カジノ反対派の急先鋒、鳥畑与一さん(@静岡大学)が推進派をメッタ切り

いやぁ、鳥畑さんって推進派のいない反対派だけの集会だと、こんな主張の仕方をするんですね。以下、真山勇一参議院議員(民進党)による勉強会の収録動画より。
 

あらゆるカジノ推進派のコメントを引いた上でそれらをメッタ切りにするという独り舞台であり、聞いている反対派の人達にとってはさぞかし痛快であったでしょうね。


(31:47あたりから)小池さんという方は元ゴールドマンサックスに勤めていた方で非常に正直というか、 隠したりしない方だと思うんですが、こんなことを正直に言うんですね。カジノは日本の特に富裕層の個人金融資産の一部を吸い上げる事業です。日本にとっては個人金融資産の蓄積は最大の経済資源であり、その一部を開発(※音声不明瞭)するわけです。本当にストレートに正直に仰っていて、つまりアメリカとカジノ企業のターゲットは完全に日本人の懐なんです。そこに外国観光客が来てくれるか、外国のギャンブラーが来てくれるかどうかはオマケの話[…]

(32:56あたりから)長崎に行きまして、佐世保に行きましたら、ちょうど昨年参考人質疑でご一緒した美原さんという推進派の中心人物がおられて、ちょうど佐世保の市会議員で推進議連なんかができちゃったらしくて、そこに講演に来たというんですね。その美原さんが言ってたと。「ターゲットは日本人です。外国観光客はあてにしてません」って、ハッキリ仰ってましたというのが、ヒアリングの成果なんです。

(44:25あたりから)大阪商業大学の谷岡先生なんかが持論で言ってるんですけれど、某鳥畑というのはゼロサムといっているけれど、ゼロサムじゃないんだ。お年寄りが溜め込んだお金、金持ちが溜め込んだお金、無駄に使われずに眠っているお金を使わせれば日本経済としては消費が増えて、経済貢献するじゃないかというんですね。でも、お年寄りの貯蓄って老後の生活の為に必要なお金、無駄に溜め込んでる方って殆どいないと思うんですね。

(46:05)「胴元が確実に儲かる仕組み」これは私が言ってるのではなくて、推進派の美原氏がある所でおしゃべりした資料を使わせていただいております。それから中條さんという方、大阪商業大学の方がこんなことを言ってるんですね。ギャンブルに参加する人は勝ってお金を儲けることを目的とするにも関わらず、結果的にはほぼ確実にお金を失ってしまうという矛盾する現実を体験する、と。この矛盾する体験からどう乗り越えるか、悟りを開いてくださいみたいなことを後で文章が続くんです[…]

(1:16:26)去年、参考人質疑でマネーロンダリングに詳しい渡邊さんという弁護士さんの方がおられたので、ちょっと質問しました。「闇です」といっていました。「闇ルートで外に持ち出すんです」と。そういうノウハウを持っているいわゆるジャンケットという業者が居て、その業者を使わないとマカオのような遊び方は出来ない。じゃぁ日本でそんなジャンケットのそれを認めるんですか?認めたら、その渡邊弁護士さんはマネーロンダリングの規制は出来ませんといっていた。マネロン規制をマジメにやるんだったら、ジャンケットを認めちゃだめですと言ってました。

(1:17:39)これは私が勝手に言ってるのではなくて、最近推進派の方もそういう言い方になって来てて、先日朝日新聞の方に聞くと、この間、木曽崇という推進派の方にインタビューしたら9割は日本人ですよ、東京大阪でも、という話をしてたという事ですから。どんどんなんか、オイ話が違うよという方向に変わってきているわけです。


コメントが引かれているあらゆる推進派の中で、私だけを「呼び捨て」にしているあたりに鳥畑氏の私に対する個人的な感情が読み取れるわけですが(笑)、それはご愛嬌として、どうもハッキリしないのが上記の引用コメントに、①何かしらの著述物や不特定多数が聴取している講演会等から引いたもの、②鳥畑氏が個人的な会話のなかで直接聞いたもの、③鳥畑氏が直接聞いたどころか「あの人物がこんなことを言ってた」と誰かから聞いただけのもの、が混在しているようです。

