風俗営業種もプレミアムフライデーを使えるようになりました

さて、前回エントリにて指摘をしました、先月から始まった経産省による施策「プレミアムフライデー」において、風俗営業法に規定されている業種がロゴ使用を原則禁止されるなど「爪弾き」にあっていた問題ですが、解決いたしました。以下、朝日新聞の運営するオンラインメディアWithnewsからの転載。


プレミアムフライデー、風営法の業種差別? 指摘受けロゴ規約変更へ
http://withnews.jp/article/f0170317001qq000000000000000W01110101qq000014881A

働き方改革や消費喚起をねらい、官民が推進するプレミアムフライデー。ところが、ダンスクラブやゲームセンター、バー、居酒屋など、風俗営業法に定められた各種営業の事業者は規約上ロゴマークを使用できないのではないか、という懸念が広がっています。「業種差別」とも受け取られかねない事態に、プレミアムフライデー推進協議会の事務局は規約を変更する方針です。
 

Withnewsに対するプレミアムフライデー運営事務局側の回答によると、現在のプレミアムフライデーのロゴマーク利用規約が定めている、


次の各項のいずれかに該当する場合は、いかなる場合もロゴマークを使用することはできない。
[中略]
・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和 23 年法律第 122 号)第 2条に規定する営業又はその広告等に利用される場合。ただし、特に経済産業省がプレミアムフライデーの取組の活性に寄与する事を認める場合はこの限りではない。
 

の条項が届け出を行い承認された正当な事業者ものぞかれてしまうのでは、というような見え方となってしまっているのは誤りであり、経産省とも協議の上、規約上の表現を変えるとのことです。

同事務局は上記ロゴ使用規約に関して、「風営法に則りかつプレミアムフライデーの活性化に寄与すると判断した場合はこの限りではない」との説明を繰り返し述べており、非常に「もって回った」官僚的答弁となっているわけですが、私なりに平たく解説すれば要はそもそも風営法の中に規定されている一部営業種(おそらく「性風俗関連業種」と推測される)をロゴの使用対象から外す意図をもって上記条項を設定したのだが、その文言がその他の多くの風営法所管業種にも広く適用されてしまうかのように読める表現になってしまっていたので文言を改めます、と。そういう事であります。

 先のエントリでも解説しましたが、風俗営業法はそこに規定される各営業種を「適正な営業が行われれば国民に健全な娯楽の機会を与える営業」としてその「適正化」を図る法律であり、その法律に基づいて営業許可を取得している営業者は、国民に健全な娯楽の機会を与える営業としてお墨付きを受けている業者であります。但し、実は風営法の規制対象業種の中では「性風俗関連特殊営業」と呼ばれるいわゆるフーゾク店に関してだけは、風営法上もその他の業種と少し扱いが違っているのが実情。(非常に込み入った話になるので詳細説明は省略)その辺りの法の背景を考えると、まぁプレミアムフライデーからそれら一部業種が弾かれてしまうという点は仕方がないのかもしれません。

ということで、多くの風俗営業者の皆様においては、プレミアムフライデーのロゴ使用は認められるということでありますので、この政府施策を大いに利用して国民の余暇需要の促進に寄与して頂ければ幸いです。


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プレミアムフライデーと風俗営業種

さて、本日2月24日は経済産業省が企業の働き方改革と余暇需要の促進を狙って設定する「プレミアムフライデー」(毎月最後の金曜日)の記念すべき第一回目の実施日であります。経済産業省は各企業に従業員の「早上がり」を推奨し、経団連などと連携しながらプレミアムフライデーを対象とした販売促進(割引プラン等)を後押ししています。

本プレミアムフライデー施策に関してはその経済効果を期待する声もある一方で、国が「早上がり」だけを推奨したところで企業内での業務改革が起こらない限りは、他の日にしわ寄せが来るだけという批判の声も存在します。事実、今回の経産省主導のプレミアムフライデーに類似する施策として、厚労省主導で昨年始まった「ゆう活」キャンペーン」(夏季の業務時間の前倒しを「推奨」する施策)では、施策アピールの為に先行して導入を決定した各行政官庁の職員から、「残業がかえって増えた」とする不満の声が挙げられたなどという非常に皮肉なエピソードも聞こえてきています。

