東京図書館制覇!Blog版

東京23区の公立図書館を全て訪れたサイト「東京図書館制覇!」の管理人TakeniのBlogです。こちらでは、読んだ本や東京散歩など、図書館以外のことも書いてます。

『節電の達人』村井哲之


節電の達人』読了。これは2月1日に移転オープンした台東区くらまえオレンジ図書館で借りてきました。くらまえオレンジ図書館は「環境ふれあい館ひまわり」という建物の中にある関連で、環境関連の本の割合が高いんです。

そろそろ冬も終わりつつありますが、昨年夏に比べてこの冬は「節電しなきゃ」ムードは確実に沈静化していますよね。電力が足りないから、というだけでなく、原発という一度事故が起こったときの被害があまりにも大きすぎるものを動かさずに済むようにするためにも、引き続き節電の必要はあるのに。自分でも夏ほどの注意をしなくなったのを感じていたので、心を引き締めるためにも読んでみました。

この本の著者は『コピー用紙の裏は使うな!』を書いた人で、この本でも見た目にわかりやすいちまちました節電より先に、電力消費の実態をしっかり見直して、根元というか上流から改善せよ、というような内容。消費電力が大きい古い型の電化製品を小まめにスイッチ切る前に、まずその消費電力の大きさを改善するのが先だということですね。もちろん、「実態をしっかり見て」なので、消費電力の減り幅が家電の買い替え・廃棄に見合わない程度だったら替える必要はないし、上流を改善した上での「小まめにスイッチ切り」とかは必要。小手先のことで対処するのではなく、実態を見て効果のあることをしましょうという、実に合理的な考え方です。

実際、私も東京電力の契約アンペアは結構ギリギリ(ウチは冬は油断するとブレーカーが落ちることは珍しくない 笑)にしていますけど、「おトクなナイト」とか「深夜電力」といった契約メニューがあることは知らなかった。日々の努力だけに頼るのではなく、最初から契約をピークシフトしておけば確かに効果的ですね。

ちょっと話がずれますが、私、“ツイッター1円募金”みたいなの嫌いなんですよね。ツイッターでつぶやいたらスポンサーがあなたに代わって1円募金してくれるとかいうアレです。あれって「貢献している」感を感じられるのに対して、結果としては1回1円、しかも自分でお金を出すのではなく、他人にお金を出させるってどうよ…と思ってしまう。毎日それをつぶやいているくらいだったら、月1回缶飲料でも買ったつもりで自分の財布からコンビニの募金箱に100円(つぶやき3ヶ月以上分!)入れる方が断然効果が大きいですよね。

で、たぶん村井さんがおっしゃっている節電も同じようなことで、「節電頑張ってます」感を感じられる小さな努力だけで満足しては、効果は上がらない。使い方を工夫する前にどの製品を使うかを見直す、どの製品を使うかを考える前に使うことが本当に必要なのかどうかを見直す、そして電気使用の前提となる電力会社の契約から見直すという、より上流から見直していくことの重要さがとてもわかりました。

これからは半年に一度程度この手の本を読んで、定期的に心を引き締めるくらいでちょうどいいのかもしれませんね。

『廃墟建築士』三崎亜記

廃墟建築士』読了。三崎亜記さんの短編集です。三崎さんの作品は初めて読んだのですが、面白かった!突拍子もない設定が、ただの空想遊びに終わっていなくて、非現実を通して現実を考えさせられます。

例えば、この本のはじめに収録されている『七階闘争』。犯罪事件が建物の7階でたて続けに起こっていることから、市役所が建物の7階を撤廃しようと動き出す。移転を促された7階の住人には、素直に従う者もいれば、断固反対する人もいて、結束した反対者は闘争へと向かう。しかし世間の目は冷たく、闘争運動参加者は冷たい目で見られ…という話。

読み始めは、7階を撤去?何じゃそりゃ?と思うのですが、読み進むうちに「こんな風に全く罪の無いものを悪と結びつけて差別しているって、現実にもあるのかもな…」と思えてくる。荒唐無稽に思えるこの設定を、本当に荒唐無稽と笑える?同じような決めつけをしていない?と自分のことを振り返ってしまいます。