当然ながら論議者としては、己の著述や講演会などで公に発したコメントに関してはそれを引いて批判して頂くのはある程度は当然のこととして受け止めるわけですが、どういう文脈の中でそのコメントが発されたのか、はたまた本当にそういう発言があったのかすら検証のしようがない個人的な会話からフレーズを引いて「アイツはこんなトンデモナイことを言っていた」などとして批判の対象とするのは論議者の作法として完全に間違い。ましてや自分が見聞きしたわけでもなんでもない会話内容を、第三者から又聞きして「アイツ、こんなこと言ってたらしいよ」などという批判の仕方なぞ、もっての他であるわけです。

ちなみに、鳥畑氏が引いている私のコメントはあくまで朝日新聞の記者さんとの会話の中で発されたものであり、私自身がどういう文脈の中でそれを発したのかを鳥畑氏が知る由もないどころか、私自身は鳥畑氏と会話ひとつしたことはありません。(逆に、彼の講演会にいち参加者として勉強しに行くなどは幾度もしているので、私の方は一方的に彼の発した言を知っていたりするが)。また、私自身は早稲田大学アミューズメント総研において行われた国内カジノ市場推計の実施担当者として推計値を出した頃から(対外的な公式発表は2006~2007年だったはず)、ずっと全体入場者に占める国際顧客の割合は10%前後であると公言し続けており、少なくともここ10年くらいは同じ事を言い続けている。鳥畑氏による「話が違うよという方向に変わってきている」なぞという批判は全くの見当違いです。

その場に不在である推進派の、文脈はもとより、その引用が本当に正確なのか、はたまた本当にそのようなものがあったのかすら検証のしようのないコメントを延々と引いて、「推進派はこんなトンデモナイことを言ってるんですよ」と糾弾する。鳥畑氏自身はさぞかし爽快だったでしょうねと思うわけですが、一方で反対論を打つにしても、そんな「論立て」の仕方 があってたまるか!と、こちらの立場としては思ってしまうわけです。


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カジノのせいでパチンコが「やり玉」に挙げられている

衝撃的なメッセージがパチンコ業界から発されております。以下、産経Bizからの転載。


□ワールド・ワイズ・ジャパン代表、LOGOSプロジェクト主幹・濱口理佳
http://www.sankeibiz.jp/business/news/170218/bsd1702180500004-n1.htm

カジノ一つをつくるのに、遊技業界がどうしてここまでやり玉に挙げられ、追い詰められなければならないのか。ギャンブル依存症にせよ、誰かが「カジノができると依存症が問題だ」と言い出すと、「パチンコはどうなのか」と矢が飛んでくる。
 

このワールド・ワイズ・ジャパンの濱口理佳さんという方、私ですら顔と名前が一致する御仁ですから、パチンコ業界においてはそれなりに名前の知れた、いわゆる「業界識者」であります。そのパチンコ業界の識者が一般メディアにおいて臆面もなくこのようなメッセージを公に発している状態に、私としては開いた口がふさがりません。

問題点①
濱口氏は、昨今のカジノ合法化論議のせいでパチンコ業界が槍玉に挙げられ、追い詰められているという認識のご様子ですが、それは全くの間違いです。今回、各種問題がクローズアップされているキッカケがカジノ論議にあるとしても、語られている内容はパチンコ業界の中に長年内在してきた問題であり、それらとカジノの存在は全く関係が有りません。それを「カジノ一つをつくるのに、パチンコ業界がどうしてここまでやり玉に挙げられ、追い詰められなければならないのか」などと表現すること自体が大きな認識違い。完全に「身から出た錆」です。

