診察雑感

市井の開業医が患者さんに接して感じた雑多な感想。

五輪の凋落

最高位スポンサーの撤退

パナソニックHDは「経営環境や業容の変化に応じて支援の在り方を検討した結果」、IOCとのスポンサー契約を更新しない結論に至った。
拒否感がまる見えだが、よく練り込まれた藉口には感心する。

日本企業の最高位スポンサーは、他にトヨタ自動車とブリヂストンがある。
トヨタは五輪スポンサー契約のみ終了、パラリンピックは継続する。
ブリヂストンはどうするのだろう?

意味不明の若者遊戯やサーカスの曲技を競って何が五輪か。
金満企業の莫大な献金に頼るIOCが間違っている。
商業五輪に訣別せねば、斜陽五輪は沈む。
諸兄々周知の如く、オリンピックはとっくにオワコンなのだ。

参照;過去ブログ
2024年8月9日「銀メダル」

低気圧のかたち

熱帯と温帯の違い

『風速34ノット(17.2m/s)超の熱帯低気圧』が「台風」である。
南北回帰線(緯度23 度26分)の間が「熱帯」で、低気圧の発生母体だ。
緯度30度を境に「亜熱帯」と「温帯」に区分されるが、実は俗称である。
ケッペンの気候区分にあるのは「熱帯」のみで、「亜熱帯」「温帯」はない。
従って「熱帯低気圧」はあるが「亜熱帯・温帯低気圧」はない。

「熱帯低気圧」が台風に育って暴れ、やがて衰退して消滅する。
前から疑問なのは「台風の終焉」である。
「台風が鎮まったら何になる?」のか。
「雪が溶けたら春になる」に匹敵する名答はあるだろうか。

嘗ては「台風が温帯低気圧になりました」が常套句だった。
幼少から何度もくり返し聞いたから、脳裡に滲み付いて消えない。
この歳になるまで、台風は温帯低気圧になるとばかり思っていた。

とんだ思い込みで、近頃は大多数が「熱帯低気圧」に変身する。
「温帯低気圧」は寧ろ稀だ。
日本の気候が「熱帯」に近づいたから「熱帯低気圧」なのか?
「温帯の熱帯低気圧」はどうも釈然としない。
関西生まれの江戸っ子同様、誰も見たことがない。

台風の末期に「熱帯低気圧」が登場したのはいつ頃なのか、定かでない。
温帯生まれの「熱帯低気圧」ってどういうことョ。
北緯30度以上の温帯で低気圧になれば、それは「温帯低気圧」だ。
出自が熱帯なら、命絶えるまで「熱帯」を名乗る気か?
いつまでも昔の名前で出るな。
女給の源氏名でもあるまいし、神戸で「忍」京都で「渚」はよしてくれ。

温帯低気圧と熱帯低気圧は、大気の構成が異なる。
熱帯低気圧は“暖かい水蒸気”、温帯低気圧は“寒気と暖気”が対峙する。
「温帯低気圧は必ず前線を伴う」と云うが必ずしも正しくない。
疑問の仔細は過去ブログ「台風の末路」で陳べた。
何回説明されてもさっぱりわからない。
たぶん生涯理解できまい。

参照;過去ブログ
2016年9月5日「なるほどそういうことか」
2016年8月31日「台風が駆け抜けた」
2011年9月4日「台風の末路」

「救助」の語義

「生死を問わず」とは書いてない

TV朝日は「土砂崩れから5人全員を救助した」と報じる。
生き埋めになって「全員救助」は椿事である。
テレビは言葉を継いで「5人中3人が死亡」と言う。
どういうこと?
難解な報道だ。
簡潔に言えば「発見した5人中3人が死亡、生存者は2人」に他ならない。
それを「全員救助」と言うから混乱する。

辞書に依れば「救助」とは「危険な状態から救い助けること」とある。
「救助」の語義は「生存している」のが前提である。
字引の語釈にいちいち書いてないが、救助するのは生存者だ。
「人命救助」は聞くが「遺体救助」はない。

2年前の知床遊覧船事故では「10人救助、全員死亡」と報じられた。
「10人救助し、その後に全員死んだ」のではない。
溺死あるいは低体温死の遺体収容を「救助」と称するのは流石に変だ。
NHKが「死亡者救助」と称しては、開いた口が塞がらない。

せめて「全員発見」なら生死は問わない。
この国では日本語報道にも通訳が要る。

参照;過去ブログ
2022年4月29日「ようやく変更」
2022年4月27日「その文言に疑義あり」

「等」とは何ぞや?

