2009年01月23日

【ソマリア沖海賊】与党PT「海上警備行動発令による海自護衛艦派遣を」

与党海賊対策プロジェクトチーム(座長=中谷元・元防衛長官、佐藤茂樹・公明党安全保障部会長)は22日、ソマリア沖海賊対策のため、政府が自衛隊法82条に基づく海上警備行動を発令して海上自衛隊の護衛艦を派遣することを求める中間報告を正式に決定した。
 これを受けて3月末ごろに、ソマリア沖で海自護衛艦が日本関係船の護衛活動を始めることができる見通しが立った。


 なお、与党海賊対策PTの中間取りまとめ案要旨は次の通りである。



 海賊行為対処法案(仮称)を3月上旬を目途に国会に提出、成立を期す。当面の応急措置としてソマリア周辺海域の海賊事案の急増が国民の生命、財産、海上交通安全に深刻な脅威となっている現状にかんがみ、以下の対策を講じることを要請。

 一、海賊対処の主体は第一義的には海上保安庁だが、対処が困難な現状にかんがみ、自衛隊法82条に基づく海上警備行動を発令、自衛隊が対処する。

 一、保護対象は(1)日本籍船(2)外国籍船の日本人(3)日本関係船や外国籍船の日本の積み荷。船舶運航事業者との連絡調整は国土交通省が当たる。

 一、自衛隊の武器使用は警察官職務執行法7条により対処、具体的な運用基準は防衛省が作成。

 一、司法警察業務は自衛艦に同乗するなどした海上保安官が行う。

 一、政府は海上警備行動の準備に直ちに着手し、速やかに具体的な計画を策定。

 一、海上警備行動を発令した場合、政府は所要の報告を国会に行う。

(産経新聞1月21日付より引用)

 具体的には、政府は護衛艦を2隻派遣し、ソマリア沖を通る日本関係船数隻と船団を組んで安全海域まで伴走することを検討している。保護対象は上記の要旨の通りであり、国土交通省が要請を受け付け、貨物の重要度などを考慮して選定する。
 護衛艦には、海賊船に停船命令出したり、立ち入り検査を実施できる権限が与えられる。その際の武器使用には、警察官職務執行法7条が準用される。すなわち、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができるが、正当防衛・緊急避難にあたる場合を除いては危害を加えてはならない。これは海上警備行動を定めた自衛隊法93条に基づくものである。例えば、護衛艦が日本関係船と伴走している際に、海賊船が接近してきて停船命令に応じない場合は、警告射撃や威嚇射撃を行うことができる。また、海賊が銃撃してくるなどの行為に及べば、正当防衛や緊急避難にあたり、海賊船に射撃し、相手に危害を加えることができる。
 なお、自衛官には司法警察権がないので、海賊を拘束した場合、取り調べや送致などの司法手続きができないため、護衛艦に海上保安官が同乗する。拘束した海賊は沿岸国に引き渡すか、殺人など重大犯罪の場合は日本に移送して起訴する方針とされる。この、海賊を拘束した場合に拘束して沿岸国に引き渡すというのは、米国も最近まで行なっていなかったことである。拘束せずに追い払っていたのである。
 海上警備行動の発令による海賊対策は、もちろん応急措置である。そもそも、海上警備行動は、地理的範囲は明記していないものの、我が国近辺の領域警護に関して、海保の手に余る場合に海自を活用することが主眼である。その証拠に、自衛隊法93条3項は、対象となる船舶が「無害通航でない航行を我が国の内水又は領海において現に行つている」ことを要件に停船させるための武器使用を認めた、海上保安庁法20条2項を準用している。しかし、海上警備行動は「公海上で行ってはならない」とも規定されていないので、海賊対策の応急措置として、アクロバティックではあるが用いることにしたのである。
 それにしても、「応急措置」にしては、いかにも時間がかかりすぎた。これが昨年の秋ごろにじっしされていいたならば、変則的ではあるが迅速な措置であると評価できたが、海上警備行動による海賊対策の開始が3月になるのは、まさに"too late"のそしりを免れない。既に今頃、海賊対策の一般法ができていて当然である。
 もちろん、遅くなったからといって、海賊対策の一般法を制定しないでよいわけではない。これは与党のPTも認めているところである。
 一般法を制定することの大きな意義は、海賊行為自体を犯罪と位置づけることができるということである。これにより、他国の船舶を防護する根拠ができる。海上警備行動では、我が国関係の船舶しか防護できず問題がある。問題となってくるのは同時に海賊対策活動をしている他国の海軍の艦船を援護できるかどうかであろうが、これもできるようにしておかねば不都合である。
 一般法により、海賊行為を行なっているというだけで司法管轄権に服せしめることができれば、「海賊は人類の敵」として普遍管轄権を認めている国際海洋法とも整合的である。もっとも、司法管轄権を行使するとして、自衛隊には司法警察権がないので、そこをどうするかは問題となるであろう。自衛隊にそれを与えることを検討してみるべきではあるが、現実問題としては今回同様、海上保安官の便乗でも構わない。
 海賊船への船体射撃については、先に挙げた海上保安庁法20条2項に定める対象船舶の要件のうち「領海内」を「領海内および公海上」として、停船させるための船体射撃を認めるべきである。
 また、海賊を拘束した場合の手続きも明確に決定しておく必要がある。
 さて、クアラルンプールにある国際海事局(IMB)海賊情報センターが16日に発表したところによれば、昨年1年間に世界中で起きた海賊行為は293件で、前年の263件を上回り過去最高となった。海賊に乗っ取られた船舶数は49隻、身代金目当てに拘留された乗組員は889人に上った。このうちソマリアの海賊に奪われた船は42隻、拘留された乗組員は815人と大半を占めた。また、同センターは、海賊の襲撃は以前よりも暴力的になっており、銃が使われるケースが前年の72件から139件へとほぼ倍増したと指摘している。さらに、1年間で海賊に殺害された乗組員は11人で、21人が行方不明である。そして、「世界経済が不安定な現状では、海賊行為は今後も増える可能性がある」と、さらなる警戒を各国に呼び掛けている。かかる状況下にあって、我が国は海洋における秩序に大いに依存している国家として、積極的に海賊対策に取り組むのが当然である。政府のPTは、一般法の国会提出は3月上旬がめどというが、いささか悠長に思われる。さらに急ぐべきである。

takami_neko_shu0515 at 09:21│Comments(0)TrackBack(4) 海洋の安全・海賊対策 | 安全保障・自衛隊

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