海外ルートボックス問題が日本に波及:パズドラが排出確率表記

さて、以下ITproからの転載。


パズドラ、「レアガチャ」的中確率を表示へ Apple審査基準改訂を受け
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1801/15/news117.html

ガンホー・オンライン・エンターテイメントは1月15日、スマートフォンゲーム「パズル&ドラゴンズ」の「レアガチャ」(ランダム型アイテム提供方式)で、入手できるモンスターごとの的中確率を近日中に表示すると発表した。米Appleの「App Store審査ガイドライン」改訂に伴い、対応するという。


リリースからすでに5周年を経て、未だ根強い人気を誇る人気スマホゲー「パズル&ドラゴンズ」が、ゲーム内で実装しているガチャにおいていよいよ的中確率表記に踏み切るそうです。しかも、その他の多くのゲームが採用しているレアリティ毎の確率表記ではなく、さらにそこから踏み込んだ「排出キャラクターごと」の確率表記まで行うとのこと。これは、2016年に社会問題として沸き上がったガチャ問題の煽りを受けて国内ゲーム業界団体が設けた業界自主規制の基準よりさらに厳しい確率表記の手法であります。

国内で長らく人気を保っているゲームタイトルながら、これまで一切のガチャ排出率表記を行ってこなかったパズドラが、ここに及んで急にその方針を転じたのには理由があります。それが、昨年末に世界を又にかけて勃発したルートボックス(海外版ガチャ)問題であります。本問題は昨年発売された大型ゲームタイトル「スターウォーズ:バトルフロント2」の極悪なルートボックス仕様への批判がキッカケとなって世界中に広がったものであり、私自身が昨年11月にYahoo!ニュース上でいち早くコラム化したことで、我が国でも大々的に報じらることになったものであります。


【参考】ガチャ=賭博?:世界同時多発的なガチャ規制論が勃発
https://news.yahoo.co.jp/byline/takashikiso/20171123-00078470/


このルートボックスに対する規制論は未だ現在進行形で世界各国を又にかけた論議が巻き起こっているわけですが、今回、いち早く対応に動いたのが米国のアップル社でありました。アップル社は昨年12月、同社が運営するiPhone上のアプリダウンロードサービスであるApp Store上でのアプリ承認規約を変更。ルートボックスやガチャなど、ランダム制で販売される有料アイテムには排出確率の表記が必要であるとの一文を加えました。実は我が国で使用されるiPhone上で流通するアプリも含めて、アップル社はその承認権を米国本社に統合しており、米国側でのアプリ規約の変更は日本のスマホ市場の約6割を握るiPhone上で流通するゲームそのものに直接影響を与えてしまうわけです。

このリスクに関しては、私自身がこのルートボックス問題をコラムで報じた直後の早い時期から明確に指摘してきたものであり、今回、私が明示してきたリスクが顕在化してしまったのが実情であります。以下、昨年11月25日の私自身のツイート。


一方で、ゲーム業界界隈から漏れ聞こえてきている情報によると、ゲーム業界では識者()として知られる某おヒゲの御仁が、上記のような私自身による初期報道に対して「海外で起こっている瑣末なニュースを煽り、日本のゲーム業界を攻撃している輩がいる」などと、某業界団体の年末の幹事会において私個人を名指しで壮大な批判を行ったなどという話も聞こえているところ。

私からしてみれば「世に起こっている様々な事象の中からリスクを抽出していち早く業界にお伝えすること」も専門家の仕事の一つであり、今回まさに私の指摘したリスクが早々に顕在化してしまったわけで、私に対する過去の私怨でむしろそのリスクが見えないほど目が曇ってしてしまっているのは貴方の方ではないですか?としか申し上げようがないわけです。


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闘会議2018、終了のお知らせ!?

