アメリカの失業率は9.1%に悪化。CNBCのメリッサ・リーは、指標が出た直後にホワイトハウスの高官に「何かおっしゃりたいことは?」と質問を始めました。続いて共和党の議員たちが雇用について会見、フォードの経営陣は失業の影響についてインタビューに答えました。さらに不動産の専門家たちが弱い住宅市況に与える影響を語ったあと、大統領選のキャンペーンを始めた共和党のロムニー氏が当然のように雇用問題から演説を開始。失業率の発表に備えた形で、オバマ大統領もオハイオの自動車産業で働く人たち向けに演説をしました。これらは、すべて生放送で流れました。

先週からアメリカの指標は予想よりも弱いものが続き、株とドルは売られやすく、債券とゴールドが買われやすい流れになっています。景気の回復が弱まった原因としては、日本の津波、QEの終了、高級品から裾野ひろく広がってゆかない個人消費、弱いままの住宅、オバマ政権の政策などなど人によって指摘するところが違いますが、それでも多くの人たちが雇用を核心としてとらえている様子がハッキリと伝わってきます。

日本では放送や新聞が原発と政局を焦点にしていて、雇用が忘れ去られたかのような状態になっています。リーマン・ショックのあと常磐線や水戸街道ぞいのハローワークでは求人倍率が大きく落ち込み、そこに震災が来たわけですが、「がんばろう」とか「団結」とか数々の美談が強調されて、むしろ雇用に対する意識は前よりも弱くなったように見えてしまう。

みなが「復興」と声をそろえますが、現実的な問題として60歳を越えたところで設備や自宅が失われてしまったら、安心して引退ができる方策を考えることも大事だと私は思います。農業であれ、漁業であれ、製造業であれ、飲食業であれ、無理して借金して事業を再開しようにも、体力や気力がついてゆかないという人だって多い。もしも自分が60代で同じような被害にあったら、たぶん「元に戻そう」などとは考えられないでしょう。40代の現在でもデフレ環境を思えば、ひとまわりもふたまわりも小さな設備や住宅にして、地味に暮らせる工夫をするのではないかと思います。

このごろは『松本市民タイムス』という地元紙に、30代無職の男性による犯罪がよく載るようになりました。事件のひとつひとつは被害額も小さいのですが、いや、そうであるがゆえに逆に仕事が少なく閉塞した社会状況がリアルに伝わってくるように感じます。奥さんと子供が出かけている間に筑摩(つかま)のアパート自室に放火したりだとか、よその子供を殴ったりだとか、そんな話が出る。最近だと29日の紙面に、こんな小さな記事が出ました。

松本署などは27日、強盗の疑いで、住所不定の無職・百瀬賢一容疑者(36)を緊急逮捕した。調べだと、百瀬容疑者は同日午後2時ころ、松本市笹賀の実家内で、依頼を受けて訪問したタクシーの女性運転手(62)に刃物を突き付けて「金を出せ」などと要求し、所持金約2万円を奪った疑い。

「住所不定」と書かれているのに、犯行は「実家内で」となっている。27日は金曜日でした。つまり仕事がなく、アパートなども借りられず、平日の午後も実家に戻っているしかない無職の男性が、やけくそになった光景が浮かんでくる。他の地方のことは詳しくは分かりませんが、似たようなことは全国のあちこちで起きているのかもしれない。

昭和のころの感覚なら20代でクルマに熱中したりしていた人も、30代になれば結婚して落ち着き、40代になれば子供も育って…ということだったのでしょうが、いまは状況が違います。近所で理髪店を営む人は、「今さ、子供がいて住宅ローンがあったら、もうあとは何もできないじゃん」と言っています。ラジオから流れる古い歌謡曲を聴くたびに、「そういえば昔の繁華街には人が大勢いたなぁ」と思ってしまう。唄もさることながら、たくさんの自転車が並んでいた書店やゲームセンターの風景が私には懐かしい。

菅直人が代表になろうとしたとき、まず言ったのは「ぜひ、政調を復活させたい」という話でした。政調(政務調査会)は政党の政策をまとめる部門ですから、「あぁ、そうか、政務調査会で政策をまとめるんだな」と思った人もいたでしょう。しかし、その政調をすっと飛ばして消費税を上げる話を総理がして、民主党は選挙に負けて国会はネジレ状態に。それでも一瞬「雇用」が最優先になったかと思いきや、なぜか2011年は「政治とカネの問題に決着をつける年」となって、震災が起きると幾つも対策本部ができて、もう今となっては、どこで何が決まるのかも分からないような状態。「がんばろう」とか「日本はひとつ」というスローガンとは裏腹に、「いやぁ、こりゃ元に戻るってわけには、なかなかいきそうもないぞ」と感じる人が増えているのではないか?

アメリカの雇用統計は、当然ですが為替市場に影響を与えます。今週は1ドルが80円22銭で終わりました。米国の雇用が予想よりも悪いときに急激な円高が進むことは、もうひとつのパターンになっていて、ショックが強いときには数秒ほどで1円近くの円高になることもあります。ずいぶん前から海外のニュースでは「日本は円高とデフレに苦しんでいる」と報じられているのに、いまだに「円高にはメリットもある」とか「円高ではない」とかいう話が堂々と新聞に出て、そのうえアメリカどころか日本の雇用のことさえ何処かに忘れ去られて、増税の主張が何度も蒸し返され、いつの間にか経済やITが専門だったはずの識者さんも原発ばかりに熱中して…という状態になりました。円高に増税に原発に政治混迷で、おまけに海外市場はそれなりに成長ですから、有能な人や企業が出て行く条件が日々着々と強まっているようにも思えてしまいます。

もうドル円が80を割り込む直前になっても、「注視」という言葉さえ聞かれない。起きているのは「平和ボケ」というより「日本ボケ」と呼んだほうが良いのかもしれない。最近は「日本では、半ば世捨て人的に生きることも大事なのかも?」などと思いつつ、英語や中国語のテキストを開くこともたびたびです。記憶力が落ちているので、あれこれ簡単に覚えられるわけでもないのですが。