問題点②
濱口氏は、リンク先コラムにおいて以下のように主張しています。


パチンコは風営法で厳しく規制された娯楽であるにもかかわらず、ギャンブルと並列に扱われ、しかも「パチンコは依存に対して何もしてこなかった」などと吹聴する人も出てくる始末。
 

昨年12月26日に政府は「ギャンブル等依存症対策推進閣僚会議」を開催しました。なぜこの会議の名称が「ギャンブル『等』依存症」と銘打たれてているのか? それは、法律上その行為が「ギャンブル」であるかどうかは問わず、そこに射幸性が含まれる行為を全て論議の対象とするためです。

本会議の構成員には、各公営賭博を所管する省庁はもとより、富くじを所管する総務省と文科省、パチンコを所管する警察庁、そして各種金融商品を所管している金融庁までが含まれています。法律上の定義をいえば、宝くじとtotoは「富くじ」、パチンコは「遊技」、そしてFXや商品先物取引は「金融商品」とそれぞれ「賭博」とは異なった定義がなされています。しかし、それらが日本の法律上ギャンブルと定義されているかどうかに関わらず、そこに一定の射幸性が含まれており、その射幸性に対して依存する人が居る。だとすれば、それに対して社会的に何らかの手当てをしなければならないというのが現在の論議です。

そのようにして進行している現在の論議に対して、今更のように「我々業界はギャンブルではなく、風営法上規定される遊技である」などとする論で、その謗りをかわそうとする行為にどれ程の意味があるのか。そういうのを世の中では詭弁と呼びます。

問題点③
あわせて濱口氏は以下のようにも主張しています。


業界は遊技への過度なのめり込み(依存)問題にかねて積極的に取り組んできた。業界団体が支援して2006年に設立した「認定特定非営利活動法人リカバリーサポート・ネットワーク」もその一つだが、無料の電話相談を実施するほか、自助グループへの橋渡しや、司法書士会・弁護士会を紹介するなど、公的機関とも連携を取りながら問題解決をサポートしている。
 

長らく「依存」という用語の使用を避け、なぜか「のめり込み」という独自用語を使ってきた業界の内部事情は別として、パチンコ業界がその他のギャンブル等産業と比べて依存対策に力を入れてきたことは事実であり、その点に関しては私自身も幾度となく言及してきています(→参照)。一方で、それら業界内の対策は、今起こっている事象に対する一切の「免罪符」にはなりません。

パチンコ業界は他と比べて業界独自の対策は行ってきた一方で、臨床の現場ではギャンブル等依存で持ち込まれる相談のおよそ8割がパチンコに関するものだとされています。

【参照】ギャンブル依存症の8割が「パチンコ依存」 国内400万人以上に疑いあり
https://dot.asahi.com/wa/2014111400068.html

すなわち業界独自の様々な対策は行ってきたとはいえ、我が国のギャンブル等依存問題における最大の依存対象がパチンコであるという謗りは免れ得ません。逆に言えば、我が国の依存対策論議の中心が「パチンコ」に置かれてしまうのは必然であるともいえます。

問題点④
そもそも、濱口氏は「パチンコは風営法で厳しく規制された娯楽であるにもかかわらず」と仰るが、パチンコ業界は社会問題ともなった「検定時と性能が異なる可能性のある型式遊技機」72万台を昨年12月にやっと撤去し終わったばかり。長年に亘って法令を無視しゲームの射幸性を高めることを追求し続けてきた業界が、舌の根も乾かぬうちに「パチンコは風営法で厳しく規制された娯楽」などと主張するのはあまりにもお粗末な話。最低10年、健全営業を維持してから出直して来いというのが正直な気持ちであります。

濱口氏はこれまでも産経Biz上のコラムで幾度となく上記と同様の主張を繰り返してきており、彼女は彼女なりの覚悟をもって主張をしているのでしょうが、正直、現在のギャンブル等依存対策に関する社会的論議の流れを完全に見誤っているようです。こういう論調がパチンコ業界全体の論調でないことを祈ります。

