与党自民党、ギャンブル等施設へ依存者の立ち入り禁止制度を示唆

先日、日本共産党の清水ただし衆議院議員が「国交委員会において競艇業界の依存対策の不備を追求します」とかってtwitterで事前告知をしていたので見に行ったわけですよ。以下、その模様を報じたしんぶん赤旗からの転載。


依存症対策 口先だけ カジノ解禁法の口実と清水氏

日本共産党の清水忠史議員は9日の衆院国土交通委員会で、競艇場内に設置されている現金自動預払機(ATM)のキャッシング(現金貸し付け)機能の廃止を求めるとともに、全力で依存症対策を行うよう国に求めました。


赤旗上では「政府の依存対策は口先だけだ」と清水議員が舌鋒鋭く追及したとの事になっていますが、実際の委員会質疑(参照)を見ると正直、拍子抜けです。例えば、赤旗は「競艇場内に設置されている現金自動預払機(ATM)のキャッシング(現金貸し付け)機能の廃止を求め」たなどとして報じていますが、このATMのキャッシング機能の廃止は3月に行われたギャンブル等依存対策推進閣僚会議において国土交通省自身が廃止検討を進めるとして示唆をおこなっているものです。以下、当該会議資料より。



ギャンブル等依存症対策の強化に関する論点整理(案)

現状
一部の競走場(24カ所中、19カ所)及び場外舟券売場(73カ所中、9カ所)には、モーターボート競走のファンの利便性向上を図るとともに、現金を持ち歩かずに済むことによる防犯上の観点も考慮して、ATM が設置されている。当該 ATM では、キャッシングが利用可能である。

課題
競走場内に設置されている ATM については、ATM 利用にあたっての注意喚起を行っていない。そこで、ATM 利用にあたっての注意喚起を実施する。また、キャッシングで調達した資金で舟券の購入が可能であるため、ATM のキャッシング機能の利用状況を調査し、競走場及び場外舟券売場に設置されている ATM のキャッシング機能の廃止について検討の上、取扱方針を決定する必要がある。


ただ、当然ながら行政における施策決定までには様々なプロセスがあり取り纏めには時間がかかってしまうわけで、共産党の清水議員がやっているのはそのような行政施策が決定するまでのタイムラグを利用して「対応が遅い」と糾弾のポーズを取っているだけ。5月9日の国交委員会内で清水議員から発された質疑内容は、そのほぼ全てがこのように既に行政側で実施もしくはその検討が進められているものに対して言及しているだけであって、省庁自身が起案した施策を超える提案は何一つ為されていないのが実態であります。

昨年末のカジノ合法化論争において、「これだけギャンブル依存が蔓延しているわが国においてカジノ合法化などまかりならん」として壮大に依存問題を煽った共産党ですから、「公営競技を段階的に廃止せよ」くらいぶち上げるのかな?と思っていた私としては、非常に拍子抜けの「および腰」質疑にしか見えなかったのが正直なところ。世の中ではこういうのを「カカシ相手のスパーリング」と呼びます。

では日本共産党が「対応が遅い」として糾弾した政府与党側の動きですが、実は先日以下のような構想が進められていることが報じられました。以下、日刊スポーツからの転載。


依存症顧客のパチンコ、競馬など入場禁止制度化へ

政府、与党は、パチンコや公営ギャンブルの競馬などで深刻な依存症に陥った顧客に対し、事業者が入場禁止措置を取れる制度を導入する方針を固めた。国内のカジノ解禁を踏まえた依存症対策強化の一環。本人や家族の申告を基に適用する仕組みを想定している。関連法改正も視野に入れ、今夏までに制度の骨格を固めたい考えだ。政府関係者が13日明らかにした。


このギャンブル依存者等の施設利用を禁ずる制度は一般的に「自己除外プログラム」(本人による申請)、もしくは「家族除外プログラム」(家族による申請)と呼ばれる制度であり、現在、諸外国のカジノ産業において実効性のある依存対策の手法のひとつとして導入が広がっている施策であります。我が国におけるカジノ合法化論議においても、当然ながらかなり早い時期からその導入検討が進められており、昨年末のIR推進法の国会審議の中でも幾度となく言及が行われました。