条文として適切でない

紙の健康保険証は12月2日を以て廃止されてマイナ保険証に移行する。
「任意」のマイナカードがいつの間にか「強制」になった。
マイナカードを持たない国民はこの先一体どうなるのか、問題山積だ。

12月以降、警察庁は“本人確認書類”から「健康保険証等」を削除する。
紙の健康保険証廃止に伴う措置だそうな。
抑々「保険証廃止」はいつ誰が決めたのか、議論さえない。

“本人確認書類”とは何か?
全国銀行協会は、以下の書類とする。
1.運転免許証
2.運転経歴証明書
3.パスポート
4.マイナンバーカード
5.在留カード・特別永住者証明書
6.身障者手帳等の福祉手帳
7.各種健康保険証・各種年金手帳

警察庁が削除するのは前記〔7〕の「各種健康保険証」である。
具体的な個別保険証の既述はない。
「等」では頗る曖昧で、現場は困る。

財務省のホームページに『本人確認書類は以下の書類』とある。
1. 印鑑証明書
2. 国民健康保険の被保険者証
3. 健康保険の被保険者証
4. 船員保険の被保険者証
5. 後期高齢者医療の被保険者証
6. 介護保険の被保険者証
7. 健康保険日雇特例被保険者手帳
8. 国家公務員共済組合の組合員証
9. 地方公務員共済組合の組合員証
保険証に関わるのはこの辺りまでだが、以下30項目に及ぶ詳細な記載がある。
何れの書類も顔写真がなく、本人か否かの証明は容易でない。

健康保険証、後期高齢者保険証、介護保険証の類は証明に適しない。
今も今後も、厚労省関連書類での本人確認は不可能である。
若し運転免許証を返納したら、自らを証明できるのはパスポートだけだ。
国内でパスポートとは・・・・不自由な国になった。

思えば、河野太郎のマイナ保険証提唱に端を発する混乱だ。
「月夜の晩ばかりとは限らない」と何度も警告した。
図に乗ったか、当人は自民党総裁に立候補するらしい。
世も末だ。

参照;過去ブログ
2023年12月24日「気は確かか?」

一大事!

手水場で問題発生

男性用小便器の自動水洗装置が作動しない。
便器から離れれば洗浄水が流れ出る仕組みだが、反応がない。
どうやら光電管センサーが絶命したようだ。

大手便器メーカーの下請け業者が押取り刀でやって来た。
「ああ、これはセンサーがダメですね」
そんなことは素人でもわかる。
知りたいのは、直るまでの日数と費用だ。
「すでに部品がないので入替の見積りを出す」と言い残して去った。

数日経っても音沙汰がない。
果たして当院の雪隠は蘇るのか、せめて未来の展望を教えてくれ。
原発は「トイレのないマンション」だが、「トイレのない診療所」はない。

メーカーの“お客様相談室”に質すと、下請けからFaxの見積書が届いた。
総額¥247,500也。
想定外の価格に驚愕した。
光電センサー1個の故障で総取換えとは是如何に。

「厠」は「川屋」、即ち小屋の下を流れる川への放尿に由来する。
雪隠の故障に乗じて河川に流してはダメか?

難解な見出し

理解できずに固まった

台風7号は上陸せず、太平洋に去った。
新聞は『台風Uターン直撃』と報じる。
その簡潔さは、カエサル戦勝報告「来た、見た、勝った」に匹敵する。
迷走台風は少なくないが、Uターンは珍しい。
反転して逆行するとは奇異である。

待てよ・・・・暫し考えた。
思うに、「台風がUターン」して本州を「直撃」したのではない。
「台風」が「お盆のUターン帰省者」を「直撃」したのだ。

文は彫琢が過ぎると筆者の意図が伝わらない。
「弁慶が薙刀を」が「弁慶がな、ぎなたを」の「ぎなた読み」も起こり得る。

附記:
気象庁発表では「台風は温帯低圧に変わった」とある。
だが、テレビは「熱帯低気圧になった」と報じる。
台風の末路がふたつあっては公式発表の面目が立たない。
拙ブログで既述したが、台風の行く末はあんがい厄介だ。