3編目の『図書館』もこれまたユニークな発想です。今「図書館」として地に留め置かれているものは、昔は野生の地が流れる「本を統べる者」という存在だった。その由来の影響は今も残っていて、夜になると野生の血を受け継いだ蔵書たちが、図書館の中を飛び回る。その本たちを調教して、まるで夜行動物の生態を見せる<動物園の夜間開館>のように、飛び回る本の生態を見せる<図書館の夜間開館>を実現させる女性調教師を主人公とした物語。

これ、一見すると本を擬人化している設定のようですが、登場人物の一人のつぶやきから、人を擬“本”化できる気もしてきて。もし私が図書館の本だったら、予約多数の人気本なのか、はたまた閉架に閉じ込められた本なのか、私の希望を言えば、ときどきでいいから長期間に渡って読んでもらえる本でありたいけどどうだろう…なんて想像が膨らんでいきます。

この、本が飛ぶという設定も、いろんな人の頭の中に本に書かれた情報が広がっていくことの比喩だと読み取ったら、棚の中に置かれたままにしておかないで、多くの人が読むことこそが本の「野生の血」に適ったことなんでしょうね。いやホント、閉架の本も眠らせておかないで活躍させないと!ですよね。

収録されているのは、上の2つに加えてもう2つ、計4編。ん?!と思う設定なのにぐいっと引き込まれて、読み応え十分です。三崎さんの本は、ぜひ他のも読んでみたいです。

群馬県内図書館プチ巡り

今日は群馬県内の市立図書館4つをざっと回りまってきました。実はご縁があって、前に東京都立中央図書館で行ったのような図書館職員さん向けの講演会を近日中に群馬県立図書館で行うことになり、お話させていただくからには群馬県内の図書館の様子も知っておこうと回ってきたんです。

とりあえず群馬県内で大きそうな市立図書館を選んで、できれば5館回ろうかと思ったのですが、電車ダイヤ的になかなかキツくて、結局朝4時に起きて渋川→桐生→前橋→高崎と回るというスケジュールに。迷わず辿り着ければ全館30分以上は滞在できるように組んだのですが、多少迷って滞在時間が削られてしまったところも。最後の方は眠気も襲ってきてヘロヘロでした(笑)。

この4館の中で一番新しいのが高崎市立中央図書館になるのかな。自動貸出機や予約コーナーもあるきれいで大きい図書館なのですが、おっこれはと思ったのが自動出納書庫がガラス張りになっていること。

稲城市立中央図書館や府中市立中央図書館にあるような自動出納書庫なんですけど、府中市立中央図書館の書庫がバックヤードにある(まだ行ってないけど、稲城市立中央図書館の書庫も地下だから見られない)のに対し、高崎市立中央図書館はその自動出納書庫が建物1階から上のガラス張りの区画の中にあるんですね(図書館は5,6階)。だから普段から自動出納書庫の中で自動的にピックアップする様子が見られるんです。

私は府中市立中央図書館の自動書庫見学ツアーで動いているのを見て飽きなかったので、高崎市立中央図書館のようにいつも見られるのは羨ましい。ただ、私が通ったときには全く動く気配なしでしたが。高崎市の皆さん、自動書庫にある資料を請求して、書庫の動きを楽しんでください! といっても、請求するために5階にあがると自動書庫の動きは見られませんが…。二人一組で、資料請求する人と書庫を覗く人に分かれれば見られますね(笑)。

あと、私がこれまでに都内の図書館を回った中で見たことがなかったのは、桐生市立図書館の読書会用資料。読書会用に複数冊用意された本があって、いくつかの読書会グループが月ごとに課題図書を決めて読んでいるようです。

私は書棚を見ただけなので、読書会の運営方法や課題図書、読書会用資料の選定がどういう過程で決まっているのかはわからず、この仕組みへの評価はできない(読書会用資料の選定を図書館がしていて、読書会参加者はこの中から選ばないといけないのなら、読書の自由を阻害している面もある。読書会運営や課題図書、読書会用資料の選定が利用者主体ならいいと思う)けれど、その書棚を見てちょっと思いつきました。図書館って人気本を複数冊所蔵するので、人気が一段落したらその本が大量に書棚にあることになる。それを読書会に利用できないかと。

