各ギャンブル等産業、依存対策比較

さて、先月政府・IR推進会議から「「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光先進国」の実現に向けて~」」、そして同じく政府・ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議から「ギャンブル等依存症対策の強化について」と題された2つの文書が公表されました。この両文書の公表により、今後、数年で我が国に整備される各ギャンブル等産業いおける依存対策の概要が見えてくることになりました。以下、数回に亘ってそれら各ギャンブル等産業における依存対策に関して比較・分析を行ってゆきたいと思います。

例えば、これから予定されている我が国のカジノ施設に対して、IR推進会議は依存対策として現在以下のようなプレイヤーの入場規制を敷くことを主張しています。


マイナンバーカードを活用した本人確認措置
カジノ施設への入場者について、マイナンバーカードを用いて本人確認を行うこととすべきである。

入場料の賦課等
外国人旅行客以外の者に対して、1日(24時間)単位で入場料を課すこととすべきである。また、その水準については、安易な入場抑止を図りつつ、日本人利用客等に過剰な負担とならないよう、金額を定めるべきである。なお、使途は一般財源として公益目的に用いることとすべきである。

入場回数の制限
カジノ施設への入場回数制限については、一ヶ月程度の長期間における回数制限と、一週間程度の短期間における回数制限を組み合わせて設けるべきであり、具体的な制限値については、諸外国の例も踏まえ検討すべきである。また、入場回数については24時間以内を「1回」と数えることとすべきである。


マイナンバーカードで客の入退場データを管理した上で、入場料を課し、更にそこに一定期間内における入場回数制限をかける。これが、カジノ側で想定されている入退場規制であります。この入場料の賦課の理由に関してIR推進会議は:


依存症対策としての入場料の効果についての科学的知見は必ずしも確立されていない。しかしながら、入場料を賦課することにより、
・入場料を徴収する際に、入場回数制限のための本人確認を確実に行えること
・カジノ施設への安易な入場を抑止できること
といった制度的なメリットがあることから、カジノ施設への入場者に対し、入場料を賦課することとすべきである。


上記のような主張を行っているところ。更に、入場回数の制限に関してIR推進会議は:


・カジノ施設への入場に当たって本人確認を厳格に行うことにより、入場回数は客観的に把握できる指標であること
・一般論として入場回数が多くなるにつれて、依存が進むリスクが大きくなると考えられること
・諸外国でも入場回数制限の導入例があること
から、カジノ施設へのアクセスが比較的容易である日本人及び国内居住の外国人に対して入場回数制限を設け、常態的にカジノ施設に入場できる環境をつくらないことが適切である。


との主張を行っています。では一方で示されている、もしくは現状で採用されているカジノ以外でのギャンブル等産業における入場規制は以下のとおり。

入場規制


このように並べてみると、カジノ業界に採用される予定の入退場規制が総じて最も厳しいことが判るのワケですが、例えば公営競技に関しては入場料が競技ごと、施行者ごとに異なっており、入場無料の施設から200円程度の徴収がおこなわれる施設まで様々です。また、パチンコ店においては入場料は一切取られていない、というよりも現在の風営法およびその施行規則の規定により入場料を取ることは出来ないこととなっています。

一方、入場回数制限に関して、公営競技は各論拠法に基づいて施行者ごとに開催日数の上限が定められており、これが便宜上、入場回数の制限と類似する効力を発していると考えられます。しかし、ネット投票等が既に主流になっている現在の業界では、常に全国のどこかでレースが開催されているのが実情であり、施行者ごとの開催日数に上限を設けたところで利用者自体の賭け行為自体の頻度を制限するものになっていないというのが実態です。一方で、パチンコに関しては当然ながら現在、入場回数の制限は行われていません。

カジノ側で入場回数を制限する論拠となっている:


・カジノ施設への入場に当たって本人確認を厳格に行うことにより、入場回数は客観的に把握できる指標であること
・一般論として入場回数が多くなるにつれて、依存が進むリスクが大きくなると考えられること


という主張はカジノ以外のギャンブル等産業にも同様にあてはまる理屈であるわけで、他産業でも当然ながら施設の利用回数制限に上限を設ける施策の検討が行われる必要があります。その上で、その施策を採用する必要がないという結論に至るのだとすれば「なぜ必要がないのか」をシッカリとご説明いただく必要が出てくるものと思うところです。


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日本版カジノではパチンコの提供を認めるべきではない?

