いったん105円まで落ちたドル円は、106円の前半で週を終えました。チャートだけを見れば108円から2円ほどの下落に過ぎませんが、アメリカの大統領、財務長官、FRB議長がそろってドルの防衛に努めた事実を考えあわせると、中長期のドルの先行きに弱さを感じさせる終わり方。もしも今年の後半あたりにアメリカ政府によるドル買いの介入があったとしたら、もちろん驚きはすると思いますが、同時に、「ついに来たか…」という感情もこみ上げてしまいそうです。
ブッシュ政権の8年も終わりに近づき、つくづく思うのは、政治の強さと怖さ。いまアメリカで儲かっていそうなのは、中西部あたりの信心深い農業経営者や、テキサスの石油業者、それにフロリダあたりで悠々自適の生活を送っているような人たちです。カリフォルニアではヒスパニックたちがサブプライム問題に喘ぎ、N.Yの銀行や証券も業績が冴えません。つまり穀物と原油の高値によってブッシュ大統領の支持者やお友達ばかりが儲かっているのが、いまのアメリカ経済の姿だと言えます。まさに、"Winner Takes All"。勝った者が、すべてを持ってゆく。
CNBCでは女性の司会者が「いまから原油に投資しても遅くはないの?」と、日本の主婦が聞いたら怒りそうな質問をゲストにしていました。専門家の答えは、だいたい似ています。これから原油は20〜30%下がる可能性があるが、それは早くても秋以降になるだろう。これからガソリンの消費が冷え込んで在庫が積みあがり、ブラジルが新しい油田を開発するなど、価格が下がる材料はあるにはある。ただ、何と言っても米ドルの安さが原油高を招いているので、いったんは150ドルまで騰がる可能性が高い。あとは、ハリケーン。そして大統領選のゆくえも考えないといけない。
もしも日銀の総裁が利上げを匂わせるような発言をしたら、ドルは売られて、円高になるでしょう。CNBCの画面では、いつもドル円がトップに出ます。世界第1位の国の通貨(ドル)と第2位の国の通貨(円)の関係は、他に及ぼす影響が大きい。いまは世界の国々がインフレを懸念して利上げへの姿勢を強めている場面ですから、もしも円までもが利上げに傾くとなれば、円の他に「強いドル」を演出してくれる弱い通貨は見当たらなくなる。ドルに対する不安が強まれば、資金は原油と穀物へ、いっそう流れ込みやすくなりそうです。
これからの日本で成長が期待できる仕事は何か?私は、日本の働き手を、海外へ送り込む仕事が有望になると考えています。実際に多くの大企業が、それを実行しています。先日は地元のセイコーエプソンが、社員が帰国して家族に会うための費用を負担していると聞きました。中国や東南アジアには、駐在員が日本語で寛げる歓楽街も広がっているんだとか。つまり、かつて日本の国内にあったバーやスナックのような仕事までもが、工場と同じように海外へ流失している時代だといえます。地方に流れるお金が細っている現実は、地元のキャバ嬢たちも強く肌身に感じています。「送別会とか、ほんと減ったよね〜」。
今月は久々に駅前のキャバクラに出かけ、「最近まで六本木で働いてた」という女の子の話を聞きました。
まだ向こうの感覚が抜けないんですよ。東京では団体のお客さんに付いても、会計のときに「誰が幾ら払う」みたいなやりとりを見たことがない。
ヒト、モノ、カネの流れの落差が、このひと言だけでも充分に伝わってきます。別のキャバ嬢は、「25万円男」という言葉を口にしていました。「結婚したら、男に25万円ぐらいの稼ぎがないと厳しいと思うんですよ。でも、このあたりじゃ月に20万円以上稼いでいる人は、なかなかいない」。私は、「いるとは思うけど、そういう人は、都会や外国で働いてるんじゃないかな」と答えました。
秋葉原で殺人事件を起こした男は、ネットに次のような書き込みをしています。
女の子のお世辞を聞きながら高くて不味い酒を飲むのがキャバクラですよね。何が楽しいのか教えていただきたいです。
ヒト、モノ、カネの流れが、新聞や雑誌よりもリアルに分かるところが面白い。働く女性たちの声は、私にとっての一次資料。料金の高さは、いわば取材費用のようなもので、接待交際の費用ではありません。「趣味とか無いんですか?」と聞かれると、「うーん…経済…かなぁ」と答えます。
斉藤さんのようにお金を正面から捉えた生々しい
Blogは貴重です。これからもがんばってください。