【参考】「ゆう活」霞が関は効果なし? 残業「増えた」
http://mainichi.jp/articles/20160728/k00/00m/040/049000c


ということで、その施策への賛否も含めて多くの意見が挙げられているプレミアムフライデーですが、今回、私は皆さんとちょっと違った角度から本施策を切ってみたいと思います。テーマは「プレミアムフライデー施策から弾かれる風俗営業種」です。

多少、専門的な言い回しとなってしまいますが、我が国の特定業種を規制する法律として風営法、正式名称を「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」と呼ばれる法律があります。風俗営業というと、一般の方々はまず性風俗を思い浮かべることとは思いますが、風営法はいわゆる性風俗のみならず、スナックやキャバクラなどの接待営業の他にゲームセンター、雀荘、パチンコ屋、はたまた深夜12時以降に営業を行うダンスクラブやライブハウス、ピアノラウンジなどまで、広範に規制の対象に含む、我が国の「夜の産業」を規制する法律です。

ところが、実はこの様々な風営法に規制されている業態に対して、経産省の主導するプレミアムフライデー施策は快く思っていない模様で、本施策の対象から外されているようです。以下は、プレミアムフライデーのロゴマーク使用規約からの抜粋。


プレミアムフライデーロゴマーク使用規約 制定平成28年12月12日
https://premium-friday.go.jp/apply.html
(4)次の各項のいずれかに該当する場合は、いかなる場合もロゴマークを使用することはできない。
・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和 23 年法律第 122 号)第 2条に規定する営業又はその広告等に利用される場合。ただし、特に経済産業省がプレミアムフライデーの取組の活性に寄与する事を認める場合はこの限りではない。
 

実はこの規約、プレミアムフライデーのロゴマークを使用しようとして申請を行おうとしたゲームセンター系の事業者さんから、「どうやら風俗営業種は経産省に歓迎されていないようだ」とのタレコミ(もしくはただ愚痴をぶつけたかっただけ)がありまして私も初めて認知したもの。「ただし特に経済産業省がプレミアムフライデーの取組の活性に寄与する事を認める場合はこの限りではない」と規定しているあたりに、経産省としては風営法の規制対象に含まれる業種の中で、このマークを「使用してよい」業種と「使用してはダメな」業種を選別したいような空気は伝わってくるわけですが、とにかく風俗営業種は経産省から嫌われているようです。

一方で、このプレミアムフライデーは民間の事業ではなく、あくまで国の進める公的施策。もし、何らか特定分野の業種に対して差別的な待遇を設けるのであれば、それなりの法令根拠はもとより、そらを峻別する明確な基準を示して頂かなければなりません。ところが、本プレミアムフライデーのロゴマークしよう規約をよく読んでみると、以下のような条項があるわけです。


11.その他
いかなる場合にあっても流通政策課長は、使用者がこの規約に違反した場合やその他不適当と認める場合には、ロゴマークの使用承認を取り消すことができ、これに起因する損失補償について一切の責任を負わない。なお、本規約の解釈その他疑義は流通政策課長が決定する。
 

現在の経済産業省の流通政策課長は林揚哲(はやしようてつ)さんという方なのですが、この条項に基づけば、例えば風営法の規制対象業種がロゴの使用申請をしたとしてその林揚哲さんが「プレミアムフライデーの取組の活性に寄与する」と考えた場合にはロゴの使用が認められて、そうでないと考えた場合にはロゴの使用が認められないということなのでしょうか? そういう個人の判断に任せた流動的な基準であるとするのならば、この流通政策課長にダンスクラブ好きの人が座ればダンスクラブがOKになるかもしれませんし、キャバクラ好きの人間が座ればキャバクラがOKになったりするのでしょうか?