我が国のカジノ法制論議の中では従前より、日本のカジノ施設の中でパチンコ、パチスロを認めることは制度上の混乱を招き、好ましくないとする論が存在してきました。このような従前からある主張を受けてでしょうが、先日政府のIR推進会議から発表された提言書の中には以下のような記述がありました。


・パチンコやパチスロのような風俗営業適正化法の「遊技」として認められているものをカジノ施設内で導入するのは、適切ではない。
(出所:特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光先進国」の実現に向けて~)


いや、日本のカジノの中でパチンコを認めるべきではないというのは私自身も同意なんですが、何なんでしょうこのザックリとした雑な公文書は。とても日本の法と制度を担う官僚の方々が書いた文言とは思えません。

風営法上の「遊技」は第二条第一項において以下のような形で登場します。


四  まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業
五  スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く。)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)


我々業界人は、パチンコ業界を指して俗に「遊技業」と呼称することが多いのですが、実は正確に言えば法律上はパチンコ店に代表される4号営業も、ゲームセンターに代表される5号営業も共に「遊技をさせる営業」であり、提供されるゲーム種がそれぞれ

4号:客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業
5号:本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるものを備える店舗その他これに類する区画された施設において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業

と区分されているだけなんですね。更にいえば、この風営法の規定を更に詳細に定義した風営法施行規則の中には以下のような記述があります。


(国家公安委員会規則で定める遊技設備)
第三条  法第二条第一項第五号 の国家公安委員会規則で定める遊技設備は、次に掲げるとおりとする。
一  スロットマシンその他遊技の結果がメダルその他これに類する物の数量により表示される構造を有する遊技設備
二  テレビゲーム機(勝敗を争うことを目的とする遊技をさせる機能を有するもの又は遊技の結果が数字、文字その他の記号によりブラウン管、液晶等の表示装置上に表示される機能を有するものに限るものとし、射幸心をそそるおそれがある遊技の用に供されないことが明らかであるものを除く。)
三  フリッパーゲーム機
四  前三号に掲げるもののほか、遊技の結果が数字、文字その他の記号又は物品により表示される遊技の用に供する遊技設備(人の身体の力を表示する遊技の用に供するものその他射幸心をそそるおそれがある遊技の用に供されないことが明らかであるものを除く。)
五  ルーレット台、トランプ及びトランプ台その他ルーレット遊技又はトランプ遊技に類する遊技の用に供する遊技設備


これは五号営業(=ゲームセンター等)で提供される遊技設備に対する補足説明ですが、その中には「ルーレット台、トランプ及びトランプ台その他ルーレット遊技又はトランプ遊技に類する遊技の用に供する遊技設備」という明記があります。皆さんもご承知のとおり、我が国では賭けを伴わないアミューズメントカジノという業態が従前より存在していますが、上記の風営法施行規則に基づいてこれらアミューズメントカジノはゲームセンターと同様の分類の中で規制を受けています。

さて、ここで改めて冒頭でご紹介した、IR推進会議の提言書に記載された記述を振り返って見ましょう。


パチンコやパチスロのような風俗営業適正化法の「遊技」として認められているものをカジノ施設内で導入するのは、適切ではない。


「パチンコやパチスロのような」という例示はありますが、ここで記載されている「風俗営業適正化法の遊技として認められているもの」というのは、ゲームセンターで提供されている「ルーレット台、トランプ及びトランプ台その他ルーレット遊技又はトランプ遊技に類する遊技の用に供する遊技設備」、すなわちカジノゲームまでもを含む広範な概念です。

だとすると、この記述は「日本のカジノ施設内において、カジノゲームを導入することは適切ではない」の意をも含む記述となってしまっており、私としては「カジノでカジノゲームを導入することがダメなら、一体何を提供させるつもりなのでしょうかね?皆に賭けボーリングでもやらせましょうか(棒」としか申し上げ様のない状態であります。世にも珍妙な「日本版カジノ」誕生の瞬間であります。

