作家別:有川浩

2011年07月26日

『阪急電車』有川浩

阪急電車』読了。阪急今津線のうち、宝塚駅から西宮北口駅までの往復を舞台にした小説です。先日の『エデン』といい、今更読むかという感じですが、図書館での貸出をメインに読書しているとこうなります(笑)。

阪急今津線の雰囲気はのんびりしてそうでいいなあ、乗ってみたい、と思ったけど、小説としては私にはそれほど面白くなかったです。有川さんって、登場人物にあまりバラエティがないんですよね。状況が違うだけで、性格や発想は同じ人ばかりが出てくる。

図書館戦争シリーズでは図書館隊が舞台だったので、突っ張っているけど弱いところもある可愛い女子とそれを見守る男子ばかりでも、それなりに気にせずに読めたけど、電車といういろんな人がいるはずのところで、同じ性格や発想の人ばかりだとさすがに…。それに、集団からのハブエピソードや、電車きっかけで付き合うカップルエピソードなど、この小説では、似ている状況の繰り返しも多い。ちょっと飽きてしまいました。

鉄道という、いろんな人が集まって、見も知らぬ人がつながっていく小説としては、『ドミノ』の方が断然面白い。…あれ?、そういえば私、前に読んだとき文庫本の解説を読んでみようって言ってて、その後読んだっけ?せっかくだから、もう一度文庫本で読んでみようかな。

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2008年05月21日

『図書館革命』有川浩

図書館革命』読了。有川浩の図書隊シリーズ第4弾にして、最終巻。

何かすっきりしていてよかったです。最後巻だからって欲張らず、表現の自由一つに絞って書き上げたのがすごくよかった。登場人物のプライベートも、それぞれなるようになったようだし(笑)。

一つ気になるとしたら、表現の自由の侵害に対して、欧米はしっかりしていると簡単に設定されちゃっていること。まあ、小説の設定を複雑にしすぎると話が進まなくなっちゃうからしようがないんだけど、911後のアメリカなんて表現の自由が守られていたか怪しいと思うもん。

それにしても、このシリーズを読むとつくづく感じるのですが、得るのにした苦労を知らないと、せっかく持っている権利を疎かにしちゃうんですよね、人間って。特に表現の自由のように、直接生死に結びつきにくいものは後回しにされやすい。

この間、元彼と御飯食べたときに、「聖火リレーで熱心に中国国旗を振っている中国人を見て、一番苦々しく思っているのは、天安門事件の世代の中国人かもしれない」という話になったんですよ。自分の生まれた国を思う心は大事ですけど、それを過度にして排他的になったり、そのときの社会の風潮に安易に乗っていると、社会に意義を唱える権利、いやそれどころか社会に疑問を持つ自由さえ、自ら奪うことになりかねない。

何かを表現したり、行動を起こすんだったら、後ろ盾がなく全く一人でやらなければならないとしてもやるくらいの心積もりがないと、後悔することになるかもしれないし、下手すれば他者に利用されるでしょう。その点で言えば、チベット・聖火リレー問題については、チベット支援側にも問題を深く知らずに安易に行動している人がたくさんいそうに思いますが。

小説のように隊を組むことはないとはいえ、自由を、権利を守るためにはずっと戦わないといけないのでしょう。侵害しようとするものと戦うのみならず、むしろ「そんなに頑張って守らなくてもよくない?」みたいな怠惰さに対して。

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2007年09月09日

『図書館危機』有川浩

図書館危機』読了。有川浩の図書隊シリーズ第3弾。いつもながらに笑える恋愛話などなど織り交ぜながら、図書館の、そして図書館以外の問題をもきっちり押さえているなぁと思う。

今は例えば戦前戦中のような検閲ってないけど、過剰な自主規制はあったりしますよね。第三章での差別用語の話なんてまさにそう。ほとんど意味のないような禁止用語の設定は、それを禁止することで誰かを差別から守るというより、何でもいいから設定したものを守ることで安心感を得ようとしているだけではないかとさえ思える。