風営法の所管業種をも専門の範疇においている私としては、どうもその辺が釈然としないため先月の半ばに事務局に対して質問を送付しましたところ、以下のような回答を得ました。

Q. 「当方、風営法所管業種の専門研究者です。プレミアムフライデーロゴマーク使用規約1-2-(4)にロゴマークを使用できない場合として「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和 23 年法律第 122 号)第 2条に規定する営業」とありますが、いかなる法令根拠の基づいてこのような特定業種に対する差別的な規定が定められているのか、ご教示頂けましたら幸いです。宜しくお願い申し上げます。

A. 「お問合わせありがとうございます。ご回答が遅くなり申し訳ございません。プレミアムフライデーは国の事業であるため、風営法に抵触する企業・団体様は御遠慮頂いています。何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。」
 

 はい、全く回答になっていないですね。そもそも「風営法に抵触する」というのは、一体どういう意味でしょうか。抵触というのは通常「法律や規則に違反すること」を意味し、この回答を文字通り受け止めるのならば「風営法違反の企業・団体様は御遠慮頂いている」という意味になるわけですが、恐らくそういう意味でこの回答をよこしたとは思えない。この辺りにも、いかにも「適当に回答してきたな」ということが読み取れるわけです。

ちなみに風俗営業法は、そこに規定される各営業種をただ「害悪な存在」として規制を設けているわけではありませんで、「適正な営業が行われれば国民に健全な娯楽の機会を与える営業」としてその「適正化」を図ること目的とした法律となっています。その風営法の立法趣旨からすれば、寧ろ風営法に則って許可を得ている事業者はプレミアムフライデーが政策目標として掲げる「余暇の創出による消費喚起」に寧ろ最も則った業者として国からお墨付きを頂いている業者群であるわけで、その施策から「爪弾き」をされる言われはありません。

という事で現在、現在事務局に向かって第二段目のアツいお便りを追撃したところ。お返事をお待ちしております。>経済産業省流通政策課長の林揚哲様

カジノ反対派の急先鋒、鳥畑与一さん(@静岡大学)が推進派をメッタ切り

いやぁ、鳥畑さんって推進派のいない反対派だけの集会だと、こんな主張の仕方をするんですね。以下、真山勇一参議院議員(民進党)による勉強会の収録動画より。
 

あらゆるカジノ推進派のコメントを引いた上でそれらをメッタ切りにするという独り舞台であり、聞いている反対派の人達にとってはさぞかし痛快であったでしょうね。


(31:47あたりから)小池さんという方は元ゴールドマンサックスに勤めていた方で非常に正直というか、 隠したりしない方だと思うんですが、こんなことを正直に言うんですね。カジノは日本の特に富裕層の個人金融資産の一部を吸い上げる事業です。日本にとっては個人金融資産の蓄積は最大の経済資源であり、その一部を開発(※音声不明瞭)するわけです。本当にストレートに正直に仰っていて、つまりアメリカとカジノ企業のターゲットは完全に日本人の懐なんです。そこに外国観光客が来てくれるか、外国のギャンブラーが来てくれるかどうかはオマケの話[…]

(32:56あたりから)長崎に行きまして、佐世保に行きましたら、ちょうど昨年参考人質疑でご一緒した美原さんという推進派の中心人物がおられて、ちょうど佐世保の市会議員で推進議連なんかができちゃったらしくて、そこに講演に来たというんですね。その美原さんが言ってたと。「ターゲットは日本人です。外国観光客はあてにしてません」って、ハッキリ仰ってましたというのが、ヒアリングの成果なんです。

(44:25あたりから)大阪商業大学の谷岡先生なんかが持論で言ってるんですけれど、某鳥畑というのはゼロサムといっているけれど、ゼロサムじゃないんだ。お年寄りが溜め込んだお金、金持ちが溜め込んだお金、無駄に使われずに眠っているお金を使わせれば日本経済としては消費が増えて、経済貢献するじゃないかというんですね。でも、お年寄りの貯蓄って老後の生活の為に必要なお金、無駄に溜め込んでる方って殆どいないと思うんですね。

