ドル売りが強まって終わった2010年。テクニカル的に見るドル指数は一目均衡表の雲の上限まで下落しているので、2011年は、これからドルが買われていくのか?あるいは売られやすくなるのか?その分岐点から始まることになります。

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ドル買いへのためらいは、そのままドル円のレートにも反映しており、日本の新年は一瞬ですが80円台をつけて始まりました。

ファンダメンタル的にいえば、2011年のアメリカ経済が強く回復してゆくなら円安に向かいやすく、逆に雇用や住宅をめぐる指標が期待を裏切るようであれば、円が史上最高値の更新へ向かってしまう可能性が高いといえます。

money私たちの生活に大きな影響を与えているドル。そのドルとは、そもそもどんなお金なのか?進む円高のチャートを見ながら、高校生のころに買って、そのままになっていたガルブレイスの『マネー・その歴史と展開』を読んでみました。16歳のときには金融やアメリカ史についての自分の知識が乏しくて、とても読み通すことができませんでしたが、いまなら面白く読むことができます。ドルとfedの歴史について、これ以上の著作は無いと思うほどですが、残念ながら既に絶版になっているようです。

商業銀行の歴史がイタリアで始まり、中央銀行の歴史がイギリスで始まったとするならば、政府によって発行される紙幣の歴史は、疑いもなくアメリカで始まったと言うべきであろう。(76ページ)

アメリカは、税金を払いたくない人たちが創った国。その政府には、お金が無かった。で、やむなく紙幣を刷ることで動かしていったんですね。だから建国の当時は、激しいインフレだった。金や銀でできたコインこそが価値のある純正のお金であり、紙切れのドルなど怪しいお金である…という価値観はその後も長く支配的であったけれど、それでも軍隊を維持し、税金を集め、広がりゆく中西部の経済をまわしてゆくためにも、ドルは必要悪のように認められてゆく。

いまはバーナンキ議長の政策をめぐって「そんなに札を刷って大丈夫なのか?」という声が出ている場面ですが、そもそもドルというお金が生まれ落ちた時代から同じような論議が繰り返されてきたところに宿命めいたものを感じます。

日本銀行ができたのは1882年で、米国に連邦準備制度ができたのは1913年。なぜアメリカで中央銀行の設立が遅れたかといえば、それは中央の政府というものに疑いをもつ人たちによる根強い反対があったから。それぞれの州に、それぞれの法があり、銀行も各地にバラバラに生まれて、それぞれが銀行券を発行する歴史があったから、信用不安に対処する中央銀行も、それぞれの地区の信用を守る地区連銀という形にならざるを得なかった。ここが、いわば王様たちのお財布として中央銀行の原型が育っていった欧州との違い。

現代でもティー・パーティが「建国の精神に戻れ!」とコスプレをしながら反ワシントンを叫んでいますが、やはりアメリカは最初からひとつのまとまりだったわけではなく、南北戦争のような激しい内戦やお金をめぐる数々の葛藤を繰り返しながら現代まで歩んできたことが解ります。

いかにもガルブレイスらしいと思わせるのは、こんなところ。

経済政策を対立的イデオロギー間の選択の問題とみなすことは、われわれの時代の最大の誤りである。状況がそのような贅沢を許すのは、ごく稀で、それも普通は二次的重要性の事柄にかんしてでしかない。はるかにしばしば、制度や歴史的な事情は、自由主義者、保守主義者、社会主義者、あるはみずから中世的思想の信奉者と名のる人たちの別なく、同じ拘束力を発揮する。そのうちの誰かに味方する事柄は、ほかの全部にも味方するし、誰かにとってうまくいかぬことは、その他すべてにとっても同様なのだ。(434ページ)

フランス革命もロシア革命も、そしてアメリカの独立も、紙幣を大量に刷ることでファイナンスされた。この事実の前にはイデオロギーの違いなど二次的なことのように思える…というわけです。ワタシ的に簡単に言ってしまえば、左の人にも右の人にも円高や原油価格の高騰は同じように降りかかるし、さらにいえばウィキリークスによる暴露や環境の変化はイデオロギーや国境を越えて広がる。

12月には、バーナンキ議長のテレビ出演が話題になりました。話は、まず雇用。中央銀行にも放送局にも、失業を何とかしないといけないという真剣味がある。そして何といっても印象的なのは、インフレを2%以下に抑え込む自信を「100%だ」と即答している場面ですね。もしもインフレが進むようなら「15分で」政策を打ち出せる、と議長は語っています。

デフレの日本は、2011年を迎えました。今年は、より多くの人たちがお金について、より真剣にならざるを得ない年になりそう。趣味も職業も、また住んでいる場所も、それぞれが違うわけですが、みなが円というお金を使っていることでは共通しています。その円のゆくえに強い影響を与えるドルというお金について少し考えてみるのも、そんなに悪い正月の過ごし方でもないように思えます。


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