闘会議の主催企業の一つGzブレイン代表の浜村弘一さんが、来年の闘会議にて始まる認定プロゲーマーによる高額賞金制大会に関して以下のような発言をしていらっしゃるのを見掛け、鼻水を噴きました。以下、日経トレンディからの転載。


eスポーツで、ゲームは「プロ野球」になれるか
Gzブレイン・浜村弘一社長に聞く

----AMDの先日の発表では、そうした法的な問題がクリアできそうだということでした(関連記事:デジタルメディア協会がeスポーツ大会の賞金を支援)。法律が変わったわけではないですよね?

浜村氏:  法律が変わるのを待つのではなく、法解釈で対処しようということです。例えば、ゴルフではウェアや用具のメーカーが賞金を出して大会を開いています。これは「プロ」という資格がきちんと認定されているからです。 

 ゴルフの一部の大会は、プロもアマチュアも参加できますが、アマチュアが優勝しても賞金はもらえません。プロはあらかじめ機材などをそろえて仕事として競技に挑んでいるので「賞金につられてスポンサーの賞品を買う」わけではない――そこを明確に区別することで、景品表示法の違反には当たらないことになるんです。 

 ゲームも同じように「プロ」宣言をすればよかったんですが、「プロ」と呼ぶ根拠がとても分かりにくく、公的に認められづらいものがありました。そこで、JOCへの加入を目指すeスポーツの団体を作り、技術があって、高度なパフォーマンスで観客を魅了できるプレーヤーにプロライセンスを与えようということになったんです


えっと…大変申し訳ないのですが超絶な間違いだらけなんですが、大丈夫なんでしょうか?

ゴルフの大会においてウェアや用具のメーカーが高額賞金を出してよいのは、プロ制度によって景表法の適用回避を行っているからではありません。ゴルフを含め、多くのスポーツコンテンツというのは、「特定メーカーのウェアや用具を購買すること」というのがそこで争われるゲームの勝敗に影響を与えません。だからこそ、そこに賞金を拠出することが景表法の規制する販促行為にあたらないと解されているワケです。

ゲーム業界の方々は、現在興隆の途にあるeスポーツをリアルのフィジカルスポーツになぞらえて語る事が多いのですが、eスポーツとその他スポーツとの最大の相違点は、ゴルフも含め多くのフィジカルスポーツが特定の事業者に権利が属さないパブリックコンテンツであるのに対して、eスポーツで争われるゲーム種はどこまで行っても究極的には「特定企業の販売する商品」でしかないという点にあります。ゴルフをするのに、もしくはその技術を磨くのに特定メーカー商品を購買することは必須ではないわけですが、多くのeスポーツ種はゲームに参加し、その技術を磨くにあたって商品購買やその他の課金が前提となっている。だからこそ、その大会にゲーム会社自身が賞金を拠出することが「販売促進になる」として景表法の規制対象と見なされているわけです。

一方で、私自身が昨年9月に消費者庁への法令適用確認を行ったことで、景表法上の規制が適用されないeスポーツ大会の形式が明示されました。その要件となるのが「free to play(基本プレイ無料)」のゲームであって、その課金様式がゲーム上の優劣に影響を与えないルールで行われるゲーム大会。すなわち消費者の購買行動とゲームでの勝敗が必ずしも紐づいていないと判断できるからこそ景表法の適用がなされないという理屈なのであって、むしろこれこそがゴルフ大会にスポーツ用品メーカーが高額賞金を拠出して良いのと同じ理屈であるわけです。

一方で浜村氏は上記インタビューで「プロ認定があるからこそ景表法を回避できる」などと主張をしているわけですが、ゴルフのプロアマ規定による「アマチュアによる賞金受け取りの禁止」は景表法を回避することを目的として定められているものではありません。以下、日本ゴルフ協会の定めるゴルフ規則からの転載。


3-1 賞金のためのプレー
3-1 a 通則
アマチュアゴルファーはマッチ、競技あるいはエキシビションで、賞金やそれと同等のものを目的にゴルフプレーをしてはならない。しかしながら、アマチュアゴルファーは参加前にそのイベントでの賞金を受け取る権利を放棄することを条件に、賞金または同等のものが提供されているゴルフマッチ、競技あるいはエキシビションに参加することができる。