一方、実はこのようなプログラムの導入は、カジノ以外の我が国における既存のギャンブル等産業においても導入が推奨されてきたものではあるのですが、新設されるカジノ産業ならばいざ知らず、この種のプログラムの導入は既存で営業を行っているギャンブル等施設に対して多大な設備投資やシステム投資を求めるものとなります。その為、各業界内ではその導入に対して水面下で激しい「抵抗」が存在するのが実態であります。

その為、先にご紹介した政府内に既に設置されているギャンブル等依存対策推進閣僚会議においては、公営競技が行っているインターネット投票に関してはこの種の仕組みの導入検討が示唆されたものの、施設そのものへの入場制限の導入に関しては各所管省庁による検討対象から外されていたのが現状。そのような及び腰の各所管に対して、導入検討を進めるよう強権発動しようとする動きが今回報じられた政府与党内での論議であります。

正直申し上げると、清水ただし議員が既に各省庁から導入検討が発表されているものを「ポーズ」として委員会内で糾弾したATMのキャッシング機能の廃止なんぞよりも、余程、各業界にとっては「シンドい」対策を求めて動いているのが政府与党なのであって、それをしんぶん赤旗が「依存症対策 口先だけ」なぞと報じるのは個人的にはちゃんちゃらオカシイとしか申し上げようが御座いません。

排除制度の導入は、今後、各業界内の反対勢力からの巻き返しなども予想される非常に取り扱いの難しい案件ではありますが、私としては政府与党の動きを応援しております。ぜひ実現させましょう。


facebook

あるべきカジノ入札は如何なるものなのか

さて、昨日のエントリの続きです。昨日のエントリでは、国側が「地域と開発計画をセットで国が選ぶ」というIR選定方式を採用しようとする指針を示したことに対して、その後に予想される混乱をご紹介しました。未だ読んでいない方は、以下のリンク先から。

大混乱に向かってひた走る日本のカジノ構想
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/9554187.html

実は「地域と開発計画をセットで選ぶ」という選定方式は世界でも他に例がないワケではなく、ここ数年アメリカに置いてニューヨーク州、マサチューセッツ州などで採用されています。今回、国の官僚機構側はそれを参照したものと思われますが、実態は中身が全く違います

2014年から始まったニューヨーク州の入札、2012年から始まったマサチューセッツ州の入札は確かに両者とも行政当局が事業者と地域をセットで評価をしその優劣を競わせるものでありましたが、その入札主体となっているのはあくまで民間事業者です。両地域では、最初に当局が一定の広域的なカジノ設置可能地域を定め(日本でいうと「関東・関西」的な単位の広域エリア)、その中で事業者が自由に開発立地を設定しながら企画提示を行うものです。勿論、その過程で立地自治体からの同意書の取得は求められるわけですが、事業者にとっては比較的広範に立地の選択肢が提供されており、現在我が国の官僚機構が示している「地方が事業者を選び、それを国が選ぶ」といったような二段階選定はほぼ行われていません(一部自治体で例外があったが)。また繰り返しになりますが、当局に向かっての入札主体はあくまで事業者でありますから、先のエントリで述べた「事業者の選定は入札プロセスの中で一番最後に持ってくる」という原則は守られたものでありました。

更に言えば、実はニューヨーク、マサチューセッツの両州のカジノ開発権入札は、我が国にで行われるような国際競争を前提としたものではなく、アメリカ国内でいわゆる「リージョナルカジノ」と呼ばれるカテゴリの国内観光客の獲得競争をおこなうような施設開発でありました。すなわち、そこで入札を争っている事業者は、その殆どが米国内で既に何らかの事業をおこなっている事業者であり、また両州以外の周辺州でもカジノ開発のチャンスは幾らでもありますから、「イチかゼロか」を巡って醜聞合戦を繰り広げるような業者の道徳性が問われる競争のあり方はレピュテーションリスクの観点から起こり得ない。それが、両州において「地域と開発計画をセットで選ぶ」という選定方式が機能した一つの理由であります。それに対して日本は全く間逆の状況にありますから、正直、この両州を参考にして「地域と開発計画をセットで選ぶ」という選定方式に突き進むのは相当無理があります。

