診察雑感

市井の開業医が患者さんに接して感じた雑多な感想。

如何にも胡散臭い

電話回線工事?

桜が咲く頃、NTTから回線工事の連絡書が届いた。
「工事は屋外で屋内は無関係、費用負担はない」とあるから失念した。

半年以上経った今、聞いたこともない会社が電話してきた。
「NTTの回線工事を請負うKSPのフジモトです」
ISDN終了に伴う回線工事のようだが、この地域は既に終わっている。

「来年1月から電話が使えなくなります」
あれ?・・・・NTTの話では通話に支障はない筈だ。
「屋内回線工事は30分ほどで終わります」
屋内は関係なく、奇怪な話だ。

「‘ゴソウサイ’の説明に伺う」と言う。
発音が不明瞭で、言葉の意味がわからない。
フジモトさんの出自は東北地方かもしれない。
東北弁が事件捜査の鍵だった松本清張「砂の器」が甦る。

老人性難聴が昂じて、‘ゴソウサイ’は‘ご葬祭’としか聴こえない。
葬式の予定はないから説明は要らない。
「ご葬祭でなく‘ゴソウサイ’です」
会話が嚙み合わない。

‘ご葬祭’でなければ‘ご紹介’か?
「いや、ご紹介じゃなくて‘ゴソウサイ’です!」
アッ、そうか、わかった、‘ご招待’だ。
「何の‘ご招待’か知らんが、招待される謂れはない」

「詳細を説明したい」という意味と判明するまで、かなりの時間を要した。
葬式、紹介、招待と紆余曲折したが、“ソウサイ”は実は“詳細”だった。
「ご詳細の説明」でなく「詳細のご説明」と言うべきだ。
やっと会話が通じて欣快に堪えない。

敬語の用法は小学校で習った筈だ。
NTT関連会社の社員にしては日本語能力が貧弱だ。
フジモトさんは「工事の日を決めたい」と急かす。
どうも訝しく、日を改めて電話するよう伝えて話を遮った。

NTT宇都宮支店とNTT本店の双方に問い合わせた。
「回線工事の予定はなく、KSPという委託業者はない」由。
NTTは「すべて拒否して書類にハンコは捺さないように」と念を押す。

「お主は何者で目的は何か」を質そうと“後日の電話”を待つも爾来音信不通。
言語能力は乏しくとも、不穏を察知する習性は野生動物なみに秀逸だ。

参照;過去ブログ
2013年2月19日「発音の妙」

彼岸の入り

暑さ寒さは彼岸までの筈

本日の気温 華氏95°F。
蜩が鳴く季節だが、彼岸花も咲かない。
気温だけはお盆の候だが、真夏でも油蝉は鳴かずオニヤンマも見ない。
前に拙ブログで「虫の声」を考察したが、最近は季節感が失せた。

乃祖が涅槃の岸辺まで出向いて此岸(しがん)を眺めるのが彼岸だ。
向こうの世界の方が棲み易いらしく、此岸まで来ない。
漱石「草枕」ではないが、坂道を登りながらふと思った。
「兎角この世は住みにくい」

霊園の社長は「このところ“墓じまい”が増えた」と言う。
墓がなくなっても寺と袂別するとは限るまい。
檀家になるのは無料だが、離檀と改葬には大金がかかる。
入るのは容易でも抜けるのが大変なのはヤクザの世界と大差ない。

檀家のときは事あるごとに菩提寺から「金よこせ」の請求書が届いた。
そのたびに憂鬱になる。
とっとと離檀するのが賢明と見切り、寺とは袂別した。
仔細は過去ブログで陳べた。

近頃の家には仏壇がない。
況や先祖の墳墓をや。
親子の仲でさえ断絶する核家族には墓など関係ないらしい。
行く末はわが家の墳墓も亦無縁墓の公算大だろう。

余談だが・・・・
統一教会は400代以上も遡って献金して先祖供養するそうな。
万世一系の今上天皇でさえ126代で、考えただけで気が遠くなる。
未来永劫に亘る集金の道具にされては、ご先祖様は安眠できまい。

