「週刊ダイヤモンド」(2015/8/22号)にこんな記事が載っております。

機械に奪われそうな仕事ランキング1〜50位!会計士も危ない!激変する職業と教育の現場


『機械に奪われそうな仕事ランキング』2位 が「会計士」のようです。


ネット上では、「公認会計士の仕事が機械に奪われるわけないだろ!」という意見や、「監査の8割は機械でもできるかも・・・」という意見があります。


ただ、このランキング、ツッコミどころ満載です。
恣意性を感じます。


このランキングは、以前話題になりましたオックスフォード大学でAI (人工知能)などの研究を行うMichael Osborne(マイケル・オズボーン)という准教授らが書いた
The Future of Employment: How susceptible are jobs to computerisation? (『雇用の未来—コンピューター化によって仕事は失われるのか)』
という論文が原典です。

このオズボーン論文はこちらから閲覧できます。

この論文は、702の職種について、コンピューターに取って代わられる確率を試算し、それを ‘0’ (not computerisable) から ‘1’ (computerisable)まで計数化しました。この係数は上記の論文のP57以降にすべて掲載されています。

で、どういう結論になっているかというと、

●コンピューターに代わられる確率が99%の職種・・・「Tax Preparers」(税務申告代行者)
●コンピューターに代わられる確率が98%の職種・・・「Bookkeeping, Accounting, and Auditing Clerks」(簿記・会計・監査事務員)
●コンピューターに代わられる確率が94%の職種・・・「Accountants and Auditors」(経理担当者・監査人)

となっています。

この「Accountants」や「Auditors」が公認会計士を指しているのか、社内の経理担当者・内部監査人を指しているのか分かりません。「経理担当者・監査人」と訳しておきます。

機械に奪われそうな仕事ランキング
([出処]『The Future of Employment: How susceptible are jobs to computerisation?』、702職種の中で「Tax Preparers」は695位(=ワースト8位)というランキング)


オズボーン論文によれば、『機械に奪われそうな仕事』は、(会計監査が含まれているのかどうか分かりませんが)税務の仕事も、経理担当者の仕事も含まれているということです。しかも、いずれも90%を超える確率で。


「週刊ダイヤモンド」のランキングは、オズボーン論文を原典としているものの、オズボーン論文との紐付きがよく分かりません。「Accountants and Auditors」を「会計士」と訳しているのかもしれません。また、「就業人口」と「平均年収」を元に独自に「代替市場規模」というものを算出し、これをランキングにしてますが、この算出方法も首を傾げます。米国はCPAの人数は約34万人おりますし(日本の公認会計士は約27000人)、平均年収もトップクラスの職種ですから(参考)、そりゃランキングの上位にきますわな。



『週刊東洋経済』(2013/2/2/25号)においては、就業者増減ランキングが掲載されておりましたが、こちらは日本の国勢調査を元に就業者増減のランキングが作成されているため、恣意性のないランキングといえます。これによると就業者増減ランキングのワースト1位は「会計事務員」で、5年間で31万人もの「会計事務員」が”消えている”という衝撃的なデータでした。この「会計事務員」という用語も抽象的で誰を指しているのかよく分かりませんが、元データを調べると、公認会計士ではなく経理担当者ではないかと思います。


我が国でも、ネットバンキングのデータから自動的に記帳して決算書を作成するという会計ソフトが出てきましたが、いずれは税務申告書も自動作成できるという機能を実装してくるはずです(既に開発していると思います)。我が国の99.7%が中小企業・小規模事業者であり、その多くは現金主義で決算書を作成しているわけですから、そういう会社に限っていえば経理担当者の仕事は(既に)機械に奪われているといってもいいでしょうし、この傾向は今後も加速すると思います。そして中小企業・小規模事業者における経理担当者の非正規雇用化、管理業務のアウトソーシングも加速し、いずれは中小企業・小規模事業者から管理部門は消えるだろうと予測しています。


そういう意味では、オズボーン論文や、東洋経済の調査はうなずける結果ではあります。公認会計士の仕事が機械に奪われるのかどうかはオズボーン論文等では判断できませんし、少なくとも『機械に奪われそうな仕事』の2位だとは全く思いませんが、人口減少、会社数減少、士業増加、IT化という流れを鑑みれば、公認会計士、税理士が会計監査、税務だけでは食っていけない日がくるだろうと私は思っています。イノベーションがなければ淘汰される職種だと思います。