一方で、実は今回「地域と開発計画をセットで選ぶ」という選定方式を国が志向している理由として、官僚側は以下のような説明もおこなっているのですね。以下、IR推進会議資料より転載。


・国は、具体性、実行確実性のない計画に基づき審査を行わなければならず、当該事業が真に公益性を有するのか、公正かつ客観的な判断ができない。
・地方公共団体は、計画に具体性がないことから地域住民に説得力を持った説明ができず、合意形成が困難となる可能性がある。
 

政策を担うはずの行政側からこんなことを言われてしまうと私としては猛烈に悲しくなってしまうワケですが、統合型リゾートの導入というのは開発地の中で「どんなデザインのどんな施設を建てるのか」なぞよりも、余程その施設の外側にある周辺政策の方が重要なんです。これは拙著「日本版カジノのすべて」にもクチ酸っぱく書いてきたものですし、来月発刊予定の新著の中でも言及している事項です(新刊情報は詳細が決定次第告知します)。

行政が主力をおくべきは「どんなデザインのどんな施設を建てるのか」を検討する(自治体の立場)ことでも、それを評価する(国の立場)でもなく、どんな政策的な目的をもって、どこにどんな施設を「建てさせるのか」を考え、それを評価すること。端的に言えば各自治体が具体的な施設開発を選定するための「入札要件書」を作り、それを国が評価することなのです。例えば以下はシンガポールで行われたライセンス入札時に示された入札要件の抜粋。

グラフィックス1

上記はあくまで私自身がまとめた抜粋でありますが、シンガポールのライセンス入札時に示された実際の要件書は数百ページにも及ぶ膨大な資料です。そして、この入札要件書というのは行政が事業者に対して示す「開発指示書」であり、当該地域の統合型リゾート導入政策の「すべて」が詰まったもの。なぜそういう要件項目を定めたのか。その背景にある政策的な意図は何なのか。数値的基準は何を根拠に設定をしたのか。評価の得点配分の根拠は?どのような評価プロセスを経るのか?など、そこには行政としての意思や、その技術の粋が詰め込まれている。

それを各自治体が考え、背後にある考え方を示し、国が評価をすることそのものが実は統合型リゾート導入を巡る「政策の評価」なのであって、事業者が主体となって提案するような「こんなデザインで、こんな施設を作ります~」のような意匠設計図がなければその優劣の判断ができないといったようなものではないハズなのです。もし、 それではやはり実現性が判断できないというのならば、国側の審査の過程で全国の誘致希望自治体から集まった要件書を各事業者に実際に投げてRFI(情報提供要求/業者の投資意向や各種希望などを事前確認するプロセス)を実施すれば良い。その要件書が事業者側の目から見て現実的なものなのか、はたまたどれほど魅力的なのかを判断する公的な手法は海外の入札事例の中に既に存在し、示されているのです。

そして、そういうプロセスを経れば国側が実際に地方による事業者入札が実施される前に、入札参加をしそうな企業の顔ぶれを把握できますし、その先に起こる様々な情報や不正発生のリスク管理もできるようになる。これは先のエントリで示したような、入札を巡る混乱が起こらないようにする為の制度的な担保であります。実はこのような手法はシンガポールのライセンス入札で実際に採用されたプロセスであり、あらゆる諸外国の入札事例の中から積み上げられてきたノウハウなのです。

…などと今更ながらに書いたところで、国側がすでに選定方式の指針を示してしまった今となっては手遅れなのかもしれませんが、私としてはここまでの流れをただただ悲しく見守っておるところであります。

大混乱に向かってひた走る日本のカジノ構想

ずっと国側で、というか官僚側でそういう風に論議を振り向けたいという話があるのは聞いていたのですが、「あーぁ、いよいよ本気でそういう方向性に動くのね」と思わざるを得ない報道がありました。以下、共同通信からの転載。


IR=統合型リゾート施設 整備区域に当初は上限
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170510/k10010976841000.html

当初は、全国で2か所程度とするなど、上限を設けることを盛り込みました。

それによりますと、IRを構成する中核施設の種類や要件について、カジノに加え、日本の国際競争力の向上につながる国際会議場や展示場、日本の伝統や文化を発信できる劇場や美術館、それに、ホテルなどとするとしています。

