診察雑感

市井の開業医が患者さんに接して感じた雑多な感想。

惜しい!

似てはいるが違う

製造業の品質不正が相次いだ。
経産省はJIS法違反の罰金を従来の100倍に上げるそうだ。
上限1億円というから、現行は罰金100万円だ。
規格偽装が酒気帯び運転と同額の罰金刑ではいかにも軽微だ。
1億円でも大企業には痛くも痒くもないから規格偽装は無くなるまい。
「JIS規格」と言うワイドショーMCがいた。
日本工業規格 (Japan Industrial Standards) がJISだから、「規格」は余計だ。

元ヤクザが「ヤクザの生活は青色吐息です」と吐露する。
青息吐息の間違いなのは明らかだが、居並ぶ識者は誰ひとり指摘訂正しない。
『桃色吐息』は高橋真梨子だがヤクザは「青色吐息」なのだ。

アナウンサーが「愛想をふりまく」と言う。
「ふりまく」のは「愛嬌」で、愛想は「尽きる」のだ。
今は「愛想をふりまく」も辞書に載るから始末が悪い。

「風の噂」もよく聞く言い回しだ。
風が運ぶのは「便り」で、「噂」は世人の口の端にのぼるのだ。
「風の便り」は記憶に留めるが「人の噂」は75日で消える。

「貴乃花は説明責任をして欲しい」とのたまう芸能人コメンテータがいた。
「説明責任」は名詞だから「する」「しない」はおかしい。
「して欲しい」ではなく「果たして欲しい」と言うべきだ。
説明責任を言い出したのは僅か30年ほど前からだ。
Accountabilityの訳で、Accounting(会計)とResponsibility(責任)の合成語だ。
“他者が納得する説明”の意に用いるが本来はResponsibilityが重要なのだ。
「説明責任」の解釈はなかなか厄介で、掘り下げると奥が深い。
軽々に使う文言ではない。

「相撲協会理事長は声を荒げて」と言う。
声高に反発する様は「荒らげる」で、「荒げる」ではない。
公益財団法人の理事長が気色ばんで恫喝するようでは情けない。
「公益」の看板は返上した方がいい。

はじめに言葉ありきで、言葉は思考の源だ。
日本語を大事にしないと思考が乱れる。
言い間違いを逐一咎めはしないが、聞き流せない性分だからテレビは疲れる。

参照;過去ブログ
2014年10月8日「あとから言葉ありき」
2007年12月28日「ずっと前と将来」

ヤブ医者考

そもそも語源が訝しい

自他共に認めるヤブ医者だが、『ヤブ』の典拠が気になった。
少しは向うが見えるのが「藪」だが「土手」は全く見えない。
藪医者は何も見えない土手医者よりは幾分マシらしい。

中島敦『狼疾記』(岩波文庫 緑145-1)は巻頭に孟子の言がある。
告子章句上「すなわち狼疾の人と為さん」の解説に、「狼疾とは判断の下せないやぶ医者」とある。
さらに「小を養いて以て大を失う」と続いて、やぶ医者はいたく蔑まれる。

たいがいの辞書には、「やぶ」は野巫で田舎の巫医(祈祷医者)と書いてある。
野巫医転じて藪医者となり、ヘボ医者の蔑称になったようだ。
大方の辞書は皆同じ語釈だが出典の記載がなく、そこはかとなく訝しい。
「田舎の巫医」説はいかにも怪しげで、いまひとつ納得できない。

高島俊男は享保年間の『本朝世事談綺』が嚆矢であるという。(『お言葉ですが(4)広辞苑の神話』)
室町期に書かれた「庭訓往来」の「藪薬師」が由来とする説もある。
藪の中から薬になりそうな草葉を採取して処するのが「藪薬師」だ。
中には有効な草莽もあっただろうが、藪医者の語源とするには些か苦しい。

「野暮な医者」が転訛して「藪医者」になったとする説もある。
「遊里の事情に暗い」意の「野暮」から派生して見通し不確かな藪医者になった。
『新明解国語辞典』には「病状に暗い野暮医者が語原」と書いてある。
これも典拠文献のない単なる推量で、説得力に乏しい。

