現在発売中の専門誌『企業会計』(12月号、中央経済社)に、辻山栄子教授の『IFRSをめぐる6つの誤解』という論稿が掲載されています。

非常に面白い内容でしたので、一部抜粋してご紹介します。


■米国の動向
『現在では、米国がIFRSを現行の米国基準と差し替える可能性は極めて低いと考えられている。そして今後もその可能性は極めて低いであろう。』

■IFRS導入国は100カ国以上もあるのか
『より厳密な意味でのIFRS全面導入(required for all)国を検討してみると、EU以外のいわゆる先進資本主義国はごく限られていることがわかる(中略)IFRSは既に世界100カ国以上が採用しているのに日本だけが乗り遅れているという主張も、必ずしも当たらない。』

■IFRS準拠の必要性
『現在のEUはIFRSのごく一部だけをカーブアウト(除外)して議会で承認されたEU版IFRSを採用しているが、IFRSが将来的にさらに汎用品になっていく場合には、さらにカーブアウトの範囲が広がり、もはやIFRSをアドプションしているという表現自体が当てはまらなくなる可能性も否定できない。』

■IFRSの導入は、財務諸表の国際的な比較可能性を高めるのか
『日本基準とIFRSに準拠した連結財務諸表間の比較可能性はある程度確保されている。一方IFRSの内容を精査してみると、IFRSを適用している財務諸表どうしの比較可能性は必ずしも高いとはいえない。』

■時価評価によって会計情報の質が高まるのか
『この会計モデルを用いて計算される利益(=包括利益のこと)を、税や会社法上の課税所得計算ないし利益計算の基礎となる利益として用いることには無理がある。』

■OCI(その他の包括利益)の中にノンリサイクリング項目の区分を設けて、この部分についてはその後に決済されても当期純利益に算入しない方式の提案は日本の働きかけの成果なのか
『これは重大な誤解である。もしこの部分(=売却可能有価証券の評価差額など)がいずれOCIから当期純利益にリサイクルされないのであれば、その場合の当期純利益は、もはやキャッシュフローの配分計算としての特性を失ってしまうことになる。』



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