東京図書館制覇!Blog版

東京23区の公立図書館を全て訪れたサイト「東京図書館制覇!」の管理人TakeniのBlogです。
こちらでは、読んだ本や東京散歩など、図書館以外のことも書いてます。

カテゴリ: 作家別:島本理生

あなたの呼吸が止まるまで』読了。島本さんらしい作品です。子どもの作文のような「〜でした」という文体で、一見大人びている主人公(小学6年生)の幼さ・弱さを強調した後に、大人の身勝手さを登場させるので、主人公と一緒に読者も心が痛んでしまう。この小説の「大人の身勝手」はかなり不快ですので読む方は心した方がいいです。

よくよく考えると、実際の子どもだって、「考えがしっかりしている子だから大人の事情もわかってくれる」なんて思うのは大人の勝手な考えで、実際は「考えがしっかりしている子だから大人のずるさにしっかり気付く」んですよね。この小説にはストーリー上に大きな「大人の身勝手」があってそちらが目立ちますが、教師や親の小さな身勝手にも傷ついているし。

私が島本さんを好きなのは、こうした状況に対して、頼りがいがある大人(恋愛がらみの作品の場合は頼りがいのある男性)がその場から救ってくれるわけではなく、弱かった者がほんの少し強くなるという展開に共感できるから。別の他人に守ってもらうのって、一見解決しているようにみえるけど永遠の解決ではない不安定なもので、だからといって劇的に強くなるのも無理。周囲の助けも借りながら、まず一歩自分が強くなるというのにとても共感します。

この作品については、メタ構造になっているのも凝っていていいです、といったらネタバレになっちゃうかな。

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波打ち際の蛍』読了。昔の恋人の暴力で、閉じこもってしまった麻由ちゃんが、カウンセリングの相談所で出会った蛍くんと、惹かれあう恋愛小説。

って書くと、慎重に慎重に歩み寄っていく二人を想像したくもなりますが、私から見れば二人とも、特に蛍くんの方が不用意に距離を縮めちゃうところがあるんですよね。そのときの感情に、その感情が刹那的であるかもしれなくても、その感情に忠実に行動してしまう。それで傷つく覚悟ができててそうするならいいけど、傷つく覚悟なしにそれやっちゃあ、そりゃ傷つくって。

まあ、それが若いときの恋愛なのかもしれませんが…って発言、年寄り臭いか(笑)?でも、自分が傷つくだけならともかく、相手を傷つけないためにも、その場の感情に不用意に流されないようにするのが、大人の恋愛ですよね、きっと。

麻由ちゃんは、人と触れ合うことに臆病になっているんだけど、今は無職ながら元々はマッサージ師だけあって、好きな人を思うのに五感をフルに使って感じている、その様子がいいです。そうした豊かな感情ゆえに深く傷つくことになってしまったのかもしれないけれど。

好きな人にマッサージしてあげるというのは、ちょっと憧れるなあ。私自身は、あまりマッサージが上手ではないので。両親ともに肩が凝るタイプではないらしく、そんなことを言っているのを聞いたことがないから、肩たたきでさえも小さい頃から今に至るまでしてあげたことないし。

マッサージは無理でも、五感で好きな人を感じる人にならなれるかな。

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クローバー』読了。ひろねこさんの記事を読んだら、久し振りに島本理生を読みたくなってしまって、篠崎図書館の棚で真っ先に目に付いたこの本を借りてみました。最近、緑がお気に入りなので、緑の表紙のこの本で(笑)。

家に帰って読み始めたら止まらなくなって、3時間くらいで読了。あとがきによると「野性時代」青春小説特集で読みきり短編として書いたものが、短編一つではおさまりきらなくなってしまって、連載という形になったのだそうです。一応一つ一つが読みきりっぽくなっているので、全体で一つの長編というよりは、連作という形。

登場人物たちのしっかり悩んでいる様子、というよりは、ここが青春小説というテーマにふさわしいところなのでしょうが、悩み「始める」様子がいいんですよね。自我が出てくるとでもいうか、「こういうときはこういうものだ」「こうすることが求められている」「自分のことはおいておいて、まずは相手のために」という判断基準から、「自分がしたいことを自覚し、選択する」「自分がしたいことを相手に伝える」という考えへ。

37歳の私が読んでいて、微笑ましいというのと同時に、自分もこうして自分の周りのものにきちんと向き合っているかなと省みたり。でも、考え込むというより、周りのものを大事にしようと思える、いい読後感です。

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生まれる森』読了。もう何も言い訳はしませんが、今度こそは本当に島本理生一休みになりそうです。というのも地元の砂町図書館にある島本理生作品をこれで全部読みきってしまいました(笑)。厳密に言うと、『クリスマス・ストーリーズ』という複数作家による短編集がありますが。

『生まれる森』は恋愛小説ではないと思いました。著者も「恋愛小説とはいえないのかもしれない」ってあとがきで書いていますが。立て続けに読んでいる前2作でも思ったけど、この人のあとがきを読むのも結構楽しみです。どんなことを考えてこういう小説を書いているのかなって知りたくなるので。

恋愛小説ではなくて何なのかというと、成長過程小説というか、あまり人に頼らないで生きてきた女の子が周りの助けを借りることを覚える様を描いた小説という感じ。これは私の考えですが、一人でどうにかしようとすると一人分のサイズのことしかできないと思うんです。でも、いろんな人に関わってもらうと成果が一人分のサイズの大きさのものになる。もちろん、一人サイズ以上の苦労を背負う可能性もあるんだけど。