参照;過去ブログ
2023年9月13日「三界安からず」
2017年9月4日「もう秋だ」
2016年9月21日「虫の声」
2018年11月3日「さらば宗教 その2」

朗報とは限らない

軽挙妄動、欣喜雀躍を嗤う

アルツハイマー治療薬はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤(アリセプト)とNMDA受容体拮抗剤(メマリー)の2種類がある。
いずれも臨床評価は芳しくない。
つまり、「効かない」のだ。

最近、神経に沈着したアミロイドβを剥離する新薬(レカネバム)が承認された。
適用は初期軽症のみで、効能書きに「発症が27%遅らせる」とある。
高価な薬で、年間380万円かかるそうだ。
言い方を代えれば、大枚はたいても73%は進行を抑制できない。

テレビでどこぞの精神科のセンセイがいみじくも宣く、
「朗報です。認知症患者に光明が射しました」
本気でそう思うのか?
やはり精神科は自然科学でなく人文科学の範疇が相応しい。
太古から○○につける薬はない。

新薬レカネバムの発症抑制27%は本当なのか?
文献を具に読めば、「18か月投与して27%は発症を遅らせたが、その6か月後は症状が進行した」とある。
なあんだ、やはり「効かない」と書いてある。

抑々どんな検証で27%が導き出されたのか明らかでない。
発症遅延効果はどんな方法で判定したのだ?
もともと軽症なのに半年後に悪化したのか?
初めから進行抑制効果なんぞなかったのでは?
そこはかとなく疑念が募る。
なんだか胡散臭そうで俄かには信じ難い。

小沢慧一『南海トラフ地震の真実』(東京新聞刊)は、発生確率80%の大うそを暴露した力作で、科学ジャーナリスト賞(2020年)に輝いた。
「30年以内に80%の確率で起こる」は単なる”予言”で、科学ではない。

科学の衣を纏った曖昧な"確率"は目に余る。
数値に至った根拠さえ明確でない。

参照;過去ブログ
2019年6月9日「厚労省通達」
2008年5月13日「統計のウソ」

三界安からず

猶火宅の如し

ごく稀だが、会計窓口で治療費に疑義を唱える人が居る。
「同じ薬で同じ日数分なのに前回と金額が違う」
猜疑心溢れる顔つきで「なぜだ」と問う。
健康保険の決まりでは、月1回「外来管理加算」が算定される。
前回の診察は同月2回目で加算はないから今回とは金額が異なるのだ。
外来管理加算52点、自己負担160円はガソリン1リッターよりも安い。
仔細は明細書に書いてある。

医療の値段は国の定めで、諸物価高騰に乗じた便乗値上げと曲解されては迷惑だ。
嘗ては窓口の支払で不服を口にする人はいなかった。
世の中は変われば変わるもので、ずいぶん世知辛くなった。

勝手な憶測だが・・・・若しかしたらカルト宗教の隠れ信者かも知れない。
ならば仮令医療費を値切っても献金は惜しむまい。
多大な金額を貢がせるには何らかの秘策があるに違いない。
「地獄に墜ちる」だの「献金すれば天国に行ける」だのと脅すのだろうか?

宮本武蔵は「神仏を頼まず」と云う。
然もありなん、「神も仏もない」と嘆いたのは幾たびか。
火宅の艱難辛苦には神も仏も手を拱くばかり。
現世ほど苛酷な世界はない。

実は、冥土は快適な世界かも知れない。
それが証拠に、行ったきり誰も戻って来ない。
信仰の有無や献金の多寡にかかわらず、誰でも必ず行ける安息郷だ。

フェイクニュースか?

