本記事は、以下の記事の続きです。


結論: オンライン賭博は違法である
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/8127042.html


長きに渡って行なわれてきた「海外にサーバーを置くオンライン賭博は違法か否か」論議に終止符を打つべく、国会議員の助力を得て、政府に質問主意書を投げましたというのが前回までの流れです。この動きを先導したのが、カジノ研究者の私自身と、日弁連において国際刑事司法委員および民暴対策委員(民間事業への暴力団介入対策)を務める若手弁護士・渡邊雅之氏。ある意味、本件に対して切り込むには最強のタッグであるといって良いでしょう。

まずは前回のおさらいから始めると、今回、特にオンラインカジノにフォーカスして行なった質問は以下の三点です。


一 日本国内から、インターネットを通じて、海外で開設されたインターネットのオンラインカジノに参加したり、インターネットで中継されている海外のカジノに参加することは、国内のインターネットカジノ店において参加する場合だけでなく、国内の自宅からインターネットを通じて参加する場合であっても、刑法第185条の賭博罪に該当するという理解でよいか。

二 上記一の「日本に所在する者」にサービスを提供した者には、国内犯が適用されるか。すなわち、海外にサーバを置いて賭博サービスを提供する業者にも、賭博開帳罪(同法第186条第2項)が成立し得るという理解でよいか。

三 賭博罪の成立要件とされる必要的共犯に関して、 共犯者の片方(賭博に参加する者)が国内、もう片方(賭博開帳者)が国外に所在する場合に共犯関係は成立し得るのか。片方を罰する事が出来ない(非可罰的な)状態にあっても、両者による共犯関係を立証することが出来ればもう片方の者の罪は成立し得るのか。
出所:http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a185017.htm


上記質問には以下のような意図があります。

1. まず、質問における環境設定を「海外に開設されたオンラインカジノ」に限定をしました。これは、国内でのオンラインカジノ運営には、白夜プラネットによる「カジパラ事件」など過去の摘発事例が存在しており、今更、政府見解を確認するまでもないから。ちなみに、オンラインカジノと合わせて、あえて「インターネットで中継されている海外のカジノに参加」という文言を加えたのは、オンライン中継を通じて海外の実際のカジノゲームに参加をするというこれまでとはチョット異なったオンラインカジノの形式が増えてきているので、それも別途加えました。

2. 上記のような環境設定の中で、今回、政府見解を問うたのは

・ 国内の自宅からインターネットを通じて参加(質問一)
・ 上記一の「日本に所在する者」にサービスを提供(質問二)

の二つのケースです。このような条件下で賭博者および賭博開帳者の賭博実行に関与する双方の当事者において罪が成立し得るかどうか、これが本主意書における中心となる質疑です。

3. 質問三に関しては、「違法ではない」と主張する人達が拠って立つ違法性回避の根拠である「必要的共犯」 に関して、「あえて」切り出して答えを求めてみました。またこの点においてもケースを

・ 共犯者の片方(賭博に参加する者)が国内、もう片方(賭博開帳者)が国外に所在する場合
・ 片方を罰する事が出来ない(非可罰的な)状態にある

2つに設定しています。前者は、賭博開帳の実施者が国外に所在している場合で、これは現在存在する多くのオンラインカジノサイトに当てはまります。また、後者でさらに「片方を罰する事が出来ない(非可罰的な)状態」と要件を絞ったのは、例えば賭博開帳者がオンラインカジノを合法とする国で合法的にライセンスを取得しているケースなど、幾つかの異なる条件が存在する可能性があるからです。

という事で、上記のような質問を衆院を通して公式に送付し、政府見解を求めた結果が、本日衆議院のwebサイト上で開示された以下の答弁書となります。


衆議院議員階猛君提出賭博罪及び富くじ罪に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する

一から三までについて
犯罪の成否については、捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断すべき事柄であることから、政府として、お答えすることは差し控えるが、一般論としては、賭博行為の一部が日本国内において行われた場合、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十五条の賭博罪が成立することがあるものと考えられ、また、賭博場開張行為の一部が日本国内において行われた場合、同法第百八十六条第二項の賭博開張図利罪が成立することがあるものと考えられる。
出所:http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon


シンプルかつ必要最小限のお答えありがとうございました。繰り返しますと、我々サイドから問うた質問一から三までについて、あくまで一般論としてと断わった上で、

・ 賭博行為の一部が日本国内において行われた場合、刑法第百八十五条の賭博罪が成立することがある
・ 賭博場開張行為の一部が日本国内において行われた場合、同法第百八十六条第二項の賭博開張図利罪が成立することがある

これが政府の公式見解となります。ちなみに「実行行為の一部が日本国内において行なわれた場合」という要件は、多くのオンライン犯罪に関連して設定されているもので、具体的には国内に設置された情報端末を用いて海外設置サーバーにアクセスを行い、クリック等で犯罪実行の指示を行なった場合にも適用されます。逆に、唯一政府が判断を避けたのが、完全に海外に実行主体を置いた上で日本からの賭博者を顧客で扱ったケース。実は、過去のメディアに対する非公式な見解として警察庁などは「このケースも立件できる可能性がある」とコメントしていたりするのですが、さすがにここまでは踏み込めませんかね。。

そして、最後にダメ押しです。繰り返しになりますが「海外にサーバーを置いたネット賭博は違法ではない」とする方々の最も大きな違法性回避の根拠が、「賭博罪は必要的共犯である」ということなのですが、実はその主張そのものを否定した過去の最高裁判例が存在します。


常習賭博被告事件 

【事件番号】最高裁判所第2小法廷判決/昭和23年(れ)第1340号
【判決日付】昭和24年1月11日
【判示事項】
一 不當拘禁中の勾留日數を本刑に算入しなかつたことと憲法第三四條
二 常習賭博罪と賭博開帳罪との關係
三 共犯者中賭博開帳犯人の有無と賭博常習性の認定 

【判決要旨】
一 たとい被告人等に對する勾留が不當なものであつたと假定しても、それに對しては各種の救濟の方法を規定しているのであつて、その未決勾留日數を本刑に算入しなくても憲法第三四條に違反するものではない。

二 常習賭博罪と賭博開帳罪とは刑法第一八六條の第一項と第二項とに分けて規定されて居るのであつて、もともと兩罪は罪質を異にし、且その構成要件も何ら關聯するところがないのであるから、兩罪が同一條件下に規定されて居るからと云つて、所論のように不可分の關係にあるものと即斷することは出来ないし、又兩罪は全然別個の犯罪事實に關するものであるから、所論のように正犯と從犯の關係にあるものでないことも極めて明白である。 

三 賭博常習性の有無は専ら、各被告人個人の習癖の有無によつて決せられることであるから、本件賭博の共犯者中に賭博開帳罪に該當するものがなく、又同罪によつて處斷されたものがなかつたとしても、それによつて被告人兩名に對する常習賭博罪の成立が阻却される理由は少しも存しない

出所:https://www.hanreihisho.net/cgi-bin/eoc/hanreibodyctl.cgi?DOC=/docs/HANREI/HSRD0L/0410/00410002.html&HWORD=HS


という事で、以上、「オンライン賭博は違法である」でFAであります。(本件に関する考察は、次回以降、もう少し続けます)


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