本日より改正風営法の施行、警察の次なるアクションは?

さて、本ブログでもこれまで様々な検討を続けてきた、ダンスクラブを含む「酒/遊興」を提供しながら深夜営業を行う業種「特定遊興飲食店」を新設した改正風営法が本日より施行です。参考までに、以下は本法の成立が確実となった昨年6月に書いた記事。


改正風営法が成立の見込みとなりました
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/8859369.html

本改正案の成立にあたって行われた衆参の委員会審議においては、特に風営法上の「遊興」の解釈をめぐって本法を起案した警察庁とそれを審議する国会議員の間で激しい論戦が行われ、その結果、見えて来たもの、依然として見えないものがハッキリとしてきました。以下では、委員会質疑の中で行われた警察庁担当局長の答弁内容を元に、それらについて少しまとめます[…]
 

ということで、業界内は何やら「お祝いムード」であるわけですが、本当に業界として懸念をしなければならないのは、本法の施行によって本当に違法営業がなくなるのかと、もしなくならないのだとすると警察はどのタイミングでそのような違法業者の摘発に踏み込むかという点です。

①今回の規制緩和は全ての営業者に恩恵を与えない

今回の改正風営法における特定遊興飲食店規制の建て付けは、改正法によって権限移管された都道府県条例が改めて特定遊興飲食店営業の許可対象エリアを定め、そのエリア内で限定的に深夜営業を認めてゆこうとするもの。全国都道府県議会では、昨年の法改正を受けてこの一年の間に新条例制定が行われたワケですが、実態として新たに特定遊興飲食店の営業許可対象として指定されたエリアは、都市部繁華街と一部の臨海地域に限定されており、その指定から外れてしまった営業者が五万といるわけです。

今回の法改正は、本来は法で禁じられているはずの深夜営業を続けてきた業者に対して、一種の救済措置的に新法を制定して、許可営業への速やかな移行を促すものであるわけで、理屈的には今回の法施行を境に全ての業者は(店舗移転も含めて)許可営業に移る、深夜営業を取りやめるなど、いずれかの営業改善を選択しなければならないワケですが、本当にこれまで五万と存在してきたそういう業者たちがそのどちらかに移行するのか? 正直、新たな改正法の元で改めて違法な営業を行う業者が続出するであろうことは想像に難くないワケで、そうなってくると元の木阿弥じゃないですか?という話になります。

 ②警察はどのタイミングでそのような新たな違法営業者の摘発に踏み込むのか?

そもそも、これまで長らく違法営業を続けてきた業者に対して救済措置的な法改正が行われることとなった背景には、風営法がダンスクラブを規制対象とすることとなった1984年改正以降、適切な業界指導が行われることなく「全国の殆どすべての業者が違法営業を行ってしまっている状態を生み出してしまった」という監督官庁としての警察庁の不作為がありました。

と、するのならば警察庁としては今回の改正風営法の施行にあたって、1984年の時と同じ状況を繰り返すわけにはいかないワケで、どこかの適切なタイミングで新法下の適正営業を行っていない業者に対しての指導→従わない場合には摘発というプロセスを踏まざるを得ない。それがどのタイミングかつ、どの程度の「強度」をもって実施されるのかが、業界的には現実的かつ、最大の関心事となるわけです。

逆に、これまで法改正を呼びかけてきた業界組織などは、それを推進してきた側の立場として、改めて今度は新法の元での遵法営業を業界内で呼びかける責任ある姿勢が求められる。改正法施行当日の今日は「お祭りムード」であるのは仕方がないとしても、今後は自らの責任を自覚した上で、現実的に起こり得る警察側の「次のアクション」に備えなければいけませんね。



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本当に「稼げるスポーツ施設」を目指すなら大歓迎ですが…

日刊建設新聞で興味深い記事が報じられています。


政府/公共スポーツ施設を「稼げる施設」に/16年内に整備指針、設計段階で助言も
http://www.decn.co.jp/?p=70768

政府は、地方自治体が所有・運営する大規模集客型の公共スポーツ施設を官民連携で「稼げる施設」へと変革させる。プロ野球やサッカーJリーグのように1回の試合開催だけで最大数万人規模の観客を呼び込めるポテンシャルに着目。年末までに、スポーツ以外でも利用できる機能の多様化や鉄道駅に近い立地を誘導する施設整備の指針をまとめる。17年度からは設計段階から国が直接助言を行えるような仕組みも導入する方向だ。
 