ここでいう成果って別に仕事とかに限らず、ちょっと嬉しいこととかそんなことでもね。で、この小説はそれこそそうやって一人分の嬉しさや悲しさだけで生きてきた女の子が、人と関わって嬉しさや悲しさが大きくなっていく様を描いていると思う。

それと、あらためて認識してしまったのは、冷めてしまった気持ちって本人にもどうにもならないんですよね。私は熱しやすく冷めやすくて、熱しやすさはともかく冷めやすさをどうにかしたいと思っているのですが、恋愛感情って意思でどうにかなるもんじゃない。う〜ん、まあいいや。これは独り言ということで(笑)。

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一千一秒の日々』読了。昨日、yoriさんへの返事で「あまり熱くハマらずに慎重に読んでいこうと思っています」って書いたのに、その予定はどこへ行ったやら(笑)。

これもよかったですよ〜。雑誌に連載した小説を単行本にしたもので、ある短編で主人公ではなかった人物が次の短編で主人公になっていて…という連作になっています。

登場人物が似たような性質の人って気がするので、たぶんこういう人がダメな人は島本理生自体ダメなんじゃないかと思いますが、自分の気持ちに誠実でいようとする人って私好きなんですよね。それにこうやってゆっくりと歩むような人に私が憧れているんだろうなあとも思います。自分がいろんなことを勢いでどうにかしちゃおうとする方なので(笑)。

世の中って本当に不思議で、訳わかんない事件なんかもたくさん起きているのに、この小説の人物達のように地味で誠実な(もちろんそうじゃない人もちらっとは登場するけど)人も確かにいるんですよね。
私、今日亀戸で自転車停めるときに自転車を倒しちゃったんだけど、そのとき通りがかりのちょいヤンキー風の女の子が起こすの手伝ってくれて。最近の若い人って私が若いときよりそういうことができるんじゃないかとさえ思う。

で、そうかと思うと、この単行本の最後の小説のようにちょっとしたエゴで歪んだことをしちゃったりもするんだよね、人って。特にこの最後の作品は、『ナラタージュ』の原案のような感じで、あのせつない想いが甦ってきます。

と、続けて読んでしまいましたが、ひとまずここで休みを入れよう。くれぐれも一気にハマって一気に冷めるようなことにはならないように(笑)。

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リトル・バイ・リトル』読了。

島本理生って、地に足がついている感じがすごく好き。頭で考えているんじゃなくて、心で感じていることをそのままに、という様が。社会の中で生きていると、「こう感じている」という現実を「こう感じるべき」という理性で押し殺しちゃったりすることってありますよね。でも、島本理生が書く人って、そこで一度立ち止まって急がずに自分の気持ちを確認するようなところがあって、読んでいてすごく気持ちがいいんです。

例えば付き合っている人に対して気持ちが冷めてきちゃったときに、私は「長く付き合っていればこんなこともあるよ」って思って冷めた気持ちを黙殺しちゃったりするんですよね。で、黙殺し続けたものがある日大爆発してしまう(笑)。

いや、私の場合、「ちょっといいな」くらいな気持ちを「すごく好き」に自ら盛り上げちゃうところがあるんだよなぁ。それでしばらくして、やっぱり「ちょっといいな」くらいだったことに気付くという失礼極まりないパターン。私も島本理生の書く人のように、ちゃんと自分の気持ちを自分がわかっていないとだめだなあ。

と、ほとんど小説の内容に触れていない感想ですが(笑)、何が起こるわけでもなく気持ちのいい(私にとっては)世界にしばし浸らせてもらえる小説です。

で、最後にあとがきを読んでちょっと笑っちゃったんだけど、「明るい小説にしようと、最初から最後までそれだけを考えていた。」とあるんですね。確かに暗い小説ではないけど、世に数多ある小説の中でこの小説が果たして明るい小説と言えるのかどうかかなり怪しい(笑)。でも、「明るい小説」を目指してこんな穏やかな小説を書く島本理生が私は好きです。

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ナラタージュ』読了。

他人の心を力ずくで変えることはできない。いろいろ手を尽くしたところで、好きになった相手が自分を好きになったくれるという保証はなく、その相手が自分を好きになってくれるという幸運を祈るしかない。

それと同様に、実は自分の心も力ずくで変えることはできない。

嫌いになれればどんなに楽かと思っても、意思の力ではどうしようもなく、ただ時が気持ちを薄めていくのを待つしかなかったり、この人を好きになれれば穏やかな日々が送れるだろうと思っても、意志の力で好きになることはできない。一時的に勘違いすることはできても、いつかは本当の想いが露呈してしまう。


なんて、柄にもない文章を書きたくもなってしまいます。もう、号泣ですよ、この本。

泉と葉山先生、もっとうまいことすれば、うまいこと行った可能性だってあるのに、うまいことなんてなかなかできないんだよね、実際…。

そもそも「うまいこと行く」って何だろう。恋や愛を超えた信頼で結びついてしまったことが、恋や愛で結びつくことを邪魔してしまったのかな…。

このまま書き続けると、自分のプライベートなことを書いてしまいそうなので止めておきます(誰も読みたくないって 笑)。

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