診察雑感

市井の開業医が患者さんに接して感じた雑多な感想。

自己満足

情けなくないか?

「自分を褒めてやりたい」と自己称賛する人がいる。
自己満足の極みで、自画自賛の空虚さがお分りでない。
称賛する他人に囲まれている自分を思い描いているのだろうか?
あまりの気色悪さに虫唾が走る。

デパートの中元商戦キャッチフレーズは「自分へのご褒美にお中元」だそうな。
自分で自分に中元を贈るのか?
「自分へのご褒美」とは、これまた情けない文言だ。
自分を褒めた挙句にご褒美まで与える心根がさもしい。
自分を褒めるのは、誰も称賛しないか或いは他人の評価が不満な証だ。
元々たいした業績ではないから誰も褒めないのだ。
他人の評価を期待しても無駄だ。
過剰な自己評価はほどほどにしないと恥をかく。
蓋棺事定の俚諺もある。
ひとりよがりの自惚れはよした方がいい。

「自分探し」という物言いも嗤わせる。
自分探しの旅に出て、生涯旅人で終わるつもりだろうか?
「俺はこんなもんじゃない」「別の自分がある筈だ」と思うところが喜劇だ。
芭蕉や山頭火を気取る前に、「自分」は所詮そんなものと悟るべきだ。

誰も褒めず褒美はなくとも、仕事とはそういうものだ。
身の丈以上の業績なんぞあるものか。
あらためて探しても他に「自分」は何処にもいない。
思い上がりと自惚れはほどほどに。

本意でない人もいる

老人施設のレクリエーション

用あって郊外の老人施設に行った。
記憶回路が交錯した人や体が不自由な要介護者ばかりと思いきや、とんでもない。
嘗ての威厳を彷彿させる老人や教養が滲む容貌の翁も少なからずいる。

「入居者専用 契約駐車場」にはシャレた車が並んでいる。
きれいに洗車してあり、2年に1回車検時しか洗わないヤブ医者の車とは大違いだ。
高齢者が自分で乗り回すのだろうか?
免許証返納が叫ばれるご時世なのに、どうもよくわからん。

この施設は介護保険上どういう位置付けにあるだろう?
高齢者施設は属性区分が複雑でとんとわからない。
医療行為は行わないからたぶん健康保険は関係ないのだろう。
それが証拠に、「保健施設」であって「保険施設」ではない。

大広間からオルガンに合わせた歌声が聞こえる。
曲目は何故か童謡で、恰も保育園と見紛いそうだ。
時に文部省唱歌が混じる。
文部省唱歌や国民学校唱歌を知る世代はもっと高齢のはずだ。
唱歌ではなく童謡の世代だが、小児期の歌なら何でもいいようだ。

辺幅を飾らぬ人と人品高貴な人が一様に童謡を歌うのは奇異な光景だ。
誰もが老いて幼児化するとは限るまい。
温古が趣意なら寮歌や軍歌がないのは何故だ。

「お歌の時間」があるなら「お絵描き」「折り紙」「お遊戯」もあるに違いない。
人は老いれば幼児に回帰すると思っているらしい。
侮る勿れ、自室では詰屈な字句が並ぶ難解な書物の愛読者かもしれない。
顔の皺に人生を刻んだ知性ある老人が自ら進んで集団遊戯に興じるか?

マニュアル通りの保育園的処遇は必ずしも適切でない。
施設側の勝手な思い込みを一律に推奨するのはよした方がいい。
ヤブ医者なら御免蒙る。

参照;過去ブログ
2016年9月25日「高齢者の行方」

信なくば立たず

引用は正しいか?

安倍内閣の支持率が下げ止まらない。
総理は論語を引用して「信なくば立たず」と宣った。
古くは三木武夫、近くは小泉純一郎が好んだ言辞だ。
出典は論語の顔淵篇12-7「民無信不立」、訓読すれば「民は信なく(ん)ば立たず」である。
はて、総理はどういう意図で引用したのだ?
場違いな感が拭えない。

漢籍には疎いが、安倍総理の用法は違和感が拭えない。
数多の論語解説本は「信義に応える為政者の徳」とある。
英訳では
If the people have no faithfulness, the society never be organized. となる。
faithfulnessの有無はthe people で、 organizedの主語は the society だ。
もしかして、安倍総理は「自らの信念」と解釈しているのでは?
「私に確固たる信念がなければ政治は立ち行かない」とでも言いたげだ。
絶対君主でもあるまいし、何か勘違いしてないか?

