ドル円が90を割ったので、さぞやドル売りが進んでいるかと思えば、さにあらず。ドル・インデックスは、この1〜2週間を見る限り崩れてはいません。1,000を超えていたゴールドは990、70ドルだった原油は66ドルまで、それぞれ下げています。ユーロ/ドルも1.48から1.45まで下落ですから、円だけが短期的に上昇している。したがって、いま進んでいる円高は、中長期のドル安のエネルギーが、とくにドル円の市場だけに集まって流れ込んで来たイメージ。
ドル安は、さまざまな通貨や資源に対して循環するようにして起きています。あるときは原油やゴールドに対して売られ、また別の場面ではユーロに対して売られる。そして、先週から今週のように、ときには円に対して強く下落しながら、だんだん全体として安くなってゆくのでしょう。ドルが大量に刷られているにも関わらず米国債が堅調で、長期金利の上昇が抑えられている現象も、単に「景気の先行きに慎重が見方が強いから」というだけでなく、米国債という債券に対してドルの現金が価値を落としている…という側面が潜んでいるからかも。日本とアメリカの貿易摩擦や為替問題が舞台の上の主なドラマだった時代が終わり、資源や食料、あるはドル以外の通貨の存在感が高まっています。
90年代の後半のような中期のドル高が、再び起きる可能性はあるのでしょうか?ドルが中期的に買われてゆくためには、財政赤字が改善され、当時のIT企業のような魅惑的な投資対象が増えていくことが必要になりそう。オバマ政権は、財政が改善されると共に、環境関連の新しい企業群が出てくる将来像を思い描いているのでしょうか。
逆に、強いドル全面安が起きる可能性はあるのか?ドルの急落は世界の多くの人々にとって不利益なので、回避のための様々な方策が取られると思います。ただ、アフガニスタンが泥沼化して混乱が急激に広がるような安全保障上の問題が起きた場合には、有事のドル売りが再燃するかもしれません。イスラエルあたりで軍事的な緊張が高まれば、ドル安が「原油高」という形で再燃することも考えられます。
アジアで存在感を高めている通貨といえば、やはり人民元。香港から来た人に尋ねると、ドルとともに下がり続ける香港ドルを敬遠し、人民元で預貯金を持ちたがる人が増えているそうです。だから、人民元建ての中国の国債に関心を持つ中流層も多いんだとか。「いつかは統合されるだろう」と言われている香港ドルですが、そこはお金にうるさい中国人ですから、急激な制度の変更ではなく、貿易の決済やら中長期での保有やら、お金のもつ様々な利便性をくすぐるようにして、少しづつ統合へ向けて歩みを進めているのだと思います。
では、日本の円は、利便性という点で、どんな通貨になろうとしているのか?円高や円安も、もちろん大事な話ですが、人民元の変化を思うと、ついその点を考えてしまいます。通貨の強さとは、交換レートだけでなく、利便性をも含めた幅広いものであり、ゆえにドルは下がり続けても強い通貨であり続けてきたのだと思います。





予想というか、もう現実にそうなってると思いますが。