[中略]

3-2 賞品の限度額
3-2 a 通 則
アマチュアゴルファーは、小売価格75,000円を超える賞品、あるいは統轄団体によって決められることがあるそれより小額の賞品(表象的賞品を除く)や賞品券または同等のものを受け取ってはならない。この限度額は、アマチュアゴルファーが1競技、または1つのシリーズ競技で受け取る賞品や賞品券の合計額に対し適用する。


もしこのゴルフのプロアマ規定が景表法を意識して作られているものである場合、賞金(現金)も賞品(物品)も関係なく「10万円を最高価額にして元商品の取引価格の20倍まで」というのが上限となります。ところが実際の規定では賞金は一切受け取ってはならないとする一方で、賞品に関しては小売価格75,000円までの受け取りを許している。もし浜村氏が主張しているようにこの規定が景表法を回避する為のものであるとするのならば、アマチュアゴルファーがこの最高価額の75,000円の賞品を貰う為には元取引としてその20分の1、すなわち3,750円分の取引がなければこの賞品拠出は「違法」ということになるわけです。

ところが日本ゴルフ協会の定めるプロアマ規定がそのように作られていないのは上で解説したとおり、そもそもゴルフを含め多くのスポーツ競技において用具メーカーが賞金拠出をすることそのものは景表法の規制範疇に入っていないから。すなわち、日本ゴルフ協会の定めるプロアマ規定は、景表法とは全く関係ないところで定められたものであるからに他なりません。

ていうか浜村氏の論がもし正しいのであるとすると、ゴルフと違ってプロ化していないスポーツ種であるにも関わらず用具メーカーが高額賞金を設定しているような大会、例えばバドミントンのヨネックスオープンなんかは違法であるってことになるわけですが、浜村氏はご自身が発言していることの意味が判っていらっしゃるのでしょうか?

実は浜村氏およびその周辺は、以前これとは全く違う法令回避スキームで多くの大手ゲームメーカーを巻き込んで一時は賞金総額で1億円を超えるようなイベントを開催したものの、その後、そのスキームに法令上の問題がある可能性が高いとされて多くのゲームメーカーを法令リスクに晒した実績があるわけですが(詳細はコチラ)、アレに懲りずにまたこんないい加減な事を言い始めるワケですね。

闘会議2018では、この浜村氏の主張する「プロ認定制度」なるものの元で賞金制のeスポーツ大会が行われるとのことですが、こんな適当な論拠でそれが実施されるのだとすると、私としては「みんな逃げて」としか申し上げようが御座いません。


続・ギャンブル場からの家族排除制度は本当に大丈夫か?

本エントリは昨日のエントリの続きです。未読の方はそちらからどうぞ(→リンク)。

本題に入る前に、まずもって私自身のスタンスを明確にしておくと、私はカジノ業の人間としてギャンブル依存対策を推進してきた立場であって、各関連業界でその対策が進むこと自体は喜ばしいことだと考えています。一方で、現在各業界で行われている対策論議があまりにも「おざなり」というか、カジノ合法化論議の流れの中で「やりなさい」と言われたから渋々やってます的な各所の対応に呆れているわけです。例えば、しんぶん赤旗が先週報じた以下の記事。


競馬場のATM銀行カードローン 野放し
廃止はクレジット会社のみ 「借金で馬券」歯止めかからず


今年8月のギャンブル等依存症対策推進閣僚会議において実施が明言されていた競馬場設置ATMのキャッシング機能の停止に関して、クレジットカード会社の提供するキャッシング機能は廃止したものの、銀行カードローンの融資機能はそのまま放置されていた、と。この辺の重箱のつつき方は流石赤旗(笑)というべきですが、JRAによるコメントがまた酷い。


JRA報道室の話 政府の関係閣僚会議の指摘はクレジットカードによるキャッシングサービスだけを問題にしており、銀行カードローンについては具体的に言及されていないことから、特段の手だてをとらなかった。今後どうするかは決めていない。


