診察雑感

市井の開業医が患者さんに接して感じた雑多な感想。

氷はなぜ滑る?

実はよくわからない

カーリング、スケート競技、アイスホッケー・・・氷上競技を見てふと思った。
氷はなぜ滑るのだ?

嘗ては加圧融解説や摩擦融解説が唱えられたが今は俗説とされている。
その後は分子レベルの凝着説が登場したが説得力に乏しい。
氷はなぜ滑るのか、本当の理由は未だ解明されていないらしい。

学習院大理学部物理学科 田崎晴明教授のホームページに「熱力学:現代的な視点」5−4節の改良版の解説がある。
スケートが滑る理由を教授自ら『結局はややこしい』と結論する。

五重塔心柱の免震効果が後付け理論だったように、今ある理屈が全てではない。
野球投手の変化球も飛行機が空を飛ぶのも、実は原理不明なのではないのか?
ヤブ医者は前から怪しんでいる。

参照;過去ブログ
2016年10月24日「執拗に五重塔の話」
2006年6月19日「誰か教えて その2」
2006年5月14日「誰か教えて」

難病指定医研修

やはり見直されたか

2年前に始まった“研修”のアホらしさは拙ブログで既述した。
弁当持参で朝っぱらから夕刻まで監禁されて拝聴するような代物か?
医者はそんなものにつき合っているほど暇ではない。

通知には、研修対象は『専門医資格を有しない医師で研修未受講の者』とある。
2年前は対象外にも拘らず研修の通知が来た。
役人が同じ誤ちは犯すまいから、通知するには何か特段の理由があるはずだ。
その訳を県の担当部署に電話で尋ねた。
前回同様、「先生は対象ではありませんから破棄して下さい」との仰せだ。
公務員は相も変わらず無駄な仕事に精を出す。

今回から講習会が見直され、『Web上で行う』とある。
ネット上で関連資料を読んで質問に答え、正解なら受講証明書と指定通知書が発行されて完結する。
所詮Web上で済む程度の内容で、一日中拘束して受講する必然性は全くない。
これまでの研修はいったい何だったのだ?
見直して当然だ。

これで「遅刻は入室不可」だの「途中退出は認めない」だのと神経を逆撫でする不愉快な文言も今後は見ずに済む。
今どきは交通違反の講習でさえもっと謙虚だ。
高飛車な文言で役人の優位を示したかったのだろうか?
街医者が草莽崛起して反駁すれば難病支援策は立ち行かなくなる。
医者は役人の下僕ではない。

参照;過去ブログ
2016年12月10日「難病指定医更新」
2014年11月12日「新難病法」

夢か現か

「お迎え」は本当に来る

先考の忌辰につき墓詣で。
あたり前だが、墓地の寂寥感は好まない。

亡父が病魔に倒れた頃、母親には正常とボケが混在する認知症の兆しがあった。
父親が逝去したときは既に結構なボケ具合だった。
配偶者の死が理解できるかどうか定かでないが、通夜に父の遺骸と対面させた。
どうせわかるまいと思っていたが、意外にも骸の顔を撫でて嗚咽し落涙した。
未だ完全にボケてはいないようだ。
葬儀を終えてからは以前にも増して寡黙になり、終日目を閉じて臥床していた。
眠っているのか瞑目しているだけなのか、判じ難い。

四十九日法要が迫る頃、寡黙だった母親が雄弁に語り始めた。
『ゆうべお父さんがそこに立っていた。
「お父さん」って呼んでも黙って見ているだけで返事もしないの。
何も言わないでいなくなったから寝床に帰ったのかな』
いよいよ本格的にボケたか?

四十九日法要を終えると、何故か母親の状態が急変した。
特段の持病もないのに、どういうことだ?
手を尽くしたが薬石効なく、溘焉として逝った。
まるで父親の満中陰を待っていたかのようだ。

たて続けに両親の死亡診断書を書いて喪主を務めるという希少な経験をした。
年忌法要は二人まとめて一度で済む。
お布施は一回でも二人分だから、坊様にとっても効率的だ。

あの夜、母の夢枕に立ったのは間違いなく父だ。
母の幻覚ではない。
連れ合いを迎えに来たに相違ない。
冥土の旅も二人連れなら寂しくなかろう。

参照;過去ブログ
2015年2月7日「天罰かも」

テンの問題

読点の打ち方が異なる

貴乃花親方は相撲協会理事選に挑んで玉砕した。
落選覚悟の立候補だから、当初の構想通りだ。
下馬評では「貴乃花シンパの存在」や「改革を望む親方も多い」との期待から貴乃花に票が流れる予測もあった。
結果は事前談合の票割り通りで、恰も中国共産党の選挙を見るようだ。
一門の掟は覚悟なくして破れないし既得権は保持したいに相違ない。
因習に囚われた投票が果たして公益財団法人の選挙だろうか?