(46:05)「胴元が確実に儲かる仕組み」これは私が言ってるのではなくて、推進派の美原氏がある所でおしゃべりした資料を使わせていただいております。それから中條さんという方、大阪商業大学の方がこんなことを言ってるんですね。ギャンブルに参加する人は勝ってお金を儲けることを目的とするにも関わらず、結果的にはほぼ確実にお金を失ってしまうという矛盾する現実を体験する、と。この矛盾する体験からどう乗り越えるか、悟りを開いてくださいみたいなことを後で文章が続くんです[…]

(1:16:26)去年、参考人質疑でマネーロンダリングに詳しい渡邊さんという弁護士さんの方がおられたので、ちょっと質問しました。「闇です」といっていました。「闇ルートで外に持ち出すんです」と。そういうノウハウを持っているいわゆるジャンケットという業者が居て、その業者を使わないとマカオのような遊び方は出来ない。じゃぁ日本でそんなジャンケットのそれを認めるんですか?認めたら、その渡邊弁護士さんはマネーロンダリングの規制は出来ませんといっていた。マネロン規制をマジメにやるんだったら、ジャンケットを認めちゃだめですと言ってました。

(1:17:39)これは私が勝手に言ってるのではなくて、最近推進派の方もそういう言い方になって来てて、先日朝日新聞の方に聞くと、この間、木曽崇という推進派の方にインタビューしたら9割は日本人ですよ、東京大阪でも、という話をしてたという事ですから。どんどんなんか、オイ話が違うよという方向に変わってきているわけです。


コメントが引かれているあらゆる推進派の中で、私だけを「呼び捨て」にしているあたりに鳥畑氏の私に対する個人的な感情が読み取れるわけですが(笑)、それはご愛嬌として、どうもハッキリしないのが上記の引用コメントに、①何かしらの著述物や不特定多数が聴取している講演会等から引いたもの、②鳥畑氏が個人的な会話のなかで直接聞いたもの、③鳥畑氏が直接聞いたどころか「あの人物がこんなことを言ってた」と誰かから聞いただけのもの、が混在しているようです。

当然ながら論議者としては、己の著述や講演会などで公に発したコメントに関してはそれを引いて批判して頂くのはある程度は当然のこととして受け止めるわけですが、どういう文脈の中でそのコメントが発されたのか、はたまた本当にそういう発言があったのかすら検証のしようがない個人的な会話からフレーズを引いて「アイツはこんなトンデモナイことを言っていた」などとして批判の対象とするのは論議者の作法として完全に間違い。ましてや自分が見聞きしたわけでもなんでもない会話内容を、第三者から又聞きして「アイツ、こんなこと言ってたらしいよ」などという批判の仕方なぞ、もっての他であるわけです。

ちなみに、鳥畑氏が引いている私のコメントはあくまで朝日新聞の記者さんとの会話の中で発されたものであり、私自身がどういう文脈の中でそれを発したのかを鳥畑氏が知る由もないどころか、私自身は鳥畑氏と会話ひとつしたことはありません。(逆に、彼の講演会にいち参加者として勉強しに行くなどは幾度もしているので、私の方は一方的に彼の発した言を知っていたりするが)。また、私自身は早稲田大学アミューズメント総研において行われた国内カジノ市場推計の実施担当者として推計値を出した頃から(対外的な公式発表は2006~2007年だったはず)、ずっと全体入場者に占める国際顧客の割合は10%前後であると公言し続けており、少なくともここ10年くらいは同じ事を言い続けている。鳥畑氏による「話が違うよという方向に変わってきている」なぞという批判は全くの見当違いです。

その場に不在である推進派の、文脈はもとより、その引用が本当に正確なのか、はたまた本当にそのようなものがあったのかすら検証のしようのないコメントを延々と引いて、「推進派はこんなトンデモナイことを言ってるんですよ」と糾弾する。鳥畑氏自身はさぞかし爽快だったでしょうねと思うわけですが、一方で反対論を打つにしても、そんな「論立て」の仕方 があってたまるか!と、こちらの立場としては思ってしまうわけです。