政府会議で指摘されていないので対処しませんでした、と。あの政府指針の本旨を鑑みれば、別にクレジットカードだけを問題視しているわけじゃないってことは判るでしょう。どこの子供の言い訳ですか(笑

そもそも公営競技業界は、ついこの間まで「公営競技には依存問題はない」などと公言してきており、IR推進法の成立と依存対策論議の高まりを受けてついに「これは逃げ切れん」と判断した以降、急に「実は私達も従前から依存対策はやっていまして(テヘペロ」とか言い出したのが象徴しているように、彼らは根源的にこの問題を「カジノのせいで…」としか思ってないわけで、その対処に非常に後ろ向きなわけです。

そしてその「言われたからやりました(言われた事しかやりません)」的ないい加減な取り組み姿勢の局地として現れたのが、昨日のエントリで述べた圧倒的な論議不足の家族排除制度の実施であるわけです。例えば、今回発表された中央競馬における家族排除プログラムに関して以下のような文書が政府会合の中で提出されているわけです。


家族申請によるネット投票の利用停止について
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gambling_addiction/kanjikai_dai4/siryou3.pdf

< 家族申請によるネット投票の利用停止の概要 >
1.対象となる会員
○ 医師からギャンブル障害の診断を受けている会員
○ 医師の診断は受けていないが、外形的にギャンブル障害の状況にあるお それがあると認められるものとして、ネット投票での勝馬投票券の購入 金額が、家計の経済状況等に照らして、本人と家族の生活維持に重要な 影響を及ぼしている蓋然性が高いと判断される会員 等

2.申請できる家族
○ 会員本人と同居している親族(6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族)


会員本人と同居している親族が申請主体となった場合「医師からギャンブル障害の診断を受けている」ことを客観基準として特定の顧客のネット馬券購買を排除するのは妥当でしょう。ところがJRAは医師の診断がない場合においても、「ネット投票での勝馬投票券の購入金額が、家計の経済状況等に照らして、本人と家族の生活維持に重要な 影響を及ぼしている蓋然性が高いと判断される」場合には排除対象とする方針を示しているわけです。

ただちょっと待ってください、と。公営競技の施行主体は文字通り、国(中央競馬)もしくは地方自治体(その他の公営競技)であるわけですが、家族からの申請を前提としているとはいえ、そういう公的主体が何らかの基準を設け、特定人物の経済状況を加味しながら能動的にその人物がギャンブルをするのに相応しいかどうかを判断するということですか? その基準というのは一体何なんでしょう?生活保護の受給ですか?裁判所による破産宣告ですか?それとも多重債務があるという事実ですか?それとも貸金業法の総量規制のように所得による上限でも定めますか?

…と、今回JRAは家族排除の文脈の中でこの施策の実施を発表していますが、実は現在、彼らが主張している施策の内容は単純な家族の申請に基づいて特定人物をギャンブルサービスから排除する「家族排除」だけではなく、公的主体が何らかの判断基準を設けた上で特定人物のギャンブル利用の可否を判断するという「第三者排除」の領域にまで半分踏み込んでしまっているわけです。各公営競技の所管官庁はこれを「事業者による契約の自由の範疇」だと主張していますが、JRAも含めて特に公営競技の施行主体は国および地方自治体なのであって、それは実質的に国や自治体がギャンブルをして良い人と悪い人を何らかの基準をもって選別するということに他ならないわけで、民間事業でいう所の「契約の自由」とは質的に全く異なる論議となるわけです。実はこの辺の話というのは、私自身はカジノ業界側で幾度となく行ってきています。

そして、今回発表された排除制度の最大の問題点は、これら施策を法令事項ではなく「運用」の中で決めようとしてしまっていることであります。実は国や自治体が何らかの基準をもって特定人物の公営競技への参加を防止しようとする施策は、2013年の兵庫県小野市による生活保護受給者の見守り条例など、幾つかの事例が存在します。


【参照】生活保護受給者にギャンブルする権利が有るか?
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/7750136.html