ということで、IR推進本部事務局の皆様におかれましては、本記載内容の「意図」がどういうものであるのかを改めて明確にして頂いた上で、上記の記述を直ちに変更して頂いた方が宜しいかと思われます。非常に恥ずかしいことになっていますよ。

行政に政治が歪められた日本版カジノ法制案②

さて昨日のエントリにおいては、現在、政府から示されているカジノ法制案は「カジノに関する規制を行う機関は既存の行政機関から独立した新たな行政機関で実施することが適切」としてきた政治的意思を無視したものであると言及しました。(まだ昨日のエントリをご覧になってない方は、こちらからどうぞ→リンク

ただ、実は私自身は官僚側が発している「観光振興を所掌する国土交通大臣が主務大臣となることが望ましい。国交省内にカジノ統制機能を作るべきだ」としている主張は、大変良く理解できるのですよ。なぜならば、私自身はそもそもIR議連が長らく主張してきた内閣府にカジノ統制機能を持たせるという案に反対し、既存の公営競技の統制方式に倣って国交省、ないしはその外局の観光庁あたりが所管すべきだということを長らく主張してきた論者だからです。

ただね、残念ながら論議はもうそういう「どこが所管するのが理想か?」といったような「べき論」ではなくなっているのですよ。我が国では既に昨年末に

カジノ管理委員会は、別に法律で定めるところにより、内閣府に外局として置かれるものとし、カジノ施設の設置及び運営に関する秩序の維持及び安全の確保を図るため、カジノ施設関係者に対する規制を行うものとする。(法第11条)

という規定を定めるIR推進法が成立してしまっているわけです。すなわち、政治側は既に「カジノに関する規制を行う機関は既存の行政機関から独立した新たな行政機関で実施することが適切である」とする政治的意思を確定してしまっているわけで、それをいわゆる霞ヶ関文学を駆使してあからさまにひっくり返すとするのなら、それは「行政が政治を歪めてる」以外のナニモノでもないわけです。

そして何よりもオカシナ事になっているのが、今回、政府にカジノ法制案を提示したIR推進会議、特にその委員として鎮座している美原融氏(@大阪商業大学)です。そもそも、IR議連を中心として形成された「日本のカジノは既存の行政機関から独立した新たな組織が統制すべし」という論調を牽引してきたのは美原融氏その人なのであって、その原案となる制度案を作ったのも彼。そこと延々と論争してき私としては「貴方が一番、IR推進法第11条の立法趣旨は理解しているでしょ」と言いたし、私自身も彼らがどういう理念的背景をもってあの第11条を定めたかは重々承知しています。

ところが今、その彼が今度はIR推進会議の委員として、IR推進法第11条の立法趣旨を全く違えた制度案を政府に向かって提言しているわけで、これを茶番と言わずしてなんと言うか、としか言いようがありません。

私自身はIR議連の提示してきた制度案に対しては様々な不備を指摘してきた立場であり、「あの制度案」に縛られる必要は全くなく、政府は改めて必要な論議を行うべきという立場です。但し、それは「未だ法に定まっていない範囲において」の論議です。

残念ながらIR推進法は昨年末に既に成立してしまっおり、その中にIR議連が従前より示してきた幾つかの制度案が既に法定化されています。もしそこに不満があるとしても、それらの点に関しては既に政治の意思は定まっているわけですから、その立法趣旨を無視して論議を根底から引っくり返すというのは幾らなんでもオカシイ。

官僚の皆さん(特に国交省)はIR推進法の制定過程には一切関与しない(意見もしない)というスタンスをずっと維持してここまで来て、その結果、あのような推進法が成立してしまったわけで、私としては「気持ちは判るが、そこはグッと堪えて自重しろ」としか申し上げようがないわけです。

行政に政治が歪められた日本版カジノ法制案

さて、昨日のエントリでは政府より示された日本版カジノ法制案についてマーケットの観点から問題になる点をご紹介したわけですが、本日は本法制案における最大の失笑ポイントについてご紹介したいと思います。昨年12月に成立したIR推進法では、我が国において成立するカジノを統制する機関に関して、以下のような規定を持っています。


