武富士一万人訴訟ニュース 第68号 平成26年6月18日
武富士の責任を追及する全国会議 代表 弁護士新里宏二 事務局長 弁護士及川智志
〒271-0091 千葉県松戸市本町5-9 浅野ビル3階 市民の法律事務所内
電話047(360)2123 FAX047(362)7038 http://blog.livedoor.jp/takehuji/
報告;司法書士 芦田 笑美子
全国訴訟第4陣の判決言渡がありました。
6月18日午後1時10分、東京地方裁判所415号法廷で、武富士一万人訴訟の全国訴訟第4陣の判決言渡がありました。全国訴訟(東京地裁)の最後の判決です。
原告代理人1名が出廷し、傍聴人は7名、うち2名は被告代理人でした。
大変遺憾ながら、今回も原告の請求をいずれも棄却する、という判決主文でした。
以下に、期日後、受領した判決文より、判決理由の概要をお伝えします。
(かなり分かりやすくダイジェストしていますので正確ではありません。)
【判決理由の概要】
① 直接損害について(原告らが法律の義務のない支払いをしたことによる損害に対する被告らの責任)
平成18年判決までは、法定利率を超えた部分を取るための要件(みなし弁済規定)の解釈について、下級審裁判例・学説はかなり分かれており、判決等の都度、書式改定などの対応を行っているので、被告らがみなし弁済規定の要件を充足していると判断したことが不合理とまではいえないし、そのため原告主張の業務体制の構築義務もない。
しかし、平成18年判決以降は、契約年月日の記載がない18条書面を交付していた武富士が、これまで収受してきた制限超過部分の中には、不当利得として返すべき部分があることを、被告らが認識していたというべきである。
そうだとしても、引きなおし計算には、各顧客について個別的な取引の複数の論点の検討が不可欠であるが、多数の顧客の事実関係を正確に把握・計算をすることは困難であること、引きなおし計算をするかどうかは一義的には借り手の判断であるとの金融庁のコメントがあること等から、武富士には全顧客について引きなおし計算をする義務も、引きなおし計算をしたうえで書面を交付する体制を構築する義務もなかった。
②間接損害について(被告らが任務を怠ったことで武富士が倒産してしまったために、原告らが過払い金を返してもらえなくなったことに対する被告らの責任)
・過払引当金の計上については、会計基準通りなので、任務懈怠はない。
・亡保雄らによる数々の不祥事やそれらの報道により、社会的信用が下がり、収益に一定の影響はあったが、その損害額の算定・立証は困難であるし、不祥事の直後でも1300億円もの金融機関からの資金調達、社債発行も行っていることから、資金調達に影響を及ぼすほどではなかった。
・配当について、平成18年3月期は、引きなおし計算義務がない以上、引き直し計算に基づく負債の形状をしたうえで配当する必要はないし、監査上の取り扱いに従っているので、分配可能額を超えているわけではない。増配は株主の圧力や株価維持政策のためで、分配可能額の範囲内であったので、不合理ではない。平成19~21年の配当も、分配可能額の範囲内で、直ちに経営破たんに至るおそれを認識していたとは言えず、法改正、金融危機等を考慮すれば、資金調達方法の確保等のために配当を行った判断が著しく不合理とは言えない。平成22年3月期の配当も、分配可能額を超えず、配当案決定当時、平成23年4月に必要な資金に対して配当額は少額であったし、資金調達のめどが立たない状態になっていたということも、それを被告らが認識していた証拠もないので、配当を行ったことは不合理ではないし、この配当を行わなければ更生手続開始申立てを回避できたとも認められない。
・実質的ディフィーザンスによる損失は、サブプライムローン問題が主原因で、その予見は容易ではなく、著しく不合理な判断であったとは認められない。
・2018年満期転換社債発行については、発行当時、株価が転換価格を上回ることがない状況だったと認める証拠はなく、発行当時他の資金調達が困難であったことから、不合理とは言えず、任務懈怠は認められない。
・真正館の賃料増額はわずかで、その事実がなかったとしても倒産回避にはならなかった。
・武富士倒産は、過払金請求増加、法改正、世界的金融危機などが原因である。
・他の大手貸金業者が倒産に至らなかったことは、武富士の取締役に倒産を招く任務懈怠があったことを推認するものではない。
・過払金返還請求額が平成21年度から22年度にかけて大幅減少しているのが、過払金債務の存在が、更生手続き開始申し立ての一因であったことを否定できない。
【判決の振り返り】
判決言渡の後、場所を変えて判決文を確認し、振り返りを行いました。
全国訴訟最後の判決でしたが、やはり5つの裁判体で協議があったと疑わずにはいられないほど、結論も検討過程も酷似していました。ただそれは、結論ありきで、問題を細分化し、矮小化して一つずつ切り捨てている印象で、原告の主張全体をとらえているとは思えません。
5つの判決の中には、これからの戦いにつながるヒントがたくさん隠れています。控訴審に向けて、更なる検討を重ねていきますので、皆様、今後ますますのご支援をお願いいたします。