テレビの誤報

宇都宮が記録的豪雨に見舞われた。
道路はアッという間に冠水して車は立ち往生。
国道のアンダーパスは浮いた車の船着場だ。

テレビは窓下まで水没した車の映像を流して曰く、
「車が池に落ちています」
水没車の前後に街路樹が立っている。
これは果たして「池」だろうか?
ふつう池の中に樹木は植えない。
「池」ではなく、誰が見ても「道路」だ。

九死に一生を得た運転者の談話が報じられた。
「短時間で水嵩が増えてエンジンが止まり、窓から脱出した」
ほら見ろ、「池に落ちた」のではない。

テレビに知性は期待しないが、少し考えれば分かりそうなものだ。
知恵足らずのボンクラを報道の現場に出すテレビ局の見識を疑う。

水没車は直前まで何事もなく走っていた。
水が乾けば再び何事もなく走りそうだが、ダメなのか?
何食わぬ顔で水没車を販売した中古車屋があったと聞く。
訳ありの車を黙って売るのは犯罪だが、廃車処分は如何にも勿体ない。


「過料」は行政罰

司法の出番はない

共同通信報に「文科省は旧統一教会に過料を科すよう東京地裁に求める」とある。
ちょっと待ってよ、違うんじゃねェ?
裁判所に「過料を科すよう求める」は文章がおかしい。
清水幾太郎「論文の書き方」「文章読本」は「新聞の文章を真似るな」と諭す。
共同通信の報は、文章以前に事実誤認がありはしないか?

「過料」は質問権による回答不備への「行政罰」で、文科省の領分だ。
裁判所が介入するのは刑法による「科料」以上の「行政刑罰」である。
秩序罰の「行政罰」と刑事罰の「行政刑罰」を混同してはいけない。

交通違反の「過料」青切符で裁判所にお伺いを請う警官はいない。
行政罰は不服を申し立ててはじめて司法の出番だ。
裁判所に「過料処分を求める」のは筋が違うのでは?
この国の法習慣は行政罰に司法が介入するらしい。
裁判所に判断を仰ぐ「宗教法人解散請求」と勘違いしてないか?

宗教法人格は取消さない所存だろうか?
もしかしたら、政府与党は過料処分でお茶を濁すつもりかも。
なにしろ相手は「統一教会」だ。
与党にとって今や「医師会・ノーキョー・創価学会」に次ぐ巨大支援団体だ。
次の選挙に思いを馳せれば、鞭を持つ手も緩むだろう。

〔後日談〕
3日後のテレビ新聞は「過料決定を裁判所に通知」とある。
過料相当を地裁に通達したのであり、裁決を請うのではない。
初期の報道は何のことやら理解に苦しむ文言だ。
通知が必須かどうか知らないが、名目上この国は三権分立だ。

参照;過去ブログ
2018年12月22日「怪しい字幕」
2010年8月5日「消えた老人」

大は小に優る

身長差は不公平だ

バスケットボールW杯は日本代表チームが大活躍。
籠球とは高所に設けた篭にボールを入れた回数を競うゲームだ。
門外漢のヤブ医者が見ても、身長の高い方に利がある。

格闘技は体重で細分化された階級別に順位を競う。
「柔能く剛を制する」柔道が体重別とは合点が行かない。
ボクシングもレスリングも、階級の体重分類はやたら細かい。

東京には東弁・一弁・二弁の三つの弁護士会がある。
三つもあるのは「自分が会長になりたいからだよ」と嗤っていた。
知己の弁護士によれば、"一地裁一弁護士会"は戦後だそうだ。

スポーツも亦然り、多くの階級があれば多くのチャンピオンが誕生する。
食堂の定食でさえ松・竹・梅あるいは並・上・特上がある。
ひとり籠球だけが背丈に関係なく闘うのは公平でない。
高々6尺の大和男と7尺を超える伴天連では彼我の差は明白だ。
せめて背丈別に大・小二階級に分けては如何か。

漸く退場

新型コロナ専門家会議

ウイルス学の知見も実績もない公衆衛生畑の人が専門家会議の長に就いた。
人類初体験の新型コロナ感染症に“専門家”などいない。
降って湧いた厄災で、惻隠の情耐え難い。

政府専門家会議は発足当初から懐疑的だ。
尾身茂座長の御託宣を拝聴するたびに疑念が増した。
弁舌は政府の太鼓持ちに過ぎず、政治家然とした言辞が目立つ。
分科会の専門家は政治家ではない。
科学者が政権に阿るのがそもそも誤りだ。
眼に王侯なく手に斧鉞あってこそ科学者の神髄だろうに。