カジノのせいでパチンコが「やり玉」に挙げられている

衝撃的なメッセージがパチンコ業界から発されております。以下、産経Bizからの転載。


□ワールド・ワイズ・ジャパン代表、LOGOSプロジェクト主幹・濱口理佳
http://www.sankeibiz.jp/business/news/170218/bsd1702180500004-n1.htm

カジノ一つをつくるのに、遊技業界がどうしてここまでやり玉に挙げられ、追い詰められなければならないのか。ギャンブル依存症にせよ、誰かが「カジノができると依存症が問題だ」と言い出すと、「パチンコはどうなのか」と矢が飛んでくる。
 

このワールド・ワイズ・ジャパンの濱口理佳さんという方、私ですら顔と名前が一致する御仁ですから、パチンコ業界においてはそれなりに名前の知れた、いわゆる「業界識者」であります。そのパチンコ業界の識者が一般メディアにおいて臆面もなくこのようなメッセージを公に発している状態に、私としては開いた口がふさがりません。

問題点①
濱口氏は、昨今のカジノ合法化論議のせいでパチンコ業界が槍玉に挙げられ、追い詰められているという認識のご様子ですが、それは全くの間違いです。今回、各種問題がクローズアップされているキッカケがカジノ論議にあるとしても、語られている内容はパチンコ業界の中に長年内在してきた問題であり、それらとカジノの存在は全く関係が有りません。それを「カジノ一つをつくるのに、パチンコ業界がどうしてここまでやり玉に挙げられ、追い詰められなければならないのか」などと表現すること自体が大きな認識違い。完全に「身から出た錆」です。

問題点②
濱口氏は、リンク先コラムにおいて以下のように主張しています。


パチンコは風営法で厳しく規制された娯楽であるにもかかわらず、ギャンブルと並列に扱われ、しかも「パチンコは依存に対して何もしてこなかった」などと吹聴する人も出てくる始末。
 

昨年12月26日に政府は「ギャンブル等依存症対策推進閣僚会議」を開催しました。なぜこの会議の名称が「ギャンブル『等』依存症」と銘打たれてているのか? それは、法律上その行為が「ギャンブル」であるかどうかは問わず、そこに射幸性が含まれる行為を全て論議の対象とするためです。

本会議の構成員には、各公営賭博を所管する省庁はもとより、富くじを所管する総務省と文科省、パチンコを所管する警察庁、そして各種金融商品を所管している金融庁までが含まれています。法律上の定義をいえば、宝くじとtotoは「富くじ」、パチンコは「遊技」、そしてFXや商品先物取引は「金融商品」とそれぞれ「賭博」とは異なった定義がなされています。しかし、それらが日本の法律上ギャンブルと定義されているかどうかに関わらず、そこに一定の射幸性が含まれており、その射幸性に対して依存する人が居る。だとすれば、それに対して社会的に何らかの手当てをしなければならないというのが現在の論議です。

そのようにして進行している現在の論議に対して、今更のように「我々業界はギャンブルではなく、風営法上規定される遊技である」などとする論で、その謗りをかわそうとする行為にどれ程の意味があるのか。そういうのを世の中では詭弁と呼びます。

問題点③
あわせて濱口氏は以下のようにも主張しています。


業界は遊技への過度なのめり込み(依存)問題にかねて積極的に取り組んできた。業界団体が支援して2006年に設立した「認定特定非営利活動法人リカバリーサポート・ネットワーク」もその一つだが、無料の電話相談を実施するほか、自助グループへの橋渡しや、司法書士会・弁護士会を紹介するなど、公的機関とも連携を取りながら問題解決をサポートしている。
 

長らく「依存」という用語の使用を避け、なぜか「のめり込み」という独自用語を使ってきた業界の内部事情は別として、パチンコ業界がその他のギャンブル等産業と比べて依存対策に力を入れてきたことは事実であり、その点に関しては私自身も幾度となく言及してきています(→参照)。一方で、それら業界内の対策は、今起こっている事象に対する一切の「免罪符」にはなりません。

