島泰三著『孫の力』。著者はニホンザルやアイアイ（マダカスカル島のみに生息するサルの一種）の研究者。孫娘の０歳から７歳までの観察記を本にした。
祖父という立場から共感するところが多い。
１．なぜ孫は可愛いのか。
サルの世界でも孫、曾孫と一緒に生活をしているが、祖父母ザル、曾祖父母ザルは孫、曾孫を特別扱いをしない。みんなと同じ扱いという。
人間だけが、孫は特別な存在らしい。
どんな動物でも赤ちゃんは可愛い。丸々として小さいのと仕草が愛くるしい。人間の赤ちゃんも見ているだけで微笑ましくなる。まして孫は、古来から「孫は目に入れても痛くない」と語り継がれている。
なぜ、孫は可愛いのか。
著者は言う。「人は、老いを感じ、近づきつつある死を思う頃に孫が生まれる。自らの命の連続を孫に感じ、心が震える」と。
村上春樹流に言えば「先祖からのＤＮＡを運ぶ区間ランナー、チームメンバー」か。
実感として、孫は祖父母の生きた証しとして命を繋いでくれる者、と思う。孫はそこにいるだけで感動する。孫の仕草から祖父母は元気をもらう。
２．寿命の終わりにいたって、天命とともに天寵を知ること
天寵とは天のめぐみをいう。孫はまさに天寵である。私の孫とほぼ同時期の誕生日の孫を持つ、大学同期の友人が「まさに無償の愛の対象」と言っていたが、祖父母にとっては同じ心境である。
３．驚くほど成長する乳幼児
人間の脳は他の動物と違って生まれてから発達する。半年で生まれた時の２倍に、２歳の誕生日の時点で３倍に、４歳までに４倍になる。４歳で脳容量は大人の９割に達する、という。驚異的な成長だ。
遊びによって脳は成長するという。
４．未来はこの孫たちの中にある
今の日本政府は、孫たちに大きな借金を残している。孫たちの未来を食いつぶしている。この20年、日本の経済はデフレ経済にあり、祖父母の現役時代は常識であった「年々、給与は右上がり」が神話になってしまっている。成長戦略の実現ロードマップを早くスタートしなければならない。
著者は動物観察の専門家だが、孫が対象となると冷静な科学者ではなく、そこは“ジイチャンバカ”もよいところだが、それは同類項として良し、としよう。