以上
武富士の責任を追及する全国会議 代表 弁護士新里宏二 事務局長 弁護士及川智志
〒271-0091 千葉県松戸市本町5-9 浅野ビル3階 市民の法律事務所内
電話047(360)2123 FAX047(362)7038 http://blog.livedoor.jp/takehuji/
報告;司法書士 芦田 笑美子
全国訴訟第4陣の判決言渡がありました。
6月18日午後1時10分、東京地方裁判所415号法廷で、武富士一万人訴訟の全国訴訟第4陣の判決言渡がありました。全国訴訟(東京地裁)の最後の判決です。
原告代理人1名が出廷し、傍聴人は7名、うち2名は被告代理人でした。
大変遺憾ながら、今回も原告の請求をいずれも棄却する、という判決主文でした。
以下に、期日後、受領した判決文より、判決理由の概要をお伝えします。
(かなり分かりやすくダイジェストしていますので正確ではありません。)
【判決理由の概要】
① 直接損害について(原告らが法律の義務のない支払いをしたことによる損害に対する被告らの責任)
平成18年判決までは、法定利率を超えた部分を取るための要件(みなし弁済規定)の解釈について、下級審裁判例・学説はかなり分かれており、判決等の都度、書式改定などの対応を行っているので、被告らがみなし弁済規定の要件を充足していると判断したことが不合理とまではいえないし、そのため原告主張の業務体制の構築義務もない。
しかし、平成18年判決以降は、契約年月日の記載がない18条書面を交付していた武富士が、これまで収受してきた制限超過部分の中には、不当利得として返すべき部分があることを、被告らが認識していたというべきである。
そうだとしても、引きなおし計算には、各顧客について個別的な取引の複数の論点の検討が不可欠であるが、多数の顧客の事実関係を正確に把握・計算をすることは困難であること、引きなおし計算をするかどうかは一義的には借り手の判断であるとの金融庁のコメントがあること等から、武富士には全顧客について引きなおし計算をする義務も、引きなおし計算をしたうえで書面を交付する体制を構築する義務もなかった。
②間接損害について(被告らが任務を怠ったことで武富士が倒産してしまったために、原告らが過払い金を返してもらえなくなったことに対する被告らの責任)
・過払引当金の計上については、会計基準通りなので、任務懈怠はない。
・亡保雄らによる数々の不祥事やそれらの報道により、社会的信用が下がり、収益に一定の影響はあったが、その損害額の算定・立証は困難であるし、不祥事の直後でも1300億円もの金融機関からの資金調達、社債発行も行っていることから、資金調達に影響を及ぼすほどではなかった。
・配当について、平成18年3月期は、引きなおし計算義務がない以上、引き直し計算に基づく負債の形状をしたうえで配当する必要はないし、監査上の取り扱いに従っているので、分配可能額を超えているわけではない。増配は株主の圧力や株価維持政策のためで、分配可能額の範囲内であったので、不合理ではない。平成19~21年の配当も、分配可能額の範囲内で、直ちに経営破たんに至るおそれを認識していたとは言えず、法改正、金融危機等を考慮すれば、資金調達方法の確保等のために配当を行った判断が著しく不合理とは言えない。平成22年3月期の配当も、分配可能額を超えず、配当案決定当時、平成23年4月に必要な資金に対して配当額は少額であったし、資金調達のめどが立たない状態になっていたということも、それを被告らが認識していた証拠もないので、配当を行ったことは不合理ではないし、この配当を行わなければ更生手続開始申立てを回避できたとも認められない。
・実質的ディフィーザンスによる損失は、サブプライムローン問題が主原因で、その予見は容易ではなく、著しく不合理な判断であったとは認められない。
・2018年満期転換社債発行については、発行当時、株価が転換価格を上回ることがない状況だったと認める証拠はなく、発行当時他の資金調達が困難であったことから、不合理とは言えず、任務懈怠は認められない。
・真正館の賃料増額はわずかで、その事実がなかったとしても倒産回避にはならなかった。
・武富士倒産は、過払金請求増加、法改正、世界的金融危機などが原因である。
・他の大手貸金業者が倒産に至らなかったことは、武富士の取締役に倒産を招く任務懈怠があったことを推認するものではない。
・過払金返還請求額が平成21年度から22年度にかけて大幅減少しているのが、過払金債務の存在が、更生手続き開始申し立ての一因であったことを否定できない。
【判決の振り返り】
判決言渡の後、場所を変えて判決文を確認し、振り返りを行いました。
全国訴訟最後の判決でしたが、やはり5つの裁判体で協議があったと疑わずにはいられないほど、結論も検討過程も酷似していました。ただそれは、結論ありきで、問題を細分化し、矮小化して一つずつ切り捨てている印象で、原告の主張全体をとらえているとは思えません。
5つの判決の中には、これからの戦いにつながるヒントがたくさん隠れています。控訴審に向けて、更なる検討を重ねていきますので、皆様、今後ますますのご支援をお願いいたします。
以上