パチンコ業界は他と比べて業界独自の対策は行ってきた一方で、臨床の現場ではギャンブル等依存で持ち込まれる相談のおよそ8割がパチンコに関するものだとされています。

【参照】ギャンブル依存症の8割が「パチンコ依存」 国内400万人以上に疑いあり
https://dot.asahi.com/wa/2014111400068.html

すなわち業界独自の様々な対策は行ってきたとはいえ、我が国のギャンブル等依存問題における最大の依存対象がパチンコであるという謗りは免れ得ません。逆に言えば、我が国の依存対策論議の中心が「パチンコ」に置かれてしまうのは必然であるともいえます。

問題点④
そもそも、濱口氏は「パチンコは風営法で厳しく規制された娯楽であるにもかかわらず」と仰るが、パチンコ業界は社会問題ともなった「検定時と性能が異なる可能性のある型式遊技機」72万台を昨年12月にやっと撤去し終わったばかり。長年に亘って法令を無視しゲームの射幸性を高めることを追求し続けてきた業界が、舌の根も乾かぬうちに「パチンコは風営法で厳しく規制された娯楽」などと主張するのはあまりにもお粗末な話。最低10年、健全営業を維持してから出直して来いというのが正直な気持ちであります。

濱口氏はこれまでも産経Biz上のコラムで幾度となく上記と同様の主張を繰り返してきており、彼女は彼女なりの覚悟をもって主張をしているのでしょうが、正直、現在のギャンブル等依存対策に関する社会的論議の流れを完全に見誤っているようです。こういう論調がパチンコ業界全体の論調でないことを祈ります。

屋内禁煙化で飲食店売上は下がらないという強弁について

2020年のオリンピック開催に向けて屋内喫煙規制の論議が進んでいるのですが、嫌煙派の方々の猛々しい主張がなんとも言えません。以下、blog「永江一石のITマーケティング日記」からの転載。


2017年2月15日の受動喫煙対策法の厚生労働部会の各議員の発言に突っ込んでみた
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=31394

特定のところだけ禁煙にするならまだしも、せーので全店禁煙なら客が減るとかいう前提自体が無茶苦茶です。全面禁煙にしたら喫煙者は今後、飲み会にも行かず、一切外食しないという前提はどこから来るのか。「禁煙にしたら客が減った」という声があるという議員もいるが、いまはほとんどで喫煙可能だからという前提。逆に禁煙にしたら売り上げ増えて顧客単価も上がったというケースもたくさんある。
 

「禁煙にしたら売り上げ増えて顧客単価も上がったというケースもたくさんある」との事ですが、それこそ、永江氏の仰る「いまはほとんどで喫煙可能だからという前提」の話であって、他店との差別化が出来たので売上が上がりましたという話でしょうよ。もはやこの一節だけ切り出しても、論理矛盾満載であります。

厚生労働省の研究班が「海外ではすでに50カ国近くで飲食店などは屋内全面禁煙だ。全面禁煙によるレストランとバーの営業収入への影響を調べた海外の27報告を厚労省研究班が検証したところ、約8割の22報告が変化なし」などとする発表を行ったとの事ですが、海外と日本は全く喫煙規制に関する社会的環境が全く違います。

これは以前もどこかで書いたことがあるのですが、諸外国における喫煙規制は職場での伏流煙被害から逃れることの出来ない飲食業界系の労働組合や、それこそ我がカジノ業界の労働組合などが主として動かした労働環境の改善運動から広がってきたものです。なので、基本的には様々な商業施設の「屋内」での喫煙制限が先行して進んでいるもので、屋外は多くの場合が論議の対象になっていません。

一方、我が国の喫煙規制はいわゆる嫌煙派の方々の市民運動を中心として広がってきたものであり、公共の場、すなわち路上での喫煙規制が中心に進んできたもの。現在では、全国の都市の主な繁華街エリアでは路上喫煙禁止条例が定められており、「屋外での」喫煙が禁止されています。

