2016年08月13日

私にはそれにチャレンジする気力はありません(笑)

今日は、世田谷区立図書館に返さなければいけない本があり、今年3月までは世田谷区立図書館ネットワークから外れていたけど4月からネットワークに含まれるようになった、旧まちかど図書室(池尻希望丘野毛松沢)に4月以降まだ行っていないということから、松沢図書室に行ってきたんです。そこで棚を見ていて気付いたのですが、禁帯資料が見当たらない。学生など向けに持ち歩きやすく作られた国語辞典・英和辞典なども貸出可能だし、分厚い広辞苑も貸出可能なんです。

松沢図書室は閲覧机がないので特別にそうしているのかと思い、検索機で世田谷区の他館の辞典類の禁帯状況を見てみたら、意外と貸出可能なものがある。広辞苑だと、最も新しい第六版は全て禁帯ですが、他の版だと逆にほとんどが貸出可能だったりします。資料の禁帯状況の変更処理や、禁帯ラベルを剥がす作業をする図書館員さんには当たり前の事実かもしれませんが、私の頭には「辞典類は貸出不可」というのが刷り込まれていたので、この状況を知って驚いてしまいました。

で、表題ですが、せっかく東京図書館制覇!というサイトを運営しているので、自分としては多少興味がない分野でも図書館利用体験的に珍しいことならしてみたりするのですが、広辞苑を借りてみるというチャレンジは気力が持たないなと(笑)。広辞苑を借りるという状況があるとしたら、何だろう。広辞苑と照らし合わせて読み解きたい本があり、それが広辞苑以上に厚くて重いため、その本を図書館に持っていくより、広辞苑を家に持っていくことを選ぶとか。調べ物のためでなく、思いつくままに広辞苑を読むのが好きな人も多いと思いますが、あの重さを持ち運ぶ面倒より図書館ではなく家でくつろいで読みたいという気持ちが大きければ借りるのか。私にはその根性がございません(笑)。

そういえば、世田谷区では中央図書館で額入りの複製絵画・ポスターの貸出もしていますが、これも私は借りたことがなく、借りたことがある人に「自転車で持ち帰ったらとてつもなく大変だった」という話を聞いたことがあります。でも、その方は持ち運びの大変さより、絵画一つで部屋の雰囲気が変わる楽しさを選んだわけで、やはり持ち運びに難のある資料を借りるかどうかは、その資料を求める思いの熱さ次第ということか。ならばきっと、重い辞典を借りて運ぶ人もいるでしょう。あらためて「図書館で借りられる本」の幅広さを思い知らされた発見でした。



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2016年07月12日

請求記号が同じ本の並べ方

今は改修工事のため休館している足立区立江北図書館について、少し前にの「MOB」(図書館の書架にあるお薦め本に、自由に栞を挟む企画)のことを書きましたが、もう一つ利用者の利便性を上げる取り組みを行っているので、今日はそれを紹介します。

図書館の本は請求記号によって棚に並んでいますが、ジャンルによっては同じ請求記号に該当する本が多数ある場合も多々あります。既に読みたい本が決まっているときには、請求記号を頼りに本のある場所を探すわけですが、同じ請求記号の本がたくさんあったら、結局その中から1冊1冊書名や著者名を見て探さないといけません。「211.7 イ」のように、分類記号だけでなく著者頭文字などを合わせた請求記号を使っている図書館だと、同じ請求記号の本も少なくなりますが、分類記号だけで請求記号としている図書館の棚は、本を探す手間が増えるジャンルが生まれてしまうことがあります。

「同じ請求記号の中では本の大きさで並べている」という図書館も少なくありませんが、新書・ムック本などの明らかに小さい・大きい本を見つけやすくする以外は、本の見つけやすさにあまり貢献していないように思います。絵本や写真集を別にすると本はたいてい決まっている。大きさで並べている棚の場合、請求記号が同じで大きさも同じ本はランダムに並んでいるので、結局1冊ずつ書名や著者名を見て探すことになります。同じ請求記号の冊数が多いジャンルをよく読む人は、探しにくさにうんざりすることもあるでしょう。

