うーん、言及されている事の98%は正しいのだけど、結論だけがなぁ…という非常に「惜しい」記事があったのでご紹介。以下、BLOGOSより転載。


訪日外国人「激増」の深層と可能性 ‐ 磯山友幸
http://blogos.com/article/105358/

では、アジア人旅行者は何を目当てに日本にやって来るのか。


大都市の百貨店や郊外のアウトレットに行った人なら分かる通り、買い物である。何しろ中華系の外国人買い物客の人数と、彼らの購入量は凄まじい。とにかく、お目当ての高級ブランド品や宝飾品、化粧品、家電製品などを“大人買い”していくのである。


中国人に聞いてみると、高級ブランド品などは中国国内で買うよりも日本の方が安いという。中国やシンガポール、香港などは物価上昇が激しく、輸入品価格も上がっている。円安が進めば進んだだけ、日本の方が安くなる。


アジアからのお客様による「爆買い」とも呼ばれる旺盛な消費意欲によって盛り上がる我が国の観光産業に関する言及であり、「それらを支えているのは現在の円安である」という分析は非常に正しいです。また、アベノミクスが作った今のバーゲンセールの期間中に、本当の日本の競争力を育て、その魅力を伝えてゆくことをしなければ、為替の振り戻しと共に今の観光客が一気に引いて行ってしまう、というのも事実。

実は昨日、新宿でホテルを所有経営する某経営者さんとお話をしていたのですが、全く同じことを仰っていました。訪日外国人の増加によって連日90%以上の客室稼働が続いており、客室あたり消費単価(RevPar)も高いレベルで推移しているが、原則的にこれは円安の恩恵によるもの。目の前の数字に浮かれず、今のうちに基礎的な競争力を育てなければならない、と。

一方で、上記記事に対してちょっと残念だなと思うのが、以下の結論部分なんです。


外国人旅行者を惹きつける日本らしい本当の「売り物」を、全国各地で作り上げ、磨き上げていかなければならないだろう。地域の伝統行事や祭り、名物料理や観光地などをどうやって外国人にアピールし、味わい、楽しんでもらうか。


観光振興の話になると、すぐにこのような「伝統文化」の方向に話を持ってゆく人が居るのですが、この結論だけはちょっとピントがズレているかな…というところも。

観光を一般の商業の感覚に当てはめて考えれば当たり前のことなのですが、ショッピングを目的として集まっているお客様のロイヤリティは、一義的に「ショッピング観光地としての魅力」で稼ぐというのが大原則なのであって、伝統や文化行事というのはその先にあるお話なのですよね。

我が国は伝統文化のみならず、ショッピング観光地という一点においても、「ただ安い」以上の様々なポテンシャルを持っています。品質、品揃え、それらに伴う各種サービス、そして何より我が国で独自に育まれてきたファッション、生活雑貨(含む家電)やキャラクター商品分野…。さらに付け加えれば、それらを買い求めてブラブラと散策できる日本の「街」そのものの魅力など。まずは、ショッピングを求める外国人のお客様に、そのような都市型観光資源の価値を提供しながら、ロイヤリティを稼いでゆくことが必要です。

買い物を主たる目的として来訪するお客様にとって伝統行事や祭りというのは、その先にある副次的な価値にしかすぎません。まずは、その点をしっかりと認知することが必要だと思われます。