つまり、貸出可状態の同じ本が5冊あったら、5人以内の読書会の課題本に使えますよ、10冊あったら10人以内の読書会の課題本に使えますよとアピールする。一度読んだ本も、いろんな人と感想を交わしたら、自分だけで読んだときとは違うものが見えてきそうだし。

読書会と関係なく借りる人もいるだろうから、リアルタイムで貸出可能冊数が反映できればもっといいかも。検索機の中に「x冊以上貸出可の本」と数字を入力したら該当する本が表示されるようにして、読書会の人数に応じて数字入力できるようにするとか。どこかの図書館システムに、おまけで機能つけてくれませんかね(笑)。

そんなこんなで図書館を回りながら、東京より広い空を見てちょっとリフレッシュ。天気もよくて気持ちよかったです。本当はこんなバタバタスケジュールじゃなくてゆっくり滞在したかったけど、それはまたの機会までお預けですね。

『れんげ野原のまんなかで』森谷明子

れんげ野原のまんなかで』読了。関東のどこかにある秋庭市立秋葉図書館(←変換ミスではなく、秋“葉”さんが寄付してくれた土地に建てられた秋“庭”市内の図書館なのです)を舞台にした謎解き短編集です。

閉館後まで図書館に身を潜めていようとする小学生、分類ラベルが暗号を示すかのように並び替えられた本、貸出リスト漏洩疑惑、秋葉さんの雪女目撃、書架にまぎれこんだ廃校された中学校の蔵書など、5つの短編でいろんなことが起こり解決していく中で、顔見知りの利用者が増えたり、職員同士の関係にも変化があったり。

人間関係だけじゃなく、事件をきっかけに図書館を囲っていたススキが刈られてレンゲソウの種がまかれ、最後のエピソードではレンゲソウに囲まれた図書館がちょっとした名所へと変わっている。季節の移り変わりが感じられるストーリーがほのぼのとしていて心地いいです。

比較的暇な図書館+優秀な司書+謎の事件 というのは、小説の舞台として最適ですね。実際の図書館職員さんは、こんなのんびり謎解きしている暇なんてない!と思うかも。まあ、そもそもこんなに謎の事件が起こらないか(笑)。

『図書館をつくった!』林健生

図書館をつくった!―ボランティア活動18年の記録』読了。この本は東京図書館制覇!を見てくれた方に、文京区立千石図書館の設立に関する本だと教えていただきました。千石図書館の設立にこんなストーリーがあったなんて!とても面白い本でした。ありがとうございます。

著者の林さんは千石にお住まいで、1974年に本駒込図書館が建てられてから子どもを連れて図書館に通うようになった。でも、子どもを連れて頻繁に本駒込図書館に行くとバス代がかかる。千石地域にも図書館があればいいんじゃないかと、千石図書館を作る活動をはじめたのだそうです。

その後、用地も運よく見つかり千石図書館設立へと進む一方、実際の設立までの地域の図書館活動を盛り上げるべく、林さんの自宅で「かたりべ文庫」という地域文庫を始めたというのもすごい。千石図書館ができるまでとはいえ、定期的活動にしてしまうと負担も多いですが、林さんの「基本的には趣味」というスタンスが長続きの秘訣なんだろうな。ボランティアって、義務や責任がからんできても、根っこに楽しい・好き・やりたいという気持ちが保てないと続かないですもんね。

そして、86ページに掲載された木造の頃の千石図書館の写真!千石図書館は、建設途中で家主が亡くなって放置状態になっていた木造住宅を、図書館へと改造して設立したんです。写真を見ると木造住宅をもとに作られたことが一目瞭然というか、千石図書館という看板が立てられていなかったら一般住宅にしかみえません。現在の千石図書館は更に改築された建物なのですが、この頃の千石図書館、行ってみたかったなあ。

ただ、ぎょっとする話もありました。図書館をつくる会発足のために、本駒込図書館の登録者の中から千石・白山・本駒込地域の人を抽出してもらって、手紙と電話で図書館作り運動に参加してほしいと連絡するくだり。たとえ図書館作りのためでも、一利用者に図書館利用者の個人情報を漏らすなんてもってのほか。もし林さんが善人を装った悪人だったら、図書館は一体どうやって責任を取るつもりだったのか…。

