2007年04月21日

政府の農業活性化策素案―アジア・ゲートウェー構想で検討

 我が国の農業は、低自給率であることを筆頭に、難問山積の分野の一つである。食糧に関することは生命に直接関わることだけに、食糧安保の名の下で保護政策を強化する誘因が大きい。しかし、それでは根本的な問題解決にならず、むしろ日本の農業の足腰を弱めるだけに過ぎない。「攻撃は最大の防御」である。政府・自民党が現在取り組んでいるように「攻めの農業」に転換すべきなのだ。

 政府の「アジア・ゲートウエー戦略会議」(議長・安倍首相)が検討している農業活性化策の素案によれば、農産物の海外輸出を増加させることで、農業を「もうかるビジネス」に転換することを目指す。そのために、企業家精神に富んだ農業経営者を育成するとともに、農業経営規模の拡大図るべく株式会社など法人による農業経営も進める。株式会社による農業経営への参画は、小泉構造改革によって導入された特区制度によって初めて認められるようになったものである。素案のポイントは次の通りである。

・直売所や産地直売を通じた消費者への小口販売
・スーパーや外食産業、食品メーカーへの大口販売
・東アジアを中心とする輸出拡大
・異業種(食品産業や金融など)で活躍した経験がある人材を農業の担い手として迎え入れる
・農業経営者と異業種の連携による販売・財務面の経営力の強化

 農業の活性化を、保護政策ではなくて農業自由化に逆らわない形で行うことの意義はもう一つある。それは、バイオエタノールの問題である。米国が化石燃料のバイオエタノールへの転換を政策として打ち出した結果、原料であるトウモロコシの価格が高騰している。この点に関しては『米国農業保護政策とバイオエタノール』もご覧頂きたい。もしバイオエタノールがエネルギー資源の重要な部分として位置づけられるとすれば、「トウモロコシ版OPEC」などが出現する可能性がある。それが我が国にどういう影響をもたらすかは言うまでもないことだと思う。かかる事態を阻止するには農業をWTOの自由化交渉における聖域化すべきではなく、あくまで自由な流通を確保せねばならない。それゆえ、日本が農業の自由化に反対することは自殺行為だということになる。そうすると、食糧安保を確保しつつ日本の農業を活性化する方策は、結局は集約化した「攻めの農業」しかないのである。


[農業を「もうかるビジネス」に、政府が活性化案の規模拡大]
 政府の「アジア・ゲートウエー戦略会議」(議長・安倍首相)が検討している農業活性化策の素案が21日、明らかになった。
 農産物の海外輸出を増やすことなどで農業を「もうかるビジネス」に転換するため、経営感覚に富んだ「企業家精神を有する農業経営者」の育成に力を注ぐ。農業経営の規模を拡大するため、農地の集約を促進する施策も盛り込んだ。
 素案は、〈1〉直売所や産地直売を通じた消費者への小口販売〈2〉スーパーや外食産業、食品メーカーへの大口販売〈3〉東アジアを中心とする輸出拡大――とのプロセスを経て、個々の農業経営者の販売力を強化する政策を展開するとしている。
 また、流通や食品産業、金融など異業種で活躍した経験がある人材を農業の担い手として迎え入れることや、農業経営者と異業種の連携による販売・財務面の経営力の強化も検討する。株式会社など法人による農業経営も進める。
 政府は、根本匠首相補佐官(経済財政担当)の下に近く設置する有識者懇談会の意見も参考に農業活性化の具体策をまとめ、5月をめどに策定するアジア・ゲートウエー構想に盛り込む方針だ。
(2007年4月21日16時15分 読売新聞)
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takami_neko_shu0515 at 22:25│Comments(9)TrackBack(0) 産業・通商 

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この記事へのコメント

1. Posted by 容子   2007年04月22日 15:58
猫研究員の政策研究記さま

最近のニュースの中で、まだ少しでしょうが、海外に日本のお米を販売しているニュースも見ました。

幸いスシブームに乗って日本の粘り気のあるお米が注目され始めているようで、フランス、香港、北京でも富裕層に好まれていると聞きました。

一般に西洋人はヒラフに使うような長粒米を使うことが多かったようですが・・・

海外でスシを食べる時のお米の触感が好まれるようになり・・・日本のこの粘り気のあるお米を電気釜で炊いて食べてもらった所、とても評判が良かったそうです。

日本の農業も保護から他の製品と同じように海外に売り出せる優れた食品だと言う事が証明されたのですから、保護や減反と言う政策ではなく、農協や、商社との連携の上、このすぐれた食品を輸出の軌道に乗れるよう祈って政府も一体になって売り込みを後援して欲しいものです。
2. Posted by 猫研究員。=高峰康修   2007年04月23日 06:08
容子さん、コメントありがとうございます。
コメのほかにも、果物なんかが評判よいようです。
この時代に保護政策・減反政策はもってのほかですよ。マニフェストでいわばバラマキ政策を提言しているのが民主党です。
3. Posted by asean   2007年04月23日 11:40
おはようございます、猫研究員さん

