2009年09月13日

「核持持ち込み密約」問題は国内問題―米国を巻き込むべきではない

 1960年の日米安保条約改定時に、核兵器を搭載した米国艦船の寄港・領海通過は安保条約第6条の実施に関する交換公文に定められた事前協議の対象とせず「黙認」するという、核持ち込みに関する、いわゆる「密約」が交わされたとされる。この件に関しては、今年に入ってから村田良平・元外務次官ら外務省元高官の証言が相次いでいるが、外務省はあくまでも密約の存在を否定してきた。その後、外務省は、1981年の外交文書調査結果を根拠に密約の存在を真っ向から否定するのではなく「確認できない」として否定する立場を取ることにしたと伝えられる。
 一方、米国では、核持ち込みに関する密約に関する記載がなされた公文書が既に公開されており、実はもはや密約とは言えない。密約というよりも、単に「了開」と呼ぶ方が適切なのかもしれない。ただ、密約の根本に関わる「安保条約討議記録」に関する部分が日本側の要請により再び機密指定されているという報道もある。しかし、一旦公開したものを再び機密指定しても、あまり意味のあることではない。やはり、密約でもなんでもないというべきであろう。
 私は、米国側の資料で存在が明白になっている以上、密約の存在を否定するメリットはないのだから、外務省は、過去の経緯にいたずらに固執するのはやめて、この際オープンにするのが適切であると考えている。ただ、このことは、米国との間で新たに非公開の了解をすべきでないという意味ではない。状況によっては、重要な了解が非公開の形でなされる必要があるのは当然のことである。
 我が国の民主党新政権は、核持ち込み密約問題の真相解明に強い意欲を示してきたので、これは、外務省の合理的ではない態度を改めさせるよいきっかけになるのではないかと期待していた。
 しかし、新政権の目指す核密約問題解明の方向性には大きな危うさが伴っており、現在は、期待よりも懸念の方が大きい。
 新政権は、核密約問題を検証する有識者チームを設置する意向であり、密約が結ばれた歴史的経緯や背景を調査し、国民に説明し、再発の防止を目指すという。問題点の一つは、この「再発防止」である。これは、正直言って、意味がよくわからないのだが、どうも日米による非公開の了解をすることを認めないという意味であるように思われる。非公開の了解事項など外交の世界では全く珍しくもない存在であり、全てオープンにされなければならないという考えでは外交など成り立たない。相手国は、そんな国をまともに相手にできない。そこまで非常識ではないとすれば、考えられるのは、非核三原則に抵触するような了解は今後は一切排除するということであろう。これはこれで、我が国の安全保障政策を不必要に縛ることになるから有害である。
 もう一つの問題点は、鳩山代表が明言したことだが、国内とアメリカを含めた調査が必要になると言っている点である。核密約問題の本質は、存在がもはや明らかになっている非公開の了解事項を「密約はなかった」あるいは「確認できない」として、あくまでも否定しようとする外務省の姿勢をいかに改めさせるかである。したがって、核密約問題は国内問題であると言ってよいと思う。こんなことに米国を巻き込むのは全く迷惑な話である。日米関係にとってプラスになる建設的な話であるとは到底思われない。こんな厄介な国とは、重要な了解事を交わすことはできないということになる。それで本当に日米同盟は大丈夫なのか。
 「核密約問題は国内問題」であると先ほど述べたが、「国内問題として収めよ」と言った方が正確かもしれない。外務省が非合理な固執を捨て去れば済むだけの話である。逆に、それ以上のことを求めて日米同盟にいらざる波風を立てるべきではない。
 新政権の核密約問題解明への意欲には以上のような懸念があるが、それが杞憂に終わることを願いたい。(了)


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takami_neko_shu0515 at 03:32│Comments(2)TrackBack(0) 日米関係・日米同盟 | 国内政治全般

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この記事へのコメント

1. Posted by ぬくぬく   2009年09月13日 12:22
既に90年代のうちに艦船からの核陸揚げが完了しているのに今更「密約問題」とはおかしな話です。

ノムヒョン政権に親日資産没収と何か違うニカ?
2. Posted by 高峰康修   2009年09月14日 14:32
ぬくぬく様

調査機関まで作って、ご苦労なことです。
共産党とも共闘するというんだから、憂鬱な話です。

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