さて、江北図書館ですが、本棚に差してある見出し板を見ると、ところどころで人のマークのシールや本のマークのシールが貼られているんです。何だろうと思って、それらのシールが貼られている棚をじっくり見ているうちに、人のシールが貼られているところは、同じ請求記号の本が著者姓名五十音順に並んでいることに気が付きました。では、本は何だろう、出版社名順でもないし、タイトル名順でもないし…と自力で考えてもわからなかったので、降参して(すっかりクイズ気分ですが 笑)職員さんに聞いてみたところ、おおむね本の内容が同じものがまとまるように並べているとのことでした。

具体的に挙げると、「378 障がい児教育」は本マーク、つまり、本の内容が同じものがまとまるように並んでいる一方、次の「379 家庭教育」は人マーク、つまり、著者姓名五十音順に並んでいます。棚を見ると、「障がい児教育」は発達障害・アスペルガー症候群といった障害の種類によって本がまとまっているし、「379 家庭教育」は一概に内容でまとめるのが難しい本があり、「○○先生の教育論」みたいなかたちで著者名で並べることが理に適っているように感じました。

本来は、分類記号を細かくする、著者頭文字などもあわせて請求記号とするなどして、そもそもの「請求記号が同じものが多すぎる」状態をなくせばいいのですが、自治体内で共通の請求記号を使っている場合は1館だけの判断で請求記号が変えられなかったり、新設図書館でなければ貸出されて流動する蔵書のラベルの張替には手間がかかるので、気軽に変えるわけにはいきません。そんななか、ジャンルによって同じ請求記号の本の並べ方を変えて、それをシールでわかるようにしている江北図書館の方式は、コストをかけずに本の探しやすさを上げるやり方です。

そもそも、私が回った図書館の中では、同じ請求記号の中での並べ方を館内に示して利用者にわかるようにしているところがありません(私が見逃している可能性もありますが)。請求記号の細かさで同じ請求記号の本が少ない図書館や、蔵書数が少なくて同じ請求記号の本が少ない図書館なら確かに不要でしょうが、「請求記号が同じものが多すぎる」ジャンルが存在してしまっている図書館には、その同じものの中での並べ方をぜひ明記して欲しいです。その点では江北図書館も、シールが貼られているだけでシールの意味がどこにも書いてなかった(だから、私も職員さんに聞くまでわからなかった)ので、シールの意味も掲示するともっといいように思います。

本の分類はそれだけでも大きなテーマで、日本の図書館で使われている日本十進分類法だと、コンピュータ関連の本がバラバラのジャンルになってしまうなど、現代に合っていない面もありますが、請求記号がわかっているのにそこから本に辿り着くまで手間がかかるのは、それ以前の問題です。探しにくさが生じてしまっている図書館には、ぜひそれを解消する工夫を凝らして欲しいです。




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2016年07月10日

蔵前小学校の壁画の記事から、くらまえオレンジ図書館を振り返る

数日前の記事ですが、東京新聞2016年7月8日(電子版 都心版)24面に、解体工事を控えた台東区立蔵前小学校の壁面いっぱいに、在校生などが学校生活の絵を描いたという記事が載っていました。台東区立蔵前小学校といえば、くらまえオレンジ図書館が今の場所・「環境ふれあい館ひまわり」に移設してくる前にあった場所。台東区には、小学校の中にある図書館として東浅草なかよし図書館がありますが、くらまえオレンジ図書館はそれに先立って設置された「台東区立小学校の中の図書館」の最初の図書館だったんです。

小学校の校舎の一部を図書館にして、小学校とは別に入口を設置して、一般の人も図書館エリアに自由に入れるようになっている図書館というのは他の自治体にもありますが、旧くらまえオレンジ図書館と東浅草なかよし図書館は、小学校の「中」にあるという特殊な図書館です。利用する際には、入口のインターホンで職員さんに専用カードを提示し、オートロックを開けてもらって入館します。台東区立図書館は、東京23区在住者と台東区内在勤・在学者が利用登録できますが、これらの図書館は、利用できるのが台東区在住者と台東区内小中学校在学者・その家族と、他の台東区立図書館より限定されています(現在のくらまえオレンジ図書館は、小学校の中ではないので、他の台東区立図書館と同じように利用できます)。どちらも、小学校の学校図書館は別にあります。

私は台東区民ではないので、東京図書館制覇!として取材させてほしいと申請して旧くらまえオレンジ図書館を訪問し、行ったのはその一度きりなのですが、そこが解体工事を控え、それに伴って壁画を描くイベントを行ったというのは、少しばかり感慨深いです。在校生だけでなく、東京芸大の学生ボランティアさんなども関わっているようで、こちらのブログ記事を見るとその様子が垣間見えます。記事を読むと、単に楽しいイベントとはいえない、なくなってしまうものに思い出を刻むという機会を大切にするという信念に胸がキュンとさせられます。私が行った頃(2007年12月)には、小学校の入口に阿吽のパンダがいたのですが、それもなくなってしまうのかな。