屋内禁煙化で飲食店売上は下がらないという強弁について

2020年のオリンピック開催に向けて屋内喫煙規制の論議が進んでいるのですが、嫌煙派の方々の猛々しい主張がなんとも言えません。以下、blog「永江一石のITマーケティング日記」からの転載。


2017年2月15日の受動喫煙対策法の厚生労働部会の各議員の発言に突っ込んでみた
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=31394

特定のところだけ禁煙にするならまだしも、せーので全店禁煙なら客が減るとかいう前提自体が無茶苦茶です。全面禁煙にしたら喫煙者は今後、飲み会にも行かず、一切外食しないという前提はどこから来るのか。「禁煙にしたら客が減った」という声があるという議員もいるが、いまはほとんどで喫煙可能だからという前提。逆に禁煙にしたら売り上げ増えて顧客単価も上がったというケースもたくさんある。
 

「禁煙にしたら売り上げ増えて顧客単価も上がったというケースもたくさんある」との事ですが、それこそ、永江氏の仰る「いまはほとんどで喫煙可能だからという前提」の話であって、他店との差別化が出来たので売上が上がりましたという話でしょうよ。もはやこの一節だけ切り出しても、論理矛盾満載であります。

厚生労働省の研究班が「海外ではすでに50カ国近くで飲食店などは屋内全面禁煙だ。全面禁煙によるレストランとバーの営業収入への影響を調べた海外の27報告を厚労省研究班が検証したところ、約8割の22報告が変化なし」などとする発表を行ったとの事ですが、海外と日本は全く喫煙規制に関する社会的環境が全く違います。

これは以前もどこかで書いたことがあるのですが、諸外国における喫煙規制は職場での伏流煙被害から逃れることの出来ない飲食業界系の労働組合や、それこそ我がカジノ業界の労働組合などが主として動かした労働環境の改善運動から広がってきたものです。なので、基本的には様々な商業施設の「屋内」での喫煙制限が先行して進んでいるもので、屋外は多くの場合が論議の対象になっていません。

一方、我が国の喫煙規制はいわゆる嫌煙派の方々の市民運動を中心として広がってきたものであり、公共の場、すなわち路上での喫煙規制が中心に進んできたもの。現在では、全国の都市の主な繁華街エリアでは路上喫煙禁止条例が定められており、「屋外での」喫煙が禁止されています。

上記、厚生労働省の研究班による発表では「海外50カ国近くの飲食店で屋内全面禁煙が制定されているが、その営業収入への影響は殆どない」とのご主張でありますが、だったら調査対象となった50カ国の国々が同時に屋外喫煙の禁止を定めているかどうかも合わせて発表していただけますか?私が生活していた米国ネバダ州は土地柄、喫煙には大らかな地域なのでそういう現象はないですが、多くの欧米の都市部では喫煙者が路上やテラス席にたむろしてアチラこちらでプカプカとタバコを吸っている姿が観測できます。店から一歩外に出ればタバコを吸える。そういう環境であるからこそ、屋内の禁煙を法制化しても営業収益には大きな影響がないのです。

一方、前述の通り我が国では屋内喫煙の論議の前に、既に路上喫煙の禁止が先行してしまっている。そういう異なる社会環境の中で起こる屋内喫煙禁止の影響は諸外国で見られるものとは全く違ったものとなります。

我が国では2009年に神奈川県が受動喫煙防止条例を制定し、国内自治体ではじめて屋内喫煙の規制を制度化しました。その後、行われたその影響度調査では、以下のような結果が出ています。


受動喫煙防止条例がもたらす経済効果
~「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例の経済波及効果分析」より~

 「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例の経済波及効果分析」では受動喫煙防止条例のような喫煙規制によりプラスあるいはマイナスの売上影響が予測される11産業を調査対象産業とし、株式会社富士経済からの委託調査として、同社が行った市場動向と売上影響金額をもとに、産業連関表を用いることで、条例施行後3年間にわたる経済全体への波及効果を算出致しました。
 
