農業をやっている若い人から、切り餅について、こんな話を聞きました。

原料のもち米は、輸入だったりするんです。米には高い税金がかかるから、いったん砂糖と混ぜて輸入して、それを専門の業者が日本で砂糖と米に選り分けるんです。その業者が、むちゃくちゃ儲かってるらしいです。

思い出すのは、缶コーヒー。1980年代のブラジルからは、日本むけに「コーヒー・プリパレイション」という商品が大量に輸出されました。コーヒーのエキスと大量の砂糖を1:9ぐらいの割合で混ぜたものを、日本の大手商社が扱っていた。生豆の輸入には検疫などの面倒な手続きが必要ですが、缶コーヒーの原材料という形にすれば手間もかからない。これが急拡大した缶コーヒーの市場を支えていたのです。お餅の舞台裏には今どき珍しい景気の良い話があるわけですが、裏返していえば法律や制度の隙間を突くようなところにしか、なかなか商機を見出しにくい時代になったともいえます。

いよいよ消費税率を上げる話が出てきました。物価の上昇は2%でも許せないと語るのは、与謝野馨

■消費税10%こそ救国の策

経済成長だけを唱える人たちの問題点は2つある。まず、彼らは日本の経済成長を高めに見積もりすぎている。われわれは実質で日本の経済成長率を2%くらいに見積もっているが、彼らはおおよそ4%成長が可能だという。ではその2%はどこからくるか、と聞くと、「物価上昇」と答える。いわば小規模なインフレを毎年繰り返すわけである。

しかし、そもそもそのようなインフレ政策を意図的に行なってよいのだろうか。国や企業にとってインフレは都合がよいが、一般の国民にとっては迷惑極まりない。デフレ状況に慣れきっている国民にとって、2%のインフレは生活に劇的な変化をもたらすだろう。

そして、2%のインフレが5年続けば、物価は10%上がる。インフレ政策による増税回避を主張する人は、実質的にはインフレ率を通じた増税を唱えているにすぎない。真面目にコツコツ働いて貯蓄をしている人たちの富を目減りさせ、収奪しようとしているのだ。

まじめにコツコツ働いてローンを返済している人たちのことも、「日本のようなデフレになったら大変だ」という海外の論調も全く考えていない。

日本が財政再建へ歩み始めれば、それは円買いの材料。円高が進めば、ただでさえ閉鎖が続いている生産や流通の拠点は減りますから、税源は流失することになります。生活保護など税金に頼ろうとする動きも強まっているので、前原大臣が言うようにデフレ環境で増税すれば税収が減る可能性がある。耕す人のいない畑は宅地になり、不動産デフレも止まらない。こうなると欧米のように日銀が国債を買うことが政策として考えられるわけですが、なにしろ現金こそが善であるという思い込みが強烈で、なぜかデフレではなくインフレこそが悪であるという感情が強い日本ですから、なかなか政策が変わらない。

起業もデフレ環境ではリスクが高い。起業をはやす声は強いですが、上場する企業の数は減っているし、実際には体の良い「下請け化」が進んでいるようです。正社員を雇って仕事をさせれば、雇用保険や社会保険などのコストがかかる。そこで派遣となるわけですが、最近は法律も変わりそうだし労基署の取り締まりもあるから、「起業して独立しましょう」という話になる。自営業者に仕事をしてもらうなら就業規則も残業手当も気にしなくてよいから、企業としては都合が良い。

地銀の営業の人は、「日本にも良いところはあります」と言います。それは確かに、そのとおり。日本の良さは、大きく制度が変わらず社会が安定しているところ。しかし、その安定が心地よいがゆえに変動が嫌われ、気がつけばアジアの他国の競争力ばかりが目立つようになっています。公務員の制度、国と地方との関係、そして年金。変革は郵便局が民営になったぐらいで、ほとんど前に進んでいるようには思えない。サムスンやLGの製品が広がる欧州では、新車の販売台数でヒュンダイがトヨタを抜いたようです。

近所の居酒屋で久しぶりに会った30代の女の人が言ってました。「仕事を探そうと思うんだけど、なんだか働こうっていう気持ちが沸いてこない」。私は、「わかる」と答えました。