日本のGDPは、年率で+0.4%。プラス成長の気配が漂っているのは、アジア向けの輸出拠点がある場所や大都会ぐらいで、ほとんどの地方はマイナス成長が実感でしょう。お盆休みに「実家に帰ってホッとしました」というコメントは放送されるけれど、「街が寂れていたので驚いた」という声は流れない。テレビに映る日本の姿と実際の社会のイメージとが、だんだんズレてきたようにも感じられます。

ドル円で85の円高は、95年以来の水準。しかし、1995年と2010年とではアジアの状況が全く違います。今は韓国のサムスンに匹敵するような電気メーカーは、日本にはありません。中国でも電気で動く自動車や太陽光パネルなどを作っている。つまり、15年前に比べればアジアで生産される製品の幅が格段に広くなっているわけで、それだけ日本の国内の仕事が外に流失しやすくなっているといえます。円高の影響は工業だけでなく、農業や水産加工の分野にも及ぶ。スーパーに行ってみると、国産のウナギと外国産のウナギの価格差が開いているように感じます。

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95年の円高が円安へと反転したのは、為替介入もキッカケだったのでしょうが、基本的には90年代の後半がドル高の時代だったことが影響したのだと思います。クリントン政権は財政赤字を減らして「強いドル」を実現した。いまはオバマ大統領がドルの安定を目指していますが、これがなかなか難しい。州政府は公務員の給料の支払いに苦しんでいるし、中流層が高齢化しているので、医療などにもお金がかかる。世界に広がった軍隊を維持するのも大変です。もしも先進国の財政が好転しなければ、それだけ円高の圧力が市場に残ることになります。

円高の圧力は、新興国の側にも存在します。経済成長を続ける新興国には、通貨をドルに連動させたり、あるいはドル買いの介入をして通貨レートを安定させようとしている国が多い。これまでは基軸通貨としてのドルの地位が高かったから、中国や中東のように貿易黒字を積み上げる国が、そのまま米国債を積み上げることが多かった。しかし、最近では温家宝が米国債への投資について「不安だ」と語るように、米国債がやっかいな資産であることが明らかになってきました。こうなると新興国は、徐々に外貨をドル以外の通貨で持とうとする。ドルに次ぐ通貨といえば、ユーロや円。ペッグ制からバスケット制への移行が、円買いの圧力となります。

スーパーが円高セールをやっていますが、じつはユニクロやニトリのような企業こそが、ひたすら円高セールを続けてきたと言えます。国内での製造に見切りをつけて、海外で作る、あるいは海外で社員が働くような企業こそが、円高のメリットを消費者に提供できる。つまり、日本の企業が非日本的になってゆく、その後押しをするのが円高だともいえるわけです。

円高もデフレも、なにも今に始まったことではありません。ドル安は10年ぐらい続いていました。その時期、日本では「美しい日本」だとか「とてつもない日本」だとか、精神論や美意識に訴えかけるようなキャンペーンが繰り返されていました。先進国と新興国に挟まれるようにして進む円高が意識されにくいのは、仕方のないことなのかもしれません。