倉庫を整理していたら、1995年の週刊朝日が出てきました。表紙には、「デフレ時代の、貯蓄の鉄人たち」と見出しがあります。記事は、こんな風に始まっています。

「日本経済は第二次大戦後、初の本格的なデフレを経験している」。6月20日、米国連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン議長はこう言い切った。英国経済誌のエコノミストも先月、「デフレに死す」との見出しで、「日本が1930年代の大恐慌以降、激しい物価低下に見舞われた初めての先進国になった。景気悪化を回避するために日銀は公定歩合を0%にすべきだ」と論評した。

こうした海外からのデフレのご宣託が相次ぐなか、日銀の松下康雄総裁は、「デフレ的状況ではない」と否定しているが、いまの公定歩合は過去最低の1%。日銀は7月7日に今年2回目の金利の低め誘導に踏み切り…

asahi2010年の現在も、似たようなことが繰り返されています。海外のメディアでは「デフレといえば日本」が決まり文句になっているのに、日本の国内ではデフレに対する意識が鈍い。日銀は「景気は緩やかに回復している」と言い続けてきたが、いざGDPが出てみれば景気の失速は明らかで、進む円高に慌てて「追加の対策」を出そうとするけれど、市場の反応は限定的。

いまだに「円高にもメリットがある」と言っている人は、工場やスーパーの跡地を見に行った方が良いでしょう。ガラ〜ンとした空間が、全国のあちこちに広がっている。2006年には120あたりだったドル円が84を割りましたから、日本は4年で3割も通貨高になった。「円高は日本が評価されている証拠」などと理屈を述べている間にも、「なるべくお金は使わない方が良い」という感情が街の隅々にまで浸透してゆき、消費はまったく冴えない状態です。

今月になってから円高が進んだ理由は簡単で、それはアメリカがドルを刷ることにしたから。通貨の値打ちも需給で変わりますから、たくさん出てくる通貨が安くなり、出てこない通貨が高くなるだけのことです。日本では、この点が報道されないまま、役所や市場の動きを映すだけだから、何が起きているのか?わからない人が増えてしまう。

円が高くなるのは、単なる需給の結果であって日本経済の先行きが楽観されているからではないから、買われた円が株や不動産へと向かうわけではありません。円建ての預貯金を持っている高齢者と、円建てのローンを抱えている現役世代との格差は、さらに広がることになります。

「これ以上マネーを増やして何が起こるのか?」という疑問には、単純に「需給が元に戻って円が売られやすくなる」と答えるだけで十分でしょう。日銀券ルールの枠組みにこだわらず、日銀が長期国債を大量に買い取ると言うだけで状況は変わると思いますが、破綻を過度に恐れる感情がそれを許さない。破綻を声高に叫ぶのは、長期金利が2%に迫り、ドル円が120に戻ってからでも遅くはない。それでも、ごく普通の水準なのですから。

日本が過度にインフレを恐れるあまり、デフレを呼びやすくなってしまう状況は、15年前からほとんど変わっていないようです。