こういうことが実際に起こってしまうと、先日の記事のようなフィクションの設定どころの話ではありませんね。今は当時に比べて社会全体のプライバシー意識が高まっているので大丈夫かとは思いますが、専門的に図書館のことを学んだことがない職員さんは今もたくさんいると思うし、採用された人への図書館の使命の教育などもしっかりおこなって欲しいと思います。

林さん達の活動は、千石図書館が無事に出来上がってからも、ボランティアおはなし会開催や図書館研究会など、図書館を育てる活動として続いていきます。おはなし会の経験の考察なんかも読み応えありますよ。字が読めるのと本が読めるのとは違う、字が読めない小さい子でもおはなし会を通じて本を読むということを覚えられるし、逆におはなしを読むという体験がないと字が読めても本が読めない子になってしまう、という考察などは、とても考えさせられました。

この本について1つ難点を言うとしたら、ずっとルポルタージュ的な読み応えある文章だったのが、最後、ルポとしての締めがないまま、なし崩し的に資料や付録的な文章(林さんの奥様がドイツで読み聞かせをしたときの体験記)へと変わっていく構成。本のあとがきとは別にルポ部分の締めがあった方が読み手としてすっきりするように思い、この点担当編集者さんがうまく構成していればとちょっと残念。

でもホント、よく考えれば当たり前なんですけど、図書館は図書館職員のものではなくて、利用者・住民のものなんですよね。図書館が、というより、行政が担っているものは全てそうであるはず。それなのに実際の住民は、ただ与えられたものを何も考えずに受け入れすぎかも。我がままを言うということではなく、住民皆のためにこうした方がいいという意見はどんどん言うべきですよね。これからも図書館を使いこなさなきゃ!

ドラマ「ストロベリーナイト」のミスを活かせ!

先週、途中から見たらなかなか面白かったので、今日のフジテレビ21時からの「ストロベリーナイト」を見ていたら、図書館愛好家としては気になるシーンがありました。

ストーリーとしては、罪を犯しても軽い罰で社会に戻ってきた人間が次々と死んでいて、それぞれのケースだけ見ると事件性はないんだけど、繋げてみていくと誰かが制裁でもしているんじゃないかという疑いが出てくるんですね。で、死んだ人間について詳しく調べてみたら、そのうちの一人が、犯罪の責任能力がないと診断されるように、精神障害を装っていた可能性があることがわかった。というのも、彼は図書館で精神障害に関する本を読み漁っていた。それを示す証拠として、菊田刑事(=西島秀俊)が図書館からもらってきた貸出履歴らしき資料を取り出すシーンがあるんです。

図書館に詳しい人ならわかるとおり、図書館は「図書館の自由に関する宣言」で利用者の秘密を守ることを宣言していて、利用者が何を借りていたかを外部へ漏らすことはありません。捜査令状があれば見せるかもですが、ドラマの中では捜査一課十係姫川(=竹内結子)班が、事件の担当が回ってくる合間に気になったことを自主的に調べているという状況なので、捜査令状は出ているはずはない。

菊田が持っていた資料は貸出履歴っぽい感じでしたが、台詞としては「精神異常に関する本を検索していたようです」と言ってた気がする(録画はしてないので確認できない)ので、貸出なのか検索なのか、検索履歴なんて保存してないだろうとも思うし、意味がわからない部分もあります。実際に図書館職員が秘密をもらすシーンがあるわけではないので、相棒の「夢を喰う女」のようにお蔵入りになったりはしないかも。

で、こういうとき「ドラマ制作者が図書館が利用者の秘密を守ることをわかっていない」と叩くのは簡単ですが、それってモグラ叩きにすぎない。たぶん、「ドラマ制作者がたまたまわかっていない人だ」というより「一般的に知らない人が多い」というのが事実なんだと思います。だから、図書館側からもっと図書館の自由について、広く知られるように広報すべきなんじゃないかと。

これについては、私のサイトにも書いたのですが、練馬図書館に素晴らしいエピソードがあるんです。昔、練馬図書館で刑事事件もののロケがあり、これまた同じように貸出記録から犯人を割り出すシーンがあったのですが、それを知った練馬図書館は「そのシーンを削除させた」のではなく、「図書館員が警察の協力を断る話に変更させた」んです。図書館の自由に反するシーンにダメ出しするだけでなく、図書館の使命をアピールするシーンを入れさせるという、このしたたかさ!