専門家(?)の総入替、座長交替は喫緊の課題と誰しも思った。
過去ブログで幾度も陳べたからここでは触れない。

専門家会議は新型コロナ対策推進会議に改称して存続したが、遂に解散だ。
尾身センセイ他ご一行様はやっと退場。
「自称専門家」と「他称大家」の寄せ集めでは、船頭多くして山にも登れない。
組織のコンパクト化とメンバー入替は必須で、寧ろ遅きに失した。

参照;過去ブログ
2023年1月18日「まだ存続していた」
2020年9月9日「暫定2類」
2020年8月22日「科学的論理に」

やっぱり出たか

日本テレビ「瞬間最大風速」

台風7号はサイパン・テニアンから真直ぐ北上する。
本土空襲のB29と同じルートだ。

日テレ17時ニュースの女性キャスターは「瞬間最大風速」50mと報じる。
台風の予想進路を図示するパネルには「瞬間最大風速」と大書してある。
これはもはや放送事故である。

拙ブログで何度も言ったが、「瞬間最大風速」ではなく「最大瞬間風速」だ。
訂正しないところを見ると、ディレクターは誤りに気づいていない。
その後、気象予報士が報じる天気予報は「最大瞬間風速」である。
さすがに気象のプロだ。
気象用語に「瞬間最大風速」はない。

閑話休題。
ここ数年、テレビでは8月15日前後の戦争特集がめっきり減った。
嘗ては「日本のいちばん長い日」や「トラ・トラ・トラ」が定番だった。
最近は若者の街頭インタビューにとって代わった。
「8月15日は何の日か知っていますか?」
テレビは「知らない」と応じる若者を選んで恣意的に編集する。

全共闘世代は「戦争を知らない僕ら」と歌うフォークソングを聴いた。
居酒屋には「知らないなら教えてやろうか」と息巻くオヤジが必ず居た。
今ではオヤジは失せ、8月15日を知らない若者の天下だ。
川柳「8月は6日9日15日」は遠い昔だ。
どこか歯がゆいのはGHQ占領下の日本で生まれ育ったためだろう。

参照;過去ブログ
2023年2月10日「サシスセソ」
2018年6月14日「最大瞬間風速」

盆の墓参

盆入り前に済ます

盆と彼岸の霊園は終日ラッシュアワーだ。
若干フライングだが、混雑を避けて盆入り前に香華 を手向けた。
乃祖に公図修正完了の件を改めて御報告。
75年に亘って公図の齟齬が放置されたのは前代未聞の椿事である。
本来なら地図訂正は先考の責務だが、不肖豚児が代わって完遂した。
草葉の陰で安堵しているだろう。
亡父の謦咳が聞こえた気がして惆悵として去るに忍び難く、合掌。

思い返せば、地図修正は荊の途だった。
法務局に放った弁護士の初矢は空しく外れた。
市役所資産税課を狙ったヤブ医者の二の矢が的中して公図は訂正された。
この経緯は過去ブログに詳述した。

不動産登記規則には、筆界内の地番修正は登記官の職権で可能とある。
合筆や分筆による記載の遺漏等の軽微な誤りは登記官が修正できる。
臆病なのか無能なのか、登記官の不作為がもたらした不利益である。

今だから言うが、実は三の矢もしたためていた。
行政不服審査法2条、3条による「不作為審査請求」である。
「不作為審査請求」は、誰がいつ如何なる不作為に及んだかを記載する。
請求先は宇都宮地方法務局だが、対象は行政機関でなく登記官個人だ。

折しも人事異動で登記官が交代した。
市役所税務課が新登記官と再交渉したら「法務局決裁」はあっけなく覆った。
賢い登記官なら余計な面倒は避ける。
正義を貫けば天佑神助は必ずある。

参照;過去ブログ
2023年6月27日「いくさの顛末」
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    高野院長

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