また、カジノの収益をほかの施設の運営費に還元するなど、各種事業の相乗効果や公益性を担保するため、事業主体と施設の一体性の確保を原則とする、としています。 さらに、整備区域の認定方法については希望する都道府県や政令指定都市があらかじめ事業者を選定し、事業計画を策定したうえで、国土交通大臣に申請し、国が厳正な審査を経て認定する仕組みにする


上記で報道がなされた整備区域の選定に関する要点を纏めますと、

・全国で当初2か所程度
・カジノに加え、国際会議場や展示場、劇場や美術館、ホテルなどを中核施設として要件
・都道府県や政令市が予め事業者を選定し国が審査

とのこと。特に大きな方針の変更があるのが、統合型リゾートの開発地域とそれを担当する事業者の選定の順番でありまして、これまでIR議連においては「国が地域を先に選び、後に事業者を選定するのが良かろう」との大方の方針があったわけですが、それを行政側が完全に引っ繰り返して「事業者を地域が選び、それをセットで国が審査する」との方針が示されました。ただ、私の目から見ると完全に「地獄の坂道」を転がり落ち始めてるんですが大丈夫なんでしょうか、コレ。

このシナリオ下で起こることは以下のとおり。

①全国で同時多発的に起こる事業者入札

現在示されている要点を前提とした場合、2018年末から2019年あたりにかけてカジノ導入を希望する都道府県や政令市が一斉に自地域での施設開発を希望する業者に対して企画入札を始めます。現在、カジノの導入計画を持っている全国自治体は主要なものだけを数えても7つ程、中小まで数えるとこの数は更に増えます。勿論、これら候補地のすべてが最終的な入札実施段階まで辿り着くワケではないですが、少なくとも全国の少なからぬ地域で企画入札が行われ、各業者が各々独自の開発案をもって駆けずり回ることになるのは必至であります。

②業者と地域が一対一で結びつく

そのような各自治体による企画入札が行われた結果、各事業者と各自治体が一対一で結びつくわけですが、ここから各事業者による「血みどろ」の競争が始まります。何しろ国内の統合型リゾート開発は導入当初「全国で2箇所程度」とされているわけで、その限られた権益を巡ってとにかく相手を「蹴落とす」競争が始まることとなります。

この競争が自治体だけによる競争ならば一定の自制心も働くのでしょうが、地域と事業者がセットとなっている場合にはそうは行きません。背後にいるそれぞれの業者にとっては「選ばれるか/選ばれないか」のイチかゼロかの勝負ですから、己の強みをアピールすることは元より、競争相手をあらゆる手段で妨害しようとする力が働くのは当然の理であるといえます。

③「あぶれ」てしまった業者は必ずアンチに廻る

一方で、実は国に向かって申請を行う前の自治体による選定から「あぶれ」てしまう業者も必ず出てきます。例えば、国際展開をしているような大規模事業者は総じて大都市圏域での施設開発を希望しており、そういう事業者は外資系6社に合わせて、国内資本も数社ほど居ます。対して、大都市圏で現在具体的なカジノの導入構想を持っている地域は千葉、神奈川、大阪の3つ(東京は舛添時代に一時停止しているので除外)。各自治体による企画選定の段階でも完全にポジション数が足りず、必ずそこには自治体の選定から「あぶれ」てしまう業者が出てきます。

そして実は②でご紹介した業者よりも、こういう「あぶれて」しまった業者の方がタチが悪い。カジノ事業者というのは自らが「選ばれる側」である限りにおいては、行政に対して非常に従順な生き物です。一方で自らがその候補から外れ、選ばれる可能性がなくなった時点から急に牙を剥きはじめます。

特に国際展開を行っているような大規模事業者にとって、日本のカジノ開発権入札というのは日本市場の獲得を巡る競争であるだけはなく、極東アジア圏域の中核市場を巡る争いでもあります。日本で市場獲得の「芽」がなくなった事業者は、日本よりも更に条件の悪い韓国、ロシア(ウラジオストク)、台湾などを拠点として日本と争う、もしくは極東アジアに対しては距離的なハンディキャップを持つマカオ、シンガポール、フィリピンなどの東南アジア圏域を中心に顧客獲得競争をしなければならなくなります。当然ながら日本市場への参入の「芽」がなくなった事業者にとっては、自分がその市場を獲得できないのならいっそのこと日本でのカジノ構想そのものが潰れてくれた方が嬉しいくらいの話であって、この種の業者は確実に「アンチ」に廻ります。