それに倣うと、今回の「ストロベリーナイト」のケースも、むしろ利用するくらいでどうでしょう。例えば、
現在テレビで放映されている竹内結子主演の「ストロベリーナイト」というドラマをご存知でしょうか。誉田哲也の原作を読んだ方も多いと思います。

先日、このドラマのワンシーンで、利用者の貸出履歴を図書館が刑事に渡したかのようなシーンがありました。ですが、実際にはそのようなことはありえません。というのも、図書館には利用者の秘密を守るという使命があるのです…
みたいな感じで、図書館の自由について紹介するコラムを書いて、図書館だよりなどに掲載するとか。館内の隅に掲示されている図書館の自由に関する宣言より、こういう文章の方がよく読まれるんじゃないかと思います。

私に言わせりゃ、図書館はせっかくいろいろ頑張っているのに、謙虚すぎるのか何なのか(笑)、自分たちのやっていることを宣伝しなさすぎです。この機会に、図書館の自由を宣伝しましょう!

『ふしぎな図書館』村上春樹・佐々木マキ

ふしぎな図書館』読了。この本は前にも読んだことあるけど、このブログには書いてなかったような。昔の記事だと記事検索にひっかかってくれないこともあるので、もしかしたら書いたかもしれないのですが。

物語って、そのときの自分の状況によって受け取り方全然違いますよね。今の私は少し忙しくて思うように読書の時間を取れないので、牢屋に閉じ込められて読書を強要される<ぼく>が羨ましくなってしまいました(笑)。もちろん本当に強要されたらイヤだけど、読みたくても読めないときってそれさえ羨ましく見えてしまう。

<ぼく>が強制的に読書させられるのは、図書館の老人が知識の詰まったおいしい脳みそを吸いたいためで、なかなか残酷なことですが、これってフォアグラ用の鴨にやっているのと同じことですよね。人間のやっていることって、結構ヒドいよなあ…。

または、知識をつけても主体性を持っていないと他人に使われて終わっちゃうよというメッセージとも取れますよね。そう想像すると、老人の思惑を知っていても、それなりに読書を楽しんでしまう<ぼく>の心情についてもなかなか考えさせられます。

ただ、図書館好きとしては、<ぼく>が図書館を怖がって行かなくなってしまうという結末はちょっと悲しい(笑)。図書館を<知の世界>の比喩と捉えると、確かにいろいろ知ることは必ずしも楽しいことばかりではないですよね。でも、それを踏まえた上で知る勇気を持ちたいとも思います。

やはり図書館の力は人の力なんだなあと実感

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今日は立川市立中央図書館に行ってきました。東京図書館制覇!では利用者として普通に利用して訪問記を書いていますが、今日は取材を申し込んでの訪問です。というのも、ご縁があって来月他県の図書館と都内の図書館で職員さん向けに講演・研修をすることになり、そこでぜひ紹介したい事例を取材させていただいたんです。

こちらからお願いしたのは、児童向けに行っている「たまちゃんといっしょにきほんとしょマラソン」と「たまちゃんのこの本はどこ」の取材。

「きほんとしょマラソン」は、立川市立図書館で策定した基本図書を読んだらスタンプをくれるという企画なのですが、私が今まで図書館を回ってきた限り、「基本図書(推薦図書)リストを作る」とか「何か本を読んだらスタンプをくれる」といった企画はあっても、「決められた本を読んだらスタンプをくれる」というのは立川市立図書館でしか見たことないんです。この、ありそうでなかなかない企画がとてもいいなと思って。