【調査結果の概要】
・神奈川県における条例による経済波及効果(生産への影響)は、2010年~2012年の3年間で合計▲237億円。(2010年▲55億円、2011年▲106億円、2012年▲76億円)
 
・全国で同様の条例が施行された場合の経済波及効果(生産への影響)は、2010年~2012年の3年間で合計▲4,880億円。(2010年▲1,043億円、2011年▲2,012億円、2012年▲1,735億円)

・最も影響が見られたのは「外食産業」、次いで「宿泊産業」。ともに条例に即した禁煙化を行なった店舗で喫煙客離れが進行し、その分売上が減少する結果となっている。

・一方で「分煙機器」、「後付分煙工事/喫煙ルーム」では、主に外食店での分煙環境整備による需要が発生し、売上が増加する結果となっている。経済全体への影響としては、マイナスが大きく上回る結果となった。
 

嫌煙派の方々は、国内の先行事例において既に上記のような報告が為されているにも関わらず、なぜ社会環境の違う欧米の事例なんかを持ち出して「飲食店への影響はない」などとして強弁しているのでしょうか?

冒頭にご紹介した永江一石さんに至っては「禁煙にしたら売り上げ増えて顧客単価も上がったというケースもたくさんある」などという、個別事例を持ち出して無理な論理を展開した挙句、「国会議員の多くがいまだ喫煙援護派なのは、非喫煙者である女性に対する蔑視だ」とか謎の結論に持ってゆくという有様。いや、反対している議員らは「代議士」の役割として屋内喫煙の禁止でリスクを被る人達の立場を代弁をしているだけであって、そういうレッテル張りは完全にオカシイでしょう、と。

2020年のオリンピック開催をキッカケに、我が国の国民の健康と喫煙問題について論議しましょうというのは私自身も全くもって否定するところではないのですが、それによってリスクを被ることになる人達の主張を全く比較の対象にならない海外事例を持ち出して否定したり、マイナスの影響が実際にあった国内先行事例を完全に無視したりという論議の手法は、幾らなんでもやり過ぎ。「正しく」論議をしましょうよ、ということであります。

ちなみに私自身は非喫煙者ではありますが、賭博という個人の嗜好に強く紐づいた業界の人間である故に、他者の嗜好は最大限尊重すべきだという立場であります。

大阪カジノの予測投資額3,500億円について

現在、他の業務に追いまくられており更新が滞っております。スイマセン。

少し遅いフォローとなってしまいますが、今月の2月7日に大阪府が推計した大阪カジノ導入の各種経済予測推計値が発表された模様です。以下、リンク先の報告書まとめ。

 osaka
(出所:http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/10583/00000000/honnpenHP0207.pdf

 関西におけるカジノの市場規模予測に関しては、そもそも「日本のカジノ市場は2~3.5兆円にも達するのだ」とする大阪商業大学商経学会論集(第5巻、第1号)に掲載された「カジノ開設の経済効果( 佐和良作・田口順等)」という論文を参考値として、総投資額で2兆円超にも及ぶであろう巨大な統合型リゾートの開発構想が開催経済同友会から発表されました。以下、関西経済同友会がそもそも提示していた大阪カジノ構想の開発イメージ。
 

ところが、関西経済同友会が2016年に入ってから改めて独自の市場規模推計を行ったところ、関西圏での統合型リゾートの年間事業規模は5,500億円程度であり、そこから逆算して算出される開発投資予想額は6,759億円程度であるという推計値が出てきたものだから大慌て。当初計画していた統合型リゾートによる夢洲の全体開発は不可能であるということが判明し、あわてて別途検討が行われていた万博の開催を夢洲に移したというのが経緯でありました。(このあたりの経緯詳細はリンク先参照