カジノ管理委員会は、別に法律で定めるところにより、内閣府に外局として置かれるものとし、カジノ施設の設置及び運営に関する秩序の維持及び安全の確保を図るため、カジノ施設関係者に対する規制を行うものとする。(法第11条)


公営競技や宝くじなど我が国における既存の賭博業は、競馬は農水省、ボートは国交省、競輪とオートは経産省、宝くじは総務省、スポーツくじは文科省と、それぞれ単独の省庁の所管として管理監督されるのが慣例でありました。ところが、上記IR推進法の定めでは内閣府の外局に独立性の高い組織としてカジノ管理委員会を組成するとの点が明記されています。この規定に関する意図は、実は本法案提案者となった議員から以下のような説明がなされています。


平成28年12月02日衆院内閣委員会
西村(康)議員:
まず私から、三条委員会にすべきではないかという点についてお答えを申し上げたいと思います。全く御指摘のとおり、カジノに関する規制を行う機関としては、監督、規制を適切に実施するため、既存の行政機関から独立した新たな行政機関で実施することが適切であり、御指摘のとおりだというふうに考えております。


上記は議員立法としてIR推進法を国会に上程したIR議連の事務局長、西村議員による委員会答弁の内容ですが、「カジノに関する規制を行う機関としては、監督、規制を適切に実施するため、既存の行政機関から独立した新たな行政機関で実施することが適切」というのが、カジノ統制に関する政治側の意思でありました。

ではこのようなIR推進法の規定を受けて、今回、政府から示された実際のカジノ法制案において、上記のような政治的意思がどのように反映されたかをハイライトでご紹介しましょう。


以下、特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ(案)の関連部分を筆者が要約

1. IR推進法に示されたとおり、内閣府にカジノ管理委員会を設置します。
2. これは法案提案者が委員会答弁にて示したとおり既存の行政機関から独立した行政機関です。
3. ただ、我が国のカジノ導入は観光振興が主目的ですから、主務大臣はそもそも想定されていた内閣総理大臣(内閣府の長)ではなくて、観光政策を統制する国土交通大臣にさせて頂きますね。
4. ついては施設区域や事業者の認定など主だった政策的機能は内閣府から国土交通省に移管します。
5. 当然のことですが国交省は主務官庁として事業者や自治体に対する継続的な監督権限を持ちますし、免許剥奪まで含んだ制裁権限も頂きます。
6. あ、でも一応、念のため確認しておきますが、議員の皆さんからご指示を受けた通りカジノ管理委員会は既存の行政機関から独立していますからね。「カジノ管理委員会は」ね。


つい最近、加計問題で時の人となった前川・元文部科学次官が発した「政治に行政が歪められた」というセリフが一世を風靡しましたが、今回のカジノ法制案においては「行政に政治が歪められた」と言わずして、なんと評すべきでしょうか。

日本版カジノ法制、市場を狭める3つの規制案

さて、政府IR推進会議から我が国の統合型リゾート導入、およびカジノ合法化に関する制度案が示されたということで、色々な物議をかもしています。


カジノ業界、政府案に失望=「投資額は半減」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017073100883&g=eco

政府が31日まとめたカジノを含む統合型リゾート(IR)の規制案に対し、カジノ業界は失望感をあらわにしている。特にカジノ区域の面積に上限を設ける規制に不満が集中。一つのIR施設で最大1兆円規模との試算もあった投資額は「5000億円に引き下げざるを得ない」との声も上がっている。



肝心の投資を担う事業者側からは特に政府が方針を掲げたシンガポールの規制を念頭において15000平米を基準とするカジノフロア面積上限案について不満が集中しており、投資額が大幅減額せざるを得ない、とのことです。IR推進会議が今回示した制度案に関しては、正直、様々な問題点が含まれているのですが、今回あえて市場形成の観点から問題点を指摘すれば、大きくは前出の面積上限を含めて3つの論点が存在するといえるでしょう。

1)カジノフロアの面積上限
この点に関しては、政府側から面積上限を設けたいとする意見が示された6月の時点で、私はその影響を指摘しています。

日本版カジノ施設の面積規制についての考察②
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/9593486.html