ただ単にお薦め本リストを提示されるより、スタンプカード形式だと楽しいですよね。それに、この仕組みって図書館との親和性も高いと思うんです。基本図書に選んだ本は図書館でも冊数多く揃えているわけですが、小さい地域館だと必ずしも常に在庫があるとは限らない。図書館はやはり“順番待ち”という事態が起こりうる。それがスタンプカードスタイルにすることで逆に埋める楽しみになるというか、「この本がないなら、先にこの本に行ってみるか」みたいなのがまた楽しかったりしますよね。ある意味、図書館制覇も未訪問館を順に埋めていく遊びだったりするので、この楽しみはすご〜くわかります(笑)。

で、実績として、基本図書を策定してからの全館の児童書ベストリーダーの推移を見せていただいたのですが、これがすごい。基本図書を紹介しはじめる前は上位を漫画が占めていたのが、年を追うごとに基本図書が上位を占めていくんです。これほどキレイに効果が現れるかという驚きの実績。

そして、データをよく見ると興味深いのが、漫画のトップの利用回数(ほとんどの年で『ドラえもん』が漫画のベストリーダー1位で300台後半の利用回数)は変わらないんですね。で、基本図書がそれを上回って利用されることで、ランキングを塗り替えている。つまり、「漫画をやめて基本図書を読みなさい」じゃなくて「漫画もいいけど基本図書も読んでみない?」という感じなんです。このデータだけで判断するのは早計だけど、漫画目当てに図書館に来た子どもたちを上手に読書に誘導していると言えそうですよね。

でも、各館のベストリーダーのデータはもっと衝撃的で、必ずしも全館の集計のように基本図書が上位を占めていく流れになっていないんですね。前年まで漫画で占められていたベストリーダーが急に基本図書で占められることがある一方、基本図書で占められていたベストリーダーがある年から急に基本図書が消えてしまったりする。そこで何が起こっているかというと、職員さんの異動なんです。基本図書やスタンプカードという仕組みだけで効果が出るのではなくて、いいタイミングでこんなものがあるよと薦めるとか、それ以前にそういう話ができる関係や雰囲気を作れるとか、仕組みを活用できる職員さんの力が必要なんですね。

このほか「たまちゃんのこの本はどこ」の話やその他いろいろお話聞かせていただき、立川市立図書館のキャラクターの座を争っているかと思われた(笑)<たまちゃん>と<テトちゃん>の関係もわかりました。たまちゃんは図書館職員さん側の他立場で図書館を案内するキャラクターで、テトちゃんはそうした立場を超えたフリーダムなアイドルのようです。ということは、図書館を利用しに来たテトちゃんをたまちゃんが職員さんとして対応をする、なんて展開もあり?!今後の展開が楽しみです。

それにしても、熱意ある図書館の職員さんとお話できるのは本当にいい体験で、利用者として職員さんの熱意が嬉しいし、図書館に対する知識が深まってとても勉強になり、社会人としてもモチベーション高く仕事をなさっている人に触れて刺激を受けるという、あらゆる面でいい体験をさせてもらったなと思います。立川市中央図書館さん、貴重なお時間をありがとうございました。次はそれを講演・研修で、私から多くの方に伝えねば。微力ながら頑張って参ります!

『ヴァン・ショーをあなたに』近藤史恵

ヴァン・ショーをあなたに』読了。下町のフレンチ・レストラン<ビストロ・パ・マル>の周辺で繰り広げられるちょっとした謎と推理の短編集です。このシリーズ、好きなのですが、この本の最後を<ビストロ・パ・マル>の名物、ヴァン・ショーの秘密のエピソードで締めくくっている辺りから察するに、このシリーズはこれで一区切りということなのかな…。もっと読みたいです、近藤さん!

このシリーズの前作、『タルト・タタンの夢』の感想でも書いたけど、飲食店+ミステリということで、ついつい北森鴻さんの<香菜里屋>シリーズと比較してしまうのですが、完璧な<香菜里屋>の工藤さんに比べて<ビストロ・パ・マル>の三舟シェフにはダメなところもあって可愛いんですよね。特にこの本に収録されている『マドモワゼル・ブイヤベースにご用心』で、女性に告白された後のうろたえぶりったら(笑)!