④そして起こる醜聞合戦

そして、その先に起こることは壮大な醜聞合戦です。自治体と事業者の組み合わせが決定し、国に向かってカジノ開発を申請する段階になると、競争相手を蹴落とす為、もしくは日本のカジノ導入そのものをご破算にする為と、とにかく様々な人達が様々な思惑で競争相手の醜聞を飛ばすようになるでしょう。

当然ながらそれをお昼のワイドショーあたりがオモシロオカシク報じようとすでしょうし、それを煽る建築エコノミストなどという珍妙な肩書きを名乗る「事情通(笑」や、そもそもカジノ導入そのものに反対しているグループなど様々な登場人物が大集合となります。更に言えば、このような選定の真っ只中となる2019年春には全国自治体の首長や議員を選定する統一地方選挙が予定されています。カジノ開発権を巡る様々な醜聞合戦に選挙が絡んで、今度はそれが一気に政局化し…と、どこかの国で起こった国立競技場の建替え問題、五輪関連施施設の建設問題、市場移転問題などで見た構図があっという間に誕生してしまうわけです。

以上のようなストーリーは私が勝手に作った物語ではなく、実は2006年にあったイギリスの統合型リゾート(同国ではこれをスーパーカジノと呼称)導入の過程において実際に起こったもの。イギリスでは当時、各誘致地域、各事業者、各メディアを巻き込んだ大スキャンダル合戦が起こり、ちょうど当時イギリスが政権交代の途にあった事もあり、それが政局にまで繋がった挙句、全てがご破算となりました。現在イギリスでは国内でいわゆる統合型リゾートのような大型カジノを導入する制度そのものはあるのですが、当時のゴタゴタを受けてプロジェクトの凍結が行われた後、未だ統合型リゾートは誕生していません(伝統的な中小の施設は沢山あるが)。

ちと古い文書ですが、かつてのイギリスの論議が活発だった時代に私自身が作成した同国の状況を纏めたペーパーを以下に示しますのでご参照ください。イギリスの失敗から私たちが学ぶべきことは、事業者は己が不利となれば確実にアンチに廻り、醜聞合戦を始めて行政にはコントロール不能となる。それ故に事業者の選定は全ての入札プロセスの中で一番「最後」に持ってくる。これが先人の失敗から学ぶべきことであります。


賭博行政の再編:英国の成功と失敗から学ぶ
https://www.sugarsync.com/pf/D2862156_86902897_918632
 

実は、このようなカジノ開発地域と事業者にかかる選定方式を巡っては、我が国におけるカジノ合法化論議の過程において、過去幾度となく論争が行われてきた伝統的なテーマであります。そのような度重なる論議を経た上で、前出の英国の失敗事例などを念頭に「地域を先に選び、事業者の選定を最後に持ってくる方が宜しかろう」という総括がなされてきました。

我が国の行政機構は、未だ記憶に新しい国立競技場の建て替え入札にまつわる一連のゴタゴタで次官のクビまで事実上飛ばしてしまったワケですが、これまでの国内論議で示されてきた統合型リゾート開発選定に関する指針を官主導でひっくり返すというのならば、責任者は白装束で懐刀を携え、最悪の場合は「自ら腹を切る」覚悟を示した上で踏み出して頂きたいなと思うところ。
edo_seppuku (1)
私としては国立競技場、五輪関連施設、市場移転と国家的事業にかかる一連の問題において、メディア報道と政局に振り回されまくった挙句、全てがグダグダとなっている現状を見るにつけて「統合型リゾート選定こそは上手くいくのだ」と主張できるほど楽観主義者ではありません。関係各所のご武運を心よりお祈りいたす所存です。