嘗て選挙の立候補挨拶で「信なくば立たず」と言った候補者がいる。
「立」とは選挙に出ることと思っているらしく、滑稽で嗤えた。
だが論語の解釈は読み手の哲学に因るところが大で、必ずしも誤りとも限らない。

今や政権不信は極に達した。
安倍自民に国民の信義を得るほどの「徳」はなく、「民無心不立」は場違いだ。
漢籍を引用すれば高尚と思うのは大間違い。
怪しい引用は演説を台無しにし、演者の知性教養までも疑わしくなる。
下手な引用は愚の骨頂だ。

附記:
冒頭陳べた通りヤブ医者漢籍は知悉せず、個人的見解に過ぎない。
論語読みの論語知らずだから誤釈かもしれない。
因みに高校時代の古文漢文は頗る悲惨な成績だった。
理系の漢文は片店商いだが、昔は医学部の入試科目に古文漢文があったのだ。
医学部でも文系授業や体育が必修だった。(2017年6月9日「懐かしい光景」)
ヤブ医者は文系の素養を欠く点では安倍総理に引けは取らない。

何でもありか?

死亡診断書

現役のプロ野球コーチが現場で体調を崩して搬送され、3日後に他界した。
報道された死因は「多臓器不全」だ。
多臓器不全は病態で、その原因疾患があるはずだ。
死亡診断書の〔(ア)直接死因〕は多臓器不全だが、〔(イ)その原因〕は何だろう?
短時間で多臓器不全に陥った原病がある筈だ。
奇妙な診断書だが、機微に触れる事情でもあるのだろうか?

テレビ放送黎明期のNHKアナウンサー1期生が老人ホームで死去した。
死因は「全身塞栓症」とある。
聞かない病名だ。
播種性血管内凝固症候群(DIC)にしては死亡状況が合致しない。
体中の血管が詰まるのは一体どんな疾患だ?
そんな稀有な疾病が老人ホームで診断可能とは知らなかった。

死因は医者の筆先加減で決まる。
病理解剖免許を持つ身としては少々歯痒い。

参照;過去ブログ
2012年9月20日「心不全は死因か?」
2007年2月22日「続 自然死」

過半数

日本語が変だ

東京都議選は小池知事派が躍進した。
メディアは「過半数を大きく超えた」と報じる。

「過半数」とは半数を1議席超えた64議席のことだと思っているらしい。
そうではない。
80だろうが90だろうが、64以上はすべて「過半数」だ。
「過半数を超えた」ではなく「半数を超えた」のだ。
どうしても「過半数」を使いたければ『過半数を占めた』と言うべきだ。

おかしな文言に違和感を覚えないメディアの感性を危ぶむ。
選挙報道のたびに気になるのだが今や常套句で、誰も気にしない。
耶蘇教の経典は“はじめに言葉ありき”で始まる。
ロゴスをないがしろにしては神が嘆く。

参照;過去ブログ
2016年7月12日「参院の勢力分布」
2013年4月29日「常套句が気になる」

お気に入りのCM

金鳥少年2017

大日本除虫菊(株)はKINCHO(金鳥)の名で知られる蚊取り線香の会社である。
ラジオCM『金鳥少年』はいたく感動的だ。
高山さんと大沢くんの他愛ない会話がヤブ医者を中学時代に引き戻した。
スポットCMが主流のラジオだが、『金鳥少年』の60秒は年寄りの琴線に触れる。
ホームページで聞ける。
http://www.kincho.co.jp/

今流れているのは「おでかけカトリス」等4種類で、近く第5弾が放送される。
2016年放送のCM4種も捨てがたい。
『金鳥少年』は秀逸な出来で、続編が待ち遠しい。

「銀の字は金より良いと書く」と銀メダル選手を慰めるテレビCMがあった。
誤った解説を垂れ流して恥じないCMとは雲泥の差だ。

参照;過去ブログ
2012年7月1日「水差すわけではないが」
2009年9月10日「心に響くCM」
2007年11月5日「感動の短編映画」
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