自分用の覚書も兼ねて、収録されている7編の概要を書くと、こんな感じ。

 ◆錆びないスキレット
お客様の田上夫妻の家で使っているスキレットは、シーズニングして丁寧に扱っていてもすぐに錆びてしまう。三舟シェフが申し出て、そのスキレットを錆びないようにしっかりシーズニングしたら、飼い猫が逃げてしまった。

 ◆憂さばらしのピストゥ
三舟シェフとサブシェフの志村さんが昔一緒に働いていたという南野くんが、近所にフランス料理店を開いた。数ヵ月後にビストロ・パ・マルやってきたベジタリアンの女性客2人連れ、南野くんが出してくれるベジタリアン向けフランス料理にハマッているという。メニューを聞いた三舟シェフと志村さんは思わず顔を見合わせる。

 ◆ブランジェリーのメロンパン
ビストロ・パ・マルのオーナーの小倉さんが、近所にカフェスタイルの本格的ベーカリーを開く。店を任せられた斎木さんと中江さんはパン以外の料理に疎いので、三舟シェフがメニューの相談に乗る。一方、ビストロ・パ・マルのソムリエの金子さんは、出店予定の場所の裏にある昔ながらのパン屋のファンで、そちらの店がどうなってしまうのか心配。

 ◆マドモアゼル・ブイヤベースにご用心
ときどき一人で来店する女性客の新城さんは、毎回ブイヤベースを注文する。ある日、新城さんが珍しく男性と2人連れで来店したと思ったら、食べきれないのでブイヤベースを持ち帰りたいという。

 ◆氷姫
圭一はかき氷好きの杏子を10年前からずっと想っている。彼氏が傷害事件を起こして落ち込む杏子を支えているうちに一緒に暮らすようになるが、その元彼が冷凍庫に忘れられていた氷を圭一に届けると、杏子が家を出てしまう。

 ◆天空の泉
恋人に逃げられてフランスで行く当てなくさまよう江畑さんは、美味しいと聞いたトリュフオムレツの店に行き、ふとした偶然で日本人の三舟さんと食事することになる。恋人が『星の王子さま』を置いて家を出てしまったと話す彼女だが、三舟さんは彼女に思いがけない言葉をかける。

 ◆ヴァン・ショーをあなたに
フランスのユースホステルで、風邪を引いた貞晴に同室の三舟がお粥や味噌汁を作ってあげる。それをきっかけに仲良くなったスタッフのルウルウが、2人をミリアムおばあちゃんの屋台に連れて行く。ミリアムおばあちゃんの屋台はヴァン・ショーで有名なのだが、その年のヴァン・ショーはいつもの赤ワインではなく、白ワインで作られたものだった。

ちなみに、『タルト・タタンの夢』を読み終わったときから探している、<ビストロ・パ・マル>と<香菜里屋>の両シリーズ以外の「飲食店ミステリ」は、残念ながら一向に見つかっておりません。特定の飲食店ではなく晩餐会とかも含めれば、『料理人』や『料理長が多すぎる』などあるのですが、「飲食店ミステリ」と絞っちゃうと意外とないのかな。まあ、引き続きのんびりと探してみます。

あともう一つ、<ビストロ・パ・マル>と<香菜里屋>に共通するのは、謎解き面よりそれに込められた想いがよくて、謎解きだけだったら答えがわかってしまえばいいところ、お店の雰囲気や人々の思いがいいからまた読みたくなるんですよね。実在のお店の評価も、料理そのものだけじゃなく、雰囲気や従業員の人柄という要素が(少なくとも私は)影響大きいですけど、まさにそんな感じです。

『移動図書館ひまわり号』前川恒雄

移動図書館ひまわり号』読了。1台の移動図書館から始まった日野市立図書館の初代館長による手記です。

移動図書館ひまわり号には、実は私も大変お世話になっていたんですよね。私は幼稚園入園前から小学校3年生まで日野市に住んでいて、まさにひまわり号の利用者でした。私が住んでいた建物の裏の駐車場がひまわり号の駐車場所だったんですよね。

建物としての図書館が無い状態で移動図書館から市立図書館の歴史が始まったのは、建物を建てる予算がなかったからというよりは(それも一因ではあるけれど)、「図書館」というものを市民に浸透させるよう、図書館の側から市民のいる場所に出向こうという考えのもとだったんですね。