上記、厚生労働省の研究班による発表では「海外50カ国近くの飲食店で屋内全面禁煙が制定されているが、その営業収入への影響は殆どない」とのご主張でありますが、だったら調査対象となった50カ国の国々が同時に屋外喫煙の禁止を定めているかどうかも合わせて発表していただけますか?私が生活していた米国ネバダ州は土地柄、喫煙には大らかな地域なのでそういう現象はないですが、多くの欧米の都市部では喫煙者が路上やテラス席にたむろしてアチラこちらでプカプカとタバコを吸っている姿が観測できます。店から一歩外に出ればタバコを吸える。そういう環境であるからこそ、屋内の禁煙を法制化しても営業収益には大きな影響がないのです。

一方、前述の通り我が国では屋内喫煙の論議の前に、既に路上喫煙の禁止が先行してしまっている。そういう異なる社会環境の中で起こる屋内喫煙禁止の影響は諸外国で見られるものとは全く違ったものとなります。

我が国では2009年に神奈川県が受動喫煙防止条例を制定し、国内自治体ではじめて屋内喫煙の規制を制度化しました。その後、行われたその影響度調査では、以下のような結果が出ています。


受動喫煙防止条例がもたらす経済効果
~「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例の経済波及効果分析」より~

 「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例の経済波及効果分析」では受動喫煙防止条例のような喫煙規制によりプラスあるいはマイナスの売上影響が予測される11産業を調査対象産業とし、株式会社富士経済からの委託調査として、同社が行った市場動向と売上影響金額をもとに、産業連関表を用いることで、条例施行後3年間にわたる経済全体への波及効果を算出致しました。
 
【調査結果の概要】
・神奈川県における条例による経済波及効果(生産への影響)は、2010年~2012年の3年間で合計▲237億円。(2010年▲55億円、2011年▲106億円、2012年▲76億円)
 
・全国で同様の条例が施行された場合の経済波及効果(生産への影響)は、2010年~2012年の3年間で合計▲4,880億円。(2010年▲1,043億円、2011年▲2,012億円、2012年▲1,735億円)

・最も影響が見られたのは「外食産業」、次いで「宿泊産業」。ともに条例に即した禁煙化を行なった店舗で喫煙客離れが進行し、その分売上が減少する結果となっている。

・一方で「分煙機器」、「後付分煙工事/喫煙ルーム」では、主に外食店での分煙環境整備による需要が発生し、売上が増加する結果となっている。経済全体への影響としては、マイナスが大きく上回る結果となった。
 

嫌煙派の方々は、国内の先行事例において既に上記のような報告が為されているにも関わらず、なぜ社会環境の違う欧米の事例なんかを持ち出して「飲食店への影響はない」などとして強弁しているのでしょうか?

冒頭にご紹介した永江一石さんに至っては「禁煙にしたら売り上げ増えて顧客単価も上がったというケースもたくさんある」などという、個別事例を持ち出して無理な論理を展開した挙句、「国会議員の多くがいまだ喫煙援護派なのは、非喫煙者である女性に対する蔑視だ」とか謎の結論に持ってゆくという有様。いや、反対している議員らは「代議士」の役割として屋内喫煙の禁止でリスクを被る人達の立場を代弁をしているだけであって、そういうレッテル張りは完全にオカシイでしょう、と。

2020年のオリンピック開催をキッカケに、我が国の国民の健康と喫煙問題について論議しましょうというのは私自身も全くもって否定するところではないのですが、それによってリスクを被ることになる人達の主張を全く比較の対象にならない海外事例を持ち出して否定したり、マイナスの影響が実際にあった国内先行事例を完全に無視したりという論議の手法は、幾らなんでもやり過ぎ。「正しく」論議をしましょうよ、ということであります。

ちなみに私自身は非喫煙者ではありますが、賭博という個人の嗜好に強く紐づいた業界の人間である故に、他者の嗜好は最大限尊重すべきだという立場であります。

著者プロフィール


木曽 崇(キソタカシ)

国際カジノ研究所 所長
エンタテインメントビジネス総合研究所 客員研究員

経歴:
日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長に就任。

2014年よりアジア圏最大のカジノ国際会議&展示会であるGlobal Gaming Expo Asiaのアドバイザリーボード委員を務める。

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