ただ先のエントリでも述べたとおり、この種の問題はその施策の拡充を求める社会的要請が存在する一方で、全ての国民に保証される基本的人権(経済的自由権)との兼ね合いが確実に存在する分野です。このような多層的な論議が必要な施策を政府が主導し、特に公営競技においては施行主体が必然的に国および地方自治体にならざるを得ない中で、法令上の根拠を求めず運用だけでこれら施策が実施される。このような施策の進め方は、かねてより排除制度の推進派として動いてきた私ですら「ちょっと怖いな」と思ってしまうのが正直なところ。

この辺りは、おそらく来年の通常国会で始まるギャンブル等依存症対策基本法の審議の中で、それこそ共産党あたりがヒステリックに突っ込んでくる案件になるのは予想に難くないワケですが、そういったある意味で「常識的な」施策遂行の判断すらも出来なくなってしまっている各関係省庁における現行の依存対策には、個人的に本当に残念で仕方がありません。

ギャンブル場からの家族排除制度は本当に大丈夫か?

以下、ロイターからの転載。


家族申告でネット馬券の販売停止
https://jp.reuters.com/article/idJP2017122401001589

日本中央競馬会(JRA)がギャンブル依存症対策の一環として、家族からの申告に基づき、インターネットでの競馬の投票券販売を停止する制度を28日に導入することが分かった。依存症の診断を受けたか、疑いがある人が対象となる。カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)導入に備え対策強化を進める政府方針を踏まえた。来年4月には競輪やオートレース、ボートレースへ対象が広がる予定だ。


このように、ギャンブル依存の診断を受けた、もしくはその疑いのある人を対象として特定のギャンブルサービスへのアクセスを遮断する制度は「排除プログラム(Exclusion Program)」と呼ばれ、世界の多くのカジノを合法とする国や地域で採用されているもの。本制度はギャンブル依存状態になった人に対する実効性のある施策のひとつとして、多くの国や地域での採用が広がっています。

我が国におけるカジノ合法化論議に際しても、当初のころからこの排除プログラムの採用は主張されており、私も長らくこれを推進してきた立場であります。一方で、家族とは言えども今回のような本人の同意を得ずして他人のギャンブル制限を行う制度の採用に関しては「慎重な論議を要する」と主張してきただけに、カジノ合法化論議の煽りを受けて競馬業界がこんなペロッと簡単に制度の採用を決めてしまった事には衝撃を受けざるを得ません。ホントに大丈夫なのでしょうか?

諸外国で採用されている排除プログラムの内容には、実は大きく分類して3つの方式があります。一つ目が依存者自身の申告に基づいて行われる自己排除制度、二つ目が依存者の近親者の申告に基づき本人の同意なく行われる家族排除制度、そして三つ目が生活保護受給者など公的に定められた一定の基準にあてはまる人物を自動的に排除対象とする第三者排除制度です。この3つの制度、実は各国によってその運用はまちまちで、必ずしも全て国や地域が全ての排除制度を採用しているわけでは有りません。というか実は殆どのくには自己排除が中心で、家族排除までを採用している地域はそれほど多くなく、第三者排除に至ってはごく限られた国や地域のみの採用となっているのが実態です。

なぜ、家族排除や第三者排除が難しいかというと、一方で存在する基本的人権とのからみです。日本のみならず、多くの自由主義圏の国々では国民の基本的人権のひとつとして経済的自由権が保障されています。それが例え他人から見てバカバカしいと思えるような行為であっても、自身が保有する財産をどのように使用するかを決める自由というのは全ての国民に保証されている権利であって、ギャンブルをする行為というのはまさにそのような経済的自由であるわけです。

この万人に認められる経済的自由権を前提に考えた時、ギャンブル施設からの排除制度の難しさが見えてきます。排除制度のうち、自己排除制度に関しては自己の財産上の使用制限を本人が申請するわけですから、その同意に基づいてギャンブル施設の利用制限をかけること自体にはそれほど大きな論議は出てこないでしょう。一方、その申請を本人の同意を得ないまま家族がする場合はどうでしょうか?

