昨晩の時点ではあくまで「先送りか?」として報じられていた以下報道ですが、ロイター辺りは今朝の報道で確定的に報じ始めました。以下、ロイター通信からの転載。


政府、カジノなどIR基本方針の決定を先送りへ=関係筋
https://jp.reuters.com/article/japan-casino-idJPKBN1ZJ2AL

政府は、今月策定を予定していた、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)基本方針の決定を先送りする方針を固めた。関係筋が21日、明らかにした。当初は1月中に決める予定だったが、カジノ誘致を巡る贈収賄事件を受け世論の反発に配慮したとみられる。


実はここ数日、急に某メディアの記者さんから連絡が入り「500ドットコム事件の影響で基本方針の発表が先送りされた場合、どういう影響が出ますか?」なんてコメントを求められまして、何でそんなコメントを求めているのかな?と思ってよくよく聞いてみたところ、どうも国交省の幹部連中から「先延ばしもあり得る」的な空気が出されているなんて話が出ているとのこと。私としては当然「あーあ」と思っていたわけです。

まず私の所感としては、この先延ばし論に関しては原則的に2つのレイヤーで注視をしなければなりません。一つ目が国側の都合。現在の衆院は2021年10月に任期切れとなっておりまして、実は既に国会は次期総選挙の時期を睨みながら動き始めています。こういう時期の国会は、どうしても政局的にならざるを得ず、この時期に500ドットコム事件が表面化したことは与党にとっては非常に手痛いのは事実ですし、野党にとっては好機であるのは間違いないでしょう。

その中でもし、今月末に予定されていた基本方針発表というIR選定プロセスが先送りされた場合、プロセスの再始動そのものが政局的に扱われ、下手をするとそれが延々と先延ばしにされてゆくリスクが出て来ます。最悪の場合、本来は与野党合意で定められていた2015年10月の消費増税が、その後の政局で幾度となく延期され、その実現に4年の歳月がかかったのと同じような状況にすらなり得ると言えましょう。

要は、政府としてはもし今回基本方針の発表を延期するのならばするで、その延期した先の「着地点」となる予定日と要件を明確に定めてから延期を決定することがマストで、それが無ければ今後、延々とそれが政局的に扱われることになる。次期総選挙をにらみ、既に国会が政局的に動き始めている中、それだけは避けたいのが実情です。

そして次に必要な観点が延期の期間と、それが現在、IR誘致を検討している各自治体に与える影響です。現在、大阪は今月末に政府から基本方針が発表されることを前提としながら「先乗り」で既に夢洲IRの開発候補者となる民間事業者の選定プロセスを開始してしまっています。これはひとえに、2025年の大阪万博の開催までに施設全体開業は既に無理としても、なんとか一部施設の開業までは漕ぎ着けたいという思惑によるものなのです。しかし、もし今回政府側の基本方針の発表が大幅に遅れるとなると、一部施設の開業すらも物理的に無理な状況になりなねない。政府側のプロセスがどの程度の期間先送りになるかは、大阪にとっては非常にセンシティブな問題となってくるでしょう。

【参考】大阪府・市の担当者「早く決めてほしい」 IR基本方針先送り見通しに
https://mainichi.jp/articles/20200120/k00/00m/040/330000c

そして、次なる影響を受けるのが横浜のIR構想。現職の林文子・横浜市長の任期は2021年までとなっており同年8月には任期切れの市長選が行われることとなっています。実は、これまで予定されていた国側のIR整備のプロセスでは、横浜市の次期市長選にはIR導入の是非がギリギリ「絡まない」スケジュール設定となっていたのですが、今回の先送りの期間設定次第では、市長選ど真ん中にIR選定プロセスが落ちて来る可能性もある。そうなると横浜IR構想自体が政局的に取り上げられ、暗礁に乗り上げてしまう可能性も出て来るわけで、横浜市にとっても実は今回の政府のプロセス先送りはかなりセンシティブな問題であったりします。

一方、政府側のプロセスの先送りによって恩恵を受ける可能性があるのが東京です。東京は、今年7月に現職・小池都知事の任期切れ選挙が予定されているわけですが、選挙への影響を考えてか小池都知事は未だ東京IR構想に関して是も非もスタンスを示しておらず、いまだ「検討中」を貫いています。

東京都としては、首長選挙が今年7月に控えている中でIR導入意向を正式に発表するのが非常に難しい環境下にあり、一方でタイムリミットが日に日に近づいて来ていたワケですが、今回もし政府が基本方針発表の先送りを決定した場合、そこに若干の余裕が出て来ることは元より、延期幅次第では今年7月の選挙戦の後のIR導入に向けた決断であってもスケジュールが間に合う可能性も出て来ます。東京にとっては間違いなくポジティブな状況であると言えるでしょう。

ということで、まずは政府の「先送り」判断が出るのか否か、そして先送りが有るとしたらその延期幅がどの程度になるのかに注目してゆきたいと思います。