日本国債の格づけが下がりました。格付けのニュースは、材料視されるときと無視されるときがありますが、昨日の為替市場は強く反応して83円を超える円安になりました。私はドル円のロングポジションを持っていないのに、「おっ、これはいい」とつぶやきました。

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チャートを見ると、円高に向かうことを示唆する曲線があることがわかります。この先へ進むと、財務省の動きに注目が集まるエリアになる。もしも「注視する」と大臣が答えれば、それは円高を肯定したと受け止められて更に円高を招き、「断固とした態度」で介入があれば円安。さらに財政の再建が強調されて増税の話になれば、円高になるかもしれない。いわば財務省によるタコ踊りのような値動きも考えられるので、サポートラインを形づくるようにもみえる昨日の反発にホッとしました。

いまユーロは、力強い上昇トレンドを走っています。アイルランドやポルトガルなど財政難の強豪国が話題を振りまいてユーロが売られた時期は過ぎました。米国ではオバマ大統領が財政支出を抑える演説をし、ドルは下げた後に反発があろうか?という場面。つまり財政危機が意識されながらも、ドルとユーロが共に売られにくい場面での日本国債の格下げ発表でしたから、タイミング的に円売り反応が起きやすい状況だった…と振り返ることができます。

長野県では、まずは製造業、そして農業、さらには観光が重要な産業ですから、円高は厳しい逆風です。日本の社会にとっても緩やかな円安が望ましい。すでに日本はモノやサービスを輸出して稼ぐ国ではなく、海外に投資をして稼ぐ国へと構造が変化しています。貿易黒字は年に4〜5兆円ぐらいなのに、所得収支の黒字は12〜16兆円もある。よく「円高は輸出には逆風だがメリットもある」と説明されますが、そもそも事実として日本は輸出よりも投資で稼ぐ国になっているのですから、円高の逆風が個人の投資機会を狭くしている現実も考えないと実際的だとはいえません。

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円高が進めば海外投資の効果は削がれ、個人のお金は国内に限定されがちになってしまいます。いくら流動性と格付けが高い米国債とはいえ、2年で2割も円高になれば損になってしまう。

日本では、不動産も株もパッとしません。じっさい、この1年間でよく売れたのは、為替リスクを避けた債券を中心にした国内型の投資信託でした。だから債券を材料にした詐欺も増える。簡単にいえば、いま日本でお金を持っている人たちは、日銀が出した銀行券を財務省が出した国債に置き換えることで、わずかな利回りを確保しようとしているわけです。

しかし紙を別の紙に取り替えるだけの単純な交換には、生産や成長、そして重要な雇用の広がりを期待することはできない。そして誰も、この傾向を「マネーゲームだ」とは呼びません。もしも海外への投資に魅力があるとなれば、投資の多様性は一気に広がり、リスクを小さくするために外国の文化や経済を紹介するような仕事が広がりを見せることでしょう。

日銀券も国債も、国の信用を拠り所にした紙切れであることでは同じです。しかし生活感覚としては、どうしても「現金(日銀券)は善であり、借金(国債)は悪である」という考え方をしやすい。日本のテレビや新聞は盛んに「破綻」を強調しますが、より生活感覚に沿って考えるならば、そもそも破綻しそうな組織でボーナスが支払われていることが不思議です。

これから仮に円安が進んだとしても、破綻を心配し続ける論調や、安全を求める中高年の国債の買いが、まるで坂道を下るクルマのエンジン・ブレーキにように効くことでしょう。もしも本気で破綻を不安視するなら日本の国債など怖くて買えないはずですが、じっさいには多くの人たちが為替リスクを恐れて国債を買っている。そして為替の変動リスクがある限り、日本国債に代わる金融商品など他に考えられない。

私は昨日の円安が、動かない日銀に代わって市場が動いた現象のように思えました。「日本の富裕層も現金にしがみついているだけでは厳しいですよ」と、市場が言っているようにも思えた。世界の中央銀行が増やしている通貨の量に比べると、日銀のそれは少ない。スッと立ったドル円チャートの陽線が、細いけれどハッキリと見えるLEDの光のように思えました。

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