スポーツ施設で「稼ぐ」というのは、いわゆるスポーツツーリズムに含まれる分野の話であって、私としては非常に歓迎したいところですが、この論調はどうなんでしょうねぇ。上記記事の文中、

・欧米では、スポーツ施設を官民連携で進める街づくりの拠点に位置付け、競技者への配慮と同様に、多くの観客に繰り返し来てもらうための利便性を重視する傾向が強い。
・日本では最近、Jリーグのガンバ大阪が欧米と同様のスタジアムを実現した。

と、かつてのタカアンドトシの漫才の如く「欧米」を繰り返していますが、特定スポーツ競技のスタジアムがファンに対して最適化した開発が実現できているのは、それらの開発を民間が主導しているからこそ。公がこれを主導すれば、当然、市民全体をみた公平性の観点から特定競技にとってのみ都合の良い開発というのは難しくなってくるワケで、そもそも欧米のこれらスタジアムは日本のいわゆる「公共スポーツ施設」とは全く異なった文脈で派生してきたものであるということを、まずは認識する必要があるのではないか?と思うワケです。

逆説的にいうのならば、本当に「稼げるスポーツ施設」ならば、それをわざわざ自治体が所有・運営する必要もないワケで、そこで求められる新しい官民連携の在り方というのは如何なるものなのか? この夏に設置が予定されている検討委員会の中では、まずこの辺の大命題から論議をスタートしてみるのは如何でしょうか?

繰り返しになりますが、これが本当に「稼げるスポーツ施設」の開発につながる動きであるのならば私としては大歓迎の方向性ではありますが、一方、この種のものは公金大規模投入をしつつ運営部分だけ民間に切り出して「黒字化します(=稼げます)」的な日本版イカサマPFIの採用に向かってゆくのが常であるワケで、そういうショウモナイ結果に終わってしまわない事を祈念してやみません。


日本版ブラックフライデーか?比国在住のネットカジノ経営者の逮捕

いやぁ、日本の警察もやりますね。正直、感動した。以下、産経新聞より転載。


カジノサイト賭博 容疑で主犯を逮捕 千葉
http://www.sankei.com/region/news/160617/rgn1606170067-n1.html

海外のインターネットのカジノサイトを使って客に賭博をさせたとして、常習賭博容疑で男2人が逮捕された事件で、県警サイバー犯罪対策課は16日、同容疑で主犯とみられるフィリピンに住む自称自営業、椎原宰(つかさ)容疑者(53)を逮捕、送検したと発表した。[…]

同課によると、椎原容疑者は14日に成田空港に帰国したところを県警に逮捕された。
 

フィリピンに在住し、海外ネットカジノの経営を行ってた男を成田で帰国と同時に逮捕です。今年に入ってから、海外ネットカジノ運営に関わった容疑で国内居住者が摘発され得る事案が幾つか発生していましたが、いよいよそれが海外居住者にまで拡大。これ、いよいよ日本版「ブラックフライデー」といっても良い様相ですわ。


ブラック・フライデー:
米国2011年4月15日、世界のオンラインカジノ運営企業大手3社の創設者を含む11名が、海外からネットを通じて米国に対して賭博サービスを提供した罪等でFBIに起訴された事件。
 

米国では、2006年の違法インターネット賭博規制法の成立以降、米国国内法の賭博禁止規定は「海外から米国内居住者に向けてサービスを行う業者にも適用される」という見解が示されてきましたが、上記2011年4月15日にとうとうFBIが世界の主要なオンラインカジノ事業者を起訴するという形でそれを実行に移しました。当時、米国内には約180万人のオンラインカジノ・プレイヤーが存在し、およそ1600億円の市場が形成されていたと言われていましたが、この日を境に海外にサーバーを置く主要なネットカジノサイトへの米国からのアクセスが遮断されることとなります。業界では事件の発生した「曜日」をとり、これを「ブラック・フライデー」と呼んでいます。

今回、日本で逮捕されたオンラインカジノ経営者はフィリピン在住ながらも、一方で今年2月に同じく国内で逮捕者の出たオンラインカジノ摘発事件の主犯格として逮捕が行われたもの。2011年米国で起こった「ブラックフライデー」とは少し構図は違いますが、今回の逮捕によって未だ海外から日本に対して賭博サービスを提供し続けている他業者に対してもかなり強い牽制となるものと思われます。