それに、これは私が接した人だけがそうなのかもしれませんが、書くことを職業としている人って、そうだからといって自分の表現にあまりこだわっていないというか、何か言うと結構すぐ直してくれちゃうんですよね。

おかげさまで東京図書館制覇!の方はこれまでに時々雑誌やネット上で取り上げてもらえることがあり、それが個人のブログなどでしたらその方が思うままに書いてもらって構わないし、いちいちチェックもしていないのですが、ちゃんとした企業が運営しているニュースサイトやそれに類するもので間違ったことを書かれたりしているときは、こちらから連絡することもあるんですね。

で、昔からこのブログを読んでいただいている方なら知っている人もいらっしゃると思うのですが、私は自分の文章に対して訂正を依頼された時、こういう対応をするような人間ですので、明らかに間違っている(例えばサイト名が違うとか)ことは訂正をお願いするんですけど、それ以外のことに関しては「この表現では誤解を招く可能性があると思うので、できれば誤解を招かない表現に変えて欲しいけど、これは私の考えにすぎないので、実際にどういう表現にするかはそちらの基準でご判断ください」みたいなことをくどくど書いているんですよ。私には私や私のサイトに関して「こう読め」とか「こう書け」とか言う権利ってないですしね。

でも実際のところ、ここまで気を遣っているのに何なんだというくらい、簡単に表現を変えちゃうんです。これはむしろがっくりきちゃうんですよね。書くことを職業としている人ってそんなものなのかと。職業とすると、かえってコスト(ちょっと直せば終わる話ならさっさと終わらせちゃえ)とか、事なかれ主義(大問題になるよりこちらが折れればいいや)とかがはびこるのでしょうか。

と、既に長くなっちゃったけど、もう一つだけ。このシリーズは、「メディア良化法という、検閲を許す法律が施行されてから、表現の自由が侵されるようになってしまい、それを守るために図書隊が編成される」という話なのですが、そんなメディア良化法が何で成立してしまったかというと、審議されているまさにそのときに「興味を持つ人が少なかったから」なんですよね。これも、今の社会にとって非常に耳の痛い話。

さすがにこの情報が溢れる社会で、全てのニュースに関心を持って自分の意見を言えるくらい知識を持って考察もしておくことは難しいけど、これは興味を持っておくべきだという問題は嗅ぎ当てて、後を追っていく嗅覚を持っていたいな。目先の利害に惑わされたりすることなく。

などなど、いろんなことに思いを馳せてしまうこのシリーズですが、あとがきを読むとあと1冊で終わってしまうのかな。う〜ん、それは嫌だ。

ちょっと前にハリーポッターを終わらせないでくれと騒いでいるファンがいるという話を聞いて、「作者が終わらせるっていうんだから、終わらせていいじゃん。無理に続けて書いても面白くなくなるって。」などと思っていたけど、今はそのファンの気持ちがちょっとわかる(笑)。
せめて、続きを書かなくてもいいから、これで終わりという宣言もしないで欲しいのですが…どうでしょう、有川さん(笑)。

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2007年06月09日

『レインツリーの国』有川浩

レインツリーの国』読了。先日読んだ『図書館内乱』に中途難聴者の女の子が出てきて、彼女が幼なじみの図書館隊員に中途難聴者を主人公にした恋愛小説を薦められたことから一騒動起こるんですね。

で、著者の有川浩がそうやって小道具とした小説を本当に書きたくなって、書いたのがこの『レインツリーの国』というわけです。

難聴に限らず、今は本当に医学や技術が発達したので、昔だったら寝たきりになるしかない病気でも動けるようになったり、障害を抱えていても一見健康な人と変わらないような生活が送れたりするようになっている。でもその分、一見健康に見えるけどそうではないことがわかってもらえなかったりしちゃいますよね。

日常生活をつつがなく送るには、周囲の人達にそうと知らせればある程度解決するとして、でも好きな人に知らせたいかどうか。知らせないままデートしようとした彼女の気持ちもわかるし、結局ばれたときに信用されてないと受け取ってショックだった彼の気持ちもわかる。