参照;過去ブログ
2016年9月5日「なるほどそういうことか」
2016年8月31日「台風が駆け抜けた」
2014年3月9日「ぎなた読み」

詠み人知らず

「8月は6日9日15日」

「広島、長崎、無条件降伏」に集約される8月を詠んだ名句である。
一大行事の盂蘭盆会もあって、邦家の8月はなにかと諸事多用だ。

例年なら盆と彼岸は車が溢れて霊園の駐車場に入れない。
桁違いの暑気のせいか、今夏は人出が少ない。
賢者は不要不急の外出を控える。
墓参の重要度は所詮その程度だ。
ご先祖様の供養は厭わないが、仏教行事の義務化は釈然としない。
年忌法事も法要も、古来からの俗習に過ぎないとは思わないか?

不埒な菩提寺とは袂別した。
未だ曹洞宗徒だが、誰も仏教徒とは見做すまい。
蝟集はヤブ医者の本意でない。
異端の変人で一向に構わない。
信仰を放棄するに「無宗教宣言」が要るなら、何時でも応じる。


レセプトコンピュータ入替

セッティングに半日を要した

時としてPCのバックアップに不安を覚える。
業者は「突然クラッシュしてもおかしくない」と言う。
たぶんウソだ。
しかし、稼ぎの要がサドンデスに陥っては糊口が凌げない。

先月末に入替予定のところ、先方の都合で延期された。
「いつクラッシュするかわからない」のに先延べ可能とは悠長だ。
それが可能なら早急の入替は必ずしも必要ない。
嘗てデジタルレントゲンで「PCのマザーボードが壊れる」と脅す奴がいた。
「突然クラッシュ」は、素人を騙す最終兵器だ。

いささか旧聞に属するが、プロの脅迫に踊らされた経験がある。
変電所から送られる高圧は、診療所の電柱に設置した交流空中遮断器(PAS)を経由して変電設備(キュービクル)に入る。
点検を請負う関東電気保安協会が交流空中遮断器(PAS)の交換を奨める。
「万一遮断器が故障すると周辺一帯が停電する」と脅す。
脅しに屈して交換した。

工事の技師は告白する、
「次は高圧ケーブル交換を言い出すのがいつもの手だ」
数日後、予想通り「高圧CVケーブルの更新を推奨する」と言ってきた。
担当技師の言う通りで、失笑を禁じ得ない。

「ケーブル交換の要あれば、高圧でなく一般受電に変更する」と回答した。
家庭用給電なら電気保安協会の出番は失せて自分達が失職する。
再度測定したら「数値に変化はない」由、交換は不要になった。
なあんだ、やっぱりウソか。

レセコンも高圧電気設備も、プロが素人を騙すのはいとも容易だ。
彼らは何年も同じ手口で仕事して来たに相違ない。
努々謀られてなるものか。

参照;過去ブログ
2021年11月2日「レントゲン不調」
2012年9月3日「雲が高くなった」

お知らせ:8月10日(土)午後〜8月15日(木)まで休診です

銀メダル

もっと評価されていい

気がつけばパリ五輪も早や終盤だ。
メディアはメダル獲得数の多寡が喧しい。
国威発揚には無関係で、各国のメダル数なんぞ誰も気にしない。

”アーバンスポーツ”と称する新種目がある。
スケートボードやら自転車の曲乗りやら、やんちゃ小僧の遊戯そのものだ。
耳朶にピアス、刺青に金髪、辺幅を飾り立てて競技に臨む。
ダボダボの緩んだコスチュームがお決まりらしい。
鼻翼や鼻柱に金輪を貫通した小僧もいる。
親から授かりし身体髪膚は毀傷しないのが孝の始まりと教わった。
「親に孝、君に忠」を言えば昭和の化石と嗤われるだけだ。
誰がどう採点するのか知らないが、金銀銅の序列が定まる。
まさか見た目の愚鈍レベルで順位が決まるのではないだろう。

昨今の商業五輪はまるで興味がない。
クーベルタン男爵のオリンピックは疾うに終った。

TBSテレビ“ゴゴスマ”で、古舘伊知郎が銀メダルの地位向上を訴えた。
「金メダルに届かなかった銀色ではない」と力説する。
MC石井亮次が「銀は金よりも良いと書き、銅は金と同じと書く」と補足する。