東京新聞の記事によると、近年マンション建設が相次いだ影響で児童数が増えており、教室数の不足が見込まれることから、蔵前小学校の建替が決まったのだそうです。くらまえオレンジ図書館が移転したのも、教室数を確保するためだったのかもしれません。実際、蔵前小学校公式サイトの沿革を見ると、くらまえオレンジ図書館が現在の場所に移転したあと、くらまえオレンジ図書館のあったところに学校図書館を移し、学校図書館があった場所と他の場所を合わせて新教室を作ったという記載があります。蔵前小学校も東浅草小学校も複数の小学校を統合した小学校なのですが、今になって児童数が増えるというのは、人口動態に応じた自治体運営の難しさを感じさせられます。

そんなかたちで今は小学校から出てしまったくらまえオレンジ図書館ですが、名前には小学校の名残が残っています。「オレンジ」というのは蔵前小学校のキャッチフレーズで、「オ」大きな夢や理想に燃え、「レン」連帯意識をもち、「ジ」実行力のある児童の育成を目指し続けていますとのこと。蔵前小学校公式サイトを開くと、見た目上は見えませんが、ブラウザでページのソースを見ると、このキャッチフレーズの説明が載っています。図書館の名前には地名としては消えてしまった名称が使われていることがありますが、それに似た感じ。人口動態によって変化する施設の中に歴史を隠しておくみたいで、ちょっと面白いです。
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2016年07月04日

図書館のLINEスタンプ

私はLINEをやっていない、いや、正確に言うと、図書館のLINEアカウントの情報を東京図書館制覇!に掲載するために、今日初めてLINEアプリをインストールしてみた状態で、使い方も全くわからないのですが、図書館でLINE公式アカウントを持っているところもちらほら出ているんですね。東京都内だと、私が知る限り、足立区のやよい図書館竹の塚図書館鹿浜図書館が、図書館と一緒に指定管理を受託している地域学習センターと一緒のアカウントを持っているくらいですが、「図書館」というキーワードでLINE公式アカウントを検索すると、岐阜県の関市立図書館、大分県の日出町立図書館、愛知県の清須市立図書館など、他道府県にある図書館の公式アカウントが見つかります。

私は、図書館が無闇にSNSを使えばいいとは思っていなくて、特に文字制限のあるtwitterではせっかくの公式アカウントでいつも同じようなつぶやきしかしない(定期的なおはなし会の情報だけとか)ケースも見られますが、そのような使い方しかできないなら、いっそしない方がいいと思っています。SNSではタイムラインでいろいろな情報が流れてくるなか、いつも同じでは読み流されてしまいがちだし、いつも同じことしか発信していないと、「いつも同じことしかしていない」というイメージの発信になってしまうので。いや、継続して続ける事業はとても大切ですが、それはSNSでの宣伝との親和性は低いように思います。

でも、上手に使っているところは、こんな本が入ったんだ、こんなイベントがあったんだ、こんな募集をしているんだ、など、行きたくなる・読みたくなる情報を発信してくれる。図書館ではどこも、中高生にもっと利用して欲しい、でもなかなか来てもらえない、という課題を抱えているので、その点でもSNS活用は大きな可能性を持っていると思います。

そんなSNSの中で、LINEには「スタンプ」があり、やよい図書館と鹿浜図書館では、それぞれのマスコットキャラクターを使ったスタンプを公開しています。
 中央本町地域学習センター・やよい図書館のキャラクター「ちゅお&にゃよい」スタンプ
 足立区立鹿浜地域学習センター・鹿浜図書館のキャラクター「しかちゃんファミリー」のスタンプ
せっかくなら読書に関する会話に使えそうなスタンプがもっと欲しい気もしますが、そもそもLINEを使わない私が言うことではないか(笑)。

公共図書館は、単に人気のある本を揃えればいいというわけでない選書の専門性や、レファレンスという知識と経験が必要な機能もある施設ですが、それと同時に、誰にでも門戸を開く施設でもあり、親しみやすさもアピールしたい。そんなツールとして使える新サービスが今はいろいろあるということを、図書館のLINEアカウントを調べることであらためて感じました。






