私自身はギャンブル依存症問題の社会的啓発は必要だと思っており、ギャンブル業界に身を置きながら、というか寧ろそこに身を置いているからこそ、己自身が出来ることは色々やってきたつもりです。一方、江川紹子氏による野球賭博に関連する論調は違うと思うのです。

再燃した【巨人・野球賭博】、問題は選手個人の「甘さ」「弱さ」だけじゃない!
http://biz-journal.jp/2016/03/post_14267.html

主張の流れとしては今回、別所で発生している野球界の賭博問題への言及から「依存症には適切な医療サポートを」という主張に転じてゆくものです。

ただ正直、今、表面化している野球界における様々な賭博問題の大半は、寧ろ江川氏のいうところの「認識の甘さ」の問題であって、依存症云々という医療上の問題とは次元が異なるもの。勿論、今回問題となっている選手ら(もしくは未だ判明していない者)の中に依存症に該当する問題を抱えているものもいる可能性はあり、そういう方々には別途医療的な解決策の提供は必要でしょうが、逆にギャンブルに纏わる問題を何でもかんでも「依存症」に結び付ければ良いってもんじゃないですよ、と思ってしまうワケです。

先月、日本で最も古くから活動を行うギャンブル問題を抱える人の為の入所施設である認定NPO法人ワンデーポートは、開設15周年にあたって「~こんな世の中だから楽しく生きよう~」と題した記念フォーラムを開催しました。その開催にあたって、施設長の中村勉氏は以下のようなコメントを寄せています。


開設直後の数年間は、『ワンデーポート通信』でも私は繰り返し「病気である」と伝えてきました。しかし、度々お伝えしている通り、時間の経過、経験を積み重ねる中で、私たちの考え方が変わってきました。いま、テレビ、新聞からは「ギャンブル依存症という病気がある」と繰り返し伝えられるようになっています。厚生労働省の研究班からは536万人という数字が発表され、行政機関でも精神保健福祉センターなどでギャンブル依存の相談を積極的に行うようになりました。

15年前のワンデーポートから考えると理想的な形となっているのですが、私たちの考え方が変わったことで、昨今のギャンブル依存問題に対する社会的な取り組みには違和感と同時に危機感を抱いているというのが、正直なところです。
(出所:http://onedaypt.jugem.jp/?eid=1003


また、別所にて中村氏はワンデーポートの施設理念を以下のようにも述べています。


近年、いわゆる「ギャンブル依存症」という言葉が知られるようになり、のめり込みに対する社会的な関心も高くなっています。

ワンデーポートは2000年からギャンブルに問題がある人の支援に取り組んでいますが、当初はいま社会で考えられているように「病気」であることや、医療機関や相互援助グループに行くことですべての人が回復できると考えていました。

しかし、たくさんの利用者を受け入れていくなかで、ギャンブルに依存している人の多くは、ギャンブルをやることにより生活が困難になったわけではなく、社会生活をしていく上での課題、「弱いところ・苦手なところ」があり、パチンコ、パチスロやその他のギャンブルに逃避している人が多いことがわかってきました。

たとえば、ある人は大学在学中にパチンコに依存するようになり、社会的スキルや将来の目的がないままに大学生活に行き詰ってしまっています。ある人は、自分のキャパを超える仕事にストレスを抱えながらパチンコに逃避しています。また、ある人は幼少時から勉強や対人関係が苦手であり、金銭管理ができないままパチンコにハマってしまっています。
 
このように、ギャンブルに依存している人には、個別的背景があり、「ギャンブル依存という現象」が起きているわけです。したがって依存という行動を「病気」としてとらえるのではなく、人生の課題や生活の課題として考え、それぞれの課題にあわせた支援をしていくことが必要だと考えるようになりました。
(出所:http://www5f.biglobe.ne.jp/~onedayport/hajimeni.html
 

ワンデーポートは、ギャンブルに纏わる問題に日本で最も古くから取り組んできた民間組織であるにも関わらず、昨今、この問題がギャンブル依存症という「病気」として余りにも一面的に強調されすぎている風潮に異を唱えている、というかもっと言うならばその「リスク」を唱えている主体でもあります。

現在、世の中を騒がしているプロ野球選手における様々な賭博に関連する問題は(ひょっとしたらそれとは別途発生している薬物の問題も含めて)、幼少の頃からスポーツのみに能力を特化し、世を生き抜く為の社会的スキルを学ぶ場を殆ど与えられてこなかった職能集団が抱えてしまった個別の問題なのであって、そこにいきなり「依存症」という医療的な観点からの問題解決策を持ち込んだところで有効な対処にはならない。

中村氏の言をそのまま借りるならば、

ギャンブルに依存している人には、個別的背景があり、「ギャンブル依存という現象」が起きているわけです。したがって依存という行動を「病気」としてとらえるのではなく、人生の課題や生活の課題として考え、それぞれの課題にあわせた支援をしていくことが必要

であるという事です。

このようにワンデーポートの主張は、ギャンブル問題の中の「一部」を構成する医療に纏わる問題解決手法の必要性を認めた上で、それが全ての問題解決に有効だとしてしまう論調を否定するもの。実は、この問題の解決には「医療以外」のアプローチの提供も別途必要なのであって、それを担う主体こそがワンデーポートを中心としたNPOの活動であるのだというものであります。

現在、巻き起こっているプロ野球界での大騒動を見ながら、今の局面は寧ろこういうスタンスの人達こそが中心となって解決策を提示してゆくべき局面なのだろうなぁと感じた次第です。

ということで、現在、野球問題で大騒動になっている各プロ野球球団は元より、類似した問題が発生しうる各団体(スポーツ以外も含む)の皆さんは一度、ワンデーポートさんのお話を聞いてみるのは如何でしょうかね。以下、ワンデーポートへのリンク。

ワンデーポート
http://www5f.biglobe.ne.jp/~onedayport/


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