに世界の主役を担うのは、国ではなく「都市」の時代が到来。世界を主導してきた超大国のアメリカの力が揺らぎ、急成長する新興国が主役交代の鍵を握る中、世界の地殻変動の舞台となっているのが、様々なエネルギーせめぎ合いぐつぐつと煮えたぎる「沸騰都市」である。

まったく、そのとおり。シンガポールも沸騰都市のひとつ。今週はシンガポール航空が買ったエアバスA380が成田空港にやってきます。信州まつもと空港の利用者数は、この1年で半減してしまいました。