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2016年06月27日

足立区立江北図書館「MOB」

東京図書館制覇!は、「訪問記全体(自治体一覧)>自治体内の図書館一覧>図書館の訪問記」という構造をとっているので、その図書館ならではの取り組みなどを訪問記に書いても、そのページに辿り着いてくださった人にしか読まれにくい。今日は、そんな取り組みの一つをブログで紹介しようと思います。それが、足立区立江北図書館の「MOB(M:みんなの O:おすすめ B:本[BOOK])」です。

江北図書館は7月2日から改修工事のための長期休館に入る予定で、休館に入る前の状態を見ておこうと先日訪問したのですが、そのとき、以前訪問したときにはなかった取り組み「MOB」を発見。これは何かというと、利用者が書架にあるお薦め本にMOB専用のしおりを挟むという企画です。つまり、図書館の書棚にある本からMOBが頭を出していたら、誰かのお薦め本というわけ。MOBには「ペンネーム」「書名」「著者」「出版社」を記入するスペースがあり、下の方が空いているので、人によっては空きスペースに紹介文を書いていることもあります。

しおりを通じて本を紹介する企画は、いろいろな図書館をまたいで実施されている「kumori 本と人をつなげるしおり」や、小金井市立図書館貫井北分室で実施されている 「巡る栞」などもありますが、この両者は紹介本とは別にしおりを配布して、読むツールとして使われるしおりを使って本の紹介を広げていくというもの。

対して、MOBの場合は、紹介されている本そのものに挟んで、「その本が誰かのお薦めである」というマーキングに使われているというかたちです。こちらのスタイルは、東久留米市立中央図書館で実施していた(未確認ですが、実施している・現在進行形かも)「みんなの本棚」に近いですが、こちらが「読んだ人が感想を書き足す」ということに重きを置いているのに対し、MOBの場合は、本を特定できる情報を書くだけで参加でき、気軽なお薦め表明に重きを置いているかたちです。

実際にどれくらいのMOBが挟まっているかと書架の各段の上をざっと眺めてみると、小説の棚で1列に1,2枚挟まっています。そうだよね、という人気本に挟まっているのもあれば、私の趣味には合わない本にも挟まっていたり(笑)、いつか読みたい本として記憶しているけどまだ読んでいない本に挟まっているのを見たら、やっぱり面白いかと思ったり、同じペンネームで複数のMOBを書いている人がいると「この方は○○っぽい本が好きなんだな」と想像したり、「本棚の本に栞が挟まっている」ということが情報になっているのが面白いです。

せっかくなので、私も1枚、ネタバレしない程度のちょっとした紹介文付きで書いてみました。カウンターも通さずに勝手に書いて勝手に挟んでいいのですが、本当にそれでいいのかと思って職員さんに確認してしまったくらい。よかったら、探してみてください…と言いたいところですが、長期休館まであと数日しか開いていないので、よほどタイミングよく江北図書館の常連さんがこの記事を読んでくれない限りは、改修工事が終わる来年の3月を待たないとMOBがある本棚の様子は見られません。

江北図書館は最寄り駅である日暮里舎人ライナー江北駅からでも道のりにして1kmあり、通勤通学帰りに寄りやすいとは言いにくい立地ですが、だからこそMOBによるマーキングが、他にはない「地元・江北の人によるお薦め」になりえるユニークな企画です。いや、むしろ、来館者数が多い図書館で広まりすぎたら、栞の乱立になってしまうかもしれないので、こうした立地の図書館でこそ実施しやすい企画かもしれません。

MOBは江北図書館だけの企画なので、自分の好きな本にMOBが挟まれていたら、「具体的に誰とわからないけど、同じこの図書館を使っている人の中にこの本が好きな人がいる」という「見えない読書友達」みたいな感覚も面白い。長期休館直前のご紹介なのが心苦しいですが、面白そうと思った方はぜひ長期休館明けに覗いてみてください。
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2016年06月09日