【ご報告】澤田経営道場の講師を務めることになります

えっと、一応のご報告になりますが、本年度より「財団法人SAWADA FOUNDATION」が運営する澤田経営道場において講師を務めることになりました。澤田経営道場は、HIS会長の澤田秀雄氏が私財を投じて設立した私塾でありまして、以下のような道場訓を元に次世代リーダーの育成を目的とした団体です。当然ながら、私の受け持ちのテーマは「統合型リゾート」であります。
dojokun-main
(出所:http://sawadadojo.com/

第一期、第二期の道場生に関しましてはHISグループ内からの採用であったのですが、私が合流いたします本年度(第三期)からは原則的に外部からの生徒募集となっており、選考を経て選抜された生徒さん、約10名が財団から研修資金を「貰いながら」2年間の各種プログラムを受講し、自己の鍛錬に勤しんで頂くことになります。非常に判り易くいうのなら松下政経塾の澤田版とでも言いましょうか。

ということで有り難きご縁を頂きまして、なぜかその末席に講師として私が参加させて頂くことになった次第。私の登板自体は7月からという事で今しばらく時間はあるのですが、とりいそぎ皆様にはご報告を申し上げる所存です。

ギャンブル依存者支援団体の実態は玉石混合

ギャンブル依存症問題を考える会の田中さんが、またゴニョゴニョと新しい組織を作られたようで、日経新聞にその内容が報じられています。


ギャンブル依存、支援団体が協議会 家族の負担減めざす
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG19HAB_Q7A420C1CR0000/

国内のカジノ解禁に向けた法整備の検討が続く中、患者や家族の支援に取り組む各地の団体が20日までに「ギャンブル依存症支援団体連携協議会」を設立した。家族らの精神的・経済的負担の軽減などが目的。事務局を務める「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表は「依存症対策がカジノ建設の言い訳になってはならない。抜本的な対策強化を連携して訴えたい」としている。[…]

田中代表は、政府が取り組んでいる相談窓口や拠点病院の整備だけでは不十分と指摘。「依存症の予防やギャンブルの規制、回復施設の整備などが必要で、対策費をギャンブル業界に負担させることも考えるべきだ」と話した。
 

なにやら色々と書いてありますが、現在政府で勢威進められているギャンブル依存対策案の中身が気に入らず「もっと我々民間に財源をよこせ、そしてその財源はギャンブル等業界に負担させろ」という団体であります。

…と、ちょっと意地悪な要約の仕方をしましたが、私的には依存者支援には民間の支援団体の存在は不可欠だと思って居ますし、その財源を我々カジノを含むギャンブル等業界が負担することも当たり前であり、彼らの主張に関しては何も違和感はありません。一方で、この新しく出来た会の組成ですが、その加盟団体を見るとどうも釈然としない名前も載っているようでして。。


参加8団体は以下の通りです。(あいうえお順)
(一社)大崎大地                  代表 大崎 大地(東京)
(一社)グレイスロード               代表 佐々木 広(山梨)
(一社)セルフリカバリー              代表 猪本 光寛(石川)
(NPO)ちゅーりっぷ会長崎ダルク グラフながさき 代表 中川 賀雅(長崎)
(NPO)ヌジュミ                 代表 田上 啓子(神奈川)
(NPO)ホープヒル                代表 町田 政明(神奈川)
(一社)ライフトレーニング             代表 出蔵 洸一(福井)
≪事務局≫(一社)ギャンブル依存症問題を考える会 代表 田中 紀子(東京) 
(出所: http://officerico.co.jp/blog/?p=6424
 

私の知らない団体も沢山ありますが、その多くはこれまで依存者支援を中心に活動してきた実績のある団体であるようにお見受けをしているわけですが、その一方で例えばそのリストの中に「一般社団法人大崎大地」なぞという名前を見つけてしまうとゲンナリしてしまうわけです。

この個人名を法人の名として冠した珍妙な一般社団法人ですが、その前身となるのはJAGOという団体で、私も非常に良く存じ上げている団体であります。以下、一般社団法人大崎大地のwebサイトへのリンクですが、URLは以前のJAGOの名称で活動していたときのままになっているようですね。

