日本の財政を危ぶむ声が強まっています。20日のN.Yタイムズに「日本がデフォルト(債務不履行)の危機に陥るか、通貨価値が崩壊する」という説が載ったため。もしも市場が財政の悪化を織り込んでゆくとしたら、そのときは日本国債が買われにくくなって長期金利が上がりますから、ある日、日本人が一斉に苦しくなるのではなく、住宅ローンなどの借り入れが多いところから苦しくなると考えるのが現実的です。

住宅ローン残高のうち、その3割が変動金利による借り入れ。いま日本の長期金利は1.4%ですが、これが3%と普通の先進国なみの金利になっただけでも2倍以上です。私は、すでに緩やかな金利上昇が起きていると考えています。日本の長期金利が最も低かったのは03年の0.435%ですが、「100年に1度」と言われた08年の金融危機でも金利は1%を割りませんでしたから。

住宅ローンは年収の5倍ぐらいが適当だと言われていますが、実際には7倍以上のローンを組んでいる人が多い。それでも残業やアルバイト先があれば、なんとか頑張れますが、いまは雇用が縮小しています。ある運送会社には住宅ローンの返済に追われる男性が集まっていて、「職場は、殺伐としてますよ。配車などに少しでもミスがあると、みんな目の色を変えて怒る」という話も聞きます。

Brazil - Unemployment rate (%)


ブラジルの失業率は7.7%まで下がり、米国よりも低くなっています。消費者物価の上昇も5%ぐらい。強いインフレに苦しんだ90年代までのブラジルを思い出すと、信じられない改善ぶりです。安い衣料の輸入に肌で接している私たちは、もう分かっています。モノを作る仕事が新興国に流失しているから、日本のような先進国では雇用が弱い。

私は「破綻だ、破綻だ」と繰り返す声には、どうしても違和感を覚えてしまいます。それは、私がコーヒー屋だから。世界中から破綻の烙印を押されたブラジルからは、コーヒー豆が輸出され続けました。港湾がストで止まったり、霜害で価格が高騰した時期もありましたが、日本のコーヒー屋は、みなブラジルの農産物を売り続けて来ました。厳しいインフレの中でブラジル人は、「では、何を持っていれば大丈夫なのか?」、「受け取る給料の値打ちが下がるのなら、どうすればよいのか?」を考え、ドル紙幣を定期預金のように大事にしまいこんだり、副業にいそしんだりしていました。

私は「破綻だ」と言うだけの態度には、もう意味が無いように思えてしまいます。財政の厳しさを市場が織り込めば、金利が上がる。人口が減ってIT化が進めば、不動産は余る。いくら「日本はモノづくりだ」と評論家が叫んでも、消費者は安い買い物を求める。みながひとつのテレビ画面を見つめていた時代、みながひとつの答えを正しいとする前提で受験勉強に励めば良かった時代は、過去のものとなりつつあります。

最近は、日本の社会が、テレビと受験という2つの要素に、あまりにも多くの時間を費やし過ぎたのではないか?とも感じています。テレビのニュースをみて、財政の悪化という正解を答えるだけでは、あまりにも無防備に思える。まず恐るべきなのはハイパー・インフレではなく、ごく普通の金利水準です。