映画『誰も守ってくれない』。第32回モントリオール世界映画祭で最優秀脚本賞を受賞した作品。

 18歳の少年が近所の小学生姉妹殺害容疑で捕まる。小学生殺害という悲惨な事件だけに、「加害者の家族は死をもって詫びろ」と世間の声は高まる。正義の味方とばかりに、マスコミは容疑者の家族を取り囲む。

 マスコミや世間の声で、現実に加害者の家族が命を落とすケースが多いらしい。加害者の家族を守るために警察が動く。

 このドラマの家族は長男の加害者と両親と15歳の妹の4人であった。警察は両親の離婚手続きをとったうえ、奥さんの家に養子に入る形で婚姻届を出すことを勧める。苗字が変わるので加害者の両親とは察せられなくなるからだ。この手続きは警察ではマニュアル化されおり、実にテキパキと進められる。

 15歳の妹は高校生で多感な年頃。マスコミから離すために、身辺保護役に刑事がつき、身を隠す。加害者の母親は警察の監視の中にもかかわらず、トイレで首吊り自害する。苦しい事実に直面し葛藤しつつも、刑事の言葉で励まされ成長していく妹の内面が描かれる。

 マスコミの目からは逃れたものの、ネットの掲示板で隠れ場所が暴露される。インターネットは匿名の世界。無責任に面白ろおかしく暴露する。犯人の顔写真も、妹の顔写真も暴露し、罵声を浴びせる。

 被害者の家族の視点から見ることはあっても、被害者の家族の視点で見ることはめずらしい。同じ人間でも立場によって見方がこうも変わるのかと問題提起する。

 テーマ性のある映画であるとともに、緊迫感をもって展開される。