IPOコンサルの第一人者 公認会計士・谷間真氏が日経産業新聞(2018/11/5)に
「監査難民」を生み出すな
というタイトルで寄稿されています。


ここに書かれていること、ホントに大問題なのです。

めちゃめちゃ大切なことが書かれていますので、全文引用させて頂きます。


資本市場のインフラである監査業務は公認会計士の独占業務であり、実質的には継続性を担保するため監査法人でなければ新規株式公開(IPO)のための監査はできない。

しかしながら現在、大手監査法人はIPOを目指すベンチャー企業との監査契約を管理体制や不適切取引の有無などによる監査の可否ではなく、事業内容や収益性により審査するスタンスを取っており、希望しても監査契約が締結できない、いわゆる「監査難民」がスタートアップ市場では続出している

また、監査報酬についても著しい高騰が見られ、もはやベンチャー企業を支援しようという志はなくなったかとも取れる状況だ

一方で、東証マザーズ市場は小規模でも将来性のある新興企業に上場を促し、証券会社もIPO支援体制を強化している。政府もベンチャー振興を推進しており、監査法人だけが流れに逆行している状況だ。

監査法人の言い分としては、人的リソースが不足しており全てのIPOを目指すベンチャー企業の監査を行うことができないため、成功に近い一定規模まで成長した企業の監査を優先させているとのことだ。

しかし、変化が激しくイノベーションが求められている時代に、ビジネスに精通しているわけではない財務会計の専門家である監査法人の視点で成功企業を判断するという考え方がそもそも疑問である。

私は、監査業務は資本市場のインフラとして、企業にとって必要と判断されるときに適切な価格で提供されるべきサービスであるべきだと考えている。各監査法人は私企業でおのおのの判断があってもいいのだろうが、公認会計士業界として、この問題を早急に解決しなければ日本経済の成長を会計士が阻害していることになりかねない

このような状況を打開する策として、私は上場準備プロセスにおける監査業務の見直しを提案したい。

IPOを目指す企業は約4000社ともいわれているが、証券取引所への上場申請に至るのは年間100社程度であり、監査法人は、監査契約を行っている9割以上の企業には、監査報告書を提出していない。一方で小規模のベンチャー企業の財務諸表に対して継続的にレビューを行うことは、熟練した会計士であれば短時間で実施可能であり、監査意見に影響を与えるような大きな問題はレビュー前に対処できるはずだ。

その後、上場準備が進行し、証券会社の審査開始など一定のタイミングで、監査法人は十分な人的リソースを投下して監査を実施すれば、問題は解決するのではないか。このような監査意見形成を公認会士協会が上場準備プロセスにおけるレビュー及び監査の実務指針などとして策定し、証券取引所、金融庁、証券会社などの関係各所と調整すれば実現可能だと思う。


谷間氏のおっしゃるとおり、各監査法人は私企業ですから、おのおのの判断があってもいいと思います。しかし、資本市場のインフラの一翼を担っているという社会的使命も負っています。「監査報酬についても著しい高騰が見られ」るだけでなく、監査報酬が低いクライアントとの契約を解除していってる大手監査法人もあります。中小監査法人も全てを引き受けることはできません。先日、某中堅監査法人のパートナーと食事をした際にも、この話題になりましたが、「(某大手監査法人を名指しで)いい加減にして欲しい」と痛烈に批判していました。実際にIPO準備企業で「監査難民」がおきています。

監査報酬の著しい高騰はIPO準備企業だけでなく、上場企業でもおきています。IFRS導入を決めた上場企業が監査法人から約3倍の監査報酬の見積書を提示され、IFRS導入を止めた、という企業もありました。「公認会計士業界として、この問題を早急に解決しなければ日本経済の成長を会計士が阻害していることになりかねない」という谷間氏の意見は、IPO分野以外でもいえることだと思います。日本公認会計士協会が動くべきだと私も思います。



IPOビジネスの本質
谷間 真
リスナーズ株式会社
2016-09-30





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