死者と踊るリプリー』読了。トム・リプリーは、シリーズ最初のディッキー・グリーンリーフ殺害に始まり、絵画贋作に関わってそれに気付いた絵画愛好家を殺害したり、その他成り行きでいろいろ罪を重ねてきたのに、いずれも幸運に恵まれて犯行がバレずにきました。が、今回はトムの犯罪に気付いた暇人が、暇に任せて過去の被害者の関係者を連絡を取って、トムの罪を暴こうと周囲をうろつきます。トムは好奇心で行動している暇人の攻撃をかわせるか? というお話。

こう書いてみると、パトリシア・ハイスミスの世界は本当におかしな世界だよなあ。罪を暴こうとする人でさえ好奇心が動機で、誰も正義感を持ち合わせている人がいない(苦笑)。

それでも、今回は珍しく、というか初めてか、トムは誰も殺さなかったんですよね。全然自慢になりませんけど(笑)。

トムの場合、現実的にはお金のために罪を犯すのですが、彼の感覚としては「自分の美意識に反するものを排除する」という感じで、現実的には自分の生活を脅かす人であっても、美意識に適う人であったら手を出すのを控えたり、それどころか自分には関係ない犯罪を手伝ってあげたりするんですよね。そこが何か、犯罪者なのに憎めないんです、この人。

そんな彼ですが、今回は大嫌いなタイプの人間にも直接手を下す必要なく問題解決。しかもその暇人にわずらわされている間も、心なしかこれまでのシリーズ作品に比べたら神経質になっていなくて、やっと「嫌なヤツは排除する」という犯罪気質から成長したのでしょうか。

一応、シリーズ完結作のようなので、5作目にしてやっと犯罪者からの卒業なのかも。とはいえ、6作目が自然に書けそうな終わり方でもあるんですけどね。

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