2011年07月23日

■日本の国際的信用を損ねる、菅首相の「原発輸出見直し」示唆発言

 菅首相は、21日に行なわれた参院予算委員会において、原発輸出を推進するとしている政府方針を、将来的に見直すことを示唆した。すなわち、野党側が、菅氏の「脱原発」発言と、民主党政権が進めてきた原発輸出推進政策との整合性を追及したところ、菅氏は、「今回の事故を受けて、より安全性を高めて進めていく考えをベースにしているが、もう一度きちんとした議論がなされなければならない段階にきている」と述べた。
 既に、ベトナムとの間で、菅首相自らが旗を振って、我が国が原発を受注することで話がまとまっている。さらに、菅氏は、「脱原発」会見を行なった翌日の、14日には、トルコのエルドアン首相に宛てた総選挙勝利の祝電で、原発輸出に言及している。
 菅氏は、ベトナムへの原発輸出に関しては、「外交交渉の現状に留意しつつ、相互の信頼を損なわないように対応していきたい」とも述べているが、これではベトナム側を宙ぶらりんの立場に置いていることに変わりはない。一方、枝野官房長官は、「国際間の信頼関係を損なわない、従来のお約束はしっかり守っていくことが前提だ」と言っている。ここまで明言すれば、相手国としても、まだ安心できるだろう。外務省は、枝野発言が政府方針であると、受け止めていると報じられている。おそらくその通りなのであろう。
 しかし、このようなちぐはぐ対応をしていては、我が国の国際的信用は揺らぐ一方である。日本と国際的約束をしても、いつ反故にされたり、宙に浮いた形にされるか分かったものではない、という印象を強く与える。民主党政権が国際的信頼を損ねた、最大にして最悪の例は、インド洋における対テロ作戦への洋上補給活動を打ち切ったり、普天間の移設先は「少なくとも県外」と一方的にいって、日米同盟の信頼を著しくそこねたことだが、一事が万事といえるであろう。
 我が国は、やはり大国であり、その一挙手一投足が国際的影響を与えることを忘れてはならない。原発政策も例外ではない。菅氏が「脱原発」宣言をしたときに、そのことは全く頭になかったであろうことは、ほぼ100%間違いない。我が国のエネルギー政策として「脱原発」を目指すにしても(私はそれには大反対だが)、対外的には、大別して次の三つの考え方があり得る。すなわち、(1)原発の輸出を続けるとともに核技術の国際的管理に強くコミットし続ける、(2)原発の輸出は止めるが核技術の国際的管理にはコミットし続ける、(3)原発の輸出も継続せず核技術の国際的管理からも手を引くという鎖国的政策、である。「脱原発」を宣言するからには、いずれの立場をとるのか明確にすることが不可欠であったが、ここがきれいに抜け落ちていた。菅氏は、TPP参加に関連して「平成の開国」と言ったが、国際的なことへの関心も知識も、著しく欠如していると言わざるを得ず、これでは「平成の鎖国」である。
 ベトナムやトルコへの原発輸出は、単なる通商問題ではなく、戦略的重要性を強く帯びた案件である。ベトナムは南シナ海問題を巡って連携を深めるべき相手であるし、トルコは中東近辺における親日的民主国家である。これらの国の信頼を損ねるようなことになれば、重大な損失である。
 場当たり的発言を繰り返す菅氏の首相居座りは、確実に、我が国の国際的信用を蝕んでいる。(了)


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takami_neko_shu0515 at 20:30│Comments(0)TrackBack(0) 外交・国際政治全般 

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