ドラムといえば、大概は木で出来ている。ならば、木材について学んでみるのもまた一興ではなかろうかと、情報を自分なりにまとめてみた。素人の仕事なのでどこまでお役に立てるのかは分からないが、少しでも参考になれば幸いだ。

※2015.3.14……記載が古くなったので少し編集。動画も足してみた。
※2017.1.14……記載を編集。少し項目も増やしてみた。

単体でドラムセットに使用される木材

【メイプル】
 正式にはハードメイプルといい、楓(カエデ)の一種。ドラムのシェル素材としては、最もポピュラーな存在といえる。高域から低域まで音のバランスがよく、心地のよいサスティーンが得られる。他の木材と比較して“明るい音質”と評されることが多い。
 ドラムの世界では、長らく高級素材として扱われてきたが、近年では中級グレードに採用されるケースも出始めている。一方で、良質な木材の入手が以前より難しくなってきているとの噂もある。
 鳥眼杢が現れるものは、特にバーズアイ・メイプルと呼ばれ、高級素材として珍重されている。以前はバーズアイ・メイプルを使った製品も見られたが、近頃ではあまり見かけなくなった。
 また、ドラムスティックの素材としても使用される。ヒッコリー製のスティックと比べて軽量であり、繊細なサウンドキャラクターとなる。




【バーチ】
 樺(カバ)の木のこと。メイプルの次にポピュラーなドラムシェル素材。メイプルに比べて安価なことが多いが、ロック系、フュージョン系などを中心に愛好者も多い。80年代にメイプルシェルが流行する以前には、YAMAHAやTAMAはバーチシェルをハイエンド製品に位置づけていた。
 バーチサウンドを謳ったドラムといえば、YAMAHAのレコーディングカスタムがよく筆頭に挙げられるが、一概に「これがバーチサウンド」というのは、今ひとつ説明しにくい。各社のカタログなどを見ても、どういう傾向の音色なのか、ハッキリとは言及されていないケースが多い。
 基本的には中低音域が強調された音色で、メイプルに比べると重心が低くてウォームな印象だろうか。(メイプルと比べて)比較的“太い”と表現されることが多く、人によっては“甘い”という表現になることもある。




【ブビンガ】
 マメ科Guibourtia属の広葉樹。アフリカ産の木材で、近年では和太鼓の胴にも使われている。サウンドは低音域が強く、やや硬質でストレートな音質が特徴だ。
 ブビンガシェルをメーカーとして最初に量産したのは日本のTAMAで、2005年頃のことであった。TAMA曰く「ダークでミステリアス」なサウンドが好感され、TAMA以外のメーカーでも採用されるケースが増えていった。
 前述したように、ケヤキ材の代替として和太鼓の胴にも使われるなど、正に打楽器向きの木材という印象の強いブビンガだが、残念なことに2016年にワシントン条約の規制対象になってしまい、取引が制限されることになった(附属書兇悗竜載)。
 附属書兇覆里如∈8紊垢阿砲匹Δ覆襪箸いΔ海箸呂覆い隼廚錣譴襪、将来的には、稀少材になってしまう可能性もある。




【ポプラ】
 古くからドラムシェル素材として利用されてきた木材。暖かみのあるサウンドが特徴。いわゆるヴィンテージ・ドラムによく見られることから、“ヴィンテージ感”を演出するための素材として、他の木材(メイプルなど)と組み合わせて使用されることも多い。
 単体で使われるケースでは、近年フィリピンマホガニーなどと代わって、入門用の安価なドラムセットでよく見られるようになってきた。



【オーク】
 英語でオークというと、常緑性の樫(カシ)の木と、落葉性の楢(ナラ)の木の区別がないそうだ。固くて重い特性から、芯のしっかりした音抜けのよいパワフルなサウンドが得られる。個人的な印象では、ブビンガにやや近いのではないかと感じている。
 オークシェルのドラムセットは、以前からYAMAHAが積極的に推している。
 また、ドラムスティックの素材としても使用される。堅くて重いので、パワフルなサウンドキャラクターとなる。



【ウォルナット】
 クルミ科の広葉樹。高級家具などに使われる木材として名高い。ウォルナットといえば黒っぽい木材というイメージが強いが、ホワイトウォルナットという種類もあるそうで、必ずしも黒っぽいわけではない。
 暖かみがありつつも独特の丸さがあり、弾性を感じさせる独特なサウンドが特徴。かなり個性的なサウンドキャラクターを持つ素材である。現在TAMAが積極的に推しており、同社フラグシップのSTARドラムシリーズにラインナップされた。



【ビーチ】
 ブナの木のこと。アタックが鋭く、中低音域が豊かで、粘りのある落ち着いた音色が特徴。その昔はYAMAHAがドラムセットを出していて、神保彰氏が使っていたりしたのだが、現在ならドイツのSONORが有名だろうか。
 昔から使われている素材ではあるが、ドラムシェルの素材としては、ややマイナーな存在といえるだろう。



【アルダー】
 カバノキ科ハンノキ属の広葉樹。エレキギターのボディ材としては最もポピュラーな木材。ドラムに使われることはまれだが、ddrumが世界で初めて製品化を果たした。
 中低音域が豊かで、リーズナブルながらなかなかのサウンド。今後、ドラムシェル材としての使用が拡大するかどうか、注目である。