というような全体の経緯の中で、今度は大阪府が独自に推計した市場規模推計値として2024年、統合型リゾートの開業当初における開発投資額は3,500億円程度、年間の事業規模としては2,000億円程度にしかならないなどとする数字が今回発表されてしまったわけです。2兆円超→6,759億円→3,500億円と期待される投資金額があっという間に縮小してしまい、統合型リゾート導入によって大きな経済効果を期待していた関西財界としては涙目であります。

一応、この辺の推計を己の専門のど真ん中としている私の立場からしますと、今回の大阪府が行った市場規模推計はえらく市場を小さく見積もったな、というのが正味なところの感想です。上記リンク先に示した大阪府による報告書にはあまり詳細な推計プロセスに関する開示が行われていないので、あくまで現時点で開示されている情報をベースにそのプロセスを推測するしかないワケですが、現時点で私に見えているだけで2つの推計上の問題点が見えています。

①2024年推計に関して
大阪府の開示している報告書を見ると、2024年のカジノ施設への入込客数予測にあたってシンガポールの事例を参照しながらその推計を行っているとされています。以下、報告書より。

pdf

2014年の来阪客数の実績値から国内客が毎年1.2%成長、国際客が毎年4.1%成長するという前提で2024年の来阪客数を予測。その予測値に、シンガポールにおける観光客のカジノ来訪比率を掛け合わせることでそう入込客数を予測しているようです。

ただここで問題になるのが、そこで求められるカジノ来訪者数に対して更にシンガポールにおける全体カジノ来訪者数に占めるマリーナベイサンズの訪問者数の割合をかけ合わせている点。シンガポールは現在国内に2つのカジノが存在するわけですが、2024年の大阪に開業するカジノは「その内の一つ分の比率」の観光客のみが施設に来訪するのだ、ということの模様。これは、今回の推計に際して、2024年に夢島に1施設のみ、その後、2030年に新たに2施設が追加されるという前提で推計を行っていることに対応する推計上の「処理」であるようです。

ただ正直申し上げますと、入札を実施する側の大阪府が投資上の上限を定めているのならばいざ知らず、通常の自由な投資入札において事業者はその市場の中で最も利益の取れる投資を目一杯行おうとするのが当たり前の投資行動であり、わざわざ2030年に後から参入してくる(かもしれない)事業者の為に需要を「取り置いておく」などということはしません。そういう意味では、なぜわざわざこういう推計処理をしたのかはちょっと理解に苦しみますし、このような処理をしてしまったが故に2024年から2030年に向かって来阪観光客数は5,024万人から5,793万人へと15%程度の増加しかしないと予測されているにも関わらず、カジノの入込客数は1,300万人から2,200万人へとおよそ70%も増加するという妙チクリンな推計が出てしまっているわけです。

②大阪在住者の入場に関して
さらにもう一つの推計上の問題点を言えば、上記で説明した一連の推計は来阪観光客をベースにして計算をしているということ。残念ながら現時点で開示されている資料内では彼らが言うところの「来阪観光客」が具体的にどのようなものを指すのかに関しては判りにくいのですが、その表現に基づくのならば恐らく大阪在住の人間はそこに含まれていないのだろうと思われます。

もし大阪府が本当に大阪在住者の大阪カジノへの入場を何らかの形で禁止する方針であるというのならばそれはそれで殊勝な政策方針でありますが、もしそうではないとするのならば今回行われた推計はそのような大阪在住者の入場分をカウントしていない可能性がある。この辺も、全体需要が非常に低く見積もられている原因ではないのかな?と思うところです。

そして究極的にはもし大阪府がこの報告書が示すとおり、2024年のゲーミング消費が530億円、2030年のゲーミング消費が900億円程度であると本当に思っているのならば、それを元に予測している2024年までの開発投資額3,500億円、2030年までの開発投資額8,200億円というのは明らかに大きく見積もりすぎであり、下手すりゃ一桁間違っているくらいの大きな予測のズレが生じてしまっていると思われます。

