飄々野釣り考

 孤舟は以前に合成竿を作ったことがありますが、あまり評判は良くなかった。竿としての実用性は合成竿の方がずっと良いのですが、竹竿マニアにとっては、中途半端なものになるのでしょう。合成竿は竿のに一番負担の掛かる穂先と穂持ちをカーボンにすることにより、竹竿の弱点を概ねカバーできる素晴らしい竿なのです。竹竿の重量の主な欠点は重い、穂先と穂持ちが傷みやすくメンテナンスが欠かせない、長竿は被りやすいなど。合成竿はこれを全てカバーする。しかも、竹竿のしなやかさを持ちその良さを損なわない、良い事尽くめである。しかし、全て竹天然素材では無いという情緒的理由で合成竿が低くランクされているが、近年の言い方をすればハイブリッド竿である。竹竿ファンにとってはカタカナも気に食わないのだと思うが。コレクションとして釣り竿を収集するならばそれも良いが、実用の竿ならば合成竿が断然良い。孤舟カーボン竿

 塗りの事
 ヘラブナ釣りが始まった戦前から漆より優れた塗料はなく、 竹竿には漆を塗って来た。エナメル、ラッカーなども漆に比べ強度は弱く、また、カシュー塗料が漆に近い特性を持ち一部で使用されるようになったが、漆に比べると評価が低い。
 漆の場合、伝統工芸の技術を使い装飾性の高い竿を作ることができる為、工芸品としての評価が高い。しかし、漆は耐候性が弱く、炎天下や雨の中で使用すると劣化が進む。特に胴ブキは劣化が早い。屋外で使用する物に漆を使用するのは向いていない。況してや火入れするのは漆芸家から見ればとんでもない事である。また、最近では国産の漆最終が少なく、大変効果になっていて多くの場合中国産やベトナム産であるが、国産に比べ主成分のウルシオールが少なく品質がかなり劣る。以前、東照宮の塗り替えに外国産の漆を使用した為に短期で塗り替えをしなければならなくなったそうだ。
 ウレタン塗料は耐候性、強度は漆より優れており、ヘラ竿には大変良い塗料で、カーボン竿に使用されるようになるが、溶剤を使用し乾燥時間が早い為、刷毛塗りが難しく竹竿にはあまり使用されなかった。しかし、一部の竿師が使用するようになって来ている。漆というブランドが工芸品としての価値を高めている為ウレタン塗料はなかなか普及し無いが竹竿を実用品とするならウレタン塗装が優れている。

 私は漆にかぶれ易く子供の頃から散々な目に遭って来た。釣り場でも漆の木と知らずにすぐ隣で一日釣りをして手や顔、首がかぶれて大変な目に遭った。その為、孤舟に入門する当たってかぶれで漆塗りが出来そうに無かった。
 初めからウレタン塗料で仕上げることにしたが、孤舟もウレタンの経験がなかった。ウレタンなどの塗装については、今までの私の仕事上で経験や知識が多少あり扱いは慣れていた。しかし、いざ竿に塗ってみると漆とは違った問題があり、塗料メイカーとやり取りをしながら、いささか試行錯誤をしてしまった。 
 ウレタン塗料は本来スプレイ塗装用に作られていて、溶剤で薄めて使用し速乾性であるため、粘度が低く胴拭きには向いていない。また、口巻きや段巻きの塗りも速乾性と粘度の薄さのため細部の処理が難しい。
 塗りの行程は、初めに透明の塗料を薄く胴引きする。続いて絹糸を巻き、黒色のウレタン塗料を塗る。絹糸の余分なものを除いて、全体にペーパーをかけ、再び薄く全体に透明塗料を胴拭きする。続いて糸の部分にペーパーを掛けて黒を塗る。黒塗り&ペーパーを何度も繰り返し、塗面が平滑になったら全体に茶系の透明染料を入れた透明ウレタンを2、3回都度800~2000番のペーパーを掛けて胴拭きし塗装は終了する。 
 当初、仕上がった竿の表面を爪で引っ掻くとポロポロと塗装が剥げ落ちてしまった。密着不良だと思い密着の良い塗料を下地に塗っても全く改善されなかった。よくよく観察すると、密着が悪いのではなく、竹の表面が弱く、塗料に負けて表皮が剥がれウレタン塗料についていることが分かった。ウレタンは漆のように柔軟性がなく 高度ははるかに高い為である。そこで、竹の柔らかい表皮をナイフの背で丁寧に削りとりウレタンを塗ればしっかり密着する事が分かった。昔の竿は皮剥きしてあったが、堅皮まで削っていた為、色が茶色になり竿の強度も落ちたが、この方法は全く竿の強度に影響はなく、外観の竹の模様にも影響はない。
 ウレタン塗装で一番難しいのは胴拭きで、可能な限り薄く、仕上がりがテラテラしないように 平滑に塗る事である。塗料を思い切り薄くして塗るがかなりのテクニックが必要で、文章で説明するのはかなり難しい。最もエアガンで塗れば簡単であるが。

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