本投稿は新国立競技場に関するシリーズ投稿の続きです。前エントリを未読の方は、以下リンク先を参照。


その1:「誰かさん」の面子の為に使われるtoto収益
その2:「国立競技場」なる複合観光施設開発の失敗について
その3:国立競技場問題:可動屋根は「採算が合う」は本当か?
その4:国立競技場問題: totoくじ収益の「目的外」利用


さて、ここのところ連日言及してきた国立競技場に纏わる様々な問題ですが、いよいよ安倍政権が計画の見直し検討を始めました。以下、朝日新聞より転載。


新国立、2千億円未満に減額検討 デザイン見直しも
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150716-00000009-asahi-pol

2020年の東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の建設問題で、安倍政権は2520億円に膨らんだ総工費を2千億円未満に減額する方向で検討に入った。巨額工費に対する世論の強い批判を受け、計画の大幅な見直しを迫られた。

 政府関係者によると、今のデザインを決めた12年の国際コンペで選考に残った別のデザインを生かした案への変更や、工期を延長し一度に雇うより人件費を抑えることを検討している。


諸々の報道によると、安倍総理が森喜朗元総理に対して詫び(?)をいれ、「2019年のラグビーW杯に間に合わせる」という要件を外した上で、現ザハ案の更なるデザイン変更、もしくはコンペに最終まで残った他候補者のデザイン案の採用という二軸で、2000億円未満に開発費が減額できるプランを探るという方向性のようです。

ただ、報道等では未だ「デザインの見直し」などと表現されていますが、本来的に必要なのはこれ程までに開発費を膨らませた国立競技場の「機能」の見直しであるというのは、以前のエントリでも申し上げた通りです。現在の国立競技場の建て替え計画は、「運営採算を合わせる為」などという説明の下で純粋なスポーツ競技施設としては不必要な機能をモリモリと盛り込み、そこに多額の公金をつぎ込む複合観光施設開発になっています。その機能を列挙すると以下のようなもの。


89室の個室を含む巨大なVIPエリア、VIP専用のメディカルルーム、会員用ラウンジ、VIP用レストランとキッチン、スポーツ博物館、スポーツ体験エリア、図書館、多目的ホール、会議室、フィットネスジム、一般用の物販エリア、一般用の飲食エリア 等々


一般的に「コスト高の元凶」と説明されている二本のキールアーチすらもその実はただの「変態外国人建築家による奇抜デザイン」ではなく、競技場を全天候型アリーナ施設として使用する為に必要となる可動天井を支える構造物として提案されているもの。結局、JSCが当初の施設開発の要件としてやたらめったらに盛り込んだ「機能」が全体コストを押し上げているという構図は変わりません。一方で彼らが語っている「施設運営の採算性」は、民間と官庁が使う会計制度の違いを説明せず、国民に向かって「見せかけ」の採算性を論じているだけという事は以前のエントリで解説した通りであります。

結局、現在2500億円にまで膨らんでしまった開発費を縮小するには、「どこからか金が湧いて出てくる」という前提で投資採算性を無視してやたらと詰め込みまくった施設機能を絞り込んでゆく論議をしなければ、国民が納得するレベルにまで開発費を縮小することが出来ない。是非、これからの国立競技場論議は、見かけ上のデザインではなく、その中に内包される機能面に焦点を当てて進めて頂きたいなと思うところです。


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