というのも、当時(1965年)図書館は閲覧席を利用する受験生が集まるばかりで、本はお飾りであるかのように誰も借りていかない。所蔵資料自体も職員が「良書」と思うものを置くだけで、市民が読みたい本はない。図書館が、税金を使って建てたけどほとんど来館者のいない「○○記念館」みたいな施設になっていたというんです。だから、市立図書館をつくろうという話になったとき、建物として図書館を設置する前に、<図書館に行けば読みたい本が借りられる>という図書館の本来の姿を見せ伝える必要があったんですね。

あれこれ考えさせられることばかりだったこの本、特に興味深かったのが図書費の臨界点の話。図書費と利用数の関係は、1次関数のグラフのような単純なものでなく、ある程度以上あれば利用がどっと増えるようなんです。図書費が臨界点を超えれば「図書館に行けば読みたい本がある」と期待して利用者がやってくる、でも臨界点以下なら「図書館に行ってもつまんない本しかないんでしょ」となって誰も来なくなる。図書費に比例して利用数が増えるのではなく、どこかの時点で<使えない図書館>から<使える図書館>に切り替わるスイッチがあるって、数字上で考えると不思議だけどわかるような気がします。

それに、開館するまで、そして開館してからのいろんな話を読むに、これは今でもそうだと思うのですが、熱意があってよりいいサービスを目指す職員さんが戦う相手って、何かとできない理由を付ける同僚だったり、図書館に理解のない役所の人だったりするんですよね。

私はサイトの中でも図書館にはどんどん意見・要望を出そうと書いていますが、こういうのを出すことってクレーム行為ではなく、頑張っている職員さんの追い風にもなるんですよね。職員さんが一人で「こうした方がいいと思うのですが…」と提案するより、「利用者からもこういう意見が出ています」と言えた方が抵抗勢力に向かっていきやすい。だから不満だけでなく、いいことをいい、続けろとフィードバッグすることも重要ですね。

図書館とは何か、図書館の良さを知らない人にそれを伝え、利用を広げる活動はこれからも必要でしょうが、本に書かれた当時から50年ほど経った現代社会では、同じやり方のままでいいかというとそうはいかないでしょう。

まだ図書館のサービスを知らない人にサービスを体験してもらおうとなったとき、家にいる専業主婦や子どもが多い時代なら、市民の住むところに平日移動図書館を走らせればよかった。でも、共働きの夫婦が増え、子どもも塾や習い事で忙しい今は、住宅地に行ったところで、その時間にそこにいる住民数は減っているんじゃないかと思います。

では今図書館利用を掘り起こす方法はといったら、簡単に思い浮かぶところでは、サービス提供時間を広げるとか、駅などの「通過する人数」の多い場所でサービスをするなどでしょうか。それこそ移動図書館を平日昼間の住宅地への巡回ではなく、会社や学校からの帰宅時間帯の駅前への巡回にしたら、これまで図書館を利用したことない人を掘り起こせるかもしれませんよね。

図書館巡りで新しい図書館の開館日に行くと、利用登録する人の数にびっくりするんです。つまり、その人たちはその新しい図書館ができるまで他の図書館も利用したことがないということですよね。で、自分の生活圏内に自分の行ける時間に開いている図書館がやってきてくれれば利用する。図書館の運営方法を工夫することで、まだまだ利用者は増えると思います。

最後にもう一つ、この本を読んで私はまだまだ図書館利用が少ないなと思いました。日野市の図書館友の会の方々が講座の開催を要望して実現、それが盛り上がって、ついには講師が勤める大学と講座を共催するまでに至ったという話を読んで、ほとんど本を借りて読書するだけに終わっている私は全然図書館を使いこなせていないなあと。

図書館の会議室とかって、図書館行事以外ではほとんど使われていなかったり、机を並べた閲覧室と化しているところもありますが、利用者が読書会などを開いたりしてもっと活用すべきですよね。現状の図書館の使われ方は、利用者が受身すぎる。図書館主催の行事でだけでなく、利用者が主催の行事があってもいいのでは。

文章から前川さんの熱意が伝わってくるので、読んでて利用者としても気持ちが盛り上がってくるんですよね。これからも、いやこれまで以上に、図書館を活用していきたいと思います。
ご挨拶

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