この種の推計というのはあくまで様々な要件を設定した一種の「箱庭」的な環境で推計を行うものであり、万能ではないというのは私自身が一番良く知っている身ではあるのですが、少なくとも己が設定した要件の中ではもっともらしい数字を出すのが推計者の仕事なのであって、今回の大阪府の市場予測はちょっと残念だな、というのが正直な感想。恐らく私以上に、そこに様々な経済的恩恵を期待していた関西ビジネス界の方々は今回の発表値に対してはガッカリしていると思うわけですが、これまで寧ろ「大阪の出す数字は大きすぎる」といい続けてきた私の観点からしても、今回の推計値に関してはたぶん普通に推計するともうちょっと良い数字はでるものと思いますよ、とだけ最後に申し添えておきたいと思います。

てか、大阪府は一方で夢洲での統合型リゾートの成立の前提となる鉄道敷設に対して「カジノ事業者に応分の負担を求める」などとしているわけですが、今回の推計に基づき年間500億円程度のゲーミング市場を前提にするとカジノ企業が負える拠出金は期待するほど出てきません。今回の発表地はIR導入の前提となる鉄道敷設は元より、その先に予定している万博誘致に至るまで、全体に対して不安を残すものとなっていると思われます。こちらからは以上です。


【参考】万博会場の整備費、大阪府と大阪市で折半を確認 200億円ずつ負担
http://j.sankeibiz.jp/article/id=716
 
府市は関連事業費のうち万博開催に伴うものについては折半することも決定。鉄道延伸費について吉村洋文市長は「利益を得る人に担ってもらわないといけない」と述べ、IR事業者にも応分の負担を求めていく考えを示した。
 

【出演情報】やまもといちろう×木曽崇「景表法、カジノビジネスのエンタメ的考察」

本日は告知です。今月の20日にメディアコンテンツ研究家・黒川文雄氏主催の「エンタテインメントの未来を考える会」のトークイベントに登壇いたします。以下、ゲーム総合サイト「Gamer」からの転載。


木曽崇氏、やまもといちろう氏を迎える「黒川塾(四十六)」が2月20日に開催―テーマは「景表法、カジノビジネスのエンタメ的考察」
http://www.gamer.ne.jp/news/201702010033/

黒川塾44で取り上げたテーマ「eスポーツ」の日本における普及とブームへの課題はプロゲーマーの育成とメーカーの協力、そして大きな課題は賞金制大会の実現があると位置づけます。しかし、現在の日本の法制度においては景表法による規制と、違反した場合には刑法185条による罰則があり、大きな進展を関係者にとってはクリアすべき課題となっています。

同じゲーム・カテゴリーでは、2014年に「射幸心を煽る」として問題が顕在化したソーシャルゲームにおけるガチャ出現率と、それに伴い業界団体における自主規制ルールが設けられました。しかし、それらに関しては各社における解釈が異なり、一元化、明確化には至ってないと思われます。そして、現在地域興しの事業体として誘致の話題に上がる日本における統合型リゾート(IR)でのカジノビジネスまでをエンタテインメント的な観点から識者をお招きしてお話を伺います。


山本さんとは久しぶりの共演となりますが、恐らくお互いの持っている専門性の共通項である「射幸性を持ったゲーム」というキーワードを中心にソシャゲ、e-スポーツ、パチンコ、ギャンブルあたりが中心の対話になると思いますが、山本さんとご一緒する時はだいたい話が脱線しまくって大変なことになるので、正直、当日どこに向かって論議が進むのか私自身まったく想像がつきません。その辺は、行司役として立つ黒川文雄さんの腕次第というところであります。

ご興味のある方は上記リンク先から是非お申し込みを。以上、とりいそぎ告知でした。

著者プロフィール


木曽 崇(キソタカシ)

国際カジノ研究所 所長
エンタテインメントビジネス総合研究所 客員研究員

経歴:
日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長に就任。

2014年よりアジア圏最大のカジノ国際会議&展示会であるGlobal Gaming Expo Asiaのアドバイザリーボード委員を務める。

より詳細なプロフィール

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