自分に照らし合わせて考えると、彼女側の立場(知られたくないことがある)だと彼女と同じように知らせないでいるくせに、彼氏側の立場(言ってくれれば何かできたのに、ということを隠された)に立ったときには彼氏と同じように怒ってます、私。この本読んでたら、自分が相手を信用しないくせに、相手から信用されたがっていることに気付いてしまった。恋愛偏差値20くらいだな、こりゃ(笑)。

そうそう、それとこの小説、凝りもせずというか、『レインツリーの国』の中で彼女と彼氏が出会うのも、同じ本が好きだったことがきっかけという設定にしたあるんですよね。まさか、またこの作中作も実際に出版するということはしないと思いますが。

どこまでも入れ子構造というのは、意味があるのかな。この著者の外の本を読めば、何かわかるかもしれません。

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2007年05月29日

『図書館内乱』有川浩

図書館内乱』読了。以前読んだ『図書館戦争』の続編。今回も楽しく読みました。

今回はおなじみ登場人物の家族やら幼なじみがいろいろ絡んできます。ちょうどこの間、大相撲観戦の後のちゃんこで家族でいろいろ話したもので、自分ちと比較して読んじゃいますね(笑)。

それに何やかんや言っても、登場人物皆がぶっちぎりに純情な郁に負けず劣らず純情なところを持ってるんですよね〜。それが可愛い。

そんな話を織り交ぜながら、図書館についての問題をあれこれ取り上げています。いや、図書館の問題に限らず、報道の問題なんかも。検閲や表現の自由とかね。こういうのは、ネットを通じて自分の意見を簡単に誰でも見られる場に発表できちゃう私達にとっては、身近というより、無自覚じゃいけない問題だよな。

で、前作の『図書館戦争』と違うのは、前作ではそれらが「図書館」の敵である「メディア良化委員会」との対立の中で描かれていたのに対し、今回は図書館内部の「行政派」と「原則派」の対立の中で描かれていたこと。設定がどんどん複雑になって面白くなっていってます。いや〜、これはこれからも楽しみ。

で、さっそく続編の『図書館危機』を予約しました。このシリーズは小説として面白いだけじゃなく、図書館のことを考えるのにも役に立つので、そのうち買っちゃう気がする。

また、作中作の『レインツリーの国』もしっかり予約しました。作中に登場させた本を、著者が本当に書きたくなっちゃって出版した本なのですが、図書館シリーズとは別の出版社なんですね。予約待ちの数から言って、『レインツリーの国』の方が先に手元に来そうです。

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2007年03月07日

『図書館戦争』有川浩

図書館戦争』読了。いやぁ、面白かった〜!これが本当に月9になったら、月9嫌いの私も見ちゃいますよ。

時は昭和が終わった30年後、正化31年という設定。公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる法律として「メディア良化法」が昭和の最終年に施行され、検閲は執行機関のやりたい放題。そんな状態に対抗して成立されたのが「図書館の自由法」。「図書館は利用者の秘密を守る」などが含まれた「図書館の自由に関する宣言」を立法化しちゃったという訳です。法を執行せんと行政が「良化特務機関」を作ったのに対し、図書館も防衛員を抱えて武装。いざ守れ、図書館の自由!

図書館のこと抜きにしても、テンポが良くて読み物として面白いんですよね。登場人物も皆個性的で、でも図書館戦闘員なんてモノが本当にあったら、こういう人がなりそうな気がする(笑)。

そこにちゃんと図書館のことも折りこんでいて。実は図書館に限らずあらゆる権利って所与のものではなくて、先人の努力の上に獲得したものなんだけど、そういうのって結構忘れがちですよね。っていうことをこんなエンターテイメントを通じて描けるってすごい。

このブログの他の記事を読んでいただいている人ならご存知のように、私は結構真面目なことを真面目に書いちゃう方なので(笑)、こうやって楽しく描ける人は本当に羨ましい!

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