この話、前にもあった。
日本生命のテレビCM「母の言葉編」の二番煎じだ。
銀メダルの吾子に、母親は「銀は金より良いと書く」と諭す。
不出来なCMは観るに堪えない。
どこがどう不満なのか、憤りの委細は過去ブログで陳べたから繰返さない。

大勢が熟読玩味したCMだろうに、またも前車の覆轍を踏む。
テレビ業界はよほど浅薄とみえて、二度あることは何度でもある。

参照;過去ブログ
2012年7月1日「水差すわけではないが」

武者とは

「武士と忍者」の総称ではない

TVは熊本地震で崩落した石垣の修復状況を報じた。
熊本城の石垣は上に行くにつれて勾配が急で、俗に「武者返し」と呼ばれる。
女子アナは「武士と忍者が侵入できない“武者返し”です」と解説する。
ん?・・・・どこかおかしい。
ヘンな説明で腑に落ちない。
ひょっとして、「武士」と「忍者」の総称が「武者」とお思いか?
武士の「武」と忍者の「者」を併せて「武者」では、まるで笑い話だ。
新人類の日本語は荒唐無稽、意味不明、清正公の謦咳が聞こえる。

武芸を生業とする武士が「武者」である。
甲冑、兜を纏った「鎧武者」は端午の節句でお馴染みだろう。
戦陣に臨んで勇み立って体が震えるのは「武者震い」、武芸・学問の修練を目的に諸国を廻るのが「武者修行」だ。
古来「文事ある者かならず武備あり」と謂う。
学問が疎かな武人は「一介の武弁」と侮られた。

「武者」の対極に位置するのが「忍者」だ。
その嚆矢は室町期、大名や領主に仕えて諜報活動に携わった「忍びの者」である。
伊賀者と甲賀者の二大流派は人口に膾炙する。
“神君伊賀越え”で名を馳せた「忍者」だが、その発祥と系譜には謎が多い。

三重県の伊賀は「いが」と読むが、滋賀県の甲賀は清音「こうか」である。
市民の協議の結果というが、実はお役所主導で「こうか市」になった。
甲賀市の公式ホームページは「KOKA CITY」で、「こか市」としか読めない。
甲賀自動車学校はKOKA Driving School、公立甲賀病院はKoka Public Hospitalだ。
しかし、永年馴染んだ「こうが」は一朝一夕には改まらない。
現にゴルフ場甲賀カントリークラブは「KOGA Country Club」のままだ。

宇都宮の片田舎「徳次郎」は古来「トクジラ」である。
宇都宮に併合した際「トクジロウ」に改まった。
知らぬ間に高速道路のインターチェンジ標識まで「トクジロウ」になっていた。
行政区が変わっても古来の地名まで変更する謂れはない。
委曲は過去ブログで詳述した。
「こうか」にしろ「トクジロウ」にしろ、役所が介入するとロクなことがない。

塀の上縁に刃物や鉄菱を並べた「忍び返し」という防禦装置がある。
廊下を歩くとウグイスが鳴くような音が出る「鶯張」という仕掛けもある。
他者侵入の警報装置で、知恩院、大覚寺、二条城の「鴬張」は夙に知られる。

一子相伝の匠技と伝承された「鴬張」だが、近年、異説が浮上した。
知恩院御影堂は平成の大改修の後、それまで元気だった鴬が鳴き止んだ。
元より音がない知恩院阿弥陀堂は大改修後100年を経て突如ウグイスが鳴き出した。
科学的検証で、床板と固定目鎹の経年劣化による“鳴き”と判明した。
棟梁の技でもなく、一子相伝の秘術でもない。
単なる経年変化とは・・・・風情が失せる。

「武者返し」と「忍び返し」は全き別物なので誤解なきよう。
ましてや、立ちはだかる「武者」と人目を忍ぶ「忍者」は天と地ほども違う。
「武者」は武人と忍者の総称ではないので誤解なきよう。
余計なお節介だが、女子アナやZ世代の視聴者を慮って念の為申し添える。

参照;過去ブログ
2016年10月4日「執拗に五重塔の話」
2015年3月25日「やはりそうか」
2015年6月26日「俗説の定説化」
2009年1月9日「誰が決めた」
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    高野院長

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