兵庫県養父市のホームページには「養父医者」の解説がある。
但馬の養父(やぶ)に評判の名医がいた。
いつしか養父医者は名医の代名詞となった。
悪い奴はいるもので、養父医者の弟子を詐称して患者を謀る未熟者が続出した。
拙い庸医に「藪医者」の字が当てられたという。

森銑三『びいどろ障子』(小澤書店)によれば、「ちょっとした風(かぜ)にも騒立てる」のが藪医者である。
軽い風邪と微風を掛けて、少しの風にもザワザワと騒ぐ藪に喩えた。
まことにきれいなオチで、これに優る説はない。
永井荷風が「森さんのような人こそ真の学者だ」と評したのも頷ける。

その昔、明治通りの池袋駅近くに「藪医院」という看板があった。
その前を通るたびに洒落た看板に感心していた。
たぶん院長の姓が「藪」で、洒落たわけではないだろう。
今もあるのだろうか?

“藪医者はヤバイ”の世評は揺るがない。
乗りかけた船だから、「ヤバイ」の語源も調べてみた。
「やば」は香具師や盗人が用いた隠語の形容詞化である。
字引きによれば、「やば」の語源は「矢場」である。
矢場は楊弓場だが、弓取り女が春を売る淫売屋でもあった。
お上の御用改めの気配を「矢場い」と称したのが語源とされている。

牢屋や牢番を「厄場(やば)」と呼んだことに因るとの説もある。
「弥(いや)危ない」「あやぶい」が語源という説まである。
「夜這い」の転訛説に至っては最早笑うしかない。
諸説紛々、アテにならない。

ヤブもヤバイも出自不明では、患者はますます不安になる。
さて私儀ヤブ医者や如何。

小寒

最も遅い日の出

冬至は日照時間が最短だが、日の出時間が最も遅いわけではない。
宇都宮では冬至(12月22日)の日の出は6時46分、日没は16時31分だった。
小寒の今日(1月5日)は日の出が6時53分、日没は16時40分である。
日の出は冬至より7分遅く、日没は9分伸びた。
日の出は2〜4日ごとに1分早まり、日没は毎日1分遅くなる。

1年で日の出が最も遅いのは小寒の前後である。
冬至と思いがちだがそうではない。
すでに去年の話で恐縮だが、勘違いしているアナウンサーがいた。
大勢に影響ないが、事実を違えた報道は感心しない。

参照;過去ブログ
2015年12月22日「冬至」

またひとつ歳とった

残り時間はあと僅か

数え年では元日に歳をとる。
烏兎怱怱、鏡に映る老いたわが身に愕然とする。
人生の残り時間もあと僅か。
囲碁なら「持ち時間ありません。秒読みに入ります」の局面だ。
時計係が読み上げる秒読みの声がやけに気になる。
「10秒・・・20秒・・・25秒・・・」
投了は近い。

参照;過去ブログ
2013年1月2日「冥土の旅の一里塚」

烏兎怱々

今年もあと僅か

天皇陛下は「皆の健康を願います」と仰せられる。
蒼氓の無病息災は喜ばしいが医者は人の病で禄を食む因果な職種だ。

見川鯛山『本日も休診』にあやかりたいが、休んでばかりもいられない。
来年も肩肘張らずに「日没閉門」で行こうと思う。

【年末年始休診のお知らせ】
12月30日から1月3日まで閉門です。

不作らしい

柚子の大馬鹿十八年

桃栗3年、柿は8年で結実するのに柚子は18年経っても実り難い。
冬至は柚子湯に浸かりたいが不作のようで儘ならない。
日光の温泉では西暦年に因んだ2017個の柚子を浮かべたそうな。
元号なら29個で事足りるのに、日光方面は柚子が潤沢らしい。
遅ればせながらわが家も柚子湯を仕立てた。
“六日の菖蒲十日の菊”と嗤う勿れ、柚子2つの真似事でも立派な柚子湯だ。

テレビで女子アナが「冬至は日の出が最も遅い日」と言っていた。
天気予報の森田さんは「少し違いますが、まあいいでしょう」と軽く流した。
日没は最も早いが日の出は冬至の後も遅くなる。
女子アナは気象予報士が言わんとすることを理解していない。
プロの予報士の相方を務めるには荷が重かろう。

参照;過去ブログ
2015年12月22日「冬至」
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