貴乃花部屋の公式ホームページに親方の所信が陳べられている。
達意平明な筆致に驚愕した。
四十七士の討入口上書、5.15事件2.26事件の蹶起趣意書、田中正造の直訴状を彷彿させる名文だ。
名横綱は手練れの操觚者だった。

因みに親方の個人ブログと比較してみた。
読点の位置が不自然で明瞭さを欠き、公式ホームページとは筆致が異なる。
たぶん多忙で文章を推敲彫琢する暇がなかったのだろう。

句読点の打ち方は筆力の反映であり、正しく打つには高い文章能力を要する。
随所で引用される“狭山事件”の脅迫状に関する大野晋の鑑定が好例だ。
『被告人の上申書には読点がなく句点も誤っているが、脅迫状は各センテンスに句読点が正しく打たれている』
被告人と脅迫状の筆者は書字技能に格段の相違があることから『脅迫状は被告人の書ではない』と推論した。(井上ひさし「私家版 日本語文法」新潮文庫)

古に句読点はなかった。
明治・大正の新聞は悉くルビがあるのに句点がないから実に読みにくい。
社説・小説・随筆を除けば、新聞が句読点の全面実施に踏み切ったのは朝日新聞昭和25年、毎日新聞昭和26年、読売新聞昭和28年である。

この「テン」の用法がなかなか難事である。
丸谷才一は「重大なのは、たとへ句読点を取払ってもなほかつ一人立ちしてゐる頑丈な文章を書くことである」と言う。(「文章読本」中公文庫)
谷崎潤一郎は『春琴抄』で句読点を極力省き、『台所太平記』では句読点の乱れ打ちだ。
テンの省略もテンの乱打も、どちらも作者の深い意図に基づくのだろう。
大野晋博士は「句読点の用法は違っても谷崎である」と言うに相違ない。
テンの打ち方は奥が深く、まことに厄介だ。

参照;過去ブログ
2013年6月2日「檄は遠くに飛ばすもの」

使途の足跡

使途の足跡
補助金には痕跡が要る

日本麻酔科学会から封書が届いた。
“『麻酔科標榜医資格を保持している医師の実態把握に関する研究』に関するアンケート調査へのご協力のお願い”と大書してある。

ヤブ医者が標榜医資格を取得したのは「日本麻酔学会」の時代だ。
「麻酔学」か「麻酔科学」かの議論は昔からあった。
「日本麻酔学会」が「日本麻酔科学会」に改称したのはつい先頃、平成13年だ。
昭和36年の麻酔科標榜医発足以来、その数2万人に達したそうだ。
前線を退いた人もいれば物故者も少なくないから現役の実数はわからない。
学会は標榜医の勤務実態を把握したいらしい。
麻酔科学会に「地域医療基盤開発推進研究事業」の補助金が投入されている。
「標榜医の勤務実態調査」は足跡を残すためのアリバイ作りと思えなくもない。

封書は当院宛、ヤブ医者名である。
学会は未だ「麻酔学会」だった大昔に退会した。
麻酔科学会は四半世紀も前に開業したのを何故ご存知なのだ?
開業したのは、大学の外科教室と国立病院、日本外科学会しか知らないはずだ。
厚労省の資料が元なら、補助金使って調査するほどの「研究事業」でもない。

麻酔科標榜医は医療法第6条に基づく厚労大臣所管の資格で、学会主導の認定医、専門医、指導医とは関係ない。
学会が調査するのは筋が違うが、アンケートは無視する信条だからどうでもいい。

気になったのは『アンケート調査』の文言だ。
アンケートとは即ち調査のことだ。
『アンケート』だけで充分で、殊更『調査』を言い重ねる必要はない。
この学会、「麻酔学」と「麻酔科学」に拘泥するくせに重言は気にしない。

「満天の星空」や「JIS規格」の重言は拙ブログに既述した。
「製薬メーカー」「従来から」「ハイテク技術」等々、気になる重言は多々ある。
学会でさえ「アンケート調査」だから、日本語はまことに寛容でおおらかだ。

参照;過去ブログ
2018年1月12日「惜しい!」
2017年5月23日「手をこまねく?」
2016年11月22日「今や違和感なし」

京大iPS細胞研も

論文捏造

昨年3月に米国科学誌に掲載された論文の図に不正が指摘された。
疑義の指摘に京大が昨年9月から調査を進め、捏造と認定された。
著者の助教は「論文の見栄えを良くしたかった」と言う。

助教の身分は今年3月までの有期雇用で、期限内に結果を出さねば失職する。
功を焦ったのは想像に難くない。
論文不正の源は研究者の悲惨な待遇にありはしないか?
基礎研究に対する国の予算配分が軽微だから有期雇用が常態化する。
この国は科学者に優しくない。

話は変わるが、新聞記事の「見栄え」の表記に違和感がある。
「見栄え」は「見映え」ではなかったか?
国語辞典は「みばえ」で立項し、漢字は「見栄え・見映え」を併記する。
「朝日新聞の用語の手引」(朝日新聞出版)、「記者ハンドブック」(共同通信社)、「NHK新用語辞典」(NHK出版)は、「見栄え」である。
新聞や放送の業界は「見栄え」で統一すると決めたそうだ。
国語の番人を気取って勝手に「見映え」を排除する。
自分の村の決めごとを国民に強いるのは釈然としない。

広辞苑の「みばえ」は「見栄・見映」で、送り仮名「え」がない。
「見栄」は送り仮名がないと「みえ」と誤読しそうだ。
見栄えよりも中身が大事で、「見得」は切っても「見栄」は張らない方がいい。
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