映画「FAKE」観てきました

昨日は、映画「FAKE」を観てきました。ゴーストライター問題でマスコミから袋叩きにされた佐村河内守氏を追ったドキュメンタリーで、話題になっていると知りながら、平日昼間の回に行けば大丈夫だろうと思っていた私が甘かった。11:30開演の回に11:19頃着いたら整理券番号115番。座席数145のユーロスペーススクリーン2は、115番目に入ったときには見やすそうな席が埋まっており、前から2列目で観た私は画面酔いしてしまいました。居間で過ごしている佐村河内氏を取るときはカメラが固定されていることが多いものの、移動時など手持ちカメラで画面が大きく揺れる映像も少なくないので、これから見る人にはたとえ遅い整理券番号になってしまった場合でも、前ではなく後ろの方でどうにか空席を探すことをお薦めします。

この映画について、ネタバレさせずに話すのは難しいですが、感じたことを書いてみます。映画が撮られた時期は、ゴーストライター問題がまだ冷めやらぬ頃で、自分のことを取り上げられている番組を佐村河内氏が見るシーン、テレビ局の人間が出演依頼に来るシーン、外国のメディアがゴーストライター問題を取材に来るシーン、新垣氏の最近のタレント化した活動をメディアを通じて見ている佐村河内氏などが次々流されます。ドキュメンタリーなので、日常の生活シーンもあったり。

ちなみに、この映画の監督である森達也氏は、新垣氏をはじめとした佐村河内氏と対立関係にある人たちにも取材を申し込みますが、断られています。新垣氏に至っては、著書のサイン会に来場者として行き、サインに書く名前を森達也と告げたところで、新垣氏があの森達也と気づき、「あらためて取材させてください」「はい、ぜひ」という会話を交わしたものの、その後取材を申し込むと断られる。その意味では、この映画は佐村河内氏を追ったドキュメンタリーであるとともに、佐村河内氏のドキュメンタリーを撮っていると知られた人間がどういう対応をされるかということも映し出しています。

この映画を語る難しさは、「ゴーストライター問題」があまりに多くの要素を含んでおり、その主要人物を追うことでその要素全てに触れることになるからだと思います。私自身、簡便的に「ゴーストライター問題」と書いていますが、この件について佐村河内氏が作ったとされている作品が違う人が書いていたという点は、発端ではあるけれどそれほど大きい要素ではない、この点は佐村河内氏も謝罪会見の際に認めている。それよりも、耳が聞こえない作曲家であることで「現代のベートーベン」と呼ばれていた人が本当は耳が聞こえていたのでは、という障害に関することの方がマスメディアによって焦点をあてられていると言えるでしょう。

今、大きい要素ではないと書いた「作り手は誰か」という点についても、この件の真相は別にして(映画を見ても一方の意見を聞けるだけなので判断はできない)、構想を考える人と具体的なメロディを完成させる人が別だった場合、それは誰の作品になるのかというのは、漫画のアシスタントに著作権はあるのかということにも繋がるような、これだけでも語るべきことがたくさんあるんですよね。

それに加えて、障害のある人・ない人という二項対立して考えてしまう人の浅はかさ、公平に真実を探ろうとするより自分の意見と合うことだけ報道するマスメディアなど、本当にたくさんのことが詰まっています。私の中では、佐村河内氏が聴覚に困難がある同じ立場の人を最も苦しめたという言葉が印象的で、そうした方が口の動きで言葉を読み取ろうとすることは、困難のない人とのコミュニケーションに際して、手話や筆談だけに頼るよりコミュニケーションをよりスムーズにできることなのに、スムーズであることをもって障害を疑うというのは本当に酷いことだと思います。

ここまで書いていて気が付いたけど、私は佐村河内氏が本当に作曲したのか、とか、本当に耳が聞こえるのかとか、この問題について個別の興味はありません。それを判断できるほど、メディアを通じての情報は信頼できるものではないという思いは、この映画を見てやっぱりそうだと確認はしましたが。それに、上にも書いたように、佐村河内氏と対立する人たちの言い分を聞けないこの映画ではそれは判断できないし。だから、その辺の真実を知りたいと思って映画を観に行こうとしている人がいたら、この映画は見ても無駄だと思います。私はむしろ、佐村河内氏の件から見える、普遍的な人間の弱さ・ずるさとか社会問題とかのほうに興味があります。

そこで、「FAKE」というこの映画の主題を考えると、偽物・見せかけがあるとしたら真実もあるはずですが、でも真実って本当にあるのか、見せかけも本当にあるのか、偽物と真実に境界線は引けるのか、と思うんです。

例えば、佐村河内氏は、中度の感音性難聴で、身体障害者福祉法での聴覚障害には該当しない。これを「全聾」というのは確かに嘘だろうけど、「耳に障害がある」という表現をしたら嘘なのか本当なのかを、単純に手帳交付の有無で判断するのは違うのでは。