他の素材と組み合わせて使用されるケースが多い木材

【カプール/カポール】
 フタバガキ科の広葉樹。マレーシアやシンガポールなどの東南アジアが原産。日本では龍脳樹(リュウノウジュ)とも呼ばれるそうだ。
 単体では、ウォームで太い中に硬さも感じさせるサウンド、というところだろうか。他の木材とミックスされて使用されるケースも多い。


【マホガニー】
 「桃花心木」とも呼ばれる。家具などにも使われる高級木材で、ヴィンテージ系のドラムの他、ギター材としても有名。ホンジュラス産の「ホンジュラスマホガニー」が最高級とされるが、現在は伐採が禁止されている。
 ポプラ同様、他の木材とミックスされるケースも多いが、単体ではウォームで柔らかいサウンド。

【アッシュ】
 モクセイ科トネリコ属の広葉樹。主に北米原産で、ギターのボディ材としての方が有名だろう。ドラムで使われるケースは少ないが、アタックが強く、レスポンスも良好。さっぱりとして、やや枯れたような印象の音色が特徴である。
 導管が太いため、木目の美しさが印象的。TAMAがステイヴシェルのスネアをリリースしているほか、CANOPUSがポプラと組み合わせたシェルで、ドラムセットを製品化している。


【ウェンジ】
 マメ科Milletia属の広葉樹。アジア及びアフリカが原産。YAMAHAのハイブリッドメイプルシリーズの芯材に使用される他、スネアにも使用されたケースがある。単体で使用されたケースが見つからないため、サウンドの傾向は不明だが、比重が重い素材とのことなので、サウンドに芯を出すために使われているのではないだろうか。

【ジャトバ】
 マメ科の樹で、YAMAHAの最高峰ドラムセットPHXシリーズのシェルに使われている。
 ハイブリッドメイプルシリーズのウェンジ同様、芯材としての使用で、極めて堅い木材なのだそうだ。



スネアドラムに使用される木材

【ゼルコバ(欅)】
 ゼルコバと聞くとなにやら新素材かとも思ってしまうが、実は欅(ケヤキ)のことだ。CANOPUSのゼルコバスネアは非常に有名(そして大変に高価!)。
 元ナンバーガールのアヒトイナザワ氏が愛用していたといえば、音色に想像がつく人も多いのではなかろうか。ある意味究極の木胴スネアという感がある。


【バンブー(竹)】
 英語だと若干分かりづらいが、要するに竹のことである。YAMAHAから出ていたバンブーシェルのスネアは金属的な音質との評判だったが、下に掲載したdwのスネアはそんなこともないようだ。工法によっても違いが出るのかもしれない。いずれにしても、ドラムの素材としては、あまりメジャーな存在ではない。


【ローズウッド】
 ギターの指板などによく使われる木材。非常に硬質で、やや金属シェルにも似た音質。オーケストラ用のスネアなどには根強い人気を誇る。TAMAによると、ドラムセットも作れないことはないが、他の素材に比べて保管が難しく、残念ながら販売には至らなかったのだそうだ。
 ブビンガと同様、2016年にワシントン条約の規制対象になってしまった(附属書兇悗竜載)。附属書気悗竜載ではないので、ハカランダのように入手不可にはならないと見られるが、若干心配な情勢ではある。


【檜】
 日本特産の木材である檜(ヒノキ)。SAKAE Drumがスネアをリリースした。本来、必ずしもドラム向きの木材とはいえないそうだが、素材の持続可能性なども考慮し、開発されたということだそうだ。
 現状では、まだSAKAE Drumの製品しか存在しないが、タイトかつ存在感のあるサウンドキャラクターといえる。


【パープルハート】
 バイオレットウッドともいう、メキシコからブラジル原産の木材。動画のシェルは塗装されているわけではなく、こういう色の木材なのだそうだ。
 dwが2016年に製品化した。サウンドは、金属的とまではいわないが、いかにも硬そうな感じではある。今後、使用が拡大するかどうか、注目の木材である。




以前よく使用されていた木材

【バスウッド】
 シナノキ科の広葉樹。バスウッドといえば主に北米産だが、日本のマカンバも近い種類である。安価で軽く、柔らかくて加工もしやすいことから、ギターのボディ材としてよく使用されている。ドラムのシェル素材としては、廉価グレードの素材として使われた時期もあったが、近年ではあまり見かけない。

【フィリピンマホガニー】
 フタバガキ科の広葉樹。マホガニーと名は付いているが、フィリピンマホガニーというのは、別名レッドラワンとも呼ばれる安価な木材のことである。かつては廉価版のセットなどによく使われていたが、こちらも近年はあまり見かけなくなった。

【アピトン】
 フタバガキ科の広葉樹。フィリピンを始め、東南アジアやインドなどが原産。80年代から90年代にかけて、TAMAが廉価グレードの製品に使用していた。フローリングや線路の枕木、トラックの荷台などによく使われているそう。

【メランティ】
 フタバガキ科の広葉樹。フィリピンではイエローラワンと呼ばれる。こちらはYAMAHAが80年代初頭に廉価グレードの製品に使用していた。

【桂】
 僅かな期間であるが、TAMAが一時期ミドルグレードの製品に使用していた。バーチと組み合わせたシェルで「タイトな切れ味」とカタログにはあるが、どんなサウンドだったかは不明。

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