引き続き、本事件の進捗を見守りたいと思います。

日「カジノ」、電通「カッシーノ」

こんなネタにされてしまうくらい認知普及が広まったようです。軽い更新でスイマセン。あまりにバカバカしくて、思わず笑ってしまったもんで(笑


カジノとは、統合型リゾートとは

何を今更感が満載ですが、せっかく「カッシーノ」論争があったのでついでに非常に根本的な部分を改めて確認しておきたいと思います。今回のエントリのテーマは「カジノとは、統合型リゾートとは」です。

このことは拙著「日本版カジノのすべて」 の中でも触れている事ですが、私たちが無意識に「カジノ」という用語を使う場合、そこには広義と狭義の二つの意味が内包されているようです。

(狭義の)カジノとは元来マシンゲームやテーブルゲームなどを提供する賭博施設のこと。そこにホテルが付随するとカジノホテル、レストランが付随するとカジノレストラン、バーが付随するカジノバー、というような表現が用いられます。そして、これらが高度に複合化しながらカジノを中心とした観光施設として開発されるものが、現在日本で合法化が提案されている統合型リゾート(IR)です。

但し、この辺りが若干論議を混乱させている所ではありますが、我々がカジノという用語を使う場合、上記出てきた様々な施設業態を「広義の」カジノとして総称する場合がある。大体、こういう言葉の定義であると理解をして頂いて構わないと思います。

なので、共産党を中心としたカジノ反対派の方々がよくいう、「推進派は統合型リゾートなどという言葉でマイナスイメージを払拭しようと必死だが、所詮はただの賭博場」という表現は正しいようで、正しくない。統合型リゾートは時に(広義の)カジノと表現されることもありますが、それが単純な賭博場というワケではありません。我が国では、単純賭博施設として開発される(狭義の)カジノではなく、それらを内包しながら複合的な観光施設として開発される統合型リゾートのみを合法のものとして認めてゆきましょうというのが我々推進派の提案であって、それ故に我々はかの法案をIR(統合型リゾート)推進法案と呼んでいるのですよ。

一方で、先の電通さんの「カジノからカッシーノへ」論も含め、我々推進派側にいる方々も混同していると思われるのは、「統合型リゾート」の中に施設の「大きさ」の概念は含まれていないという事。統合型リゾートという概念が明確に形作られたのは2005年にカジノ合法化を決定したシンガポールにおける施設開発から。このシンガポールの開発は客室数2000を超える大型開発であり、我が国でもそれが統合型リゾートの代表例として引用される事が多い為、何となく統合型リゾートとは大型の開発であるというイメージでとらえられています。

ただ、前出の通り統合型リゾートというのは「機能上の」複合化を言っているのであって、その開発が大きい、小さいという観点は全く内包していません。特に我が国の統合型リゾート検討の中では新規に開発されるものだけではなく、既存の周辺観光施設と連携をしながら複合的な機能を提供するものまでもを含めて「統合型リゾート」と位置づけてゆこうとされているところ。そういう意味では大型の開発でなくとも、十分に複合的な機能を提供する観光施設開発となり得ります。

なので、電通さんがいう「マイナスイメージを払拭する」という多少の意義はあるとしても、一方で同時に彼らが主張している「日本には都市部に開発される巨大な開発だけではなく、コンパクトな開発も必要だ」などという事を根拠とした用語の「読み替え」なんてのは全く必要がなくて、寧ろ我々推進派側が持っている統合型リゾートの間違った概念を正しく修正してゆくことが必要なんだと思っておるところ。

結局、一般に持たれている「カジノ」の悪いイメージを払拭するにしても、推進派が勘違いしている「統合型リゾート」の概念を改めるにしても、私も含めて本案件に中心的に関与している人達が、コツコツと修正の努力を積み上げてゆくしかない、というのが私自身の考えであります。

著者プロフィール


木曽 崇(キソタカシ)

国際カジノ研究所 所長
エンタテインメントビジネス総合研究所 客員研究員

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長に就任。

2014年よりアジア圏最大のカジノ国際会議&展示会であるGlobal Gaming Expo Asiaのアドバイザリーボード委員を務める。

より詳細なプロフィール

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