もう少し一般化させます。ちょっとお腹が痛い、でも頑張れば仕事できないことはない、でも今日は働きたくない気分、そのとき「病気で休みます」と言ったら、仮病なのか、それとも痛いことは事実なんだから真実なのか。

騙す相手が自分のときもありますよね。本当に辛いことがあったとき、それを自分でも認めたくないことがある。楽になるために、自分にとってそれなりに大事なことを「たいしたことではない」と思い込む。そうやってごまかすことが返って気持ちをこじらせることもあれば、そうやって辛さから乗り越えられることもある。思い込みが成功すれば「真実」で失敗すれば「嘘」ということなのか。

自分でしたいと思って何かをするのと、人にやれと言われて何かをしたのとでは、「何か」の質が変わってしまうのか。前者は真実で、後者は見せかけと言い切れるのか。

森達也氏は、ドキュメンタリーは嘘をつく、カメラを向けた時点で人は演じる、見せられる部分しか見せなくなる、という考えの人ですが、そもそもカメラがなくても、他人と一緒にいるときと自分一人でいるときって違うはず。それは、一人でいるときが本当で、他人といるときが偽物ということなのか。

佐村河内氏を通じて考えさせられる「偽物・見せかけ」「真実」は、かたちや大きさが違うだけで、誰でも関わりがあること。この映画の最後の問いに、何の曇りもなく答えられる人がいたら、私はその言葉こそFAKEだと思います。
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2016年05月27日

図書館の分類

最近、このブログはもっぱら「東京都の公立図書館でのビブリオバトル開催予定まとめ」を更新するのみとなってしまっていましたが、そのまとめも東京図書館制覇!に移してしまい、ますます新しいブログ記事をUPすることがなくなってしまいそう。そうならないように、久しぶりに既存記事の更新でも、お知らせでもない記事を書いてみます。

私は、図書館が改修などの長期休館に入る前にはなるべく行って、再開したときにどこがどう変わったのがわかるよう、長期休館前の様子を覚えておくようにしています。で、今日は、6月20日から長期休館に入る予定の練馬区立関町図書館に行ってきました。

関町図書館は住宅地の中にあり、のんびりできる雰囲気。23区の中で最も多く布絵本を所蔵しているのはおそらく練馬区だと思いますが、その練馬区内で最も多く布絵本を所蔵しているのがこの関町図書館です。戦前の教科書の復刻版や現行の教科書とその前の検定時の教科書を揃えた教科書コーナーも、関町図書館の特徴的な資料です。

そんな関町図書館の一般書架をぶらぶらしていたら、小説の棚で単行本の『傷だらけの店長』を発見。練馬区立図書館では小説と随筆を一緒にしているので、随筆という分類でその棚に入っているのでしょうが、そう来たかと。

『傷だらけの店長』は書店の店長が仕事での問題・悩み・自分の考えを綴ったもので、書店の現場からの叫びを本にしたような内容。このブログを見に来てくださるのは図書館に関心がある人だと思いますが、図書館に限らず書籍全般への関心から、この本を読んだことがある人も多いのではないかと思います。

そんな内容なので、大抵の図書館では『傷だらけの店長』は「024 図書の販売」に分類されています。関町図書館で「小説」(随筆も含む)の棚にあったので、へぇと思って館内の検索機で検索してみたら、他の練馬区立図書館でも全て「小説」の棚にあるとのこと。家に帰ってから23区の図書館で検索してみたら、練馬区立図書館以外では、足立区立江北図書館で「随筆」に分類されているのみで、あとは全て「024 図書の販売」に分類されていました(但し、中央区立図書館では所蔵なし)。ちなみに、足立区では2冊蔵書があり、江北図書館では「随筆」でしたが、中央図書館では「024 図書の販売」です。

では、練馬区立図書館が『傷だらけの店長』を「小説」(随筆も含む)に置いているのが間違いかというと、確かに体裁としては随筆なんですよね、この本。また、棚としては「小説」に置いてあり、請求記号も小説用の「著者名頭文字2文字」がついているものの、NDC分類としては024.04となっているので、検索機で「NDC分類=024」で検索すればこの本が出てきます。