一般社団法人大崎大地
http://www.jago.jp/

このJAGO、正式名称をJapan Anti Gamble Association(日本反ギャンブル協会)としておりまして、その名のとおり我が国におけるギャンブルの存在そのものに「反対」をする団体であります。当時の組織代表も現在と同じ大崎大地氏であり、その顧問には「パチンコの違法化・大幅課税を求める議員と国民の会」の代表世話人として知られる小坂英二氏(荒川区議会議員)が就任しておりました(参照)。彼らの活動は、我々ギャンブル等業界の中では非常に有名でありまして、例えば彼らが最もその運動を活発化していた2013年に行われた「パチンコ廃絶!カジノ法粉砕!デモ」と名付けられたデモを見れば、それがどういう性質の運動であったのかというのは一目瞭然。「パチンコ廃絶!カジノ法粉砕!」を謳っているのにも関わらず、最も目に付くのは何故か日の丸と旭日旗という不思議なデモであります(笑 




大崎大地氏はJAGO時代からカウンセリングと称していわゆる依存者に対する支援活動のようなサービスも行っていたのは事実ではあるのですが、基本的に彼らの活動というのはJAGO: Japan Anti Gamble Associationの名称が示すとおり、限りなく「政治運動より」の支援であったのが実態であります。

ここで断っておきたいのですが、私自身は上記のような政治思想をお持ちの方々とは相容れないものの、彼らが法に則って活動をすること自体に問題あるとは全く思っておりません。現に当時、この運動の中核として動き、JAGOの顧問でもあった小坂英二荒川区議とは、色々対話もしていたくらいであります。以下、過去のエントリを参照。


小坂荒川区議とのやりとり - カジノ合法化に関する100の質問
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/3454146.html
 

ただ、ここにきて私として非常に違和感が否めないのは、かつてこのような政治運動を展開していたJAGOが「一般社団法人大崎大地」なる珍妙なる法人名に衣替えをして、依存者支援団体の輪の中に入って「回復施設の整備などが必要で、対策費をギャンブル業界に負担させることも考えるべき」などと主張をしていることです。

貴方達、数年前まで「パチンコ廃絶、カジノ粉砕!」なんてシュプレヒコールを挙げていたではないですか。そこから数年経って、我が国でカジノ導入の推進が決定し、依存対策に予算が付きそうな状況が見えた途端、今度は「民間にも金よこせ、ギャンブル業界はそれを負担しろ」ですか? それは流石に変なビジネスモデルになっては居ませんか?という話です。

これまでギャンブル依存対策に関する公的施策が殆どなかった我が国において、長らく依存者支援の中心的役割を担ってきたのは民間であるという事は紛れもない事実です。そして、そのような団体や施設の支援が今後も必要なのは事実ではあるのですが、今、何となくお金が出そうな状況になって「もっとコッチに金よこせ」と口を開け騒いでいる人達の中には、色んな「出自」の方々がいらっしゃるということ。そして、正直申し上げるとかなり玉石混合になっていますよ、ということであります。

我々、ギャンブル等業界がその対策費用を積む事には異論はないとしても、それをどのような基準で誰に助成するのかはやはりいずれかの主体がコントロールをしなけばなりませんし、また助成を行った先の業績評価の仕組みづくりも不可欠。そういう意味では、今政府が検討しているようにまず厚労省側で一端対策予算を集積し、官が一定の基準をもってそれを管理をしながら助成を行うという仕組みを個人的には支持せざるを得ないところであります。

著者プロフィール


木曽 崇(キソタカシ)

国際カジノ研究所 所長
エンタテインメントビジネス総合研究所 客員研究員

経歴:
日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長に就任。

2014年よりアジア圏最大のカジノ国際会議&展示会であるGlobal Gaming Expo Asiaのアドバイザリーボード委員を務める。

より詳細なプロフィール

各種連絡はtakashikiso@gmail.comまで
       記事検索
ご利用上の注意
このwebサイト内の内容はすべて著者による独自の視点から記述されたものであり、その内容を保障するものではありません。本サイトの記述内容から派生したいかなる損失も著者は補償しません。

このwebサイト内の文章、構成、表現などはすべて本webサイトの著者に帰属します。本著作物の引用、抜粋を行なう場合には引用元を明記の上、一般的な著作権取り扱いルールに基づいてその利用を行なってください。悪質な利用は法的手段に訴える可能性があります。

(C)2009-2015 Takashi Kiso, All Rights Reserved.

管理用リンク