例え家族であろうとも、法律上はあくまで別人格を保有する第三者です。申請者と被排除者の関係が法律上の親権者や扶養義務者である場合には、当該人物に対して一定の権利制限を行うこともありうるかもしれませんが、それ以外の場合、果たして家族といえども第三者が他人の経済的自由権を阻害する権利を保有しうるのでしょうか?またそれが法律上の親族者であったとしても、申請者と被排除者の間の家族関係は、既に婚姻が破綻していたり、親族の縁が切れていたりと実態として既に存在していないかもしれません。はたまたギャンブル依存とは関係のないところで、例えば親族がギャンブルを禁ずる特定の宗教にハマリ、本人はおろか自己の家族の行為までもを制限しようとした場合、どのように対処するのでしょうか?

また、これが第三者排除となった場合には更なる論点が発生します。実は我が国では、ここでいうところの第三者排除制度に近い制度採用を試みた自治体が全国で既に何件か存在します。しかし、その際に必ず出てくる論議が「生活保護受給者のギャンブル行為は最低限度の文化的生活に必要か?」という大命題であり、実はこの点に関しては未だ明確な答は出ていません。


【参照】ギャンブルは「最低限度の文化的生活」に必要か?http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/9154523.html


「かといって放置の出来ない精神疾病だろ」という論議がそこにあるのも事実です。例えば、精神保健福祉法はその第33条において、当該人物が診察を受けた精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させる必要があると認めたときには、精神科病院の管理者がその者を強制的に入院させる事ができる「医療保護入院」という制度を持っています。これは該当する人物の自傷や他傷を防止するために必要な措置として、全ての国民が持つ基本的人権のひとつ、「身体の自由」を阻害することを認める制度でありますが、一方でこの医療保護入院を決定する際には以下のことを求めています。


(医療保護入院)
第三十三条 精神科病院の管理者は、次に掲げる者について、その家族等のうちいずれかの者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。
一 指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であつて当該精神障害のために第二十条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの
二 第三十四条第一項の規定により移送された者
2 前項の「家族等」とは、当該精神障害者の配偶者、親権を行う者、扶養義務者及び後見人又は保佐人をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者を除く。
一 行方の知れない者
二 当該精神障害者に対して訴訟をしている者、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
三 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
四 成年被後見人又は被保佐人
五 未成年者
3 精神科病院の管理者は、第一項第一号に掲げる者について、その家族等(前項に規定する家族等をいう。以下同じ。)がない場合又はその家族等の全員がその意思を表示することができない場合において、その者の居住地(居住地がないか、又は明らかでないときは、その者の現在地。第四十五条第一項を除き、以下同じ。)を管轄する市町村長(特別区の長を含む。以下同じ。)の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。第三十四条第二項の規定により移送された者について、その者の居住地を管轄する市町村長の同意があるときも、同様とする。
4 第一項又は前項に規定する場合において、精神科病院(厚生労働省令で定める基準に適合すると都道府県知事が認めるものに限る。)の管理者は、緊急その他やむを得ない理由があるときは、指定医に代えて特定医師に診察を行わせることができる。この場合において、診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であつて当該精神障害のために第二十条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたときは、第一項又は前項の規定にかかわらず、本人の同意がなくても、十二時間を限り、その者を入院させることができる。
5 第十九条の四の二の規定は、前項の規定により診察を行つた場合について準用する。この場合において、同条中「指定医は、前条第一項」とあるのは「第二十一条第四項に規定する特定医師は、第三十三条第四項」と、「当該指定医」とあるのは「当該特定医師」と読み替えるものとする。
6 精神科病院の管理者は、第四項後段の規定による措置を採つたときは、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、当該措置に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。
7 精神科病院の管理者は、第一項、第三項又は第四項後段の規定による措置を採つたときは、十日以内に、その者の症状その他厚生労働省令で定める事項を当該入院について同意をした者の同意書を添え、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に届け出なければならない。