なので、どちらに分類されるのが正しいかというより、練馬区立図書館では「内容としては●●だけど、体裁としては随筆という本は、●●ではなく小説・エッセイの棚に置かれる」ということを前提として使うのがいいのではと思うわけです。●●に関する本を随筆も含めて知りたい場合は、●●の棚を見るだけでなく、●●に該当するNDCで検索を掛けてみる。また、他の図書館では違う分類になる本も含まれる「小説」(随筆含む)の棚だと幅広い本に出会える、それはそれで楽しめると思います。

今日たまたま見つけた本を例にとりましたが、本の分類はどれと完全に決めきれるようなものではなく、複数の項目にまたがる本なんていくらでもあります。タイトルだけで判断して中身と異なる分類をするのは論外ですが、中身を知るからこそ分類しがたい本もある。図書館の使い手としては、「この図書館がどういう分類をするか」を知り、それを踏まえて使うのがいいかと。

私自身、下手にあちこちの図書館に行っているので、自分の最寄りの図書館をそれほど知っているかというと怪しい…というより、例えば練馬区立図書館のような、自分が借りれらない図書館で見つけた本を地元で予約するために、最寄りの図書館こそ予約受取と返却だけで本棚を見ずに帰ってしまうことも多いのですが、これからもその図書館の特性を知って使いこなしていきたいです。
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2016年05月14日

トークイベントを行いました

下北沢の本屋B&Bさんでの、江戸川区立篠崎図書館館長・吉井潤さんと私によるトークイベント、無事終了いたしました。

が、このトークイベントは吉井さんの『知って得する 図書館の楽しみかた』刊行記念で、吉井さんが主役なのに、私が話したいことを話過ぎたと反省中。
内容も、お越しいただいた方の半分弱が非図書館関係者だったのに、かなり図書館関係者寄りの内容になってしまいました。
お越しいただいて「もっとこういう内容が聞きたかった」というものがある方は、私が話せることならメールなどで聞いていただければお答えします。

久しぶりの強風のない晴天というお出かけ日和のなか、このトークイベントを選んで聴きに来てくださった皆さまには感謝です。
あ〜、「こういう話が聞きたかった」という方はホントに遠慮なくご連絡ください(←いろいろ反省中)。
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2016年05月13日

東京都の公立図書館でのビブリオバトル開催予定まとめ

東京都の公立図書館でのビブリオバトル開催予定まとめは東京図書館制覇!内に移動しました。

東京都の公立図書館でのビブリオバトル開催予定リスト

カレンダー形式でも表示するようにして見やすくしたつもりですが、スマホで見る人にとっては、livedoorが勝手にスマホページ化してくれていたレイアウトと比べて見づらくなってしまったかもしれません。

そして、ほとんどこのページの更新だけだったこちらのブログの更新は、この情報を東京図書館制覇!に移したことによって、ますます頻度が低くなってしまいそうです。
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2016年04月15日

下北沢B&Bで江戸川区立篠崎図書館館長・吉井潤さんとトークイベントをします

2016年5月14日(土)15:00〜17:00に、下北沢の本屋B&Bさんで、江戸川区立篠崎図書館館長・吉井潤さんと私によるトークイベントをします。

吉井潤×竹内庸子「みんな知って得する図書館の楽しみかたイベント」
『知って得する図書館の楽しみかた』(勉誠出版)刊行記念


吉井さんは、江戸川区の篠崎図書館篠崎子ども図書館の館長さん。4月初めに出版された著書『知って得する 図書館の楽しみかた』では、「第5章 図書館を使わない方へ」のなかの、図書館をこうやって探すと便利だという記述の中で、東京図書館制覇!も紹介してくださっています。この章のタイトルからもわかるように、この本は図書館をあまり使わない人や、決まった使い方(ネットで予約した本を借りるだけ、など)しかしていない人に、図書館サービスを広く紹介する内容なので、ぜひご一読を。

吉井さんと私とはF1好き友達でもあり、これまで何度か会ったときは本の話よりF1の話ばかりしていたくらいですが、こちらは私の方がアロンソの移籍する先々のマシンのダメさにうんざりしてあまり観なくなってしまいました。だから、ということではありませんが、トークイベントもちゃんと図書館の話に終始するはずです(笑)。吉井さんは、いい意味で図書館長っぽくない柔軟性のある方なので、どんな話になるのか私自身も楽しみです。

来てくださる予定で、当日こんな話をして欲しいという要望がある方は、この記事にコメントをつけてくださいませ。
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