詳細は上記リンク先のエントリをご覧頂ければと思いますが「収益性の高いカジノで、収益性の低いその他施設を補完する」という統合型リゾートのビジネスモデルにおいて、その収益源たるカジノに面積上限を設けるということは、そのままイコールでその他施設の開発、ひいては全体の施設投資規模を制限することに他なりません。

この規制は、現時点でIR誘致を表明している自治体の中では、特に大阪(夢洲)のような相対的に大きな民間投資の誘引を期待して広いIR開発用地を既に設定している(設定してしまっている)自治体にとっては影響が甚大で、今後の自治体側の地域施策全体に大きな支障を与えてゆくことと思われます。

2)マイナンバーカードを活用した本人確認
日本のカジノにおいては、依存防止対策の為に様々な入場制限措置の導入が検討されているワケですが、その入場制限の為に政府はマイナンバーカードの利用を掲げています。ただ、マイナンバーカードの普及率は現在たったの9%であり、正直、普及していないカードを前提とした入場制限措置なぞというのは、市場側から見ると「あり得ない」制度設計であるとしか言いようがなく、当然ながらそこに対する事業投資は極小化します。

勿論、我が国に存在するIDのなかでマイナンバーカードが身元の確認にあたって最も「確実」なIDであることは当たり前ではあるのですが、それを前提としてマーケットの中で利用するのであれば、まずは政府側がその普及に対して責任を持つのが当たり前のこと。そのあたりの責任に言及しないまま、この制度をゴリ押しするのは政府側の責任放棄であるといっても良いでしょう。

また、最も懸念されるのが、他のギャンブル等業界への影響です。現在、カジノと同様に公営競技やパチンコ業などにおいても、様々な入場制限措置の実施が検討をされているわけですが、カジノ側でマイナンバーカードを前提とした制度を敷くとなれば、当然ながらその他のギャンブル等業界においてもそれが念頭に置かれた論議となります。カジノにおいては究極的には「マイナンバーカードを前提とするのなら事業者は投資を控える」だけで済む話ではあるのですが、既に産業が存立し様々な事業活動が現在進行形で動いている業種にとって、このような施策をあてられることは死活問題となります。

この点に関しては、「広く国民に普及した先にマイナンバーカードの利用を前提とする」ことを目指すのは全く異論はないものの、普及がなされるまでの経過措置を検討せざるを得ないものと思われます。

3)入場料の賦課
入場料に関しては、我が国において「シンガポールに倣って日本のカジノでも入場料を賦課すべき」という論が形成され始めた2010年の時点から私自身が繰り返し何度も述べてきたことでありますが(参照)、入場料を賦課することがギャンブル依存対策に有用であるとする科学的根拠は世の中にはなく、寧ろマイナスの影響すら与えてしまう可能性のあるリスクのある施策であります。

この様に入場料賦課が依存に対しての効果が未知である施策である一方で、その施策は確実にマーケットに対してはマイナスの施策であり、入場料が高額になればなるほど日本で予測される正常な需要が寧ろ制限され、そこに対する事業者の投資意欲も急激に減退してゆくこととなります。ハッキリ言ってしまえば入場料は「愚策中の愚作」の施策であると言ってよいと思います。

最近ではやっと、私がこれまで延々と主張してきた論が理解され、入場料賦課に対する反対論が形成されつつありますが、国会審議の中でも「シンガポール並みの入場料を取ります」と法案提案側の議員から宣言されてしまったこの入場料の「取り扱い」を今後どのように処理してゆくのか。その辺りも、日本のカジノ市場の潜在性、およびそこに対する民間投資額を規定する重要な要素になってゆくものと思われます。

以上、とりいそぎマーケットサイドの視点から現在示されている政府案に対してコメントをしました。その他にも山積する論点に関しては、今後、順をおってご紹介してゆきたいと思います。

著者プロフィール


木曽 崇(キソタカシ)

国際カジノ研究所 所長
エンタテインメントビジネス総合研究所 客員研究員

経歴:
日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長に就任。

2014年よりアジア圏最大のカジノ国際会議&展示会であるGlobal Gaming Expo Asiaのアドバイザリーボード委員を務める。

より詳細なプロフィール

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