米国はクリスマス商戦が始まるブラック・フライデー。アメリカ経済の大きな部分を占める個人消費の、そのなかでも特に大きなイベントですから、CNBCは各地のショッピング・モールから生中継で動きを伝えます。専門家が口を揃えて言うのは、「ハイエンド」と呼ばれる高級品の売れ行きが好調であるということ。株式市場でもティファニーやコーチの株価が上昇。そして、アップルですね。「今年のクリスマス商戦は、アップル物語となるだろう」と語るアナリストもいます。

米国らしいと思うのは、この衛星写真を使った分析。カリフォルニアの同じモールの駐車場の埋まり方を比較して、今年は昨年よりも好調であると説明されています。かつて壁の向こう側の共産国の動きをつかもうとした手法が、より精度の高い映像によって国内の消費分析に使われているところが面白い。いまは中国が宇宙開発に力を入れていて、しかも「経済の冷戦」といわれている時代ですから、当然、中国の側も衛星を使って他国の動きを知ろうとするでしょう。

中国のCCTVは、上海のマンション火災に続いて、政府が物価の安定のために力を尽くしている様子を報道しています。とくに野菜の値段を抑えるために、街の中に家賃を低く設定した市場を設ける政策は、不動産の高騰を意識しているようにも思える。中国共産党は、札を刷りまくってインフレを招いた国民党と激しい争いを経て権力をにぎった政党なので、とりわけ物価の上昇には神経を尖らせる本能があるのかもしれません。

以前、原油が騰がったとき、中国石油などにガソリン価格を抑えるように指導がなされた結果、ペトロチャイナの株価が冴えないという場面がありましたが、あのときのように生活必需品を扱う企業の収益は抑えられそう。私は中国の株式を考える上でも、少し高めな商品やサービスに強みがある公司を探そうとする流れが強まる可能性があると考え、大家楽(ダージャールー)の株を少し買ってみました。

日本ではテレビの需要が強いようですが、「エコポイントが減るよ」「映らなくなるよ」という話に背中を押されるようにして駆け込みで売れているということですから、クルマや煙草のような強い反動は、もちろん予想されます。近所の60代の人たちが「BSが見られるようになってから、お笑いとかバラエティを見るのがバカらしくなったわ」と話しているのを聞くと、テレビの買い替えによって地方の中高年が民放の地上波から離れる動きが強まるかも…などと考えたりもします。

最近は、地元の銀行が飲食店への融資を断るケースが増えてきたとか。こうなるとすぐに出るのが「貸し渋りだ!」という声ですが、しかしオープンして間もない店が次々に閉店する現実をみれば、「そりゃ、銀行も渋るだろうな」と妙に納得もしてしまいます。

いまは官と民や世代による格差が広がっていると言われているし、私自身もそのような内容を書いてきましたが、つまるところは、デフレによって現金を貯め込める人と、貯め込むことが難しい人との格差が広がっているのではないか?と感じるようになりました。若い世代はローンもあって収入も増えないから、デフレで生活が厳しくなる。同じ中高年でも、まとまった現金を手にすることができる人とそうでない人との間では格差が大きい。同じ役所に勤める人でも、臨時採用や現業系の若い人たちからは「公務員といっても…」という声が聞かれます。

かつてホリエモンや村上ファンドが非難されていた頃、日本には「世の中、カネじゃないっ!」という声が渦を巻きました。しかし、派手な人たちが表舞台から去った今、じつはデフレこそが拝金の風潮を蔓延させていると言えます。個人も企業も、現金はなるべく使わない方が良いから、できるだけ貯めようとしている。しかし、この現象を「拝金」と呼ぶ人は少ない。

米国や中国の消費の風景を考えたあとで、日本の消費について考えると、もはや「どんなサービスや商品が何が売れるのか?」という段階を過ぎていて、さまざまなサービスや商品を提供する人たちが、日本銀行券を退蔵しようとする魅力に打ち負かされているようになってきたと感じます。「拝金主義はケシカラン」。あれほど声高に叫んでいた人たちが、なぜデフレ政策を続ける日銀に対しては、かくも寛容なのか?私には、それが不思議でなりません。

高まる通貨の値打ちこそが、人を、そして企業を現金の退蔵へと駆り立てる。「なぜモノが売れないのか?」という質問には、「それよりお金を取って置いた方が良いから」で充分な答えになっていると思います。