例えそれが病気を前提にし自傷他傷から守るためであるとはいえ、他者の基本的人権を制限するというのはここまでしち面倒臭い手続きを経ることが必要である、かつ医師の診断がない場合においては例えそれが如何に家族による申請であっても侵害され得ないのが基本的人権であるわけです。一方で、ギャンブル依存の世界では、その他の精神疾病と異なり精神科病院以外の民間支援組織が無手勝流で当該人物の「ギャンブル依存」を認定してしまったりだとか、実は込み入った問題が様々な存在しているわけで、さて今回、中央競馬が大した国民的な論議を経ずしてペロッと家族排除の採用を決定してしまいましたが「本当に大丈夫なのですか?」と改めて問う必要があるわけです。


「遊び方改革」は「働き方改革」と表裏一体

さて昨日、BS日テレで毎週月~金22時から放送の深層ニュースにナイトタイムエコノミー議連会長の河村建夫議員とともに出演し、我が国のナイトタイムエコノミー振興についてお話をさせた頂きました。放送内容は期間限定で以下のリンク先からご覧いただけます。


夜遊びが日本経済を救う!?
http://www.news24.jp/articles/2017/12/19/06380851.html

みなさん、「夜遊び」してますか! いま、「夜遊び」が経済の起爆剤になると世界で注目されています。 海外の成功例を受けて、日本でも夜の経済活動を活性化させることで、街や経済を元気にしようという動きが。しかし、夜間に公共交通機関がなくなる日本で「夜遊び」は広まるのか。 課題、リスクは? 専門家と掘り下げます!


実はここのところナイトタイムエコノミー関連の取材や出演依頼がテレビ、雑誌共にもの凄く増えておりまして、それぞれに対応していて改めて思うことは日本人の「遊び方の改革」は、一方で現在論議されている日本人の「働き方の改革」と表裏一体の論議なんだなぁ、ということであります。

日本語では「夜遊び経済」などとも訳されるナイトタイムエコノミーの振興は、基本的に日本の経済を活性化しましょうというポジティブな文脈の話であるわけですが、この分野の振興を語ると必ず出てくるのが「我々サラリーマンには遊ぶ時間がない」「若者には遊ぶ金がない」というネガティブ論であるわけです。

正直、夜の産業側に居る人達からすれば、まずは遊ぶ金と暇のある人からだけでも積極的に夜の街に出て来て頂ければ、それが各産業側に利益をもたらし、次なる「遊ぶ余裕のある人達を生む」わけで、まずはその「取っ掛かり」を作ってくださいというだけの話なんですが、大多数の人達にとっては「自分が遊ぶ暇も金もないのに何が『夜遊び』振興だ」という感情にしかならないわけです。実はこの辺が、現在行われている我が国のナイトタイムエコノミー振興論が「外国人観光客」を主語とした論調にならざるを得ない一つの理由であって、「日本人」を主語としてこの振興を語り始めた途端に批判の嵐になるというのは、我が国のナイトタイムエコノミー振興の悲しい現実であるともいえます。

結局、この話というのは現在、政府が積極的に進めている仕事の無駄を廃し、労働生産性を上げ、労働者賃金を上げてゆくという「働き方」側の改革とセットでしかなかなか社会浸透してゆかないわけで、我々のようなナイトタイムエコノミーの振興を訴える側の立場に居る人間ももう少しそちら側の論調を強めてゆかないと、なかなか社会の合意を得るところまでは行かないんだろうなぁ、とそんなことを最近増えている取材等を受けながらツラツラと考えている次第です。

とういことで、この辺の話題にご興味のある方は以下のリンク先から録画配信をご覧頂ければ幸いです。


夜遊びが日本経済を救う!?

著者プロフィール


木曽 崇(キソタカシ)

国際カジノ研究所 所長
エンタテインメントビジネス総合研究所 客員研究員

経歴:
日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長に就任。

2014年よりアジア圏最大のカジノ国際会議&展示会であるGlobal Gaming Expo Asiaのアドバイザリーボード委員を務める。

より詳細なプロフィール

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