どうもですね、この話題の本質は日本農業のそれこそレジームチェンジを行う必要性にあると思うんですよね。

地方自治体が「貿易振興課」みたいなモノを作る傾向があるようですが、
地方自治体にそうした活動を担保する根拠法が無いにも係らず
どうやって”東アジア”諸国との貿易を地方行政が主導出来るのか?

工業製品と違い農産物(食品)ってのは”無いと生存の危機”が高まるモノですから
日本農業がそれこそ工業製品と同様に「高品質”低価格”」を実現出来る大量生産が可能なら別なんですが・・・
(文化レベルがそこそこ高くて余裕がある先進国以外で
輸送費込みで1個千円近くになる可能性のリンゴを購入出来る
市場ってのはそう大きくはないですよ)
4. Posted by 猫研究員。=高峰康修   2007年04月24日 00:10
aseanさんへ

コメントありがとうございます。

>この話題の本質は日本農業のそれこそレジームチェンジを行う必要性にあると思うんですよね。

そうだと思います。地方自治体主導でというのは、やはり無理がある話しです。国策として、高品質・低価格を実現できるように研究するというのが、ご紹介した素案の目指すところであります(と、私は理解しています)。
5. Posted by ろろ   2007年04月25日 00:38
>〈1〉直売所や産地直売を通じた消費者への小口販売

  (1)を本当に実現したいなら、「農協」を廃止するしかないように思います。契約農家制や産直は、企業努力でスーパーなどがすでに行っていますが・・・。

6. Posted by ろろ   2007年04月25日 01:28
>〈3〉東アジアを中心とする輸出拡大

  低価格競争となると、中国やタイに比べて人件費の高い日本は相当に不利です。
  残業ゼロ・繁忙期のみの農奴みたいな(外国人)労働者がいれば別でしょうけどね。

  反対に、高品質化・ブランド化に傾注するとなると、日本の大半の消費者が日本産農作物を買わなくなり、中国からの輸入品を買うという状況になります。なんだかおかしくないですか。
  まあ、「もうかるビジネス」にしたいのなら、ビンボー人は中国産の毒野菜でも食えばいいんだという発想でも問題ないんでしょうね。

  この辺のバランスをどう取るか、きちんと示してくれないと不安でしょうがないですね。
7. Posted by 猫研究員。=高峰康修   2007年04月26日 06:01
ろろさん、ご訪問とコメントありがとうございます。
ご明察の通り、農協の解体が必要となってきます。いずれそうならねばなるまいというのが、私の認識です。異論などありましたら、是非聞かせてください。

>この辺のバランスをどう取るか、きちんと示してくれないと不安

確かに。これは重要課題ですし、私自身今後研究したいテーマの一つでもあります。
8. Posted by ろろ   2007年04月26日 11:16
>農協の解体が必要

  全農業従事者より、農協職員が多いというのは明らかに異常ですね。
  しかし、その地域の農家の互助組合的な要素もあり、環境に配慮した品種改良や農法の指導もできる利点があります。
  日本でモンサントみたいな企業が幅を利かせるようでは困ります。まあ、一部の方々はそういう連中を儲けさせたいのかもしれませんがね。
9. Posted by ダイ・グ   2007年04月29日 00:20
最近何かと流行の「バイオエタノール」なんですが、サトウキビやトウモロコシ以外では無理なんですかね?
極端に言えば「米」を原料に出来ないかと思うんです。
理由は2つ。
元々自給率の低い「トウモロコシ」を更に輸入するのは、値段の高騰による余波を考えると正直怖い。
また「サトウキビ」は、どうしても暖かい地方の植物という先入観があるので、日本全国で栽培できるかが不安。
そう考えると、自給率が高く、余力がある物を考えると「米」という選択肢が考えられると思うのですが?
また、「食用」ではなく「燃料」として栽培するのであれば、現在の農業が抱える様々な問題とは別物としてやれるのではないかと・・・
もっとも、技術的に米が原料として使えるというのが前提ですが^^;

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